JANコード
普段、何気なく手に取る商品には、必ずといっていいほど「縦線の入ったバーコード」がついています。その中でも、日本国内で広く使われているのがJANコードです。スーパーマーケットやコンビニなどでレジを通す際、このコードが読み取られ、商品情報が瞬時に処理されます。
しかし、JANコードは単なる価格や商品名の記録ではありません。流通や在庫管理、データ分析など、現代のビジネスには欠かせない役割を果たしているのです。この仕組みを理解すれば、単に「バーコードを付ける」以上の価値が見えてくるかもしれません。
ここでは、JANコードの基本的な仕組みや他のバーコードとの違い、そしてどのように広まってきたのかを解説させていただきます。
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JANコードとは?
JANコード(Japanese Article Number)は、商品を識別するためのコードです。13桁または8桁の数字で構成され、それぞれが特定の意味を持っています。
・前半の数字(メーカーコード):商品を製造・販売する企業を識別
・中間の数字(商品コード):企業が独自に割り当てる番号
・最後の数字(チェックデジット):入力ミスや読み取りエラーを防ぐための計算結果
このコードがあることで、レジでの会計がスムーズになるだけでなく、販売データの収集や、在庫管理の精度向上といった効果も期待できます。例えば、大手スーパーではJANコードを基に売れ筋商品を分析し、効率的な発注計画を立てています。
また、ECサイトでもJANコードは重要な役割を果たします。Amazonや楽天などのプラットフォームでは、正確な商品情報を管理するためにJANコードの登録が求められることが増えており、これを持たない商品は出品が制限されるケースもあります。
バーコードとの違い・種類(EANコードやUPCコードなどとの比較)
「バーコード」と聞くと、すべて同じように思えるかもしれませんが、実際には用途に応じて複数の種類が存在します。その中でも、JANコードとよく比較されるのがEANコードやUPCコードです。
コード種類 | 主な用途 | 桁数 | 使用地域 |
---|---|---|---|
JANコード | 一般的な商品管理 | 13桁/8桁 | 日本国内・一部アジア |
EANコード | 欧州を中心とした国際標準 | 13桁/8桁 | 世界各国(欧州・アジアなど) |
UPCコード | 北米市場向け | 12桁 | 主にアメリカ・カナダ |
JANコードとEANコードはほぼ同じ規格であり、EANコードの日本版がJANコードともいえます。一方、UPCコードはアメリカやカナダで主流の規格で、日本のJANコードとは微妙に異なる仕組みになっています。
例えば、日本の商品を海外に輸出する場合、JANコードはそのままEANコードとして認識されるため特に問題はありませんが、北米の小売店ではUPCコードに変換する必要があるケースもあります。
また、JANコードの中でも8桁の短縮版があり、小型商品のように印刷スペースが限られている場合に使われます。
JANコードの仕組み
JANコードは、レジでバーコードをスキャンすると、瞬時に商品名や価格が画面に表示されます。この仕組みを支えているのがJANコードのデータ構造です。ただの数字の羅列に見えますが、それぞれの桁には重要な役割があり、読み取りミスを防ぐ工夫も組み込まれています。
JANコードを正しく理解することは、商品管理や販売データの活用においても重要です。ここでは、データの構成要素や桁数の意味、POSシステムでの活用方法について詳しく見ていきましょう。
データ構成の詳細(メーカーコード・商品コード・チェックデジット)
JANコードは、13桁または8桁の数字で構成されており、それぞれに意味があります。
13桁(GTIN-13)の場合
桁数 | 内容 | 役割 |
---|---|---|
1~7桁目 | メーカーコード | 企業ごとに割り当てられる識別番号 |
8~12桁目 | 商品コード | メーカーが独自に設定する番号 |
13桁目 | チェックデジット | 計算によって導かれる誤り検出用の数字 |
8桁(GTIN-8)の場合
