日常の買い物やオンラインショップで、ふと気になることはありませんか?商品のパッケージに印刷されたバーコードを見て、「この数字にはどんな意味があるのだろう?」と思ったことがある人もいるでしょう。あるいは、JANコードという言葉を耳にしたことはあるものの、バーコードとどう違うのか、いまいちピンとこないという方も多いかもしれません。
バーコードは、さまざまな業界で欠かせない存在になっています。レジでの精算や物流の管理はもちろん、最近ではスマートフォンを使った商品検索や価格比較にも活用されるようになりました。その中でも、日本で広く使われているのが「JANコード」です。ただ、JANコードもバーコードの一種でありながら、実は細かいルールや特徴があります。そうした違いを理解することで、普段の買い物やビジネスにおける活用の幅が広がるかもしれません。
ここでは、バーコードとJANコードの違いを整理しながら、それぞれの特徴や仕組み、さらには活用のポイントまで掘り下げていきます。「そもそもJANコードとは?」「なぜバーコードには種類があるのか?」「QRコードとはどう違うのか?」といった疑問に答えながら、実生活や仕事の中で役立つ視点を提供できればと思います。
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JANコードという名称自体が何を意味しているのかを押さえておきましょう。JAN(Japanese Article Number)は、日本で広く流通している商品に付与される識別コードです。JANコードはバーコードの一種ですが、単なる数字の羅列ではなく、一定のルールに基づいて構成されています。
たとえば、コンビニやスーパーで商品を購入する際、レジでピッという音とともに価格や商品名が表示されるのは、このコードが瞬時にデータベースと照合されるからです。つまり、JANコードは「商品を正確に識別し、スムーズに情報を管理するための仕組み」と言えます。
一般的なJANコードは13桁で構成されており、一部の小型商品では8桁の短縮版も存在します。これらの数字には、それぞれ意味があり、単なるランダムな並びではありません。コードの中には、企業ごとに割り当てられた番号や、個別の商品を特定するための番号などが含まれています。
バーコードと一言でいっても、その種類は多岐にわたります。一般的に「バーコード」と聞くと、黒と白の縞模様を思い浮かべるかもしれませんが、それがすべてではありません。一次元コード、二次元コード(QRコードなど)、物流向けのコードなど、用途ごとにさまざまな形式が存在します。
その中でJANコードは、小売業や流通業界に特化した標準規格のひとつです。海外ではEANコード(European Article Number)と呼ばれることもありますが、基本的には同じ体系のコードです。
では、JANコードが果たしている役割とは何でしょうか?
バーコードの種類 | 特徴 | 主な用途 |
---|---|---|
JANコード | 小売向け、13桁または8桁 | 商品識別、レジでの価格管理 |
UPCコード | 北米向けの標準コード | 米国・カナダでの商品流通 |
ITFコード | ダンボール単位での管理に使用 | 物流・倉庫管理 |
QRコード | 二次元コード、情報量が多い | ウェブリンク、会員認証 |
Code128 | 文字列もエンコードできる | 製造業、在庫管理 |
このように、JANコードは主に小売向けに使われているのが特徴です。
ECサイトの商品ページでJANコードが掲載されているのを見たことがあるかもしれません。これは、JANコードを活用することで、同じ商品が異なるショップでどのような価格で販売されているのかを簡単に比較できるためです。Amazonや楽天市場などのオンラインストアでは、JANコードを登録することで商品データの一元管理がしやすくなっています。
また、メーカーや卸業者にとってもJANコードは欠かせません。JANコードがあることで、全国のどの店舗に商品が並んでいても、レジでスムーズに処理できるようになります。逆に、JANコードがないと大手流通チェーンに商品を卸すことが難しくなるケースもあるため、特に販売ルートを拡大したい企業にとっては重要なポイントとなります。
普段意識することは少ないかもしれませんが、JANコードは消費者・事業者の双方にとって重要な役割を持っています。では、具体的にどのような場面でJANコードの知識が役立つのでしょうか?
