固定ロケーション管理
固定ロケーション管理とは、倉庫や物流拠点での在庫配置を最適化し、作業効率や在庫精度を向上させる手法です。
適切なロケーション管理を行うことで、ピッキングミスの防止や作業時間の短縮が可能になり、全体の物流コスト削減にもつながります。
ここでは、ロケーション管理の基本概念から、固定・フリー・ハイブリッドなどの管理方法、業務効率化に役立つツールまで詳しく解説します。倉庫運営の最適化を目指す方は、ぜひ参考にしてください。
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固定ロケーション管理とは?
固定ロケーション管理とは、倉庫内で特定の商品を決められた棚やエリアに配置し、常に同じ場所で管理する手法です。ピッキング作業の効率化や在庫の可視化がしやすく、誤出荷を防ぐ効果があります。出荷頻度の高い定番商品や在庫変動の少ないアイテムに適しており、スタッフの教育負担を軽減するメリットもあります。
ロケーション管理は、「棚の割り振りを決めるだけ」と思われがちですが、実際には入庫・保管・ピッキング・棚卸しといった業務全体の流れをスムーズにするための考え方でもあります。倉庫の規模や取り扱う商品の特性によって適した管理方法は変わりますが、代表的なものとして固定ロケーションとフリーロケーションの2つが挙げられます。それぞれの特徴と使い分けを見ていきましょう。
固定ロケーションとフリーロケーションの違い
固定ロケーションの特徴
固定ロケーションとは、あらかじめ決められた棚やエリアに特定の商品を配置し、常に同じ場所で管理する方法です。この方式のメリットは、どこに何があるのかをスタッフ全員が即座に把握できる点にあります。倉庫に新しく入るスタッフでも、配置ルールさえ覚えればスムーズに作業を進めることができます。
一方で、保管する商品のサイズや数量が変動すると、スペースの無駄が生じる可能性があるというデメリットもあります。たとえば、繁忙期と閑散期で在庫量が大きく変わる場合、固定ロケーションでは余剰スペースが発生したり、逆に収納しきれなくなるリスクがあるでしょう。そのため、定期的な棚割りの見直しや、ピッキング頻度の高い商品を使いやすい場所に配置する工夫が求められます。
フリーロケーションの特徴
一方のフリーロケーションは、商品の入庫状況に応じて柔軟に配置を変えられる管理方法です。特定の保管場所を設けないため、倉庫内のスペースを効率的に活用できるのが大きな利点です。
たとえば、サイズが異なる商品を頻繁に取り扱う場合、フリーロケーションであればその都度最適な場所に収納できるため、デッドスペースを最小限に抑えられます。また、季節商品のように需要が一定期間で大きく変わるものも、この方式であれば適切に対応しやすくなります。
ただし、フリーロケーションでは「どこに何があるか」を即座に把握することが難しくなるため、倉庫管理システム(WMS)などの導入がほぼ必須です。デジタル管理が整っていないと、在庫の取り出しに時間がかかったり、誤出荷が増えてしまう可能性もあります。
どちらを選ぶべきか?
