ITFコード
流通や倉庫管理で広く活用されているのが「ITFコード」です。一般的なバーコードと比べると、ITFコードは印刷の自由度が高く、ダンボールや包装資材に直接印字できるのが特徴です。では、なぜこのコードが多くの企業で採用されているのでしょうか? 他のバーコードとは何が違い、どのような場面で活用されているのでしょう?
ここでは、ITFコードの基本的な仕組みから、導入する際に押さえておきたいポイントまでを詳しく解説していきます。単なる技術情報の羅列ではなく、実際の運用を想定した視点で、メリットだけでなく注意点にも触れながら整理していきます。
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ITFコードとは?
ITFコードは、物流や倉庫管理の分野で広く使われているバーコードの一種です。正式には「Interleaved Two of Five(インターリーブド・ツー・オブ・ファイブ)」と呼ばれ、2種類の太さのバー(黒い線)とスペース(白い部分)を組み合わせて数字を表現する仕組みになっています。一般的に、段ボールや包装資材に直接印刷されることが多く、商品そのものではなく「梱包単位」で管理する目的で使われることがほとんどです。
このコードの誕生は、物流の効率化が求められた背景と深く関係しています。小売向けの商品に印刷されるJANコードやEANコードは、消費者が購入する個々の製品を識別するためのものですが、大量の商品を一括で管理するには、よりシンプルで印刷の自由度が高いコードが必要でした。そこで開発されたのがITFコードです。
他のコードとの違い
バーコードにはさまざまな種類がありますが、ITFコードが他と大きく異なる点はいくつかあります。
① 印刷のしやすさ
JANコードやEANコードは、高い印刷精度が求められるため、ラベルやパッケージにしっかりと印字する必要があります。一方、ITFコードは、印刷精度が多少低くても読み取れる設計になっており、ダンボールなどの粗い表面にも直接印刷しやすいという特長があります。これは物流現場では非常に重要な要素であり、専用のラベルを用意する手間を省けるメリットがあります。
② 管理単位の違い
JANコードは小売向けの商品そのものを識別するのに対し、ITFコードは梱包単位での管理に適しています。たとえば、ペットボトル飲料を考えてみると、1本ずつ販売される商品にはJANコードが付いていますが、それが24本まとめて梱包されたケースには、ITFコードが付けられることが一般的です。これにより、物流倉庫ではケース単位での在庫管理がスムーズに行えます。
③ 表現できる文字の違い
ITFコードは、基本的に「数字のみ」を扱います。これに対して、JANコードやEANコードのような一部のバーコードは、英字なども含めることができます。数字以外の情報を組み込めない点は制約ではありますが、物流の現場では数字だけで十分な情報を伝えられるため、大きな問題にはなりません。
④ 読み取りの特性
ITFコードは、特定のスキャナーがなくても比較的読み取りやすい設計になっています。これは、シンプルな構造と太めのバーが関係しており、多少の印刷のブレがあっても識別しやすい仕様になっているからです。一方、JANコードやEANコードは、細かい線の組み合わせで情報を表現しているため、読み取りには一定の精度が求められます。
ITF規格とは?