桁数 | 内容 | 役割 |
---|---|---|
1~7桁目 | 商品・メーカーコードの統合 | 小型商品向けに短縮されたコード |
8桁目 | チェックデジット | 誤入力を防ぐための計算結果 |
チェックデジットは、入力ミスや読み取りエラーを防ぐために導入されています。特定の計算式を使って導かれるため、手入力で間違えても不正なコードとして認識されやすくなります。
例えば、レジでバーコードがうまく読み取れなかった際に手入力することがありますが、このチェックデジットのおかげで誤ったコードが登録されにくくなっています。
桁数の意味と国内外での運用(GTIN-13とGTIN-8)
JANコードには、13桁の「GTIN-13」と8桁の「GTIN-8」の2種類があります。
GTIN-13(標準のJANコード)
多くの一般的な商品で採用されているのがGTIN-13です。このコードは、日本国内だけでなく国際的にもEANコードとして利用されるため、輸出や海外販売にも対応しやすいという特徴があります。
GTIN-8(小型商品のための短縮コード)
一方、GTIN-8は、小さなパッケージの商品向けに設計された短縮コードです。例えば、リップクリームや単三電池のようにパッケージのスペースが限られている商品では、GTIN-13の長いコードを印刷するのが難しいため、GTIN-8が採用されることがあります。
国内外での運用について
JANコード(GTIN-13)は、ヨーロッパのEANコードと互換性があるため、国際的な流通にも適用できます。しかし、アメリカやカナダではUPCコードが主流であり、一部の小売業者ではUPCコードへの変換が必要になることもあります。そのため、海外市場を視野に入れている事業者は、どのバーコード規格が求められるかを事前に確認することが重要です。
POSシステムでのスキャンの仕組み
JANコードは、単に数字を管理するためのものではなく、POSシステム(販売時点情報管理)と連携することで大きな価値を生み出します。
POSシステムとは?
POSシステムとは、「販売時点情報管理システム」のことで、商品が販売された瞬間のデータを記録し、リアルタイムで管理できる仕組みです。レジでスキャンされると、以下のような情報が瞬時に処理されます。
・商品名・価格の表示(会計処理)
・在庫の自動更新(売れた分が倉庫管理システムに反映)
・売上データの蓄積(どの商品がどの時間帯に売れたかを分析)
例えば、コンビニのように膨大な商品数を扱う店舗では、POSシステムによる在庫管理の自動化が不可欠です。JANコードを使えば、各店舗の販売状況をリアルタイムで把握し、売れ筋商品を分析して発注を最適化することもできます。
スキャンが正しく行われない場合
POSシステムが正常に機能するためには、バーコードの印刷品質や配置にも注意が必要です。例えば、印刷が薄すぎると読み取りエラーが発生しやすくなりますし、曲面に貼られたバーコードはスキャナーが正しく認識できないことがあります。
また、レジの担当者が手入力する際に、誤った番号を打ち込んでしまうケースもあります。こうしたリスクを軽減するために、チェックデジットによるエラーチェックや、バーコードの品質基準を満たすことが推奨されています。
JANコードを導入するメリット
JANコードは、商品を識別するだけでなく、業務効率の向上やビジネス拡大にも役立つ仕組みです。小売店のPOSシステムと連携することで、販売管理がスムーズになり、コストの削減や販路の拡大にもつながります。
例えば、新しくオンライン販売を始める場合、JANコードがあればスムーズに商品登録ができ、複数のECプラットフォームを活用しやすくなるという利点があります。また、国際的な流通の場面では、JANコードの互換性がビジネスを広げる大きな助けになります。
ここでは、JANコードを導入することで得られる主なメリットについて詳しく見ていきましょう。
POSシステムでの売上・在庫管理の効率化
POSシステムとJANコードを組み合わせることで、売上管理や在庫の把握が格段にスムーズになります。
