受注管理システムを検討するうえで、「クラウドにすべきか、それともオンプレミスの方がいいのか?」と悩むことはよくあります。
近年、多くの企業がクラウド型のシステムを選択していますが、それでもなお「自社に最適なカスタマイズをしたい」「データを外部に預けるのは不安」といった理由で、オンプレミス型を選ぶ企業も少なくありません。では、自社にとって本当に最適な選択肢とは何なのでしょうか?
今回取り上げるのは、オンプレミス型の受注管理システムです。カスタマイズ性の高さや自社運用の自由度が魅力である一方、導入コストや運用の負担が大きいという課題もあります。どちらの側面も正しく理解し、自社にとって最適な判断を下すためには、単なるメリット・デメリットの比較だけでなく、「どのような企業に向いているのか」「導入の流れはどうなっているのか」といった具体的な視点も必要になってきます。
この記事では、オンプレミス型受注管理システムの導入を考える際に押さえておきたいポイントを整理しました。カスタマイズの幅やセキュリティ面でのメリット、導入のハードル、長期的なコストの考え方など、さまざまな角度から解説していきます。また、導入に成功した企業の事例や、逆に苦労したケースも交えながら、より現実的な視点でお伝えします。
「クラウドではなく、オンプレミスを選ぶべき理由が本当にあるのか?」
「導入にどれくらいのコストと時間がかかるのか?」
「運用を継続するうえで、どのような準備が必要なのか?」
こうした疑問にひとつひとつ向き合いながら、導入の意思決定に役立つ情報をお届けします。選択肢に迷っている方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
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受注管理システムを検討するとき、多くの人がまず「クラウドとオンプレミス、どちらがいいのか?」という選択に直面するのではないでしょうか。クラウドの手軽さやスピード感に惹かれる一方で、オンプレミス型を選ぶ企業が一定数いるのも事実です。その理由は何なのでしょうか。
オンプレミス型受注管理システムは、自社のサーバーやネットワーク環境にシステムを構築し、運用する方式です。クラウドと異なり、データやシステムの管理をすべて社内で行うため、カスタマイズの自由度が高く、外部の影響を受けにくいという特徴があります。受注業務の流れを細かく調整したり、特定のセキュリティ基準を満たしたりする必要がある場合、この方式が有力な選択肢となるでしょう。
しかし、導入にはサーバーやソフトウェアの調達、ネットワーク構築などが必要であり、費用や時間がかかります。運用後も、システムの監視やアップデート、障害対応などを社内で対応しなければならず、それなりのリソースが求められます。
では、どのような企業がオンプレミスを選ぶべきなのでしょうか。例えば、受注データを社外に出せない業種や、細かな業務プロセスを反映したシステムを使いたい企業は、クラウドよりもオンプレミスを好む傾向があります。また、長期的な運用コストを考慮すると、クラウドのサブスクリプション費用を払い続けるよりも、自社運用のほうがコストメリットを得られる場合もあります。
一方で、サーバーのメンテナンスや障害対応など、IT部門の負担は決して小さくありません。そのため、運用のためのリソースを確保できるかどうかも重要なポイントになります。
結局のところ、オンプレミス型受注管理システムが最適かどうかは、企業ごとのニーズや運用体制に左右されます。導入に踏み切る前に、自社の業務フローやセキュリティ要件、運用負担をしっかり検討することが欠かせません。
オンプレミス型受注管理システムは、自社の業務に合わせた柔軟な運用ができる一方で、導入や運用には一定の負担が伴います。どんな選択にも良い面と課題があるものですが、それらを正しく理解し、納得したうえで導入を決めることが重要です。ここでは、オンプレミスのメリットとデメリットを詳しく見ていきましょう。
業務に適したシステム設計ができる
