受注管理とは、消費者から注文を受ける業務のことをいいます。最近では注文を受けるだけではなく、出荷まで管理することを意味していて、販売管理の一つとなっており、通販やEC運営をしていく際の重要なビジネスの入口となっています。
販売には、さまざまな業務作業があります。作業の効率化のために受注管理を検討する企業もあるのではないでしょうか。
「そもそも受注管理について知りたい」
「具体的な業務内容は?」
「無料と有料の受注管理の違いは?」
本記事では、上記のような疑問をわかりやすく解説します。最後には導入するためのポイントも解説しているので、いざ導入しようと考えている方も最後までお読みください。
目次 [ 非表示 表示 ]
受注管理とは、販売管理のうちの1つで、消費者や企業から注文を受け出荷するまでの流れを管理する業務のことをいいます。最近では、注文を受けるだけではなく、出荷管理まで行なうことを意味している場合もございます。更には新規顧客に見積りを提示、取引契約の締結などを受注管理を行う業務まで含める事もございます。
受注管理と似たような業務に、販売管理や在庫管理があります。それぞれが密接に関わっているため、混同されがちですが、役割には明確な違いがあります。
販売管理との役割分担
販売管理は、売上や取引全体を管理する業務です。具体的には、顧客との契約内容の記録、請求処理、売掛金の管理などが含まれます。一方で、受注管理は「注文が確定してから納品・請求までの流れ」をスムーズに進めるための業務です。つまり、販売管理は全体の売上動向を把握する役割を持ち、受注管理は「顧客が注文したものを正しく届ける」ことに重点を置いていると言えます。
在庫管理との関係性
在庫管理は、倉庫や店舗にある商品の数量や動きを把握する業務です。受注管理と密接に連携しているため、ここがうまく機能しないと、売り切れの商品を誤って販売してしまったり、逆に売れるはずの商品が出荷されないまま倉庫に眠ってしまうこともあります。
たとえば、ECサイトと店舗で在庫を共有している場合、リアルタイムでデータが反映されなければ、店舗で売れた商品がECサイトでは「在庫あり」と表示されたままになり、注文後に「品切れでした」と謝罪しなければならないケースも発生します。こうしたトラブルを防ぐためにも、受注管理と在庫管理は連携し、情報を一元化しておくことが重要です。
受注管理がどのような業務か理解できたと思うので、次は業務内容について解説していきます。
主な業務内容は以下の5つです。
・見積りを作成
・契約締結
・注文内容の登録
・在庫確認と納期の連絡
・受注伝票と注文請書を作成する
順番に解説させていただきます。
見積りを作成
まず、顧客からの注文内容を確認し、見積もりを作成します。
具体的には取引実績取引内容、発注された商品の金額を記載します。競合企業がある場合、比較をするため数回見積りを作成することがあるかもしれません。
契約締結
顧客からの見積もり金額・取引条件などの確認を取ることができたら契約締結です。トラブルを防ぐために、納品前に商品の保証期間や納期、支払い方法、支払い日などを締結前に確認しておきましょう。
注文内容の登録
契約が締結したら、注文内容の登録です。初めて受注する顧客であれば、顧客情報の登録を行います。
また同時に登録情報は、在庫管理部門や生産部門などの担当者に共有されて、本格的な取引が始まります。
在庫確認と納期の連絡
注文を受けると在庫があるかどうか確認しましょう。在庫があった場合は、出荷に向けて準備をし、在庫がなかった場合は在庫を拡充します。
顧客には、出荷状況を連絡するなど丁寧に対応しましょう。そうすることで、顧客の満足度は上がり、信頼にもつながります。
受注伝票と注文請書を作成する
納期が確定したら、商品の明細を記載した受注伝票と注文内容を受領したことを報告する注文請書を作成します。
受注伝票は自社で保管して、注文請書はトラブル防止のため作成しておくと安心です。
受注管理の基本業務フローとその改善について知りたい方は、この記事「受注管理の基本とは?その重要性や業務フローから効率化のポイントまで解説」を読んでみてください。
受注者側のメリットとしては、次の5つが挙げられます。
1. 受注データを一覧で確認できるので、受注の状態が確認しやすい
2. 自社システムに入力する手間がない
3. 発注書の読みにくさで電話確認の手間が減る
4. 受注データから伝票・納品書などが作成できるため、再入力の手間がない
5. 受注データをCSVファイルなどで出力すれば、別のツールでもデータ活用できる
それぞれ解説していきます。
1. 受注データを一覧で確認できるので、受注の状態が確認しやすい
受注した商品は、製造・手配・出荷前・出荷済など発注先に出荷するまで、さまざまな状態があります。
