ハンディピッキング
ハンディピッキングは、物流倉庫や工場でハンディターミナルを使い、商品や部品を手動でピッキングする作業方式です。
ここでは、ハンディピッキングの注目される理由や導入手順、効果、課題と対策を解説させていただきます。
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パンディピッキングとは?
ハンディピッキングとは、主に物流倉庫や工場などにおいて、作業者がハンディターミナル(バーコードリーダー付きの携帯端末など)を手に持ち、商品や部品を手動でピッキング(取り出し・集品)する作業方式を指します。ピッキングは物流業務の中でも重要な工程であり、誤出荷防止や作業効率向上のためにさまざまな方式やテクノロジーが導入されています。その中で、ハンディピッキングは比較的導入コストが低く、操作もシンプルであることから、多くの現場で広く採用されています。
デジタルトランスフォーメーション(DX)が進む昨今、ピッキング工程にもIoT機器やAIの導入が進み始めています。ただし、完全な自動化は設備投資が高額になりがちで、また商品の形状や取り扱いの難易度によっては、人間の手作業が依然として不可欠なケースも少なくありません。そうした現場では、ハンディターミナルを用いて商品情報を読み取りながら作業を進めるハンディピッキングが、DXを支える効率的な方法として注目されています。
パンディピッキングが注目される理由
1. 導入コストの低さ
自動倉庫やロボットアームなどによる完全自動化と比べると、ハンディピッキングのために必要な機器はハンディターミナルやバーコードリーダー、無線LAN環境など、比較的シンプルです。そのため、初期投資コストが小さく、スモールスタートしやすい点がメリットといえます。
2. 作業者の柔軟性
商品の種類が多岐にわたる場合や、流動的に商品や荷物が変動する現場では、人の目と手を使った柔軟なピッキング作業が求められます。ハンディピッキングは、バーコードやQRコードなどを素早く読み取ってリアルタイムで情報を確認できるため、作業者の経験や勘だけに頼らず、一定の正確さを確保しながら効率よく作業できます。
3. ステータス管理・追跡が容易
ハンディターミナルにより、ピッキングするタイミングで都度データをシステムに送信できるため、在庫管理や出荷ステータスのリアルタイム管理が容易になります。クラウドシステムと連携することで、別の拠点からも在庫状況の把握や分析が可能になるなど、DX時代に求められる可視化が実現しやすくなります。
4. 操作の習得ハードルが低い
モバイル端末の操作に慣れていれば、ハンディターミナルの操作も直感的に理解しやすいケースが多いです。作業者のトレーニング時間が短くて済む点は、労働力不足が課題となっている物流業界において大きな利点となります。
ハンディピッキングの導入手順
1. 現状分析と課題抽出
まずは現状の倉庫や工場のピッキング作業フローを可視化し、作業時間、エラー率、在庫管理の精度などを洗い出します。DX推進の一環として、どの部分にテクノロジーの力を活用すれば最大効果が得られるかを検討するのが重要です。
2. 必要機器・システムの選定
ハンディターミナルは、バーコードリーダーが搭載されたものや、通信方式がWi-FiかLTEかなど、各社さまざまなモデルがあります。システム側もクラウド型の在庫管理システムを導入するのか、既存の基幹システムと連携するのかといった選定が必要です。扱う商品によってはラベルやバーコードの貼り方、読み取りやすさなども検討材料に含まれます。
3. 導入試験とリハーサル
実運用の前に、少数の端末と限られた導線でテスト運用を行います。エラー発生時の対処フローや、端末のバッテリー持続時間、作業者の端末操作負荷を確認し、必要に応じてシステムの微調整を行いましょう。
4. 作業者への教育
ハンディターミナルの基本的な操作手順だけでなく、万が一トラブルが起きたときの対処方法などを教示する必要があります。併せて、作業手順書やマニュアルを整備し、誰でも同じレベルの品質を担保できるようにすることが肝心です。
5. 本格運用と継続的な改善
本格的に導入を開始した後も、定期的にエラー率やピッキング速度、在庫差異などの指標をモニタリングし、継続的に運用を最適化していくことが重要です。また、必要に応じて最新のハンディターミナルへの機種変更、ソフトウェアのアップデートなどを行いましょう。
ハンディピッキングがもたらす効果
1. 誤出荷リスクの低減
バーコードやQRコードを読み込んで商品情報を画面上で確認するため、ピッキングミスが起きづらくなります。特に類似品が多い現場や、品番が長い製品を扱う場合に有効です。
2. 作業スピードの向上
作業者がいちいち商品ラベルを目視確認する手間が減り、ピッキングの指示画面を見ながら素早く商品を特定できます。これにより、ピーク時の出荷や短納期対応の要求にも柔軟に対応可能となります。
3. 在庫管理の精度向上
リアルタイムで在庫数が更新されるため、帳簿在庫と実在庫のずれを最小限に抑えられます。その結果、欠品や過剰在庫などのリスク管理もしやすくなり、サプライチェーン全体の安定運用につながります。
4. 働きやすい職場環境の構築
シンプルな操作で作業を進められるようになると、作業者の負担が軽減され、ミスへの不安も減少します。業務効率の向上は労働環境の改善にもつながり、人手不足の解消や離職率の低下といった効果も期待できます。
ハンディピッキング導入時の課題と対策
通信環境の設備
倉庫内は電波が届きにくい箇所も多いため、Wi-Fiやモバイル通信の電波状況を改善する必要があります。必要に応じてアクセスポイントを増設し、安定したデータ通信を実現しましょう。
デバイス管理とセキュリティ
ハンディターミナルが故障したり、紛失した場合のリスク管理が必要です。端末のMDM(Mobile Device Management)ツールなどを導入し、不正アクセスの防止や遠隔ロックができる環境を整備することが望ましいです。
作業者の抵抗感
新しいテクノロジーの導入に対して、現場作業者が慣れや知識の不足から抵抗感を示す場合があります。導入前に説明会や試用期間を設け、メリットを十分に理解してもらうことで、円滑な移行が可能となります。
設備・システムの更新時期との兼ね合い
ハンディターミナル自体の耐用年数や、連携するシステムのバージョンアップ状況も考慮しなければなりません。大掛かりなシステム更新が予定されている時期とタイミングを合わせることで、余計なコストがかからずスムーズに運用できます。
まとめ
ハンディピッキングは、物流や製造の現場で比較的低コストかつ高い柔軟性を持ち、DX時代においても依然として有効なピッキング方式です。バーコードやQRコードを利用して誤出荷を防止し、在庫や出荷ステータスをリアルタイムで管理できるメリットは、企業の競争力強化にも大きく寄与します。
今後はIoTやAI、ARなどのテクノロジーと融合し、さらに高度な作業支援が可能となることが予想されます。完全自動化が進む一方で、人の手作業が必要な場面も多い業界において、ハンディピッキングは導入しやすく確実に成果を得られるDX施策として、多くの企業からの注目を集め続けるでしょう。