オンプレミス型の大きなメリットのひとつが、カスタマイズの自由度が高いことです。受注業務は企業ごとに異なるため、標準的なシステムでは対応しづらいケースもあります。オンプレミスなら、自社のワークフローに合わせて機能を追加したり、不要な機能を削減したりと、最適な形に調整できます。
また、画面のレイアウトを現場のオペレーションに合わせて設計できる点も魅力です。入力の手間を減らしたり、必要な情報を見やすく整理したりすることで、業務のスピードアップにつながります。
さらに、既存の基幹システムや外部ツールとの連携もしやすく、データの一元管理や自動化を進めやすいという強みもあります。
社内での管理・運用ができる
サーバーやネットワークの構成をすべて社内で把握できるため、運用面での自由度が高くなります。例えば、セキュリティポリシーを細かく設定できるため、業界の基準や社内ルールに則った管理が可能です。データを外部に預けることにリスクを感じる企業にとっては、大きな安心材料になるでしょう。
また、クラウド型では提供側のサービス仕様に依存しますが、オンプレミスであれば、システムのアップデートやメンテナンスのタイミングを自社で決めることができます。運用計画を自社の業務サイクルに合わせられるのは、大きなメリットだと思います。
長期的なコスト管理がしやすい
クラウド型は初期費用が低い代わりに、利用する限り継続的にコストが発生します。一方、オンプレミスは初期費用こそ高いものの、長く使うほど運用コストを抑えやすくなります。
また、クラウド型のように、利用する機能やデータ量の増加によって料金が変動することもありません。そのため、一定の期間運用を続けることが前提なら、コスト管理がしやすくなるでしょう。特に、社内にITインフラの専門知識を持つ人材がいる企業では、ベンダーへの依存を減らし、メンテナンスコストを抑えられる場合もあります。
導入時のハードルが高い
オンプレミス型は、導入に必要な準備が多く、時間やコストがかかる点が課題になります。サーバーの購入やネットワークの整備、システム開発など、クラウド型に比べると手間がかかるのは避けられません。
カスタマイズを重視するので、要件定義から開発、テスト、運用開始までのプロセスが長引くこともあります。業務と並行して導入を進める場合、担当者の負担も大きくなりやすいでしょう。
運用・保守の負担が避けられない
システムの管理をすべて社内で行うということは、その分のリソースを確保しなければならないということです。サーバーのメンテナンスやセキュリティ対策、障害発生時の対応など、日々の運用業務が発生します。
オンプレミス環境では、ハードウェアの故障や災害リスクも考慮する必要があります。定期的なバックアップや、障害時の対応マニュアルを整備しておかないと、トラブル発生時に業務が滞る原因になってしまいます。
また、システムのバージョンアップや、セキュリティパッチの適用も社内で管理する必要があります。クラウド型ならプロバイダー側で最新のセキュリティ対策が施されますが、オンプレミスではそれを自社で実施しなければなりません。こうした負担を考えると、十分な人材がいない場合は慎重な検討が求められます。
拡張性の課題がある
システムの利用者が増えたり、扱うデータ量が増大した場合、インフラの増強が必要になります。サーバーを追加するとなれば、そのたびにハードウェアの購入や設定が発生し、手間とコストがかかることになります。
クラウド型なら必要なときにリソースを増減できますが、オンプレミスでは事前に拡張計画を立てておかなければなりません。最初に余裕を持った設計をするのも一つの方法ですが、それには追加コストがかかるため、判断が難しいところです。
また、技術の進化に伴い、古いシステムが時代遅れになってしまうことも考えられます。将来的にシステムの刷新を検討する場合、クラウド型への移行も視野に入れる必要があるかもしれません。
どちらが最適かは企業ごとの事情による
オンプレミス型には、業務に合わせた細かい調整ができる自由度の高さや、長期的なコストコントロールのしやすさといった利点があります。ただし、導入や運用の負担が大きく、管理体制をしっかり整えなければならないという課題もあります。