以前は、商品ごとに価格を手入力し、売上を手書きで記録していた店舗も多くありました。この方法では、入力ミスや計算違いが発生しやすく、正確な売上データを取るのが難しいという課題がありました。しかし、JANコードを導入すると、レジでスキャンするだけで正確なデータを即座に記録できるようになります。
また、JANコードがあることで、売れた商品がリアルタイムで在庫システムに反映されるため、品切れや過剰在庫のリスクも減らせます。特に、複数店舗を展開している企業では、店舗ごとの売上データを正確に集計し、販売動向を素早く分析できるため、より戦略的な発注が可能になります。
業務の標準化によるコスト削減
JANコードの導入は、業務の効率化だけでなく人件費や管理コストの削減にもつながります。
例えば、商品の受発注や棚卸し作業では、JANコードを活用したスキャナーや自動管理システムを導入することで、手作業の負担を大幅に減らすことができます。これにより、作業時間が短縮され、人件費や誤入力によるロスを削減できるようになります。
また、小売店や物流センターでは、JANコードを利用した自動検品システムを導入することで、納品された商品が正しいかどうかをすばやく確認できます。手作業での照合作業が減るため、作業のスピードが向上し、ヒューマンエラーによる返品や再発注のコストも軽減されます。
さらに、JANコードを使うことで、メーカーや卸売業者との取引もスムーズになります。業界全体で共通の識別コードを使用することで、伝票の統一や発注作業の自動化が進み、取引の流れがより円滑になるからです。
複数販路への対応(オンライン・オフライン)
最近では、実店舗だけでなくオンラインでも販売するのが当たり前になっています。その際に、JANコードを活用することで、オフラインとオンラインの両方で商品情報を一元管理できるようになります。
例えば、大手ECモール(Amazon・楽天・Yahoo!ショッピングなど)では、JANコードの登録が必須となっているケースが増えています。これは、同じ商品が異なる販売者から出品された場合でも、JANコードが統一されていれば、重複登録を防ぎ、消費者が適切な商品情報を得られるようにするためです。
また、自社ECサイトを運営している場合でも、JANコードを活用することで、倉庫管理システムや販売管理システムとの連携がしやすくなり、在庫や売上データを正確に統合できるという利点があります。
オムニチャネル戦略を取る企業では、実店舗とECの在庫を連携させ、売れ行きに応じた最適な在庫配分ができるようになるため、在庫リスクの低減にもつながります。
国際的な流通(海外展開)におけるメリット
JANコードは、日本国内だけでなく、海外市場に商品を流通させる際にも有効です。
JANコードの基となっている「GTIN-13」は、ヨーロッパをはじめとする多くの国でEANコードとして利用されています。そのため、輸出する際にもそのまま活用できることが多く、特別な手続きをせずに海外で販売できるケースもあります。
一方、北米市場ではUPCコードが一般的ですが、JANコードとUPCコードは互換性があるため、必要に応じて変換することも可能です。そのため、JANコードを取得しておけば、国内市場だけでなく、海外市場への展開もしやすくなるというメリットがあります。
また、国際的なECプラットフォーム(Amazon Global・eBayなど)でもJANコードの登録が求められることが増えています。特に、越境ECを検討している事業者にとって、JANコードは必須の要素となるでしょう。
さらに、JANコードがあることで、輸送時のトラッキングや通関手続きがスムーズになるケースもあるため、物流面でも役立ちます。
JANコードの取得方法
JANコードを利用するためには、正しい手順で取得し、適切に管理することが重要です。事業者ごとにユニークなコードが割り当てられるため、誤った手順で申請してしまうと、後々の管理が煩雑になったり、取引先とのデータ整合性が取れなくなったりする可能性もあります。
では、どのようにJANコードを取得すればいいのか。申請からバーコードの作成までの具体的な流れを詳しく見ていきましょう。
「GS1事業者コード」の申請手順
JANコードを取得するためには、まずGS1 Japan(一般財団法人 流通システム開発センター)に申請を行い、「GS1事業者コード」を取得する必要があります。これは、企業ごとに割り振られる固有の番号で、JANコードの前半部分(7桁または9桁)を構成します。