消費者にとってのメリット
・価格比較が簡単にできる
ネットショッピングをする際、JANコードを使って検索すれば、異なる店舗で同じ商品がいくらで売られているのかが一目でわかります。
・偽物を避けるための判断材料になる
正規品にはJANコードが付与されていますが、偽物には存在しないことが多いため、購入前の確認ポイントとして活用できます。
・スマートフォンでの商品検索が便利
バーコードスキャンアプリを使えば、商品をカメラで撮影するだけでJANコードを読み取り、詳細情報をチェックすることができます。
事業者にとってのメリット
・スムーズな在庫管理と流通の効率化
JANコードを活用すれば、商品の入出荷をデジタル管理できるため、人的ミスを減らしながら業務をスムーズに進められます。
・大手流通・ECサイトとの連携がしやすい
Amazonや楽天などのプラットフォームでは、JANコードが商品登録の必須条件となっていることも多く、販売チャネルを広げるうえで欠かせません。
・POSシステムとの連携で販売データを活用できる
スーパーやドラッグストアなどの小売店では、POSレジで売上データを収集し、需要予測や発注管理に役立てています。JANコードがあることで、商品ごとの販売状況を正確に把握し、売れ筋商品の分析がしやすくなります。
このように、JANコードを理解することは、単に商品の「識別番号を知る」ということにとどまりません。消費者の購買行動から、企業の流通管理、さらにはオンラインショップの展開まで、幅広いシーンで役立つツールであることがわかります。
少し前まで、JANコードは企業が利用するものという印象が強かったかもしれません。しかし、スマートフォンの普及やEC市場の拡大に伴い、消費者にとってもその重要性が増してきています。今後も、JANコードがどのように活用されていくのか、その変化を追っていくのも面白いかもしれません。
買い物中に「この商品、もっと安く買えないだろうか?」と思ったことはありませんか?あるいは、「今、目の前にある商品は本当に正規品なのか?」と気になった経験があるかもしれません。そんなときに役立つのが、バーコードを使った商品検索です。
スマートフォンや専用のスキャナーを使えば、簡単に商品情報をチェックできる時代になりました。スーパーやコンビニのレジで見かけるバーコードスキャンも、その一例です。最近では、一般の消費者もスマホアプリを活用し、価格の比較や口コミのチェックを手軽に行うことが増えてきました。
ここでは、バーコードを使った商品情報の調べ方を紹介しながら、日常の買い物やビジネスでの活用方法を掘り下げていきます。
バーコードリーダーで商品情報を調べる方法
まず、店舗や業務用の環境でよく使われる方法として、専用のバーコードリーダーがあります。これは、スーパーマーケットやドラッグストアのレジで見かける光学式スキャナーのことです。
バーコードリーダーの基本的な仕組み
バーコードリーダーは、光を使って白と黒の線のパターンを読み取り、それをデータとして解析する仕組みになっています。レーザー式やCCD(光学センサー)方式など、種類はいくつかありますが、目的は同じで、バーコードに記録された数字を正確に読み取ることです。
主な活用シーン
・レジ会計:商品をスキャンすることで、瞬時に価格や品名が表示されます。
・在庫管理:倉庫での出荷・入荷時にバーコードを読み取ることで、管理システムにデータを登録できます。
・流通・物流:配送センターなどで、どの商品がどこへ送られるのかを追跡できます。
このように、バーコードリーダーは企業や店舗側が効率的に業務を進めるために不可欠なツールとなっています。ただし、消費者が日常的に使う機会は少なく、多くの場合は次に紹介するスマートフォンを活用した方法が主流になっています。
スマホでできるバーコード検索の手順
今では、バーコードリーダーがなくてもスマートフォンを使って簡単に商品情報を調べることができます。スマホのカメラ機能を利用してバーコードを読み取れば、すぐに商品データを確認できるため、買い物中に役立つ場面が増えています。
スマホでのバーコード検索の流れ
1. バーコードスキャン対応のアプリをインストール
GoogleレンズやAmazonショッピングアプリなど、バーコード検索ができるアプリを用意する。
2. アプリを起動し、カメラでバーコードを読み取る
バーコードをフレーム内に収めると、自動でスキャンが始まる。
3. 商品の詳細情報が表示される
価格、販売店舗、口コミなどが確認できる。アプリによっては、同じJANコードの商品を扱っている店舗一覧が出ることもある。