バーコードが物流の現場で活用されるようになった当初、企業ごとに独自のコードを使用していたため、統一されたルールがなく、読み取りミスや運用の煩雑さが課題となっていました。そこで、国際的な標準化が求められ、業界ごとに最適なバーコード規格が整備されることになります。その流れの中で、物流や倉庫管理に適したフォーマットとして開発されたのが「ITF(Interleaved Two of Five)」規格です。
この規格の特徴は、印刷の許容範囲が広く、段ボールや簡易包装に直接印字できることにあります。JANコードやEANコードと異なり、高精細な印刷が難しい環境でも使用しやすいよう設計されています。また、数値のみで情報を表現するシンプルな構造を持っているため、スキャナーでの読み取りも比較的安定しているのが強みです。
代表的なITFコードの種類
ITF規格の中には、いくつかの種類が存在します。特に広く使われているものを挙げると、以下のようなものがあります。
ITF-14
最も一般的なITFコードの一つで、主に段ボールケースや梱包単位の商品識別に使用されます。14桁の数字で構成されており、JANコードやGTIN(Global Trade Item Number)と組み合わせて利用されるケースが多いです。大規模な物流システムでは、このコードを使ってケース単位での在庫管理が行われています。
ITF-6
比較的短い6桁の数字を持つITFコードで、小規模な梱包単位に用いられることがあります。ただし、現在では利用が減少しており、主流ではなくなっています。
ITF-16
ITF-14と似た構造ですが、より多くの情報を含めるために16桁のデータを持つタイプです。使用頻度はITF-14ほど高くありませんが、一部の業界では活用されています。
ITF規格の必要性
規格が統一されることで、業界全体の運用がスムーズになるだけでなく、誤読や誤配送といったトラブルを減らすことにもつながります。その理由をいくつか見ていきましょう。
誤読を防ぐための設計
ITFコードは、バーとスペースの組み合わせでデータを表現する「2 of 5」方式を採用しています。この方式では、1つの数字が5本のバーのうち2本を太くすることで表現されるため、印刷の精度が多少落ちても識別しやすくなっています。これにより、物流現場で発生しがちな読み取りミスを抑えることができます。
国際物流への対応
物流のグローバル化が進む中で、どの国でも同じ形式でバーコードを使用できることが求められます。ITF規格は、GS1(国際標準化団体)が定めたルールに基づいており、世界各国の倉庫や輸送システムで問題なく運用できるよう設計されています。これにより、異なる国や地域であっても共通のコード体系を用いた在庫管理や流通追跡が可能になっています。
物流コストの削減
統一された規格を採用することで、企業間のデータ管理が統一され、バーコードの再印刷や誤配送にかかるコストを削減できます。特に、出荷単位での管理を容易にするITFコードは、大量の荷物を扱う倉庫や流通業において、大きなコスト削減効果をもたらします。
ITFコードの構造
バーコードは、一見すると単純な線の集まりに見えますが、その内部には情報を正しく伝達するための厳格なルールが組み込まれています。ITFコードも例外ではなく、特定のフォーマットに基づいて構成されており、その構造が正しく守られていることで、スムーズな読み取りが可能になります。ここでは、ITFコードの基本的な構造と、それが情報密度の高さにつながる理由を見ていきましょう。
ITFコードの基本構造
ITFコードは、数字のみを扱うバーコードで、偶数桁のデータを持つのが特徴です。一般的に使用される「ITF-14」の場合、14桁の数字が記録されます。バーとスペースの組み合わせによって情報を表現し、特定のパターンが読み取りの開始と終了を示します。
スタートコードとストップコード
ITFコードには、「スタートコード」と「ストップコード」と呼ばれる特定のパターンが含まれています。これらは、スキャナーがバーコードの読み取りを開始し、正しく終了するための目印となる部分です。この設計により、誤ったデータが読み取られるリスクを低減できます。
データ部分(数値情報)
データ部分は、5本のバーのうち2本を太くする「2 of 5」方式で構成されています。1つの数字を2本の太いバーで表すことで、誤読を防ぎつつ、情報を効率的に圧縮できるのが特徴です。
ITFコードの構造上の特徴