申請の流れ
1. GS1 Japanの公式サイトにアクセス
・申請に必要な情報や費用が掲載されているので、事前に確認しておくとスムーズです。
2.必要書類を準備
・申請には、会社情報(法人の場合)や事業内容、申請者情報が必要です。
・法人だけでなく、個人事業主でも申請が可能ですが、審査には一定の基準が設けられています。
3. 申請書を提出し、審査を待つ
・提出後、GS1 Japanが申請内容を審査します。
・数週間程度で結果が通知され、登録が完了すると「GS1事業者コード」が発行されます。
4. コードの取得後、JANコードを発行可能に
・取得した「GS1事業者コード」を元に、自社の商品ごとのJANコードを作成できます。
申請には一定の登録費用がかかるため、事業規模や商品数に応じた最適な契約プランを選ぶことが大切です。
商品アイテムコードの割り当て方
GS1事業者コードを取得したら、次に商品ごとのアイテムコードを設定する必要があります。JANコードの後半部分にあたるこの番号は、企業が独自に管理するため、適切なルールを設けて運用することが重要です。
商品アイテムコードのポイント
同じ商品には同じコードを使用する
パッケージデザインが変わっても、内容や仕様が変わらなければコードを統一することが推奨されます。
サイズや色違いは別のコードを付与する
例えば、TシャツのS・M・Lサイズや、異なるカラーバリエーションごとに固有のアイテムコードを設定します。
商品リニューアル時の対応
・仕様変更がある場合は、新しいJANコードを発行する必要があります。
・どの程度の変更で新コードを付与するか、社内ルールを明確に決めておくと管理が楽になります。
アイテムコードを適切に管理することで、誤った商品情報の登録を防ぎ、流通や販売のトラブルを回避することができます。
バーコード作成ソフト・オンラインサービスの活用
JANコードが決まったら、実際にバーコードを作成し、印刷するステップに進みます。
バーコードを作成する方法はいくつかあります。
1. 無料のオンラインジェネレーターを利用する
GS1 Japanの公式サイトや、バーコード作成ツールを提供しているサービスを活用すれば、JANコードを入力するだけでバーコード画像を生成できます。印刷する前に、試しに作成してみるのもよいでしょう。
2. Excelや専用ソフトを使う
Excelのアドインや、市販のバーコード作成ソフトを使うことで、大量のバーコードを一括で作成することもできます。店舗や倉庫で多くの商品を扱う場合には、こうした方法が便利です。
3. 印刷業者に依頼する
商品パッケージに直接印刷する場合は、専門の印刷業者に依頼するケースもあります。バーコードの印刷品質はスキャナーの読み取り精度に影響を与えるため、細かい線がつぶれたり、かすれたりしないように注意が必要です。
印刷時のポイントとして、バーコードのサイズや配置も重要です。読み取りしやすいサイズに調整し、曲面のボトルや小さなパッケージには適切な配置を工夫すると、スキャンエラーを防げます。
JANコードの運用・管理ポイント
JANコードは一度取得すれば終わりではなく、適切に管理しながら運用することが重要です。商品の種類が増えるにつれて、コードの管理が複雑になったり、バーコードの印刷や読み取りに課題が出たりすることもあります。
JANコードの運用が適切でないと、商品識別ミスや在庫管理の混乱につながることも考えられます。こうしたトラブルを防ぐために、商品コードの管理方法や印刷時の注意点、在庫システムとの連携、定期的なメンテナンスの必要性について詳しく解説していきます。
商品コードの体系的な管理方法
JANコードの管理は、事業者が独自に運用する部分が多いため、ルールを明確に定めておくことが不可欠です。特に、どのように商品コードを割り振るかが運用のポイントになります。
管理のポイント
類似商品には一貫性のあるルールを適用する
・例:サイズ違いの商品(S・M・L)には、連番で商品コードを付与する
・例:色違いの商品は、コードの末尾を色ごとに分ける
一度付与したJANコードを他の商品に使い回さない