4. 価格比較や口コミをチェック
ネットショップの最安値や、他の購入者のレビューを参考にできる。
この方法を使えば、買い物中でも気になる商品の最安値を調べたり、店舗では見つからなかった口コミを即座に確認したりすることができます。特に、高額な家電製品やコスメなどは、購入前にしっかりと情報収集をしたい場面が多いため、スマホでのバーコード検索が非常に便利です。
バーコード検索ができるアプリは数多くありますが、それぞれ特徴が異なります。ここでは、使いやすさや対応する機能を考慮しながら、利用価値が高いアプリを5つ紹介します。
① Googleレンズ
特徴:Googleの画像検索機能の一部として利用できます。カメラを向けるだけでバーコードをスキャンし、検索結果を表示できます。
おすすめポイント:アプリを追加でインストールする必要がなく、Android端末なら標準機能として利用できます。
② Amazon ショッピングアプリ
特徴:Amazon内の商品をすぐに検索できます。バーコードを読み取ると、その商品がAmazonで販売されているかどうかがすぐにわかります。
おすすめポイント:Amazonの価格と他店の価格を比較しやすいです。
③ 楽天市場アプリ
特徴:楽天市場で販売されている商品のバーコード検索ができます。ポイント還元を考慮しながら、お得な買い物ができます。
おすすめポイント:楽天ポイントを貯めたい人におすすめです。
④ ショッピングリサーチャー
特徴:複数のECサイトの価格比較ができます。バーコードをスキャンすると、Amazon・楽天・Yahoo!ショッピングなどの最安値が一覧表示されます。
おすすめポイント:一つのアプリで複数の通販サイトの情報をチェックできます。
⑤ バーコードスキャナー(Barcode Scanner)
特徴:シンプルなバーコード・QRコードリーダーです。価格比較よりも、純粋にバーコードの内容を知りたいときに便利です。
おすすめポイント:余計な機能がなく、動作が軽いのが特徴です。
バーコードと聞くと、どれも似たようなものだと感じるかもしれません。しかし、実際には用途や規格によって異なる種類があり、JANコードはその中の一つに過ぎません。スーパーやドラッグストアのレジで見かけるもの、物流業界で使われるもの、さらには航空業界の貨物管理に用いられるものまで、さまざまなバーコードが存在します。
では、JANコードは他のバーコードと何が違うのか?なぜ日本で広く使われているのか?ここでは、JANコードの特徴を整理しながら、一般的なバーコードとの違いを見ていきます。
JANコードは日本向けバーコード
JANコードという名前を聞くと、「日本でしか使えないコードなのでは?」と思うかもしれません。しかし、実際には国際規格の一部であり、日本独自のシステムではありません。
JANコードは、EANコード(European Article Number)と同じ体系のコードです。EANコードは、ヨーロッパを中心に流通業界で広く使われている商品識別コードですが、日本では「JANコード」という名称で普及しました。つまり、JANコードとEANコードはほぼ同じものであり、JANコードが付与された商品は、海外でもEANコードとして認識される仕組みになっています。
では、なぜ日本では「JANコード」と呼ばれるようになったのでしょうか?それは、日本国内での統一規格として定められたためです。1980年代に、国内の流通業界でバーコードの標準化が進められた際、EANコードをベースにした規格が導入され、それが「JANコード」として定着しました。
このように、日本国内での利用が中心ではあるものの、実際には国際規格の一部として機能しているため、JANコードが付与された商品は海外市場でも流通しやすいというメリットがあります。
JANコードの生成プロセス
JANコードは、単なるランダムな数字の羅列ではなく、一定のルールに基づいて構成されています。これには、商品の識別だけでなく、メーカーや流通業者の管理を効率化する意図があります。
JANコードの基本構造
一般的なJANコード(13桁)の内訳は、次のようになっています。
桁数 | 内容 | 説明 |
---|---|---|
1~2桁目 | 国コード | 日本は「45」または「49」 |
3~7桁目 | 企業コード | 各メーカーや小売業者に割り当てられる |
8~12桁目 | 商品コード | 企業が自社の商品ごとに設定 |
13桁目 | チェックデジット | 入力ミスを防ぐための検証用の数字 |