クラウド型とどちらが向いているかは、企業の方針や運用体制によって変わってきます。今後の業務拡張やリソース状況も含めて、総合的に判断することが大切です。
「カスタマイズ性を重視するか、それとも運用の手間を減らすか?」
「導入コストをかけてでも、自社でコントロールできる環境を作るべきか?」
こうした視点を持ちながら、自社にとって最適な受注管理システムの形を考えてみてください。
オンプレミス型受注管理システムの導入は、単にシステムを導入するだけでは終わりません。検討から運用開始までには、いくつものステップがあり、それぞれ慎重な判断が求められます。導入の流れを大きく分けると、「検討」「実装・構築」「運用・保守」の3つのフェーズがあります。ここでは、それぞれのフェーズで押さえておくべきポイントを詳しく解説します。
オンプレミスを選ぶ理由を整理する
クラウド型の受注管理システムが主流になりつつある中で、オンプレミスを選択するなら、その理由を明確にする必要があります。
セキュリティ上の懸念から外部サーバーにデータを預けられないのか、それとも業務に合わせた細かいカスタマイズが必要なのか。あるいは、長期的なコストを考えたときに、クラウドの月額費用よりもオンプレミスの方が割安になるのかなど、企業によって理由は異なりますが、ここを曖昧にしたまま導入を進めると、「クラウドの方が楽だったのでは?」という疑問が後から出てくることもあります。
オンプレミスにすることで、どのようなメリットを享受できるのかを明確にすることが、最初のステップになります。
業務の課題を整理し、要件を定義する
システム導入で解決したい課題が何かを洗い出し、それに合わせた要件を整理する必要があります。
たとえば、以下のような要件などがあげられます。
・受注処理のスピードを上げたいのか
・ヒューマンエラーを減らしたいのか
・複数の販売チャネルを統合したいのか
これらの目的によって、システムに求める機能は大きく変わります。現場の担当者とも連携しながら、実際の運用フローを特定し、具体的な仕様を固めていきましょう。要件が明確であればあるほど、開発段階でのトラブルを減らすことができます。
サーバー環境やネットワークの整備
オンプレミス型のシステムを導入するには、まず安定したインフラ環境を整えることが重要です。サーバーを自社内に設置するのか、それともデータセンターを利用するのかを決め、必要な機器を調達します。
また、外部からのアクセスやデータ保護のために、ファイアウォールの設定や通信の暗号化も考慮しなければなりません。特に、顧客情報や取引データを扱う場合、セキュリティ対策は慎重に検討する必要があります。
カスタマイズ開発とベンダーとの連携
要件が固まったら、実際のシステム開発に移ります。すべてを社内で開発するのか、一部を外部のベンダーに委託するのかも検討が必要です。特に、基幹システムや他の業務ツールと連携する場合、外部からの協力が必要となります。
運用前のテストと検証
導入したシステムが想定通りに動作するかどうか、運用前のテストを徹底することが求められます。特に、次のようなポイントを確認しておきましょう。
・大量の注文が同時に発生した際にシステムが耐えられるか(負荷テスト)
・受注データが正しく登録され、在庫管理や請求処理と正確に連携しているか(機能テスト)
・権限管理やアクセス制御が適切に設定されているか(セキュリティテスト)
これらを事前にしっかり検証しておかないと、本番環境でトラブルが発生し、業務に大きな支障をきたすことになります。特に、現場の担当者に実際に触ってもらい、操作感を確認することも大切です。
運用体制の整備
システムが稼働し始めた後も、安定して運用するためには適切な体制を整える必要があります。
たとえば、以下のポイントを押さえて運用する必要があります。
・システム管理を担当するエンジニアを社内に確保する
・利用者からの問い合わせを受け付けるサポート窓口を設ける
・必要に応じてベンダーと保守契約を結ぶ