ITFコードには、正確なスキャンを支えるための構造的な工夫が施されています。
1. セキュリティバー(ガードバー)
印刷されたバーコードが歪んだり、印刷のにじみが発生しても正確に読み取れるよう、バーコードの上下には「セキュリティバー」と呼ばれるガイドラインが配置されることがあります。これにより、スキャナーが正しい範囲を識別しやすくなり、読み取り精度を維持できます。
2. クワイエットゾーン(余白)
バーコードの前後には、「クワイエットゾーン」と呼ばれる余白が必要です。スキャナーは、バーコードの開始地点と終了地点を判別する際にこの余白を基準とするため、十分なスペースが確保されていないと正しく読み取ることができません。ITFコードでは、通常、バーコードの幅の10%以上の余白を確保することが推奨されています。
ITFコードが情報密度の高いバーコードと言われる理由
ITFコードは、数あるバーコードの中でも「情報密度が高い」と言われることがあります。その理由はいくつかあります。
1. 2桁のデータを1セットで表現する方式
ITFコードは、2つの数字を1つのバーとスペースの組み合わせで表現する「インターリーブド方式」を採用しています。この方法では、1つの数字を表すのに必要なスペースが減るため、他のバーコードに比べてコンパクトにデータを詰め込むことができます。
2. 双方向からの読み取りが可能
通常のバーコードは、一方向からのみ読み取ることを前提に設計されていますが、ITFコードは、上下どちらの方向からでもスキャンしやすい構造になっています。物流の現場では、バーコードが常に完璧な向きで印刷されるとは限らないため、どちらの方向からでも読み取れる設計は、大きな利点となります。
3. 印刷精度に左右されにくい設計
細かいバーや複雑なコード構造を持つバーコードの場合、印刷精度が少しでも落ちると読み取りエラーが発生しやすくなります。しかし、ITFコードはシンプルなバー構成になっており、多少の印刷のズレがあっても情報を正しく読み取ることができます。このため、物流業界のような大量のラベルを素早く印刷・管理する環境に適しています。
印刷位置と表示に関する規定
バーコードが正しく機能するには、適切な場所に印刷され、スキャナーが正確に読み取れるよう配慮することが欠かせません。ITFコードは物流の現場で使われるため、印刷位置やサイズのルールを適切に守ることが求められます。ここでは、実際の運用で意識すべきポイントを整理していきます。
ITFコードの表示位置の決め方
ITFコードを印刷する際、どこに配置するかはパッケージデザインや運用環境と密接に関わっています。倉庫や物流センターでは、スキャナーで素早く読み取れることが重要なため、視認性の高い位置に印刷するのが一般的です。
1. パッケージの構造を考慮する
段ボールケースや外装フィルムのどこに印刷するかは、現場での扱いやすさを考慮する必要があります。たとえば、積み上げる際に隠れやすい場所や、シワが寄りやすい箇所を避けることが望ましいです。一般的には、箱の側面や広い面に印刷されることが多く、搬送時にスキャナーが素早く認識できるよう設計されています。
2. スキャナーとの相性を考えた配置
倉庫や物流センターで使用されるスキャナーは、バーコードの角度や歪みに影響を受けることがあります。そのため、平坦な面に印刷することで、スキャンミスを減らすことができます。また、バーコードが複数の面に印刷されていると、どの方向からでも素早く認識できるため、作業効率が向上します。
3. デザインとのバランスを取る
製品の外装デザインとの調和も考慮しなければなりません。ブランドロゴや説明文の近くに配置すると目立ちすぎる場合もあるため、必要な情報を損なわず、なおかつ読み取りしやすい配置を決めることが重要です。
印刷時に守るべきルール
ITFコードは読み取りの確実性を維持するため、いくつかのルールが定められています。以下の点に注意することで、誤読を防ぎ、スムーズな運用につなげることができます。
1. クワイエットゾーン(余白)の確保
バーコードの前後には、一定の空白を確保する必要があります。この部分を「クワイエットゾーン」と呼び、スキャナーがバーコードの開始と終了を正確に認識するために不可欠なスペースです。一般的には、バーコードの幅の10%程度の余白を設けることが推奨されています。印刷する際は、この余白がデザインや他の要素に干渉しないよう注意が必要です。
2. バーコードのサイズと比率