この仕組みによって、どの企業の、どの商品なのかを瞬時に判別できるようになっています。
JANコードの取得方法
企業がJANコードを使うには、まず「GS1 Japan(一般財団法人流通システム開発センター)」に登録し、企業コードを取得する必要があります。その後、取得した企業コードをもとに、自社の商品ごとに固有の番号を割り当てることで、JANコードが完成します。
一度JANコードを発行すれば、流通システムに登録され、全国の小売店やオンラインショップで統一的に管理されるため、ビジネスの効率化につながります。ただし、企業ごとに発行できるJANコードの数には上限があるため、新商品が増えすぎると追加の登録が必要になります。
このように、JANコードは単なる「番号」ではなく、商品の流通を円滑にするための識別システムとして機能しているのです。
バーコードが使われる具体的なシーン
バーコードは、さまざまな業界で活用されています。JANコードが小売業やECサイトを中心に使われる一方で、他のバーコードは、物流や医療、製造業など幅広い分野で採用されています。
① 小売・ECサイトでの利用
スーパーやコンビニでは、レジでスキャンすることで瞬時に商品名や価格を呼び出せます。また、ECサイトではJANコードを使って、同じ商品を異なる店舗で登録・管理できるようになっています。たとえば、Amazonや楽天市場では、JANコードが登録されている商品は検索にヒットしやすくなるため、オンライン販売においても重要な役割を果たします。
② 物流・倉庫管理
JANコードだけではなく、「ITFコード」や「GS1-128コード」などが倉庫や配送センターで使われています。これらのコードをパレットや箱に印刷することで、商品の流れを一元管理し、在庫の追跡や誤配送の防止に役立てられています。
③ 医療業界での活用
病院では、医薬品や医療機器の管理にバーコードが使われています。たとえば、薬の箱にバーコードを印刷し、患者への投薬時にスキャンすることで、誤投薬を防ぐ仕組みが整えられています。
④ 製造業でのトレーサビリティ管理
工場では、部品ごとにバーコードを付与し、組み立て過程の管理を行います。これにより、どの部品がどの製品に使われたのかを記録できるため、リコール対応時にも迅速に追跡できるようになります。
日常のあらゆるシーンでバーコードを目にするようになりましたが、最近では「二次元コード」も急速に普及しています。飲食店のメニュー注文、キャッシュレス決済、イベントの電子チケットなど、スマートフォン一つで簡単に情報を取得できる仕組みが広がっています。その代表格がQRコードです。
一方で、スーパーやコンビニのレジでスキャンされるJANコードは、これまでの小売流通の標準として使われ続けています。この二つのコードにはどのような違いがあるのでしょうか?ここでは、二次元コードの特徴を整理しながら、JANコードとの使い分けや、今後の展開について考えていきます。
二次元バーコード(QRコード)の特徴
QRコードは、1994年に日本の企業が開発した二次元バーコードの一種です。従来のJANコードなどの一次元バーコードが横方向のみに情報を記録するのに対し、QRコードは縦と横の両方向にデータを格納できるため、より多くの情報を扱えます。
QRコードの特長
・情報量が圧倒的に多い
JANコードが最大13桁の数字しか扱えないのに対し、QRコードは数千文字のデータを記録できます。そのため、URLやテキスト、連絡先情報など、多様な情報を埋め込めるのが強みです。
・スマートフォンで簡単に読み取れる
専用のバーコードリーダーが必要なJANコードと異なり、QRコードはスマートフォンのカメラアプリだけでスキャンできるため、消費者にとって扱いやすい形式です。
・デザインの自由度が高い
従来のバーコードはモノクロのシンプルなデザインですが、QRコードはカラーやロゴを組み込んだカスタマイズがしやすく、ブランド戦略にも活用されています。
・汚れや傷に強い
QRコードは「誤り訂正機能」を備えているため、多少の汚れや破損があっても読み取れる仕組みになっています。これにより、屋外ポスターや食品パッケージなど、多少の劣化が考えられる場面でも活用しやすくなっています。
こうした特徴を活かし、QRコードは決済、マーケティング、イベント管理、物流管理など、多岐にわたる用途で利用されるようになりました。
JANコードとQRコードの使い分けポイント
JANコードとQRコードは、どちらも商品やサービスの管理に使われていますが、目的や使い方が大きく異なります。