固定ロケーションとフリーロケーション、それぞれにメリット・デメリットがあるため、どちらが優れているとは一概に言えません。商品の種類や倉庫の規模、作業の流れを踏まえて最適な管理方法を選ぶことが重要です。
固定ロケーションが適しているケース
・定番商品や出荷頻度の高いアイテムを扱う
・在庫数が比較的一定で、大きな変動がない
・作業スタッフの入れ替わりが多く、分かりやすい配置ルールが必要
フリーロケーションが向いているケース
・取り扱う商品の種類やサイズが頻繁に変わる
・季節商品やキャンペーン商品など、短期間での変動が大きい
・倉庫スペースを最大限に活用したい
これらの条件を考慮しながら、最適な管理方式を選択していくことが重要です。とはいえ、どちらか一方だけを採用するのではなく、状況に応じて使い分ける方法もあります。そこで次に紹介するのが、「ダブルトランザクション」という併用方式です。
固定ロケーションとフリーロケーションを組み合わせる
固定ロケーションと併用するメリットは以下になります。
倉庫スペースを最大限に活用できる
・フリーロケーションで保管することで、収納効率を向上させられます。
・一方で、ピッキング作業を固定ロケーションで管理することで、作業効率を落とさずに運用できます。
ピッキング時間を短縮できる
・必要な商品だけをピッキングエリアに並べることで、作業スタッフが無駄な移動を減らせます。
・短時間でピッキングが完了するため、出荷スピードの向上にもつながります。
在庫の変動に柔軟に対応できる
・保管はフリーにすることで、季節商品や短期間のプロモーション商品にも対応できます。
・必要に応じてピッキングエリアのレイアウトを変えることで、運用の自由度が増します。
固定ロケーションの番号の振り方と運用フロー
倉庫で固定ロケーションを活用する際、どのように棚の番号を振るかは、作業効率に大きく影響します。適切な番号ルールを設けることで、スタッフは迷わずに商品を探せるようになり、ピッキングや棚卸しの負担が軽減されます。
では、どのような方法で整理すれば分かりやすくなるのでしょうか?実際の運用でよく使われるルールを見ていきましょう。
番号付けの基本ルール
分かりやすさと規則性がカギ
倉庫の棚に番号を付けるときは、一目でロケーションが分かるように体系的なルールを作ることが大切です。適当な番号を割り振ると、後から探す際に混乱が生じ、誤出荷のリスクが増えてしまいます。
一般的に、以下のような構成で棚番号を付けるケースが多いです。
《棚番号の一例》エリア番号 – 通路番号 – 棚番号 – 段番号 – 区画番号
例えば、「A-03-12-2-05」という番号があった場合、それぞれ次のような意味になります。
・A:倉庫のエリア(ゾーン)を示す
・03:通路の番号(棚の並ぶ列)
・12:棚の識別番号
・2:棚の段数(2段目)
・05:区画の番号
このように、エリア → 通路 → 棚 → 段 → 区画と細かく分類することで、直感的に位置を把握できるようになります。
また、倉庫のレイアウトに応じて、棚の右側と左側で番号の振り方を変えるといった工夫をするのも有効です。
番号付けでよくある課題
ルールを定める際には、以下の点に注意が必要です。
番号が複雑すぎると、逆に混乱を招く
・過度に細かい番号設定をすると、スタッフが覚えられず作業に時間がかかることがあります。
・3〜5要素程度に収め、シンプルな構成を意識します。
倉庫の拡張に対応できるかを考える
・事業拡大に伴い棚を増設する場合、既存の番号体系のままでは収まりきらなくなることがあります
・最初から余裕を持たせた番号体系を考えておくことが重要です。
数字だけでなくアルファベットも活用する
・「Aゾーン」「Bゾーン」など、エリアごとにアルファベットを使うと視認性が向上します。
・数字と組み合わせることで、より直感的に場所を把握しやすくなります。
運用フローの一例
棚番号を決めた後は、それをどのように日常業務へ落とし込むかが重要です。ここでは、入庫から在庫管理までの基本的な流れを紹介します。
ステップ①:商品が倉庫に入る
入荷した商品は、事前に決めたロケーションルールに基づいて指定の棚へ配置します。固定ロケーションの場合、毎回同じ場所に収納されるため、迷うことなく迅速に作業を進めることができます。
運用のポイント
・新しく導入するスタッフがすぐ理解できるように、棚の番号を明示する