ITFコードには、標準的なサイズと比率が設定されています。特に、バーの幅や間隔は読み取り精度に大きく影響するため、適切な寸法で印刷することが求められます。一般的な比率として、最も狭いバー(ナローバー)の幅が0.635mm以上であることが推奨されています。これよりも狭くなると、スキャナーによる読み取りミスが増える可能性があります。
3. 印刷方式の選択
ITFコードは、ダンボールや粗い紙面に直接印刷されることが多いため、印刷方法によってはバーの輪郭がぼやけることがあります。そのため、印刷方式は以下のようなものが適しています。
・フレキソ印刷(ダンボールへの直接印刷に向いている)
・レーザープリンター印刷(高精度な印字が必要な場合に使用)
・インクジェット印刷(小ロットや可変データ印刷向け)
印刷精度に対する許容範囲
ITFコードは、他のバーコードと比較して印刷精度の許容範囲が広いことが特徴です。これは、シンプルなバー構造と、ある程度の誤差を許容する設計によるものです。
1. 印刷のズレに対する寛容さ
細かいバーが連続するバーコード(JANコードやEANコード)に比べ、ITFコードはバーの幅が比較的太めに設計されています。そのため、印刷時に多少のズレが生じても、読み取りエラーが発生しにくいのがメリットです。
2. かすれやにじみに対する耐性
JANコードのように細かい線が多いバーコードは、印刷時のインクのかすれやにじみが原因で誤読されることがあります。一方、ITFコードは線が太く、コントラストがはっきりしていれば、多少のかすれがあっても読み取りに支障が出にくい仕様になっています。
ITFコードがもたらすメリットと注意点
バーコードは、それぞれの用途に適した仕様が求められます。ITFコードは、物流や倉庫管理の現場でよく使われるバーコードですが、どんなシステムにも利点と課題があるものです。ここでは、ITFコードが持つ強みと、それに伴う注意点を整理していきます。
ITFコードのメリット
1. 情報量が多く、在庫管理の効率化につながる
ITFコードは、ケース単位やパレット単位での識別に適しており、大量の商品を管理する倉庫や物流センターでは、個別の製品に付与されるJANコードよりも扱いやすいことが多いです。1つのケースやパレットに対して1つのITFコードを印刷すれば、それをスキャンするだけで複数の製品を一括して記録できるため、業務の効率が向上します。
また、コード自体がコンパクトに情報をまとめる仕組みになっているため、比較的短いバーコードで必要なデータを記録できる点も利点のひとつです。
2. 印刷のズレに対して寛容で、読み取り精度が安定しやすい
バーコードの運用では、印刷の精度が重要になりますが、ITFコードは多少の印刷のズレやかすれがあってもスキャンしやすい設計になっています。
JANコードやEANコードのように細かい線が多いバーコードは、高精細な印刷が求められる一方で、ITFコードは太めのバーで情報を表現するため、多少の印刷の誤差が発生しても読み取りに影響が出にくいのが特徴です。
この特性により、ダンボールやクラフト紙といった、滑らかでない表面への直接印刷がしやすく、ラベルを貼る手間を省くこともできるため、コスト面でもメリットがあります。
3. 国際規格に対応し、海外取引やグローバル物流で使いやすい
物流の世界では、輸出入の管理において共通のルールを適用することが不可欠です。ITFコードは国際規格(GS1など)に準拠した形で運用されているため、異なる国の倉庫や物流システムでも互換性を保つことができます。
多国間で商品を流通させる企業にとっては、現地ごとに異なるバーコードを採用するよりも、共通のフォーマットを持つITFコードを活用するほうが効率的です。
ITFコードの注意点
1. サイズが大きくなりやすく、パッケージデザインに影響を与える
ITFコードは、視認性と読み取りやすさを優先して設計されているため、バーの幅が比較的大きくなります。JANコードやQRコードと比べると、表示スペースを多く必要とするため、小さなパッケージに印刷するのには向いていません。
また、適切なクワイエットゾーン(バーコードの前後の余白)を確保しなければならないため、デザインの自由度が制限されることもあります。商品パッケージのデザインを重視する業界では、レイアウト調整が求められるケースも少なくありません。
2. 他のバーコードとの混在運用には工夫が必要
ITFコードは、数字のみを扱うバーコードのため、英字や特殊記号を含むデータを記録することができません。そのため、管理システムによっては、JANコードやQRコードと併用しなければならない場面も出てきます。