的確に進めていくためには、受注管理がとても重要です。Web受注管理では、一覧で受注の状態を確認できます。結果、納期遅れなどのリスクを考慮した受注管理もしやすくなります。
2. 自社システムに入力する手間がない
再入力の手間や誤入力による架空の在庫などのミスを防ぐためには、受注方法とシステムとの連携が不可欠です。
Web受注管理を導入すれば、受注と同時にデータが追加されるので、受注情報を入力する手間が省けます。
3. 発注書の読みにくさで電話確認の手間が減る
電話やFAXは、「電話確認の手間」や「FAXで発注書の書き間違い、読み間違い」など、さまざまな課題があります。
Web受注管理を導入すれば、手書きではなくデータで届きます。確認の手間が省け、聞き間違いや読み間違いによる誤受注も起こりません。ミスが減るので、受注の際は悩みを減らせます。
4. 受注データから伝票・納品書などが作成できるため、再入力の手間がない
出荷準備ができたら、出荷伝票や納品書の作成が必要です。
このとき手入力にすると、操作ミスする可能性があります。Web受注管理を導入すれば、出荷伝票や納品書などが自動作成でき、受注の際の情報を元に作成するので、間違える心配もありません。
出荷完了メールを送り、受注状態を「出荷済」に変更できるシステムもあります。そうすることで、出荷作業の手間が省けるだけではなく、受注管理もしやすくなります。
5. 受注データをCSVファイルなどで出力すれば、別のツールでもデータ活用できる
Web受注管理には、データ出力機能があるシステムがあります。
CSVファイルとして、エクセルや別システムなどでデータを取り込むことができ、手間がかかる作業のみ解決できるのです。なので、1番重要なシステムを使い続けたいというニーズに応えられます。
ここからは無料で受注管理ができるエクセルシステムを解説します。
無料での受注管理の方法
受注管理表をエクセルで作るには、以下の項目が必要です。
自社で必要なものを選び作成しましょう。
項目 |
具体的な内容 |
会社名 |
企業名 |
連絡先 |
電話番号、メールアドレスなど |
担当者 |
担当者の氏名、フリガナなど |
分類・種別 |
商品の分類や種別を記入、 または選べるようにする |
品名 |
商品名 |
数量 |
受注した数 |
単価 |
商品の単価 |
注文日 |
受注した日 |
納期 |
納期の日にち |
商品コード |
商品のJANコード |
色・サイズ |
商品の色、サイズ |
配送方法 |
配送会社、配送手段、配送日 |
対応状況 |
受注した商品の今の状態 |
品番を入力すれば品名を自動で入力、自動で金額を計算するように、必要に応じてカスタマイズすると良いでしょう。
次に無料で受注管理ができるエクセルシステムのメリットを解説します。
メリットは以下の6つです。
・低コストでできる
・便利なマクロ機能が使える
・外部システムとの連携できる
・誰でも使える
・覚えることが少ない
・部署間で情報を共有できる
順番に解説させていただきます。
低コストでできる
エクセルは購入すれば導入可能で、今やビジネスにおいてスタンダードなツールとなっています。
導入にあたり、専門的な教育がほぼ必要はないので、工数と人件費の削減ができるのはメリットとして大きいです。
便利なマクロ機能が使える
エクセルの機能で1番便利なのは、マクロ機能です。マクロ機能とは、エクセル上で行なった操作を記録し、ワンクリックで動作を繰り返せます。
作業の手間や時間の短縮に有効な機能なので、非常に便利といえるでしょう。
外部システムとの連携できる
エクセルの機能の一つに、外部システムとの連携のしやすさが特徴です。
エクセルとの連携を考慮して設計されたシステムがたくさんあります。なので、入力だけエクセルで行なって、データの収集や集計、統合などは自動で実行できます。
誰でも使える
無料受注システムは、必要と思ったタイミングで、すぐにスタートできます。使いやすさにこだわる場合は、独自のエクセルシートを作成する必要があるので時間がかかるでしょう。始めるハードルの低さはメリットの一つです。
覚えることが少ない
普段からエクセルの使い方を知っている人は、利用するまでに覚えることがほとんどありません。もし使ったことがなかったとしても、インターネットで調べればすぐに出てきます。なので、使いづらさの心配はないでしょう。
部署間で情報を共有できる
エクセルファイルは、部署間で情報を共有できるのがメリットです。受注内容や進捗状況などをファイルに反映しておくと、部署間での情報共有をスムーズに行えます。
また、事務所や倉庫、店舗とデータを共有することによって、受注プロセスが可視化されるため受注ミスやトラブルを発見しやすい体制を構築できます。
メリットを挙げたので、次にデメリットを説明します。