・棚の側面や床にシールを貼ります
・デジタル表示を活用します
・ラベルの劣化や読み取りミスに注意します
・シールが剥がれたり、印字が薄れてしまうと、スタッフが番号を確認できず、作業効率が低下します。
・定期的に点検を行い、見づらくなったラベルはすぐに交換します。
ステップ②:ロケーションと在庫情報を紐づける
商品を所定の棚に配置した後、在庫管理システムやハンディスキャナーを使って、ロケーションと在庫データを紐づける作業を行います。
運用のポイント
・バーコードやQRコードを活用すると入力ミスが減る
・手入力はヒューマンエラーを招く可能性があるため、できるだけスキャン方式を採用します。
・商品のバーコードとロケーションのコードを紐づけることで、出荷時の誤配送リスクを抑えられます。
・リアルタイムでデータを更新する
・スキャンと同時にシステムへ反映できる環境を整えることで、倉庫全体の在庫状況を常に最新の状態に保てます。
・手動での後付け入力を減らし、作業の効率を向上させます。
ステップ③:定期的に在庫数をチェックし、補充・移動を判断
固定ロケーションの運用では、在庫数の変化を見逃さないことがカギとなります。一定のルールを設け、定期的に在庫確認を行う仕組みを構築しましょう。
運用のポイント
ABC分析を活用して、補充の優先度を決める
・出荷頻度の高い商品(Aランク)は、ピッキングしやすいエリアに配置し、常に適正在庫を維持します。
・B・Cランクの商品は、少し奥まったエリアに収納し、必要に応じて補充するようにします。
在庫不足や過剰在庫を未然に防ぐ
・一定の在庫数を下回った時点でアラートが出るような仕組みを用意することで、補充漏れを防ぎます。
・季節変動のある商品は、繁忙期前に棚の割り当てを事前に見直すことで、スムーズな運用が可能になります。
固定ロケーション管理を導入するメリット
倉庫運営において、どのように商品を配置するかは作業の効率や精度を左右する重要な要素です。なかでも固定ロケーション管理は、一定のルールに基づいて商品を定位置に保管するため、現場の負担を減らしながら、ミスのない在庫管理を目指す手法として多くの現場で活用されています。
では、この管理方式を取り入れることで、どのようなメリットがあるのでしょうか?具体的なポイントを掘り下げていきます。
保管場所を一目で把握できる
どこに何があるのかが明確になり、探す手間が大幅に減るというのが、固定ロケーションの大きな利点です。あらかじめ決められた棚に商品を配置することで、スタッフは迷わずに作業を進められます。
たとえば、新しく入ったスタッフでも、「この商品はA-12の棚にある」と分かっていれば、ピッキングや補充作業に時間をかけずに対応できるようになります。商品ごとに場所が変わると、作業のたびに探し回る手間が増えますが、固定ロケーションならばその心配がありません。
また、商品の種類が多い倉庫でも、視覚的に管理しやすくなるのもポイントです。ラベルや色分けを活用することで、より直感的な運用が可能になるでしょう。
こんな倉庫に向いている
・取り扱う商品の種類が限られている場合に適しています。
・ピッキング作業のスピードを優先する現場に向いています。
・新人スタッフの定着率が低く、教育に時間をかけられない場合に有効です。
在庫数の把握が容易になる
倉庫管理では、どれくらいの在庫が残っているかを正確に把握することが欠かせません。固定ロケーション方式では、特定の商品が決まった棚にしか置かれないため、在庫の過不足を一目で確認しやすいというメリットがあります。
フリーロケーションでは、入庫のたびに違う棚に収納するため、システム上のデータを確認しなければ在庫状況が分かりません。その点、固定ロケーションなら、棚を見ただけで「この商品が減ってきている」と判断できるため、補充のタイミングを逃しにくくなります。
さらに、棚卸しの際にも効率的に在庫確認ができるのが特徴です。ロケーションが一定なので、「この棚には何があるはず」と分かっている状態でチェックができ、無駄な時間をかけずに精度の高い在庫管理が行えるでしょう。
在庫管理をスムーズにするポイント
・一定量を下回った際に補充のアラートが出る仕組みを整え、在庫切れを防ぎます。
・ピッキング作業と同時に在庫の確認を行うルールを作ります。
・週や月ごとに定期的な棚卸しを実施し、在庫データを正確に把握します。
大規模なシステムがなくても運用しやすい