また、JANコードやEANコードと一緒に印刷する場合、スキャナーの設定によっては読み取るべきコードが誤認識されることもあります。例えば、ITFコードをケースに、JANコードを個々の商品に印刷する場合、スキャンする対象を明確に分けて運用しなければ、誤ったデータが登録される可能性があります。
このようなリスクを避けるためには、バーコードの配置を工夫したり、スキャナーの読み取り優先順位を設定するなどの対策が必要です。
JANコードとの比較
バーコードは、利用される環境や用途によって最適な種類が異なります。小売業界で馴染み深いのは「JANコード」ですが、物流や倉庫管理の現場では「ITFコード」が多く採用されています。それぞれの仕組みや役割を正しく理解することで、どの場面でどのコードを使えばよいのかが明確になります。ここでは、JANコードとの違いを整理し、最適な使い分けについて考えていきます。
JANコードとITFコードの仕組みの違い
1. 使用シーンの違い
JANコードは、主に小売業界で消費者向けの商品識別に使用されます。スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどで、レジのスキャナーによって読み取られ、販売管理や在庫管理に役立てられています。一方、ITFコードは、流通や倉庫管理を目的としたケース単位の識別に適しており、物流の現場で頻繁に使われます。
たとえば、ペットボトルの飲料を考えてみると、1本ずつ販売される商品にはJANコードが印字され、消費者が購入する際にスキャンされます。しかし、そのペットボトルが24本入りのケースに梱包される場合、ケース全体を管理するためのITFコードが付与されます。これにより、物流倉庫ではケース単位で効率よく出荷や入荷の処理を行うことができます。
2. データ構成の違い
JANコードは、基本的に13桁(短縮版は8桁)で構成され、メーカーコードや商品コードなど、消費者向けの商品識別に必要な情報が含まれています。一方、ITFコードは、主に14桁で構成され、ケース単位の管理に特化した設計になっています。
また、JANコードは「数字とバーの太さ」の組み合わせでデータを表現するのに対し、ITFコードは「2 of 5(2本の太いバー)」の方式を採用しており、情報を圧縮して表現する構造になっています。このため、ITFコードは少ないスペースで多くの情報を持つことができ、印刷のズレにも強いという特徴があります。
3. 印刷環境の違い
JANコードは、パッケージのデザインに組み込まれることが多く、印刷精度の高さが求められます。スキャナーでの正確な読み取りを保証するため、クリアな印刷が必要です。一方、ITFコードは、ダンボールや紙パッケージに直接印刷されるケースが多く、多少の印刷のブレがあっても読み取りに影響が出にくい設計になっています。このため、物流の現場ではITFコードが使われることが多く、ラベルの貼り付けコストを抑えられるメリットもあります。
実際の利用シーン別の使い分け
それぞれのバーコードが使われる具体的な場面を整理すると、以下のような使い分けが適しています。
1. 小売店向けの管理(JANコード)
・商品ごとに個別の管理が必要
・消費者が購入時にスキャンする用途
・デザインとの統一性が求められる商品パッケージ
JANコードは、レジでの読み取りを前提としているため、店頭での運用には欠かせません。また、小売業界では、メーカーが共通のコード体系を採用することで、どの店舗でも統一された商品識別が可能になっています。
2. 物流・倉庫向けの管理(ITFコード)
・ケース単位・パレット単位での識別が必要
・商品の大まかな在庫管理や出荷管理に適している
・ラベルなしでも直接印刷できる環境で使用される
倉庫や物流の現場では、商品1つひとつを管理するのではなく、ケース単位での追跡が重要になります。このため、ITFコードを活用することで、出荷や入荷の作業を効率化し、大量の商品をスムーズに取り扱うことができます。
ITFコードの導入手順
ITFコードを業務に取り入れることで、物流や在庫管理の効率を向上させることができます。しかし、導入する際には、単にバーコードを印刷するだけでなく、取得方法やシステムとの連携、日々のメンテナンスなど、考慮すべき点がいくつかあります。ここでは、導入の具体的な手順と運用のポイントを整理していきます。