こうした体制がないと、トラブルが発生した際に適切な対応ができず、業務が停滞してしまう可能性があります。特に、障害発生時の対応フローは明確にしておくべきでしょう。
定期的なメンテナンスと障害対応
運用を続けていく中で、システムのメンテナンスは避けて通れません。定期的にソフトウェアのアップデートを行い、セキュリティ対策を強化する必要があります。また、ハードウェアの劣化や不具合にも備え、バックアップ運用をしっかりと管理することが求められます。
障害が発生した場合、どのレベルの問題なら社内で対応できるのか、どこからベンダーに依頼するのかを明確にしておくと、スムーズな対応が可能になります。特に、受注管理システムは業務の中核を担うため、システムが停止すると大きな影響を及ぼします。万が一の事態を想定し、復旧までのプロセスを事前に策定しておくことが重要です。
継続的な改善とアップデート
システムは導入したら終わりではなく、運用しながら改善を重ねていくものです。現場の利用者からフィードバックを集め、使いにくい部分を修正したり、新たな業務ニーズに対応したりすることで、より実用的なシステムへと進化させることができます。
また、法改正や業界の変化に応じて、必要なアップデートを行うことも重要です。定期的な見直しを行いながら、最適な状態を維持できるような運用を目指しましょう。
導入の流れを把握し、スムーズな運用を目指す
オンプレミス型受注管理システムを導入する際には、慎重な準備と綿密な運用計画が求められます。特に、導入の目的を明確にし、運用体制を整えることが成功の鍵になります。
「なぜオンプレミスを選ぶのか?」
「どのような運用体制を整えるべきか?」
こうした問いにしっかりと向き合いながら、自社にとって最適な導入計画を立てることが大切です。
オンプレミス型の受注管理システムを導入する際、事前の準備がどれだけ整っているかによって、その後の運用のしやすさが大きく変わります。導入後に「思ったより費用がかかる」「スケジュールが長引く」といった問題が発生しないよう、コストやスケジュールの管理、リスク対策についてしっかり整理しておきましょう。
初期費用:導入時にかかるコストを正しく把握する
オンプレミス型の受注管理システムは、初期投資が大きくなる傾向があります。代表的な費用項目としては、以下のようなものが挙げられます。
・ハードウェア費用:サーバー機器、ストレージ、ネットワーク設備
・ソフトウェア費用:ライセンス、OS、ミドルウェア
・開発・カスタマイズ費:要件に応じたプログラム開発、システム設定
・設置・構築費用:データセンター利用料、ネットワーク設定、セキュリティ対策
カスタマイズの範囲が広がると、それに伴って開発費が膨らむため、どこまで独自仕様にするのか慎重に判断することが求められます。
運用費用:継続的なコストも見逃さない
導入後も、一定の運用コストが発生します。初期費用を抑えたとしても、運用費用が高額になってしまうケースもあるため、見積もりの際には運用コストもしっかり含めておくことが重要です。
・保守契約費:ハードウェア・ソフトウェアのサポート契約
・人件費:システム管理者、運用担当者
・電力・施設維持費:データセンター利用料、電気代
・アップデート・改修費用:機能追加、セキュリティパッチ適用
運用担当者を社内で確保する場合、人件費は大きな負担になります。ベンダーと連携するか、社内で全て管理するかによって、コストが変わってくるでしょう。
ROIの測定:投資効果をどう評価するか
オンプレミス型システムの導入にあたっては、どれだけ業務効率が向上するのか、売上やコスト削減にどの程度影響を与えるのかを数値で評価することが大切です。
たとえば、以下のようなポイントで評価します。
・受注処理時間の短縮 → 担当者1人あたりの業務量が増える
・エラー削減 → 再発注や返品の減少
・データの一元管理 → 他部門との連携コスト削減
導入スケジュールを慎重に計画する
システムの導入は、単にソフトウェアをインストールすれば完了するものではなく、要件定義、開発、テスト、本番稼働といった複数の段階を経ることになります。そのため、十分な期間を確保し、計画的に進めることが求められます。