デメリットは、以下の8つとなります。
1. できることが限られている
2. セキュリティが低い可能性がある
3. OSのアップデートに対応できない恐れがある
4. 入力ミスが起きやすく、受注ミスにつながりやすい
5. 複数で管理するのが難しい
6. データ量の増加とともにソフトが重くなる
7. 複数で使用すると、ファイルが重たくなりやすい
8. 関数を使いこなせないと、業務効率化が図れない
順番に解説していきます。
1. できることが限られている
フリーソフトの場合、機能制限や大量のデータを扱えない場合があります。無料版である程度、使い方を試したあと、必要な機能が備わっている料金プランにアップグレードすると、デメリットは解消されます。
2. セキュリティが低い可能性がある
無料版はセキュリティが弱いです。気になる場合は、セキュリティを高める機能が追加されている有料版の検討が必要です。
3. OSのアップデートに対応できない恐れがある
フリーソフトには、作者がアップデートを止めてしまっているものがあります。OSのアップデートに対応した修正が必要な場合でも、動かなくなる可能性があるので注意しましょう。OSをアップデートする前に問題はないか、作者や公式のサイトを確認することが大切です。
4. 入力ミスが起きやすく、受注ミスにつながりやすい
エクセルは、手入力でどんな値でも入力できてしまうので、取引先の入力を間違えたり、正しい取引先に納品できなかったりするなどの入力ミスが起きやすいです。
入力規制や条件付き書式の設定はできますが、完全にミスを防ぐのは難しいでしょう。
5. 複数で管理するのが難しい
エクセルには「共有機能」があります。設定しておけば、複数で作業ができるのでとても便利な機能です。
しかし、グラフやピポットテーブルの機能が制限されてしまうので、受注管理するときの便利機能が使えません。
また複数で使用すると、データ破損のリスクがあるため、管理の負荷が1人に集中しやすいデメリットがあります。
6. データ量の増加とともにソフトが重くなる
関数を使うと、作業が効率化できてとても便利です。
しかし、関数をたくさん入れてしまうと、データ量が増加しソフトが重くなってしまいます。
一つのセルに入力するだけで数十秒かかってしまうので注意が必要です。
7. 複数で使用すると、ファイルが重たくなりやすい
エクセルには「共有機能」があります。便利ですが、複数使うとファイルが重たくなってしまいます。別のツールを検討するなどの対策が必要です。
8. 関数を使いこなせないと、業務効率化が図れない
エクセルは関数や機能が豊富ですが、使いこなせないと意味がありません。関数に慣れるまで時間がかかりますし、しっかり覚えておかないと業務効率化も難しいでしょう。
エクセルを使った受注管理は手軽に始められる一方で、データの増加や業務の拡大に伴い、管理が煩雑になりやすい側面があります。そのため、より効率的な受注管理を求める場合は、専用のシステムを導入するのも一つの選択肢です。次に、受注管理システムにはどのような種類があるのかを見ていきましょう。
次に受注管理システムの種類について説明します。
受注管理ソフトとは、顧客から注文を受けてから発送するまでの業務や処理を一括で管理し、自動化するソフトです。受付業務には、注文を受ける以外に在庫の確認や出荷の手配など、さまざまな業務があります。
導入すると業務を効率化するだけでなく、人的なミスが減り、消耗にかかるコストを削減し、結果として顧客満足度が向上します。
受注管理ソフトの主な機能は以下の4つです。
・受注情報の管理
・在庫管理
・業務の自動化
・他システムとの連携
受注管理クラウドサービスは、インターネットを介して、ソフトウェアを利用する方法です。ソフトウェアをインストール、サーバー用のハードウェアを用意することなく、簡単に導入できます。
低コストで、アップデートやメンテナンスもメーカーが担当してくれることが多く、安心して運用できるでしょう。
システムのインフラを自社で管理できないことや、既存システムや作業フローなどを、導入システムに合わせて変更しないといけないことがデメリットです。
オンプレミス型受注管理システムは、自社独自のインフラがあり、サーバー用のハードウェアを購入することで、機能を自由にカスタマイズできるサービスです。
メリットは、自社のニーズに合わせてカスタマイズできて、インフラを自社で管理できます。
一方、導入に高いコストや時間がかかり、自社での運用コストや管理業務が増えるのがデメリットです。技術者や開発メーカーに依頼することで、自社ならではのシステムを開発できます。
オンプレミス型受注管理システムを選ぶ際に知っておきたいことは、この記事「オンプレミス型受注管理システム徹底ガイド:メリット・デメリットから導入、運用までを紹介」を読んでみて