・廃番商品に使っていたコードを再利用すると、データの混乱や誤認識につながるため、新規商品には新たなコードを付与する
社内システムで管理しやすいように記録を残す
・JANコードと商品情報を一覧にまとめ、エクセルや商品管理ソフトで整理しておく
・商品の仕様変更があった際、JANコードを変更するかどうかの基準を明確にする
JANコードの割り当てルールを統一することで、担当者が変わってもスムーズに管理を引き継げるようになり、運用の安定性が増すでしょう。
バーコードの印刷・貼付における注意点(サイズ・印刷品質・配置)
JANコードをスムーズに運用するには、バーコードの印刷や貼付位置にも気を配ることが大切です。印刷が不鮮明だったり、読み取りにくい場所に貼られていたりすると、POSレジや倉庫管理システムでエラーが発生しやすくなります。
印刷時のチェックポイント
バーコードのサイズを適切に設定する
・標準サイズ(EAN-13):37.29mm × 25.93mm(推奨)
・縮小サイズ:許容範囲内なら縮小も可能だが、極端に小さくすると読み取りエラーが発生しやすくなる
印刷品質に注意する
・インクが薄すぎたり、かすれていたりするとスキャナーが読み取れなくなる
・印刷業者に依頼する場合、バーコードの品質基準を満たしているか事前に確認する
貼付位置を工夫する
・曲面の商品(ボトルなど)では、バーコードが曲がると読み取りにくくなるため、なるべく平らな部分に配置する
・小さいパッケージの場合、GTIN-8(8桁の短縮版)を活用し、適切なサイズで印刷する
バーコードの読み取りミスは、POSレジでのトラブルや出荷時のエラーにつながるため、印刷の品質を維持し、適切な位置に配置することが大切です。
在庫管理システムや商品マスタとの連携
JANコードは、単なる商品識別番号ではなく、在庫管理や受発注業務とも密接に関係しています。特に、多くの商品を扱う事業者にとって、JANコードと在庫管理システムの連携は業務効率を大きく左右します。
連携のポイント
JANコードを基に在庫を一元管理する
・商品マスタにJANコードを登録し、販売データとリアルタイムで紐づけることで、正確な在庫数を把握しやすくなります。
発注・納品の際にJANコードを活用する
・取引先との受発注データをJANコードベースで管理すると、誤発注や納品ミスの防止につながります。
・物流倉庫では、スキャナーでJANコードを読み取ることで、正確な入出庫管理が可能になります。
POSシステムとの連携を強化する
・売上データを自動で在庫管理システムに反映することで、売れた分だけ在庫が減る仕組みを作ると、欠品や過剰在庫を防ぎやすくなります。
JANコードと在庫管理を連携させることで、業務の無駄を減らし、効率的な商品管理が実現しやすくなります。
定期的なメンテナンスと更新の重要性
JANコードの運用は、一度設定すれば終わりというものではなく、定期的な見直しが欠かせません。
メンテナンスが必要なケース
新商品追加時のJANコード登録
・事業拡大に伴い、新商品を追加する際は、JANコードの体系を崩さないように管理する
・既存商品と類似している場合、間違ったコードを付与しないよう注意する
廃番商品のコード管理
・販売を終了した商品でも、取引履歴や過去のデータを確認できるよう、一定期間は記録を残しておく
・不要なコードを削除せず、社内で利用しないルールを明確にする
誤った登録がないか定期的にチェック
・JANコードの誤入力や重複登録がないか、システム上で定期的に確認する
・システムのアップデートに伴い、JANコードの連携設定が正しく動作しているかテストを行う
このように、JANコードを適切に管理し続けることで、トラブルを未然に防ぎ、安定した運用ができるようになります。
業界別活用事例
JANコードは、さまざまな業界で商品管理や流通の効率化に活用されています。小売業はもちろん、電子部品や医薬品などの分野でも、トレーサビリティの向上や在庫管理の最適化に役立てられています。
それぞれの業界における具体的な事例を見ていくと、JANコードの役割や重要性がより明確になります。ここでは、電気製品販売業、小売・スーパーマーケット、書籍・医薬品などの特殊な分野における活用事例を紹介します。