カスタマイズの多いプロジェクトでは、仕様変更が発生しやすく、スケジュールの遅延につながることも少なくありません。こうしたリスクを減らすためにも、以下のような流れで進めるのが理想的です。
1.要件定義(1〜2ヶ月):社内の課題整理、ベンダーとの仕様調整
2.設計・開発(3〜6ヶ月):システム構築、インフラ整備
3.テスト・検証(1〜2ヶ月):負荷テスト、運用シミュレーション
4.本番稼働・移行(1ヶ月):データ移行、社内研修、運用開始
これを目安にしながら、余裕をもったスケジュールを立てることが大切です。
リソースの確保とプロジェクト管理
システム導入プロジェクトは、IT部門だけでなく、実際に業務を行う現場担当者も関わることになります。現場からの意見を取り入れつつ、スムーズに進めるためには、各部門との調整が欠かせません。
・プロジェクトリーダーを決める(責任者を明確にする)
・定例ミーティングを設ける(進捗確認と問題の早期発見)
・プロジェクト管理ツールを活用する(進捗を可視化)
これらの工夫を取り入れることで、スケジュールのズレを最小限に抑えることができます。
オンプレミスのセキュリティ対策を理解する
オンプレミスの強みの一つは、データをすべて自社で管理できることですが、その分、セキュリティ対策を自社で徹底しなければなりません。特に、近年のサイバー攻撃の高度化を考えると、外部からの侵入対策だけでなく、内部の情報管理もしっかりと行う必要があります。
物理的なセキュリティも考慮する
システムの安全性を確保するためには、データの管理場所にも注意が必要です。
・社内サーバールームの管理(入退室制限、監視カメラ)
・データセンターの利用(耐災害性、セキュリティ対策)
・ホスティングサービスの活用(一部管理をアウトソース)
どの方法を選ぶにしても、ハードウェアの故障や災害に備えた対策を講じることが不可欠です。
BCP(事業継続計画)とDR(災害復旧)対策を準備する
システムが停止してしまった場合、業務がどのように継続できるのかを事前に考えておく必要があります。
・定期的なバックアップを実施する(データ消失リスクを最小限に)
・復旧手順を明文化する(障害発生時の対応を迅速化)
・代替手段を用意する(万が一の際の手作業フロー)
これらの準備を怠ると、トラブル発生時に業務が長期間ストップする可能性もあります。導入前の段階から、万が一の事態を想定しておくことが重要です。
オンプレミス型受注管理システムを導入した後も、安定して運用を続けるためには適切な管理体制が必要です。特に、トラブル対応やメンテナンス、将来のアップデート計画をしっかり整えておかないと、思わぬ業務停滞を招くことになりかねません。ここでは、運用体制の確立からメンテナンス、長期的なシステム維持について整理していきます。
社内と外部の役割を明確にする
運用がスムーズに進むかどうかは、関係者の役割分担が明確になっているかにかかっています。オンプレミス型の場合、サーバーやネットワークの管理、システムの更新、ユーザーサポートなど、多岐にわたる業務が発生するため、それぞれの担当領域を決めておくことが重要です。
・システム管理者:サーバー・ネットワークの監視、トラブル対応、セキュリティ管理
・開発ベンダー:システムの改修、バージョンアップ対応、技術的な問い合わせ対応
・利用部門:日常的なシステム利用、問い合わせ受付、業務プロセスの調整
システム管理者が少数の場合は、ベンダーと適切に連携し、負担を分散する仕組みを考えることが求められます。
トラブル時の対応フローを整理する
システムの障害や不具合は、業務に与える影響が大きいため、事前に対応の流れを決めておくと安心です。例えば、以下のようなフローを設けておくと、スムーズに対処しやすくなります。
1.一次対応(利用者が発見し、システム管理者に報告)
2.原因調査(システムログやネットワーク状況を確認し、影響範囲を特定)
3.復旧作業(社内対応が難しい場合は、ベンダーへ連絡)