JANコードの主な用途
・小売業での商品識別:レジでの価格管理、在庫管理
・ECサイトでの商品データ管理:Amazonや楽天市場の出品情報と紐づけ
・流通管理:物流センターや倉庫での追跡
JANコードの役割は、**「商品を正しく識別し、流通を円滑にすること」**です。単純な識別情報をシンプルな形式で管理できるため、スピードと正確性が求められる小売業界には欠かせません。
QRコードの主な用途
・キャッシュレス決済(PayPay、LINE Payなど)
・デジタルマーケティング(ウェブサイトへの誘導、クーポン配布)
・イベント管理(電子チケット、チェックイン)
・食品・医薬品のトレーサビリティ(原材料情報の確認)
QRコードは、情報の密度が高いため、**「商品データに加えて、追加情報を提供したいとき」**に向いています。たとえば、商品パッケージにQRコードを印刷し、スキャンすると詳細な成分情報や生産者のストーリーを表示する、といった活用が進んでいます。
今後さらに増える二次元コードの可能性
QRコードをはじめとする二次元コードは、今後さらに普及し、新たな分野での活用が期待されています。いくつかのトレンドを紹介します。
① デジタル決済のさらなる普及
キャッシュレス化が進む中で、QRコード決済は店舗・消費者双方にとって使いやすいシステムとして定着しつつあります。スマートフォンさえあれば決済ができるため、現金やカード不要の時代が本格化するかもしれません。
② 製品トレーサビリティの強化
消費者の間で食品や医薬品の安全性への関心が高まる中、QRコードを使ったトレーサビリティが進んでいます。たとえば、農産物のパッケージにQRコードを印刷し、スキャンすると生産地や農家の情報が確認できるといった活用が増えています。
③ 紙の削減とエコへの貢献
取扱説明書や保証書の代わりに、QRコードを印刷し、スマホでアクセスできるようにする企業も増えてきました。これにより、紙の消費量を減らし、環境負荷の軽減につながると期待されています。
④ AR・VRとの連携
QRコードをスキャンすると、拡張現実(AR)や仮想現実(VR)のコンテンツが表示される技術も進化しています。これにより、商品パッケージにQRコードを付けて、3Dモデルや動画を表示するといった新しいマーケティング手法が生まれています。
普段目にするバーコードは、一見どれも同じように見えるかもしれません。しかし、国や業界ごとに適した規格が存在し、それぞれ異なる役割を持っています。小売店のレジで使われるものもあれば、物流や医療の現場で欠かせないものもあります。
なぜ国ごとに異なる規格が生まれたのか?また、日本で一般的なJANコードは、国際的にどのような位置づけなのか?ここでは、代表的なバーコードの特徴と、それぞれの違いを整理しながら、グローバル市場での活用方法について考えていきます。
世界の小売業や物流で広く使われているバーコードの中でも、特に代表的な5つの規格を紹介します。
① UPC(Universal Product Code)
主な用途:北米の小売業
UPCコードは、アメリカやカナダの小売業で標準的に使われているバーコードです。1970年代に米国で開発され、特に食品や日用品の識別用として普及しました。一般的には12桁の数字で構成されており、日本のJANコードと同じく、商品ごとに固有の番号が割り当てられています。
② EAN(European Article Number)
主な用途:ヨーロッパを中心に国際的に流通
EANコードは、欧州で開発されたバーコード規格で、UPCを基にして作られました。EANの標準形式は13桁ですが、実は日本のJANコードもこのEAN規格の一部です。そのため、EANコードが流通している国々(欧州・アジア・オセアニアなど)では、JANコードも問題なく利用できます。
③ ITF(Interleaved Two of Five)
主な用途:物流・倉庫管理
ITFコードは、段ボール箱や物流パレットなど、輸送単位での商品管理に適したバーコードです。JANコードやEANコードが商品単体に割り当てられるのに対し、ITFコードは出荷単位で使われます。そのため、読み取りミスを防ぐために、印刷の視認性が高い「太めのバーコード」が特徴的です。
④ GS1-128(旧称:UCC/EAN-128)
主な用途:物流・医療・製造業
GS1-128は、商品管理だけでなく、有効期限やロット番号などの追加情報を含められるバーコードです。医薬品や食品のトレーサビリティ(追跡管理)にも活用されており、JANコードやEANコードと連携して使われることが多いのが特徴です。
