マルチオーダーピッキング
物流業界では、EC市場の拡大や人手不足が大きな課題となっています。注文数が増加する中で、従来のピッキング方法では時間とコストがかかりすぎることが問題視されています。そこで注目されるのがマルチオーダーピッキングです。
ここでは、この手法の基本的な仕組みやメリット・デメリット、導入ポイントなどについてく解説させていただきます。
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マルチオーダーピッキングとは?
マルチオーダーピッキング(Multi-order Picking)とは、倉庫や物流センターなどで複数の注文(オーダー)を同時にまとめてピッキング(商品を取り出す作業)する手法を指します。通常、注文ごとに商品を集めるシングルオーダーピッキングと比較すると、作業の効率化やコスト削減を実現しやすい方法として注目されています。
ECサイトや小売業などの受注件数が多い業態において、多数の注文を素早くかつ正確に処理するためには、マルチオーダーピッキングの導入が大きな効果をもたらします。
マルチオーダーピッキングが求められる背景
EC市場の拡大
インターネット通販の普及により、取扱件数は急激に増加しています。小口の注文が増える一方で、顧客はより短いリードタイムや正確な配達を求めるようになりました。そのため、一度に複数の注文を効率的に処理する必要が生じています。
倉庫内オペレーションの高度化
物流業界では、倉庫レイアウトの最適化や在庫管理システム(WMS: Warehouse Management System)の導入が進んでいます。従来のシングルオーダーピッキングから、より生産性を高めるための手法としてマルチオーダーピッキングが導入されてきました。
人手不足とコスト削減の必要性
近年、物流業界では深刻な人手不足が指摘されています。限られた人員で大量の出荷作業を行うためには、少ない作業回数で多くの商品をピックできるマルチオーダーピッキングの需要が高まっています。
マルチオーダーピッキングのメリット
ピッキング回数の削減
シングルオーダーピッキングでは、注文ごとに棚を行き来する必要があります。一方、マルチオーダーピッキングでは複数の注文を一括でピッキングするため、同じ棚を何度も往復する手間が省けます。
作業効率の向上
一度の移動で複数の注文をピックアップできるため、作業者が歩き回る距離や回数を減らし、工数の削減につながります。結果的に出荷までのリードタイム短縮が期待できます。
コストの削減
作業効率が上がることで、人件費や倉庫内での機材・設備コストなどを抑制できます。また短時間で多くの商品をピッキングできるため、ピーク時の対応にも有利です。
オーダー集約による在庫管理の精度向上
一括して複数オーダー分をピックする際、システム上でどの商品がどれだけ必要か明確に把握しやすくなります。結果として在庫の誤差を減らし、欠品リスクの低減にもつながります。
マルチオーダーピッキングのデメリット
仕分け作業が必要になる
複数の注文を一度にピックするため、ピッキング後に注文ごとの仕分けを行わなければなりません。仕分け工程をどのように効率化するかが重要なポイントです。
導入コストやシステムの整備
マルチオーダーピッキングを最適化するには、WMSなどのITシステムとの連携がほぼ不可欠です。導入コストや学習コストが発生するため、事前に投資対効果を検討する必要があります。
作業者の習熟度や動線計画
一度に多くの注文を扱うため、作業者は正確なピッキングと仕分けを行わなければなりません。誤出荷を防ぐには、作業手順や動線をしっかり計画し、作業者を教育することが求められます。
マルチオーダーピッキングの代表的な手法
バッチピッキング(Batch Picking)
複数の注文をバッチ(束)にまとめ、1回のピッキングでそれらを集中的に行います。ピック完了後、仕分けエリアで注文ごとに振り分ける方式です。最も一般的なマルチオーダーピッキングといえるでしょう。
ゾーンピッキング(Zone Picking)
倉庫内をいくつかのゾーンに分割し、作業者は担当ゾーンの商品のみをピックします。注文はゾーンごとにピックされ、最終的に統合されます。作業者が自分のゾーンから出る必要がないため、移動時間を大幅に削減できます。
ウェーブピッキング(Wave Picking)
一日の出荷タイミングや便(配送トラックの出発時間など)に合わせて、一定の間隔や区切りで複数の注文をまとめてピックします。倉庫全体の作業負荷や配送スケジュールに合わせて計画的に進めることができます。
ピックトゥライト(Pick to Light)/ ピックバイボイス(Pick by Voice)
ITツールを活用したピッキング方式です。各商品の保管場所に取り付けられたランプ(ライト)や音声アシストによって、作業者はどこから何個ピックすべきかを指示されます。マルチオーダーピッキングと組み合わせることで、仕分けミスを低減し、作業スピードを向上させる効果が期待できます。
マルチオーダーピッキングの導入ポイント
倉庫レイアウトの最適化
多くのピッキング工程を一括で行うため、動線計画が極めて重要です。頻出商品の配置や動線の短縮を徹底的に行い、作業者が無駄な移動をしないようにします。
システムとの連携
マルチオーダーピッキングでは、どの商品をどのタイミングでどれだけピックすべきかを明確に管理する必要があります。WMSや自動仕分け装置との連携によって、在庫精度を保ちながら効率を上げることが可能です。
作業プロセスの可視化とマニュアル化
仕分けミスや誤出荷を防ぐためには、ピッキングから仕分けまでのプロセスを可視化し、分かりやすいマニュアルを整備することが大切です。ピッキング作業者が直感的に理解できる指示システムと合わせることで、ヒューマンエラーを最小限に抑えられます。
適切なKPI設定
マルチオーダーピッキングの効果測定には、ピッキングの正確度や1時間当たりの出荷数、在庫精度などのKPIを設定することが重要です。改善サイクルを回すことで常に最適化を図り、長期的にコスト削減や作業効率向上を目指します。
まとめ
マルチオーダーピッキングとは、一度に複数の注文をまとめてピッキングする方法です。従来のシングルオーダーピッキングと比べ、移動距離が減り、作業効率が向上します。物流倉庫では、ECの注文増加や人手不足の課題を解決する手段として活用されています。
メリットとして作業時間の短縮やコスト削減が期待できる一方、仕分け作業の複雑化やシステム導入の必要性が課題です。効率的な運用には、適切な倉庫レイアウトや在庫管理システムとの連携が重要になります。本記事では、マルチオーダーピッキングの概要、メリット・デメリット、具体的な活用方法を解説させていただきました。