倉庫管理をシステム化するのが一般的になりつつありますが、必ずしも高度なWMS(倉庫管理システム)を導入しなければならないわけではありません。固定ロケーション管理は、ルールさえ決めてしまえば、シンプルなツールやアナログな手法でも運用できます。
たとえば、小規模な倉庫や日用品を扱う事業では、表計算ソフト(ExcelやGoogleスプレッドシート)やホワイトボードを活用する方法でも十分機能します。
商品がいつも同じ場所にあるため、「この棚には何が置かれているのか」を一覧で管理するだけでも業務が成り立つのです。
もちろん、扱う商品が増えてくるとデータ管理の負担が増すため、一定の規模を超えたらバーコードスキャンやWMSの導入を検討すると、よりスムーズな運用ができるでしょう。
シンプルな管理手法でも対応できるケース
・SKU(品目数)が少なく、種類の入れ替えが少ない場合
・在庫の変動が大きくないため、手作業でも管理しやすい環境
・できるだけシステム投資のコストを抑えたい場合
スタッフ教育の負担を減らせる
物流倉庫では、アルバイトや派遣スタッフの入れ替わりが激しいケースも多く、新人教育にかかるコストや時間をいかに抑えるかが課題になります。その点、固定ロケーションならば、一度ルールを決めれば、新人が入ってもスムーズに作業に入れるというメリットがあります。
たとえば、フリーロケーションの倉庫では、「今日はこの棚、明日はあの棚」と商品が移動するため、スタッフはシステムを見ながら場所を探す必要があり、覚えるのに時間がかかります。
しかし、固定ロケーションなら、「Aゾーンの左端の棚にはこの商品がある」と最初から決まっているため、短期間で作業の流れを理解できるのです。
また、教育のためのマニュアル作成も簡単になります。ロケーションが変わらないので、以下のようなメリットがあります。
・商品の配置図を作れば、新人でもすぐに作業を覚えられる
・動画マニュアルやフロアマップを作成すれば、指導の手間を大幅に減らせる
人手不足が課題となる現場では、こうした教育コストの削減も大きなメリットとなるでしょう。
固定ロケーション管理のデメリット
固定ロケーションは、保管場所を明確にし、作業の効率を向上させる手法として多くの倉庫で採用されています。ただ、すべてのケースで最適とは限りません。どのような管理方法にも長所と短所があるように、固定ロケーションにも運用上の課題が存在します。
ここでは、運用時に気をつけるべきポイントと、それに対する対応策を考えていきましょう。
空きスペースが発生しやすく、保管効率が下がることがある
固定ロケーションでは、商品の置き場所が決まっているため、保管スペースが一定のまま変わりません。そのため、在庫量に変動があっても、設定された棚の広さは変わらず、使われない空間が生じることがあります。
たとえば、シーズンによって在庫数が大きく変わる商品を扱う場合、繁忙期にはスペースが足りず、閑散期には空きが目立つといった問題が発生しがちです。このムダなスペースが積み重なると、倉庫全体の収納効率が低下し、限られたスペースを有効に活用できなくなることもあります。
解決策:可変ロケーションとの併用を検討する
この課題に対応するために、一部の商品についてはフリーロケーションを導入するという方法が考えられます。
たとえば、売れ筋の商品は固定ロケーションで管理し、それ以外のアイテムは空きスペースを活用して柔軟に配置することで、収納効率を向上させることができます。
また、定期的にロケーションの使用率を分析し、必要に応じて棚割りを調整することも重要です。一定の間隔で見直しを行い、使用頻度の低い棚を縮小したり、ピッキング頻度の高い商品を優先的に配置することで、ムダを減らしながら効率的な管理ができるようになります。
定期的な棚割りが必要になり、見直しの手間がかかる
固定ロケーションでは、最初に決めた棚割りをそのまま使い続けることが基本ですが、商品の需要やラインナップが変わると、配置を変更する必要が出てきます。
たとえば、取り扱う商品が増えた場合、既存の棚に収まりきらなくなることがあります。その際、適切なスペースを確保するために棚割りの見直しが求められるのです。
また、時間が経つにつれて、一部のロケーションが作業しづらい配置になってしまうこともあります。効率を維持するためには、定期的に現場の動線や作業負担をチェックし、必要があれば再配置を行うことが求められます。