受注管理システムの導入のポイントは以下の7つです。
・業種に合っているか
・料金が自社に合っているか
・操作しやすいか
・他のシステムと連携できるか
・セキュリティは安全か
・サポートは手厚いか
・マルチチャネル対応しているか
順番に解説していきます。
業種に合っているか
業種・業態によって受注管理が異なるため、自社の業務や管理に合っている受注管理ソフトを選びましょう。
品目数やデータ量、受注管理ソフトの利用可能人数、利用できる機能などについて確認します。
将来的に業務などが変更になる可能性がある場合は、追加のオプション機能が用意されているソフトを選ぶのが最適です。
料金が自社に合っているか
受注管理ソフトを選ぶ際は、料金も確認しましょう。自社に合っていない料金のソフトを選んでしまうと、運用が続けられなくなってしまうからです。
料金体系は、「従量課金制」と「月額定額制」の二種類です。
従量課金制は、受注件数などに応じてシステム利用料が加算されるので、売上が上がるとシステム利用料が高くなる傾向があります。
一方、月額定額制は、受注件数が増えても一定料金で利用可能です。
受注管理ソフトの料金は、利用できる機能や利用可能人数、データ容量などによって異なります。
自社では使わない機能もあり、結果として無駄になってしまうことがあるので、料金や機能はしっかり検討して選ぶようにしましょう。
操作しやすいか
受注業務の効率化を図るためにも、操作しやすい受注管理ソフトを選ぶ必要があります。
せっかく受注管理ソフトを導入しても、操作しにくく手間がかかると現場に浸透せず導入した意味がありません。
スタッフに使い方を教育する必要もあり、コストがかかってしまいます。お試し期間や無料プランが用意されているソフトで、実際に操作をして使い勝手などを確認することが大切です。
他のシステムと連携できるか
受注管理システムを選ぶ際は、これまで使用してきたシステムとの連携ができるかどうか確認しましょう。
受注業務で使用するシステムと連携していないと、情報共有や顧客への連絡が進まず、効率が悪くなる可能性があります。
在庫管理システムや会計システム、メッセージツールなど、利用している既存システムが対応できるかどうかが必要です。
セキュリティは安全か
受注管理ソフトには、個人情報が保存されます。そのため、セキュリティが整っているソフトを選ぶことが重要です。
万が一、個人情報が漏洩してしまうと、自社の信用が一気に低下するだけではなく、損害賠償などのコストがかかってしまいます。
クラウド型の受注管理ソフトを使用する際は、不正アクセスから顧客情報を保護する機能があるかどうかなどを確認しましょう。
他にも、SSL/TLSの採用・セキュリティマークの取得・ISO27001の取得・監視体制などの対策がされているかどうかもチェックが必要です。
サポートは手厚いか
受注管理ソフトを安定して運用していくには、サポートの充実度も大切です。
ソフト導入後に使い方がわからない場合や、トラブルが発生した場合の対応が迅速でなければ、運用に支障をきたします。
どのような問い合わせ手段に対応しているか、サポートの対応時間などをチェックしましょう。
導入ポイントを押さえた上で、どのシステムが自社に合うのかは下記の事例も参考にしてください。
マルチチャネル対応しているか
受注管理システムを導入するときは、マルチチャネルに対応しているかも重要です。マルチチャネルとは、販売活動におけるユーザーとの接点のことです。
マルチチャネル非対応の製品を導入すると、Web以外からの発注を管理できないことになります。結果として効率が悪くなるかもしれません。
またマルチチャネルに対応することで、顧客の幅も広がりチャンスが増えるでしょう。
このように受発注システムを選定するときは、電話やFAXといったWeb以外のさまざまな受注方法に対応できるかどうか確認することが大切です。
対応していないと、発注者側に負担をかけることになるので顧客満足度が下がる恐れがあります。
どのような受注管理システムがあるのかを知りたい場合、厳選された受注管理システムの記事を読んでみてください。
本記事では、受注管理の業務内容とメリットやデメリット、導入のポイントについて解説しました。無料の受注管理は、低コストで誰でも使えるシステムとなっています。しかし、できることが限られていて、セキュリティなどのサポートが整っていないなどのデメリットが挙げられます。
まずは、無料版で操作などの手順を理解したあと、有料版にアップグレードすると良いでしょう。導入する際は、料金体系や業種、セキュリティの安全性などを検討した上で導入するようにしましょう。
導入後、受注管理システムが自社と合わなければ、導入するために費用などが無駄になるので気をつけてください。