ITFコードの印刷・管理の流れ
ITFコードを業務で活用するためには、いくつかの手順を踏む必要があります。スムーズな運用を目指すために、以下の流れを意識するとよいでしょう。
1. ITFコードの取得方法
ITFコードを使用するには、まず適切なコードを取得する必要があります。多くの場合、GS1(国際標準化機関)からコードを発行してもらう形になります。既存の商品に対して新たにケース単位での管理が必要になった場合、JANコードを基にITFコードを作成することもあります。
・GS1に登録し、企業コードを取得
・ケース単位での商品コードを決定
・必要に応じてITF-14を生成(GTIN-13などをもとに変換)
これらの手続きを適切に行うことで、コードの重複や管理の混乱を防ぐことができます。
2. バーコードの印刷・運用準備
取得したITFコードを実際に印刷する際には、印刷方法や表示位置を考慮することが重要です。
・印刷場所の選定(パッケージの側面や平坦な部分を確保)
・バーコードのサイズとクワイエットゾーンの調整(適切な余白を設ける)
・印刷方式の決定(フレキソ印刷、ラベル印刷、インクジェット印刷など)
物流現場ではダンボールに直接印刷することが多いため、読み取り精度を確保するために適切な印刷方式を選ぶことが求められます。
バーコードソフトウェアやプリンター選びの基準
ITFコードを印刷するためには、専用のソフトウェアやプリンターが必要になります。適切な機器を選定することで、運用の手間を減らし、スムーズな業務につなげることができます。
1. バーコード作成ソフトウェアの選び方
バーコードを作成する際、手動でデザインするのではなく、専用のソフトウェアを利用することで、ミスを減らし、管理の一元化がしやすくなります。
選定のポイント
・GS1規格に準拠したコードが作成できるか
・既存の在庫管理システムと連携できるか
・データの一括処理が可能か(CSVファイルの取り込みなど)
一般的に、バーコード作成ソフトには「BarTender」「NiceLabel」などの選択肢があり、企業の運用体制に応じて適したものを選ぶとよいでしょう。
2. プリンターの選び方
印刷する環境や目的に応じて、最適なプリンターを選ぶことも重要です。
印刷方式と用途
・フレキソ印刷(ダンボールなどの大量印刷向け)
・サーマルプリンター(ラベル印刷に適している)
・インクジェットプリンター(変動データの印刷に向いている)
大量の梱包ケースに対して印刷する場合、コストや作業効率も考慮しながら、適切な方式を選択することが求められます。
導入後のメンテナンス・運用体制の構築
ITFコードを導入した後は、定期的なメンテナンスや、システムと連携した管理が欠かせません。適切な運用体制を構築することで、トラブルを防ぎ、継続的な業務改善につなげることができます。
1. 在庫管理システムとの連携
ITFコードを活用する場合、バーコードのスキャンデータを在庫管理システムと結びつけることが大切です。これにより、入庫・出庫の管理が自動化され、ヒューマンエラーを減らすことができます。
連携する際のポイント
・バーコードスキャナーとシステムの互換性を確認します
・入出庫のデータをリアルタイムで更新できる環境を整えます
・異なるバーコード(JANコードなど)との整合性を確保します
適切な連携ができていないと、ITFコードを読み取っても在庫システム側に正しく反映されないといった問題が発生するため、初期設定の段階で細かく調整しておくとよいでしょう。
2. 定期的なメンテナンスと運用ルールの整備
ITFコードの読み取り精度を維持するためには、定期的なメンテナンスも重要です。
・スキャナーの動作チェックを定期的に実施します
・印刷精度が劣化していないかを確認します
・コードの配置やサイズが適切に保たれているか検証します
また、現場のオペレーターが正しくITFコードを活用できるよう、運用ルールを明文化し、定期的な教育を行うことも欠かせません。
まとめ
ITFコードは、物流や倉庫管理の現場で活用されるバーコードの一種です。印刷の自由度が高く、ケース単位の管理に適しているため、大量の商品を扱う流通業では欠かせません。JANコードとの違いを理解し、適切に使い分けることで、業務の効率化が期待できます。
導入する際は、取得方法や印刷環境を整え、在庫管理システムと連携させることが重要です。また、スキャナーの動作確認やメンテナンスを定期的に行うことで、安定した運用が可能になります。