4.事後対策(原因の分析と、再発防止策の検討・実施)
また、影響度のレベル(軽微な不具合・業務に支障が出る障害・全システム停止)を決めておくと、より迅速な対応が可能になります。
SLA(サービスレベル合意)と運用マニュアルの作成
運用ルールを関係者全員が共有できるよう、SLA(サービスレベル合意)と運用マニュアルを整備しておくことも重要です。
SLAのポイント
・保守対応の範囲(社内対応とベンダー対応の切り分け)
・依頼から対応までの時間(軽微な問題は◯時間以内、重大な障害は◯時間以内など)
・定期メンテナンスの頻度
運用マニュアルの内容
・障害対応時の手順
・システム変更の申請・承認フロー
・バックアップとデータ復旧の手順
これらを整備することで、運用が属人的にならず、誰でも一定の対応ができるようになります。
障害発生時の原因特定と対応
システムに問題が発生した際、復旧を急ぐあまり、原因を特定せずに場当たり的な対応をしてしまうケースは少なくありません。問題を再発させないためにも、障害の切り分け手順をあらかじめ決めておくことが重要です。
1.ネットワーク・サーバーの異常を確認(通信障害なのか、ハードウェアの問題なのかを特定)
2.アプリケーションログを分析(システムのエラーログや操作履歴をチェック)
3.データベースの負荷状況を確認(クエリの処理遅延やデータ破損がないかを確認)
このように段階的に調査することで、適切な対応が取りやすくなります。
定期的なメンテナンスを実施する
システムを安定稼働させるためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。主な作業として、以下のようなものが挙げられます。
・パッチ適用(セキュリティ更新、バグ修正)
・バックアップ管理(データの保管場所と頻度を適切に設定)
・ログ監視(異常がないか、日々の記録をチェック)
特に、バックアップは定期的に復元テストを行い、「いざというときに使えない」とならないようにしておくことが大切です。
運用コストの最適化とベンダー契約の見直し
運用を続ける中で、「導入当初は適切だったが、今の契約内容では負担が大きい」と感じることが出てくるかもしれません。
例えば、以下のような内容となっております。
・保守契約の範囲を見直す(自社対応できる部分を増やし、外部コストを削減)
・ハードウェアの更新タイミングを調整する(古い機器の維持コストと、新規導入コストを比較)
・クラウドとのハイブリッド運用を検討する(一部の業務をクラウドに移行することで、負担を軽減)
こうした見直しを定期的に行うことで、運用負担を最適な状態に保つことができます。
法改正や業界規制への対応
受注管理システムは、業界や法律の変更に合わせて適応していく必要があります。
例えば、以下のような状況に合わせて変えていきます。
・インボイス制度や電子帳簿保存法の改正
・税率の変更や請求書フォーマットの更新
・データ保管ルールの変更(GDPRや個人情報保護法など)
これらに対応できるよう、常に最新情報を収集し、必要なシステム改修を計画的に進めることが求められます。
機能追加やシステム構造の見直し
長期的に運用するには、システムを成長させていく視点も欠かせません。
・モジュール化を進め、新機能追加を容易にする
・外部システムと連携しやすいAPI設計を取り入れる
・パフォーマンスを改善するための最適化を継続する
定期的に現場の声を聞きながら、「今のシステムが使いやすいか?」を確認し、改善を続けることが重要です。
クラウド移行を含めた定期的な評価
オンプレミスで運用を続けるのか、一部をクラウドに移行するのかも、定期的に見直すべきポイントです。インフラの維持管理が負担になってきた場合、ハイブリッド運用を検討するのも一つの手でしょう。
オンプレミス型受注管理システムの導入を検討する中で、よく聞かれる疑問をまとめました。クラウド型との違いや導入コスト、必要なスキル、セキュリティ対策について整理しているので、判断の参考にしてください。
クラウド型とオンプレミス型、どちらを選ぶべき?
