不動産業界でのオンライン接客とは、従来のようにモデルルームや店舗への誘導や個人宅の訪問だけでなく、ビデオ会議サービス等を活用して、モデルルームに訪問しなくても紹介したり、面談したりすることになります。
では、不動産業界におけるオンライン接客の現状はどうなっているのでしょうか? オンラインだからこそ生まれるメリットがある一方で、デメリットも存在します。
今回、不動産業界におけるオンライン接客の最新事情を、オンライン接客におけるメリット、デメリット、導入事例にてまとめて紹介させていただきます。
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不動産における業務フローとしては、モデルルームへのご来場もしくは店舗への来店、物件の紹介、お客様のご要望に対する設備のカスタマイズを盛り込んだ提案書と御見積概算の提出、お客様とのやりとり(場合によっては来店もしくはお宅への訪問も含みます)、契約書の準備、契約書の締結、物件引き渡し、引き渡し後のフォローとなってきます。
この不動産特有の業務をオンライン上で行う接客となります。
モデルルームのご紹介、お客様のご要望に対する提案書と御見積に関する質問などをなどさまざまな部分にて実施できます。具体的に何ができるのかを見ていきます。
不動産産業界におけるオンライン接客では以下のようなことを実践することができます。
オンライン物件内覧・内見、オンライン商談、オンライン重要事項説明(オンライン重説)になります。
オンライン物件内覧・内見
オンライン物件内覧・内見とは、ビデオ通話による接客ツール等を利用して不動産業者が物件の内部を歩きながら一つ一つ紹介していくことです。リアルでは一緒に物件の中に入って案内することをオンライン上で行います。
内覧・内見中にお客様から質問が出てきたら、その場で応対することができます。また、内覧・内見中に気になる場所があれば、そこを重点的に映して接客することもできます。
例えば、「靴を多く持っているので、靴の収納はどうすればよいのか。窓の外の景色はどのようになっているのか」「天井の高さはどれくらいあるのか」「寝室はどれくらいの大きさがあるのか」「ソファーが大きいので全体を歩き回ってもらい、どこにおけそうか考えたいのだけれども」など、いろいろな質問やご要望にその場で対応することができます。
また、お客様から求められれば、物件の周辺環境や最寄り駅までの道のりを映像で映しながら紹介することも可能です。
オンライン接客でよいことは、オンライン越しだからこそ、伝わりづらいところがあると認識しているので、顧客からすると逆に質問しやすいというメリットがございます。
オンライン商談
不動産業界のおけるオンライン商談とは、ZOOMやマイクロソフトのteamsなどのオンライン会議ツールを通じてお客様に対して物件についての補足説明をしたり、後ほど説明する重要事項説明を行うことになります。
今までのように物理的な距離や時間の問題できめ細かく行うことが出来なかった顧客フォローもオンライン接客ならお客様としても伺う必要がない、もしくはご自宅に訪問されることがない分、気軽にお話しすることができます。そのため、顧客との接触頻度が上がることによる顧客満足度の向上にもつながります。
IT重説(オンライン重要事項説明)
IT重説(オンライン重要事項説明)とは、賃貸契約や不動産売買の時に不可欠な重要事項説明を、オンライン会議ツールを利用してお客様に行うことです。
今までは重要事項説明は実際にお会いする形で実施する必要がありました。しかし、賃貸契約の場合、2017年からIT重説が承認されました。不動産媒体契約の場合、2021年4月から実施可能となりました。
このため、今まで出来なかった重要事項説明をオンライン上で行うことができるようになりました。オンライン接客ツールで映し出される画面に共有された重要事項説明の書類を見ながら説明を受けることができます。説明途中分かりづらいところについては質問をすることもできます。オンラインのほうが分かりづらいとお互いに認識している分、説明を受けているお客様は質問をしやすいと思います。
従来なら物件を見に行くには距離があるお客様の場合、今までの住環境とは大きく変わるので物件として選ぶ際(特にマンションや戸建て住宅の購入の場合)に対象から外していたケースも多々あると思います。
1つは住み慣れたエリアでないので土地勘がないから住むのは躊躇してしまうケースが多いと思いますが、その思いがあるときにわざわざそのエリアまで足を運んで物件を見るにはかなりの気力が必要となってきます。
折角物件が良さそうだし、住むエリアも良さそうだねと思ったとしてもです。ただ、オンライン接客なら心理的ハードルが下がるだけでなく、物理的な移動をしなくて良い分時間を使わないから他の物件も見てみようという気になると思います。そのため、今までと違い、遠方のお客様からのお問合せを増やせる可能性があります。
オンライン接客の場合、お客様が来店する移動時間やコストが省けることと、ちょっとした質問に対してもオンラインで打ち合わせが簡単にできるため、顧客との接点を増やすことができます。お客様との接点を増やすことができれば親密さが増すので成約につながる可能性があがります。