解決策:定期的なロケーション診断を行う
負担を減らすためには、定期的に棚割りの適正化を図る仕組みを作ることが大切です。具体的には、次のような方法が考えられます。
・半年ごとにロケーションの見直しを行う
倉庫の状況を分析し、使用頻度の低いスペースを見つけて再配置を検討します。
・ABC分析を活用してピッキング動線を最適化する
出荷頻度の高い商品を作業しやすい位置に配置し、効率的な動線を確保します。
・スタッフからの意見を定期的に取り入れる
実際に作業を行うスタッフの意見を聞き、使いづらい部分がないかを確認することで、実用性の高い改善が行えます。
このようなアプローチを取ることで、運用の手間を抑えつつ、倉庫全体の作業効率を維持できるでしょう。
在庫量の急変に対応しにくい
固定ロケーションでは、商品の置き場所が固定されているため、急激な在庫の増減に対応しづらいという問題があります。
たとえば、セールやイベントで一時的に需要が高まる商品がある場合、通常の固定棚だけでは十分な保管スペースを確保できないことがあります。逆に、閑散期に商品が減ったときは、使われないスペースが多くなり、効率が下がるという課題が発生します。
また、急な需要の変化に対応できずに補充が間に合わないと、ピッキング作業の混乱や、出荷遅れにつながるリスクも高まります。
・解決策:柔軟な運用ルールを取り入れる
この課題を解決するには、一時的な変動に対応できる仕組みを取り入れることがポイントです。
・繁忙期・閑散期に応じたロケーションの一時変更を検討
一部の商品については、繁忙期のみフリーロケーションを活用し、臨時のピッキングエリアを設置することで、スムーズに対応することができます。
・ピッキング専用のエリアを設け、柔軟に対応する
一時的な出荷増加に対応するため、専用の仮置きスペースを確保することで、急な変動にも対応しやすくなります。
・データを活用して需要予測を行い、事前に準備を整える
過去の販売データや出荷記録を分析し、どのタイミングでどの程度の増減があるのかを把握しておくことで、突発的な対応を減らせます。
このような仕組みを整えておけば、急な在庫の変動にも慌てずに対応でき、倉庫全体の効率を維持することができます。
固定ロケーションが有効に活きるシーン
倉庫の運営方法を決める際、固定ロケーション管理が適しているかどうかは、扱う商品や業務の特性によって異なります。この管理方式は、一律に適用するのではなく、特定の条件下で最大の効果を発揮するものです。
では、どのようなケースで固定ロケーションが活用しやすいのでしょうか?具体的な場面を見ていきましょう。
定番商品・リピート率の高い商品の保管に向いている
日常的に出荷される商品は、常に一定の場所に配置されている方がピッキング作業の効率が高まります。特に、売れ筋商品や定番品など、出荷頻度の高いアイテムは、ロケーションを固定することで作業のムダを削減できます。
たとえば、食品や医薬品、消耗品などは一定の需要があるため、スタッフが迷わずに作業できるように配置を決めておくことが理想的です。日常的に扱う商品は、頻繁に場所を変えるメリットが少なく、むしろ固定されたロケーションの方が出荷スピードの向上やミスの防止につながるでしょう。
固定ロケーションが有効な商品
・日常的に売れるアイテム(食品、日用品、消耗品)
・ECサイトで人気の高い商品
・定番の補充品(工場部品やメンテナンス用部材)
こうした商品は、特定の棚に配置することで、ピッキングスタッフの負担を軽減し、作業のスムーズ化を図ることができます。
SKU(品目数)が少ない倉庫の運用に適している
取扱商品が多岐にわたる倉庫では、フリーロケーションを活用することでスペースの最適化が求められることが多いですが、SKU(品目数)が少ない場合は、固定ロケーションの方が作業しやすいという特性があります。
たとえば、小規模な倉庫や特定のブランドの製品だけを取り扱う場合、ロケーションを固定しておけば、在庫の移動が少なく、整理もしやすくなります。また、スタッフもすぐに商品の場所を把握できるため、出荷作業の効率が安定しやすいという利点があります。
固定ロケーションが適している倉庫の特徴
・取扱商品の種類が少なく、頻繁な配置変更が不要な倉庫
・特定のブランドやメーカー専用の倉庫(例:アパレル、化粧品、工具)
・棚卸し作業をスムーズに進めたい倉庫