電気製品販売業での利用
電気製品や電子部品は、種類が多く、細かい仕様が異なるため、正確な管理が求められる分野です。JANコードを導入することで、在庫管理やトレーサビリティの強化につながるメリットがあります。
電子部品の販売管理事例
電子部品は、同じカテゴリーの商品でも型番やスペックが細かく異なり、適切な識別が必要です。例えば、同じ抵抗器でも抵抗値や電力許容量が異なるため、間違った商品が出荷されると、製品の品質や安全性に影響を及ぼします。
JANコードを各部品に割り当て、POSシステムや在庫管理ソフトと連携させることで、型番ごとの在庫をリアルタイムで把握できるようになります。さらに、発注時のミスが減り、適正在庫を保ちやすくなるという利点もあります。
トレーサビリティ向上によるメリット
電気製品は、不良品やリコールの対応が発生することもあります。JANコードを使って販売履歴を管理しておけば、対象商品の出荷先をすぐに特定でき、迅速な対応が可能になります。
また、部品メーカーとの取引でもJANコードを利用することで、発注・納品プロセスがスムーズになり、余計なやりとりを減らせるのも大きなメリットです。
小売・スーパーマーケット
小売業では、JANコードがもっとも広く活用されています。レジでの会計処理はもちろん、売上管理や在庫の最適化、仕入れ業務の効率化にもJANコードが役立っています。
POSレジでの売上・在庫管理効率化
スーパーマーケットでは、数千種類以上の商品を取り扱うことが一般的です。各商品にJANコードが付与されていることで、POSレジを通じて瞬時に価格を表示し、売上データを記録することができます。
また、JANコードと在庫管理システムを連携させることで、売れた商品が自動で在庫数から引かれ、発注が必要なタイミングを可視化できるようになります。
さらに、消費期限がある食品では、バーコードをスキャンすることで、賞味期限や消費期限の管理を強化することも可能です。これにより、ロス削減や廃棄コストの低減につながります。
大量のSKUを扱う際のメリット
小売店では、季節商品や期間限定の商品など、SKU(Stock Keeping Unit:在庫管理単位)が膨大になります。JANコードを活用することで、商品ごとの売上データを詳細に分析し、トレンドに合わせた商品ラインナップの調整がしやすくなります。
また、セルフレジやスマホ決済との連携も進んでおり、消費者が自分で商品をスキャンして決済できるシステムにもJANコードが欠かせません。
JANコード導入時の注意点
JANコードは、商品管理や流通の効率化に役立つ仕組みですが、導入する際にはコストや運用面での注意点があります。取得費用や維持費用のほか、バーコードの読み取り精度、商品情報の変更時の対応、海外市場への適用など、事前に確認しておくべきポイントが多くあります。
ここでは、JANコードの導入をスムーズに進めるために、考慮すべき重要な点を解説していきます。
コストとライセンス(GS1管理費用など)
JANコードを利用するには、GS1 Japanに登録し、事業者コードを取得する必要があります。この登録には初期費用が発生し、毎年の維持費用もかかるため、導入前にコスト面をしっかり把握しておくことが重要です。
主な費用の内訳
項目 | 内容 |
---|---|
登録費用 | 事業者コードを取得する際に発生(企業規模によって異なる) |
年間維持費 | 登録を継続するための費用(売上高に応じて変動) |
追加コード発行費用 | 必要なJANコードの数が増えると、追加申請が必要 |
小規模な事業者でも申請できますが、売上規模によって費用が変わるため、どのプランが適切か事前に確認しておくとよいでしょう。また、JANコードの取得を代行する業者もありますが、正規のGS1 Japanを通じた手続きを行わないと、ECサイトで登録できない場合があるため、注意が必要です。
バーコードが読み取れないトラブルへの対処
JANコードを導入しても、印刷の状態や貼付場所によって、スキャナーが正しく読み取れないケースがあります。特に、小売店のPOSレジや物流倉庫でバーコードがうまくスキャンできないと、販売や出荷に支障をきたすことがあります。