⑤ QRコード(Quick Response Code)
主な用途:決済・マーケティング・認証管理
QRコードは、一次元バーコードに比べて格納できる情報量が多く、スマートフォンとの相性が良いことから、近年急速に普及しています。決済サービスやチケット認証、キャンペーンなど、さまざまな分野で活用されており、小売業でも利用シーンが拡大しています。
欧米との比較でわかるJANコードのメリット
日本のJANコードはEANコードの一部であるため、海外市場でも比較的スムーズに利用できるという利点があります。しかし、国や地域によってUPCやITFなど異なる規格が主流になっているため、輸出や海外進出を考える場合は、それぞれの特徴を把握しておくことが重要です。
JANコードの強み
・EANコードと互換性があるため、欧州・アジア市場でも使いやすいです。
・日本国内の小売業では事実上の標準規格になっています。
・ECサイト(Amazon、楽天市場など)でも広く活用されています。
UPCとの違い
UPCとJANコードは非常に似ていますが、以下のような違いがあります。
項目 | UPCコード(北米) | JANコード(日本・国際) |
---|---|---|
桁数 | 12桁 | 13桁 |
主な市場 | アメリカ・カナダ | 日本・欧州・アジア |
互換性 | 一部システムでJANコードを使用する際に変換が必要 | EANコードの一部として広く対応 |
この違いにより、日本の商品を北米市場で展開する場合、UPCコードに変換する必要があるケースもあります。一方、欧州やアジア市場ではそのまま利用できるため、JANコードを採用するメリットは大きいといえます。
グローバル市場への展開を見据えたバーコード選択
海外展開を考える企業にとって、どのバーコードを採用するかは重要な判断になります。JANコードが国内流通には適しているものの、国や業界によっては他の規格が必要になることもあります。
① 小売業向け:UPCとの互換性を考慮
北米で販売を行う場合、JANコードのままでは使えない店舗やシステムがあるため、UPCに変換する必要があります。これに対応するため、GS1に登録する際にUPCコードも取得しておくと、スムーズに海外市場へ展開できます。
② 物流業向け:ITFやGS1-128を活用
大量出荷を行う場合、商品単体のJANコードだけでなく、パレットや箱単位の識別が必要になります。倉庫や配送センターでは、ITFコードやGS1-128を使うことで、出荷ミスを防ぎ、効率的な管理が可能になります。
③ EC・オンライン販売:QRコードの活用も視野に
EC市場が拡大する中で、JANコードだけでなく、QRコードを併用するケースも増えています。 例えば、QRコードを商品ページに印刷し、スマートフォンでスキャンすると詳細情報が見られる仕組みを導入すれば、ユーザーの利便性が向上します。
スーパーやコンビニで買い物をするとき、商品のパッケージに印刷されたバーコードを見ることはよくあります。その中でも、日本国内で標準的に使われているのがJANコードです。しかし、この数字の並びにどのような意味があるのかを意識したことは少ないかもしれません。
JANコードは、単なる識別番号ではなく、一定のルールに基づいて構成されています。また、商品を販売する企業が独自のJANコードを取得し、登録することで、市場に正式な商品として流通させることができます。
ここでは、JANコードの桁数ごとの意味、取得のメリット、申請手続きについて詳しく解説していきます。
JANコードに含まれる桁数の役割
JANコードには、13桁と8桁の2種類があります。大半の商品に使われているのは13桁の標準JANコードで、8桁の短縮JANコードは、小さなパッケージの商品などに限られます。
それぞれの桁には明確な役割があり、商品情報を整理・管理するために必要不可欠なものとなっています。
桁数 | 内容 | 説明 |
---|---|---|
1~2桁目 | 国コード | 日本は「45」または「49」 |
3~7桁目 | 企業コード | GS1 Japanが発行する企業識別番号 |
8~12桁目 | 商品コード | 各企業が独自に設定 |
13桁目 | チェックデジット | 読み取りミスを防ぐための検証用数字 |
国コードの「45」や「49」は、日本国内の商品であることを示しており、企業コードはGS1 Japan(一般財団法人流通システム開発センター)から発行されるものです。この企業コードを基に、各メーカーが自社の商品に固有の番号(商品コード)を割り当てて管理します。