どちらの方式が適しているかは、企業の業務要件やセキュリティポリシー、社内のITリソースの有無によって変わります。
オンプレミス型が向いているケース
・高度なカスタマイズが必要で、市販のシステムでは業務にフィットしない
・重要な取引データを外部に預けたくない、もしくはセキュリティ要件が厳しい
・長期間の運用を見据えており、クラウドの月額料金よりトータルコストを抑えたい
クラウド型が適しているケース
・初期費用を抑え、短期間で運用を開始したい
・システムの保守やインフラ管理を自社で担うのが難しい
・業務の変化に合わせて、柔軟に拡張・縮小できる環境が欲しい
どちらにもメリットとデメリットがあるため、自社の状況を整理したうえで判断することが重要です。
オンプレミス型の導入費用はどのくらい?
導入コストは、サーバー台数やライセンス費、カスタマイズの内容によって大きく変動します。
主な費用項目
・ハードウェア(サーバー、ストレージ、ネットワーク機器):数百万円〜
・ソフトウェアライセンス(OS、データベース、アプリケーション):数十万〜数百万円
・開発・カスタマイズ費用(システム設計・機能追加):規模によって数百万円単位
・設置・初期設定費用(サーバー設置、ネットワーク設定):社内で対応するか、外部委託するかで変動
特に、カスタマイズを多く盛り込むと、開発費が膨らむ傾向があります。一方で、シンプルな構成で導入するなら、ハードウェアとライセンス費用を中心にコストを抑えることも可能です。
長期的な運用を考えた場合、クラウド型の月額利用料と比較しながら、どの程度の期間で費用回収できるかをシミュレーションすると、より判断しやすくなるでしょう。
運用に必要な人員やスキルセットは?
オンプレミス型システムの運用には、社内での管理が欠かせません。最低限、以下のスキルを持つ人材が必要になります。
必要な技術スキル
・ネットワーク管理(ルーターやファイアウォールの設定、トラフィック監視)
・サーバー管理(OSの更新、ストレージ管理、障害対応)
・データベース管理(バックアップ運用、クエリ最適化、データの整合性チェック)
・セキュリティ対策(アクセス制御、ログ監視、脆弱性対応)
外部ベンダーとの連携スキル
すべての作業を社内で対応するのは難しいため、システムの開発・保守を担当するベンダーとの連携も重要になります。システムの仕様変更やトラブル対応を円滑に進めるためには、以下のようなスキルが求められます。
・障害発生時の切り分け(どこに問題があるのか迅速に判断する力)と対応力
・仕様の理解と調整(現場の要望をシステム要件に落とし込む能力)
・ベンダーとの交渉・依頼スキル(費用や対応範囲を適切に管理する力)
社内にこれらのスキルを持つ担当者がいない場合、外部のITサポートサービスを契約し、一部をアウトソースするのも一つの方法です。
セキュリティ対策はどの程度必要?
システムの重要度や業務で扱うデータの機密性によって、求められるセキュリティレベルは変わります。ただし、最低限確保すべき対策として、以下のようなポイントが挙げられます。
基本的なセキュリティ対策
・ファイアウォールの設定(外部からの不正アクセスを防ぐ)
・アクセス制御の強化(必要な権限のみを付与し、不要なユーザーアクセスを制限)
・定期的な脆弱性診断(システムのセキュリティホールをチェックし、必要な対策を講じる)
業種ごとに求められる対策
・金融・医療分野:データ暗号化、二重認証、厳格なログ管理
・製造・小売業:在庫・取引データの保護、サプライチェーンとの安全なデータ共有
・公共機関・インフラ業界:国内の規制やガイドライン(ISMS、Pマークなど)への準拠
また、ハードウェアの障害や災害に備え、バックアップをオフサイトに保管する、サーバーの耐障害性を高めるといったリスクヘッジも重要です。
オンプレミス型受注管理システムは、高度なカスタマイズやデータ管理の柔軟性が魅力ですが、導入や運用にはコストや人的リソースが必要です。導入前には、業務要件の整理やコスト・運用負担の見積もりが欠かせません。
適切な運用体制を整え、定期的なメンテナンスやセキュリティ対策を講じることで、長期的に安定した運用が可能になります。クラウド型との比較を踏まえ、自社にとって最適な選択肢を検討し、導入後も継続的な改善を意識することが成功の鍵となります。