よくあるトラブルと解決策
・バーコードがかすれている、印刷が薄い
→ 印刷設定を見直し、適切な濃度で印刷する。印刷業者を利用する場合は、品質基準を満たしているか確認します。
・バーコードが小さすぎる
→ 最小サイズの基準を守り、読み取り精度を確保できる大きさで印刷する。縮小しすぎるとスキャナーの感度に影響します。
・商品の曲面にバーコードを貼り、読み取れない
→ 缶やボトルなどの曲面に貼る場合は、できるだけ平らな部分を選び、湾曲しすぎないようにします。
・光沢のあるパッケージで反射し、スキャンできない
→ つや消し加工を施すか、マットなシールに印刷することで、スキャナーの光が反射しないように調整します。
バーコードが正しく機能しないと、レジ処理や在庫管理に支障をきたすため、印刷や貼付の段階でしっかりチェックしておくことが大切です。
商品情報の変更や廃盤時の対応
JANコードは、一度付与した商品に対して原則として変更しないのが基本です。しかし、商品仕様が変わったり、販売終了したりする場合、適切な対応が求められます。
商品情報の変更に関するルール
・軽微なデザイン変更(パッケージ変更など)
→ JANコードはそのまま利用可能。ただし、店舗や取引先に事前に周知しておくと混乱が少なくなります。
・成分や内容量が変わる場合
→ 旧商品と新商品を識別するため、新しいJANコードを発行するのが望ましい。誤認識を防ぐため、特に食品や医薬品では注意が必要となります。
・廃盤商品のコード管理
→ 廃盤になった商品は、データベース上で「販売終了」として記録を残し、別の商品に同じJANコードを使い回さないようにします。
JANコードを適切に管理し、変更が必要なタイミングを見極めることで、流通や在庫管理の混乱を防ぐことができます。
海外規格(EAN/UPC)との互換性問題
日本国内で使われるJANコードは、国際的にはEANコードと互換性があるため、そのまま海外でも使用できる場合が多いです。しかし、北米市場(アメリカ・カナダ)ではUPCコードが主流のため、互換性に注意が必要です。
海外市場での対応ポイント
・ヨーロッパやアジア向けの輸出
→ JANコード(GTIN-13)は、EANコードとして認識されるため、追加の変更手続きは不要です。
・アメリカ・カナダ向けの輸出
→ UPCコードが標準規格のため、JANコードをUPCに変換する必要があるケースも。取引先が求める規格を確認し、必要ならGS1 USでUPCコードを取得します。
・AmazonやeBayなどのグローバルECでの登録
→ 商品の登録時に、「JAN」「EAN」「UPC」のいずれかを求められるため、対象地域の規格を調べておく。
海外展開を考えている場合、JANコードだけで対応できるかどうかを事前に確認し、必要に応じてUPC変換の手続きを進めることが重要です。
よくある質問(FAQ)
JANコードについて調べると、多くの疑問が出てくるかもしれません。取得にかかる費用、SKUとの管理方法、複数バリエーションの扱い、読み取りエラーの対処など、実際の運用に関わるポイントは気になるところでしょう。
ここでは、よくある質問とその解決策を紹介します。事前に理解しておくことで、スムーズにJANコードを活用できるようになります。
JANコードを取得するのにどのくらい費用がかかる?
JANコードを取得するには、GS1 Japanへの登録が必要です。料金体系は、企業の売上規模や発行するコードの数によって異なります。
主な費用の目安
費用項目 | 概要 |
---|---|
登録料 | 事業者コードを取得する際の初期費用 |
年間維持費 | 登録を継続するために必要(売上高に応じて変動) |
追加コード発行費 | 商品数が増えた場合、追加申請が必要になることも |
例えば、小規模事業者向けのプランでは、初年度に数万円程度の費用が発生し、翌年以降は年間の維持費がかかるケースが一般的です。詳細はGS1 Japanの公式サイトで確認するのが確実です。
また、ネット上ではJANコードの販売業者も見かけますが、GS1 Japanの正規登録でないと、ECサイトなどで正しく使えない可能性があるため、十分に注意してください。
既存の商品コードやSKUとJANコードを両立させるには?