最後の1桁(チェックデジット)は、読み取りミスを防ぐために設定されており、一定の計算式に基づいて自動的に決まります。これにより、バーコードスキャナーが誤った情報を読み取らないよう工夫されています。
JANコードを発行するメリット
JANコードを取得することには、多くの利点があります。
① 小売店やECサイトで販売しやすくなる
JANコードは、国内の小売店やECサイトで商品を登録する際の標準的な識別番号です。大手スーパーやドラッグストアでは、JANコードがないと商品登録できないことが一般的です。オンラインショップでも、Amazonや楽天市場ではJANコードの登録が求められるケースが増えています。
② 在庫管理や販売データの活用がしやすくなる
JANコードを活用すれば、在庫数や売上データを正確に把握しやすくなります。特に、POSシステムと連携することで、どの商品がどのくらい売れたのかといった情報をリアルタイムで確認できるようになります。
③ 偽造品の防止やブランド管理に役立つ
JANコードは、企業ごとに発行されるため、正規の販売元が明確になります。ブランド商品や高額な商品では、JANコードを使って正規品と偽物を見分けることができるため、販売する側にとっても安心です。
④ 海外市場への対応がスムーズになる
JANコードはEANコードと互換性があるため、欧州をはじめとする海外市場でもそのまま使用できるのが利点です。海外向けに商品を展開する際にも、JANコードを登録しておけば、スムーズに国際市場へ流通させることができるでしょう。
申請の資格や費用:誰でも発行できるのか?
JANコードを取得するためには、GS1 Japanに登録する必要があります。
JANコードを取得できる対象
・法人・個人事業主(販売する商品を持つ事業者)
・EC販売を行う企業・個人(Amazonや楽天などで独自商品を販売する場合)
一般消費者が個人的に取得することはできませんが、事業を営んでいる場合は、法人・個人事業主を問わず申請が可能です。
取得にかかる費用
JANコードの発行には、初期登録費用と年会費が発生します。費用は、取得する企業コードの桁数(=発行できる商品数)によって異なります。
企業コードの桁数 | 発行可能なJANコード数 | 初期登録料 | 年会費 |
---|---|---|---|
9桁 | 約1,000種類 | 約40,000円 | 約10,000円 |
7桁 | 約10,000種類 | 約80,000円 | 約20,000円 |
6桁 | 約100,000種類 | 約150,000円 | 約30,000円 |
事業の規模に応じて、適切なプランを選ぶことが重要です。多くの中小企業や個人事業主は、9桁の企業コードを取得し、最大1,000種類の商品にJANコードを割り当てる方法を選んでいます。
具体的な発行・登録ステップ
JANコードを取得する流れは、以下のようになります。
① GS1 Japanに申請
まず、GS1 Japanの公式サイトから申請を行います。必要な情報を入力し、企業情報を登録します。
② 企業コードの取得
申請が承認されると、GS1 Japanから企業コードが発行されます。このコードがJANコードの前半部分に使われることになります。
③ 商品コードを設定
企業コードをもとに、自社の商品ごとに商品コードを割り当てます。例えば、あるメーカーが「A001」「A002」などと番号をつければ、それがJANコードの中に組み込まれます。
④ チェックデジットを計算
JANコードの最後の1桁(チェックデジット)は、自動計算されます。GS1 Japanのサイトにあるチェックデジット計算ツールを使えば、簡単に算出できます。
⑤ バーコードの作成
取得したJANコードを基に、実際のバーコードを作成します。GS1 Japanのツールを使う方法や、市販のバーコード作成ソフトを活用する方法があります。
⑥ 小売店・ECサイトへ登録
最後に、取得したJANコードを小売業者やECサイトに登録し、販売を開始します。
JANコードを取得したあと、実際に商品パッケージやラベルに印刷し、運用していく段階で気をつけるべき点は多くあります。印刷のミスひとつで、バーコードが正しく読み取れず、販売や物流に影響を及ぼすことも考えられます。また、JANコードを活用することで、ECサイトと実店舗の在庫を一元管理したり、発送業務の効率化を進めたりすることも可能です。
ここでは、印刷時の注意点から、JANコードを活用した業務効率化のポイントまでを詳しく見ていきます。