品目数が少ない倉庫では、ロケーションの管理に頭を悩ませる必要がないため、固定ロケーションを導入することで運用の手間を最小限に抑えられるのが大きな魅力です。
スタッフの入れ替わりが多い現場に適している
物流業界では、繁忙期ごとに新しいスタッフが増えることも珍しくありません。そのため、新人がすぐに作業を覚えられる環境を整えることが重要になります。
固定ロケーションを採用すると、「どこに何があるのか」を明確にできるため、新人でも短期間で作業を習得しやすくなります。ロケーションが固定されていれば、「この商品はA-5の棚にある」と決まっているため、場所を覚えるだけでピッキング作業を始めることができます。
逆に、フリーロケーションでは、システムを常に確認しながら作業しなければならないため、新人スタッフには負担が大きくなります。業務のスムーズな引き継ぎを考えると、教育コストを抑えられる点は固定ロケーションの大きなメリットといえます。
固定ロケーションが役立つ現場
・アルバイトや派遣スタッフの入れ替わりが多い倉庫
・短期間で即戦力になる人材を育成したい現場
・研修コストを削減し、現場教育をシンプルにしたい場合
特に、期間限定のスタッフが増えるEC倉庫などでは、固定ロケーションを活用することで、新人が作業を素早く習得できるため、教育担当者の負担も軽減されます。
固定ロケーション在庫を最適化する5つのポイント
固定ロケーションを導入すると、ピッキングの効率向上や在庫管理の安定化といったメリットがあります。しかし、ただロケーションを固定するだけでは、倉庫内のスペースを有効に使えなかったり、作業の負担が増えたりすることもあります。
そこで、より効果的に固定ロケーションを活用するための5つの改善策を紹介します。すでに運用している場合でも、適宜見直すことで、作業の効率がさらに向上するかもしれません。
ABC分析を活用し、定期的に棚割りを見直す
すべての商品を同じように扱うのではなく、出荷頻度によって優先順位をつけることが重要です。ABC分析を活用すると、商品を「よく出るもの」「普通の頻度で動くもの」「たまに出荷されるもの」に分類でき、適切なロケーション配置を考えやすくなります。
ABC分析とは?
在庫を「A」「B」「C」の3つのカテゴリに分け、それぞれの重要度に応じた配置を行う手法です。
・Aランク(高回転商品) → 倉庫内で最もアクセスしやすい場所に配置し、ピッキングの手間を最小限にします
・Bランク(中回転商品) → 作業の邪魔にならない位置にまとめ、必要に応じてピックできるようにします
・Cランク(低回転商品) → 倉庫の奥や上段など、スペースを圧迫しない位置で管理します
運用のポイント
・出荷データを定期的に分析し、商品ごとにランクを見直します
・Aランク商品は、ピッキングの負担が少ないエリアに優先的に配置します
・B・Cランク商品は、棚の奥や倉庫の端に移動し、スペースを確保します
このようにロケーションを定期的に調整することで、無駄な動きを減らし、よりスムーズな作業ができるようになります。
WMS(倉庫管理システム)を活用し、作業ミスを減らす
固定ロケーションを効果的に運用するには、管理の精度を高める仕組みが必要です。そのために、WMS(倉庫管理システム)を導入すると、在庫の見える化が進み、作業ミスを減らすことができます。
WMSでできること
・バーコードスキャンによる誤出荷の防止
・在庫のリアルタイム管理(欠品や過剰在庫を防ぐ)
・ロケーションの最適化(使用頻度の低い棚の入れ替えを効率化)
倉庫の規模が大きくなるほど、手作業での管理には限界があるため、システムの導入を検討する価値は十分にあります。
スタッフ教育の充実とマニュアルの整備
倉庫作業は、どれだけ分かりやすいルールを作るかによって、スタッフの習熟スピードが変わります。特に、固定ロケーションを導入する場合、ルールが明確であれば、作業のばらつきを抑えることができます。
運用のポイント
・ビジュアルマニュアルの作成(イラストや写真を活用し、視覚的に分かりやすくする)
・トレーニングの実施(システム操作や棚割りの基礎をしっかり教える)
・業務の標準化(ピッキング・補充作業のルールを決め、誰がやっても同じ手順でできるようにする)
これらを整えることで、新人スタッフでも短期間で作業を習得できる環境が作れるでしょう。
棚卸しを効率化し、在庫精度を向上させる