すでに社内で独自のSKU(商品管理番号)を運用している場合、JANコードとの管理をどうすべきか悩むことがあるかもしれません。SKUとJANコードは役割が異なるため、併用しながら管理するのが一般的です。
SKUとJANコードの違い
項目 | 役割 |
---|---|
SKU(Stock Keeping Unit) | 企業ごとの内部管理用コード |
JANコード | 流通・小売向けの共通商品識別コード |
JANコードは外部(取引先やPOSシステム)と連携するためのコードであり、SKUは社内での在庫管理や商品分類に使うコードです。そのため、SKUとJANコードを対応表にまとめ、システム上で紐づけておくと、効率的な運用ができます。
ECサイトを運営している場合、SKUを活かしつつ、商品データベースにJANコードも登録することで、複数の販売チャネルで一貫した商品管理が可能になります。
複数バリエーション(色・サイズ違い)を持つ商品のコードはどうする?
アパレルや家電などでは、色やサイズが異なる商品にどのようにJANコードを割り当てるべきかが問題になることがあります。
基本的に、色違いやサイズ違いの商品は、それぞれ異なるJANコードを付与するのが適切です。
JANコードの設定例(Tシャツの場合)
商品名 | カラー | サイズ | JANコード |
---|---|---|---|
TシャツA | ホワイト | M | 4901234567890 |
TシャツA | ホワイト | L | 4901234567891 |
TシャツA | ブラック | M | 4901234567892 |
TシャツA | ブラック | L | 4901234567893 |
このように、1つのモデルにつき、サイズやカラーバリエーションごとに異なるJANコードを付与することで、正確な販売管理ができます。
ECサイトやPOSシステムでは、JANコードをキーとして商品情報を管理するため、バリエーションごとに異なるJANコードを持たせることで、顧客が求める商品を正しく識別できるようになります。
バーコードが読み取れない場合の原因と対処法は?
バーコードをスキャンしても読み取れない場合、印刷やスキャナーの設定に問題があることが多いです。
よくある原因と対策
問題点 | 対策 |
---|---|
印刷が薄い・かすれている | 印刷設定を見直し、適切な濃度で印刷する。レーザープリンターの使用を推奨。 |
バーコードが小さすぎる | 標準サイズ(EAN-13なら37.29mm × 25.93mm)を確保する。 |
光沢のあるパッケージで反射している | マットな素材に印刷するか、つや消しのラベルを使用する。 |
曲面にバーコードを貼っている | 缶やボトルなどの曲面では、なるべく平らな部分に配置する。 |
スキャナーの設定が不適切 | バーコードの種類(JAN/EAN/UPC)を正しく認識する設定になっているか確認する。 |
スキャンの問題が発生すると、POSレジや倉庫管理の作業が滞ってしまうため、事前にテストを行い、バーコードの品質を確保することが大切です。
特に、小売店舗ではレジ担当者が手入力することもあるため、誤入力を防ぐチェックデジットの計算が正しく行われているか確認すると、トラブルを減らせます。
まとめ
JANコードは、商品を識別し、流通や販売管理を効率化する重要な仕組みです。取得にはGS1 Japanへの登録が必要で、費用や管理ルールを事前に確認することが大切です。POSシステムや在庫管理と連携することで、業務の精度が向上し、ECや海外市場にも対応しやすくなります。
バーコードの印刷品質や読み取りトラブルにも注意が必要です。SKUとの併用やバリエーションごとのコード設定を適切に行うことで、スムーズな運用が可能になります。業界ごとの活用事例を参考に、自社のビジネスに合わせた活用方法を検討しましょう。