バーコード作成ソフトや印刷時に押さえるべき項目
JANコードを商品に印刷する際、単に数字を並べて記載すればよいわけではありません。正しく運用するためには、バーコード作成ソフトの活用や印刷時の注意点を押さえておく必要があります。
バーコード作成ソフトの選び方
JANコードを作成するには、専用のソフトウェアを利用する方法があります。Excelのプラグインを使って生成する簡易的な方法もありますが、より精度の高いバーコードを作成するためには、以下のようなソフトを利用するのが一般的です。
・無料で使えるもの:Googleスプレッドシートの拡張機能、無料のオンラインジェネレーター
・業務向けソフト:「バーコードプロ」「Labeljoy」など、高精度な印刷に対応した有料ソフト
業務で頻繁にバーコードを印刷する場合、読み取りエラーを防ぐためにも、専用のソフトを導入したほうが安心です。
印刷時に気をつけるべきポイント
バーコードは正しく印刷されていないと、スキャナーで読み取れず、販売や物流の現場でトラブルの原因になります。印刷する際には、以下の点に注意しましょう。
1. サイズは規格通りに
JANコードの推奨サイズは、幅約30mm × 高さ約22mm(標準サイズ)ですが、縮小・拡大しても一定の比率を保つことが重要です。
2. 適切な印刷方式を選ぶ
インクジェットプリンターは、かすれやにじみが発生しやすいので、レーザープリンターや熱転写方式が適しています。 印刷用紙の種類も考慮し、ラベルシールを使用する場合は光沢を抑えたものを選ぶと、スキャナーでの読み取り精度が向上します。
3. バーコードの周囲に十分な余白を確保
読み取りエラーを防ぐため、バーコードの上下左右には必ず余白(クワイエットゾーン)を設けることが推奨されています。
これらの基本的なルールを守ることで、スムーズな運用が可能になります。
スムーズな業務連携で実店舗とECを近づける方法
JANコードを導入することで、実店舗とECの間で在庫情報を一元管理しやすくなります。特に、**オンラインとオフラインの融合(O2O戦略)**を考えている企業にとって、JANコードの活用は重要な要素になります。
ECサイトと実店舗の在庫を統一管理するには?
・POSレジとEC在庫を連携する
JANコードをPOSシステムと連携させれば、実店舗での販売データがリアルタイムで反映され、ECサイトの在庫数も自動で更新されます。
・モバイル端末を活用する
スタッフがタブレットやスマホでバーコードをスキャンし、在庫状況をその場で確認できる仕組みを導入すれば、店頭と倉庫の情報をより正確に把握できます。
・商品ページにJANコードを登録する
JANコードをECサイトの商品データに登録することで、Googleショッピングや価格比較サイトでの検索精度が向上し、集客につながるケースもあります。
このように、JANコードを軸にした在庫管理は、販売の効率化だけでなく、顧客体験の向上にも貢献するのです。
JANコードがもたらす在庫管理・発送業務の効率化
倉庫や発送業務においても、JANコードを活用することで作業の効率を向上させることができます。
在庫管理の最適化
・バーコードスキャンで在庫数をリアルタイム更新
手作業で在庫を記録するよりも、バーコードをスキャンするほうが圧倒的に早く、ミスが減ります。
・発注管理の自動化
一定の在庫数を下回ると自動で発注するシステムを導入すれば、品切れや過剰在庫を防ぐことができます。
発送作業の迅速化
・バーコードを使ったピッキング作業の効率化
物流センターでは、バーコードリーダーを活用して、誤発送を防ぎながら正確なピッキングを実施できます。
・送り状とJANコードの連携
送り状の印刷とJANコードの照合をシステム化することで、出荷ミスを減らし、作業スピードを向上させることができます。
こうした取り組みによって、販売後の業務効率を大幅に改善できるでしょう。
JANコードとバーコードは、流通や販売を支える重要な仕組みです。JANコードは小売業の標準として国内外で活用されており、適切に取得・運用することで、在庫管理や販売促進に役立ちます。また、QRコードなどの二次元コードとの違いを理解し、用途に応じて使い分けることが重要です。
印刷や運用の際には、読み取り精度や在庫システムとの連携を考慮することで、業務の効率化が図れます。さらに、JANコードを活用した物流システムの導入は、EC事業の成長にも寄与します。バーコード技術を理解し、適切に活用することで、ビジネスの可能性が広がるでしょう。