固定ロケーションを運用するメリットのひとつに、在庫チェックがしやすいことがあります。ただし、定期的な棚卸しを怠ると、誤差が生じてしまうため、定期的な見直しが必要です。
効果的な棚卸しの方法
・定期棚卸しのスケジュールを設定します(半年に1回、または四半期ごとなど)
・ピッキング時にスポット棚卸しを行います(作業の合間に在庫を確認し、ズレがないかチェック)
・バーコードスキャンを活用し、手作業での入力ミスを減らします
定期的な確認を行うことで、在庫精度を維持し、ロケーション管理の信頼性を高めることができます。
ロケーション管理の方法3選
倉庫の運用において、どのように商品を配置するかは、作業の効率を大きく左右します。固定ロケーションは多くの現場で活用されている管理手法ですが、すべての倉庫で最適な方法とは限りません。
商品の種類や在庫変動の頻度、作業の流れによっては、より柔軟なロケーション管理が求められるケースもあります。そこで、固定ロケーション以外の代表的な管理方式を含め、3つの選択肢を紹介します。それぞれの特徴を理解し、自社の倉庫運用に適した方法を見つけていきましょう。
1. 固定ロケーション管理:安定した運用に向いた方式
決められた棚に、特定の商品を配置する方法です。これまで紹介してきたように、出荷頻度の高い商品や、一定の在庫数を維持するアイテムに適した管理手法といえます。
特徴
・ピッキングミスを防ぎやすいです
・人スタッフでもすぐに作業を覚えられます
・在庫状況を一目で把握できるようになります
固定ロケーションのメリットは、何といっても「どこに何があるか」が明確になることです。そのため、ピッキング作業の精度が向上し、誤出荷を減らす効果も期待できます。
しかし、デメリットとして、棚割りを固定しているため、スペースの有効活用が難しくなることが挙げられます。季節商品や流動的な在庫を多く抱える倉庫では、柔軟なレイアウト変更が求められる場合もあるでしょう。
2. フリーロケーション管理:柔軟なレイアウトで対応
固定ロケーションとは異なり、商品ごとに決められた棚を持たず、その都度空いているスペースに配置する方式です。倉庫内のレイアウトを柔軟に変更できるため、在庫の増減が大きい商品を扱う場合に向いています。
特徴
・スペースを有効活用できる
・在庫の増減に柔軟に対応しやすい
・需要の変化に合わせたレイアウト変更が容易
この方式は、SKU数(品目数)が多く、商品ごとの在庫数が大きく変動する倉庫で特に有効です。たとえば、シーズンごとに品揃えが変わるアパレルや、短期間で売れ行きが変わるEC倉庫などが挙げられます。
ただし、どこに何があるのかを把握するためのシステムが必須になります。ピッキング時に都度ロケーションを確認しなければならないため、WMS(倉庫管理システム)やバーコードスキャンの導入が欠かせません。
フリーロケーションが適しているケース
・SKUが多く、保管スペースを最大限に活用したい倉庫
・季節商品やキャンペーン商品を頻繁に扱う現場
・システム化が進んでおり、デジタル管理が可能な環境
3. ハイブリッド方式(ダブルトランザクション含む):固定とフリーを組み合わせた管理手法
固定ロケーションとフリーロケーションのメリットを組み合わせた管理方式が、このハイブリッド型の手法です。
たとえば、出荷頻度の高い定番商品は固定ロケーションで管理し、在庫の変動が大きい商品はフリーロケーションを活用する、といった運用が考えられます。これにより、ピッキング作業の効率を維持しつつ、スペースの最適化も図ることができます。
また、ダブルトランザクション方式を取り入れることで、保管とピッキングエリアを分けて運用する方法もあります。
特徴
・スペースを有効に活用しつつ、ピッキングの精度も維持できる
・商品ごとの特性に応じた最適な管理が可能
・出荷頻度が異なる商品をバランスよく配置できる
具体的な活用例
・定番商品(売れ筋) → 固定ロケーションで管理し、作業の負担を軽減する
・在庫変動が大きい商品 → フリーロケーションで柔軟に配置を調整する
・ピッキングと補充を分ける → 保管エリアとピッキングエリアを別にすることで、作業動線を改善する
この方式を導入すると、倉庫内の状況に合わせた柔軟な運用が可能になります。ただし、適切な管理を行わなければ、オペレーションが複雑になり、スタッフが混乱するリスクもあるため、明確なルールを設定することが重要です。
ロケーション管理に役立つツールと機器