オンライン接客の場合、店舗に行かなくてよい分、お忙しい方でも打ち合わせの日程を取る時間が取りやすくなります。共働きしている家族の場合、週末や夜になるケースも多いと思います。そのような家族に対しては、打ち合わせがしやすいということは顧客満足度を向上させるためには重要なこととなります。
オンライン接客を導入すると、お客様との商談回数を増やすことができます。お客様の個人宅に訪問する移動時間や交通費を削減することができます。また、モデルルームでのご内覧のみですと営業担当を何人も配置する必要がございましたが、オンライン予約なら予約状況に人員を配置することができるため、スタッフの待ち時間を削減することができます。
また、予約がないときには、他の業務に従事させることもできたり、忙しいモデルルームに人員を配置すればよいので、業務に対して最適化を図ることができ、コスト削減をしながら売上アップのための人員配置をすることができます。
オンライン接客を実現するには、IT設備投資が必要となります。ビデオ通話サービスや高性能カメラ、通信機器などを初期投資する必要がございます。
また、オンライン接客の内容によって選ぶツールが変わってきます。無料サービスで事が足りるケースもあれば、最高品質のオンライン接客ツールを導入しなければならない場合もございます。
一度オンライン接客ツールと設備を導入すると運用コストも継続的に発生します。
この初期投資と継続コストを合算したトータルの投資金額とリターンとしてのオンライン接客を天秤にかけてどのようなオンライン接客をするのかを決めていく必要がございます。
また、オンライン接客を行うのはスタッフになるため、教育する必要がございます。対面接触のスキルをそのまま応用できる部分とオンライン接客専用にスキルを開発してスタッフを育成していく必要がございます。このオンライン接客専用スキルを向上させるためには教育に対して投資をする必要がございます。
不動産会社ごとに提供したい顧客体験に違いがあるため、オンライン接客の仕方も違ってきます。単純にウェブ上で接客すればOKという話にはなりません。不動産物件によっては顧客層が大きく変わるのが不動産業界の特徴だからです。
高級マンションからファミリー層のお客様まで幅広い顧客層に対応する不動産会社の場合、オンライン接客を実現する機器の購入やサービスの導入前に、どのようなことを実現したいのかを検討していく必要がございます。
オンライン接客の顧客体験のコンセプトと全体像を設計した後に、必要なIT設備の購入やサービスを契約していけばよいのです。
不動産会社が具体的にどのようにオンライン接客を実施しているのかを紹介させていただきます。
不動産会社におけるオンライン接客の事例を紹介させていただきます。モデルルームの内覧をオンラインで展開できると集客件数を一気に増やすこともできます。また、不動産は一生に一度の買い物になるため、住まいの相談コンシェルジュの立ち位置をとれると非常に有利にビジネスを展開することもできます。
不動産業界における具体的なオンライン接客事情・事例を紹介させて頂きます。
不動産 オンライン接客事例:アパマンショップ
画像引用元:アパマンショップ公式サイト
アパマンショップは、ほぼオンラインで完結するフルセットでオンライン接客を提供しております。具体的には、物件の内覧、重要事項説明(重説)、書類の郵送まで全てをオンラインで対応しております。スマホでもPCでも対応することができます。
アパマンショップでは、基幹システム「AOS」を独自に開発し、物件の説明を行います。マンションの内乱については、日時を決めた後に、スタッフとネット上で接続してマンションを内覧してもらいます。契約に際して必要な重要事項説明もオンラインで行い、契約に必要な書類も郵送されてくるので、一度も対面することなくお部屋を決めることができます。
不動産 オンライン接客事例2:三井不動産レジデンシャル
画像引用元:三井のすまい
三井不動産レジデンシャルでは、お客様がご自宅にいながら、オンライン上で営業担当者が同じ画面映し出された資料・写真・動画を見ながら説明をしているとのことです。
資料、写真、動画として間取り図、眺望、モデルルームやお部屋を写真や動画などを使って説明していきます。
不動産 オンライン接客事例3:野村不動産ソリューションズ
画像引用元:野村不動産ソリューションズ
野村不動産ソリューションズでは、「おうちでモデルルーム」と称して、相談会、モデルルームも全てオンラインで行う取り組みもしております。このサービスの面白いことは、特定物件の営業をしないことをサイト上にて公言していることと、更にはご購入をおすすめしない場合もあることを明記していることです。
オンライン相談はお気軽そうでお気軽でないのではないかと思ってしまうユーザーからすると安心感のある打ち出し感になっております。また、サイト上にてウェビナー^で「家を買うタイミング・家族が増えた編」、「営業されないってホント?~オンラインコンシェルジュとは?」などを提供しております。実際にオンライン相談をする前に野村不動産ソリューションズだけでなく不動産購入に対してもいろいろと知ってもらう試みを展開しております。
不動産業界におけるオンライン接客について如何でしたでしょうか?不動産会社では徐々にオンライン接客が浸透してきております。オンライン上での相談のみでなく、モデルルームの初回も含めてオンライン上で実施ができる企業が増えております。今後、オンラインとオフラインを活用した接客サービスを提供することが重要となってきます。