倉庫のロケーション管理を効率的に運用するには、適切なツールや機器の活用が欠かせません。
特に、大量の商品を扱う倉庫や、在庫の流動性が高い現場では、デジタル技術を活用することで作業ミスを減らし、業務の効率を大幅に向上させることができます。
ここでは、ロケーション管理に役立つ代表的なツールや機器を紹介します。
1. バーコードやQRコードを活用したスキャンシステム
商品や棚の管理を手作業で行うと、ピッキングや補充時のミスが発生しやすくなります。そこで有効なのが、バーコードやQRコードを活用したスキャンシステムです。
特徴とメリット
・ロケーションと商品情報を迅速に紐づけできる
・ヒューマンエラーを大幅に削減
・在庫移動や補充の記録をリアルタイムで更新
このシステムでは、棚や商品ごとにバーコードやQRコードを割り当て、スキャナーやスマートフォンを使って簡単に情報を登録・確認できます。
たとえば、ピッキング時に商品とロケーションをスキャンすることで、誤出荷を防ぎ、在庫状況の管理精度を向上させることが可能です。
また、倉庫管理システム(WMS)と連携することで、リアルタイムで在庫の更新が行え、作業の効率化が期待できます。
導入が適しているケース
・ピッキングミスを減らしたい倉庫
・商品の入出庫管理を正確に行いたい現場
・手作業によるデータ入力を減らしたい企業
2. RPAツール・自動化ツールで定型業務を効率化
ロケーション管理において、データ入力や発注処理、棚卸し作業などの定型業務は、意外と時間がかかるものです。これらの業務を効率化するために、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツールを導入すると、手作業による負担を大幅に軽減できます。
RPAとは?
RPAとは、事務作業を自動で処理するソフトウェアのことです。具体的には、次のような業務を自動化できます。
・在庫データの更新(商品の移動や補充の記録を自動で入力)
・発注処理の自動化(在庫が一定数以下になったら自動で発注)
・帳票の作成(入出庫データを基にレポートを自動生成)
導入のメリット
・手作業によるミスを防げます
・スタッフの負担を軽減し、より重要な業務に集中できます
・処理スピードが向上し、作業時間を短縮できます
たとえば、ある倉庫では、棚卸しのデータ入力をRPAで自動化したことで、作業時間が30%以上削減されたという事例もあります。
このように、定型業務を自動化することで、人手不足の解消や作業の標準化にもつながるでしょう。
導入が適しているケース
・人手不足に悩んでいる倉庫
・データ入力や管理業務の負担を減らしたい企業
・属人化している業務を標準化したい現場
3. AI需要予測ツールを活用し、ロケーション管理を最適化する
倉庫のロケーション管理において、適切な棚割りや在庫配置を決めるには、需要予測の精度が重要です。
AI需要予測ツールを導入すると、過去の販売データや市場の動向を分析し、どの商品がいつ・どれくらい必要になるかを予測することができます。
例えば、過去のデータを分析した結果、特定の時期に特定の商品が急激に売れることが分かれば、あらかじめ棚のレイアウトを最適化することが可能です。
また、AIを活用することで、人間の勘や経験に頼らずに、データに基づいた倉庫運営ができるようになります。
導入のメリット
・在庫切れや過剰在庫のリスクを減らせる可能性があります
・倉庫のスペースをより効率的に活用できる可能性があります
・人の判断に依存せず、データをもとにロケーションを最適化できます
導入が適しているケース
・在庫変動の激しい業界(アパレル、食品、ECなど)
・倉庫スペースをより効率的に使いたい企業
・シーズンごとの売上変動が大きい商品を扱う現場
まとめ
ロケーション管理は、倉庫の作業効率や在庫精度を向上させる重要な手法です。固定ロケーションは、商品と棚を一対一で紐づけることで、ピッキングのスピードや在庫確認のしやすさが向上します。一方で、スペースの無駄や在庫変動への対応が課題となるため、フリーロケーションやハイブリッド方式と組み合わせることで、柔軟な運用が可能になります。
また、バーコードスキャンやAI需要予測、RPAツールなどを活用することで、ヒューマンエラーを減らし、管理の精度を高めることができます。倉庫の規模や取り扱い商品に応じて適切な管理手法を選択し、効率的な運営を目指しましょう。