オンライン接客とは、IT技術を活用することによりリアル店舗やイベントで対面接客をするのではなく、ビデオ通話やインターネット上で行う非対面による接客になります。そのため、メッセンジャー、メール、ZOOMなどが含まれます。
今回、オンライン接客を導入することによるメリット、デメリット、オンライン接客の方法と実現するためのツール、導入事例などを紹介させて頂きます。
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オンライン接客(Online customer serviceの英訳)とは、メール、SNS、LINE等のメッセージアプリ、ビデオ通話サービスのようなデジタルツールを活用した被対面方式で行う接客になります。
接客するにもAIが接客する場合と人が接客する場合がございます。Web会議サービスを活用して予約制にてスタッフが接客をする方法もあれば、サイトを訪問したときに、画面下に「何か必要なことはございますか?」と案内が出てきて、回答をするとそれに沿った次の質問が出てくる無人での接客方法もあります。
この応対に対して事前に質問を設定してお客様に選んで頂きながら回答するケースもあれば、AIにて対応させるケースもあります。
このようにデジタル技術の進化とともに、オンライン接客できる方法が増えているだけでなくAIによる応対の精度も上がってきております。
店舗がない地域でも接客が可能
ECサイトには店舗のように物理的な距離が関係ないので商圏が存在しません。そのため、今までアプローチ出来なかった方に対しても接客をすることができます。お店が近くにないからなかなか行けなかったという方に対してもオンライン接客を提供することで今まで以上に来てくれる可能性がでてきます。
つまり物理的な距離がなくなるので、接客を受けたい方にとっては、オンライン接客は魅力的なため集客力が上がることにつながります。
店舗のような接客を受けたい方(店舗でのサービスを好む方)にとっては、距離がある店舗には行きづらいので行かない可能性もあることとECサイトにも訪問する可能性が少ないため、オンラインビデオ通話などのデジタルツールを活用すれば店舗での接客に近い接客をオンラインで受けることが可能となり、このような層に対して集客力を高めることができます
接客の質アップによる購入率と客単価の向上
ビデオ通話ツールやウェブ会議ツールを活用すれば、リアルタイムかつ双方向なコミュニケーションが可能になることは当然ですが、顧客の表情や仕草などからもお客様のニーズを掴むことができるので、店舗で受けられるようなきめの細かい丁寧な接客をインターネット上で展開することができます。
このため、店舗での接客を好む方にとっては、オンライン接客ができないECサイトで購入するときよりも多くの商品を購入してくれる可能性があります。なぜなら、このような顧客層は、分からないことがあるとすぐにスタッフに質問したいというニーズを持っているため、オンライン接客を通じてその場で疑問を解決できれば、より多くの商品を購入する可能性が高まるからです。その結果、客単価の向上も期待できます。
また、機能が多い家電製品や、組み合わせが重要なアパレル、高額商品など、消費者が購入を迷いやすい商品では、オンライン接客を活用することで、購入率や客単価の向上が期待できます。
例えば、「気に入った服を見つけたものの、自分に合うサイズが分からない」「今持っている服と上手く組み合わせられるか分からない」「商品は品質が良いが、価格が高いため迷っている」といった状況では、これらの理由で購入をためらう可能性があります。しかし、このような場合に気軽にオンライン接客を利用できれば、疑問が解消され、購入に至るケースが増えます。
顧客ロイヤリティの向上
実店舗にて顧客満足度の高いスタッフがビデオ通話サービスやオンライン会議サービスを利用してオンライン接客に対応すれば、そのスタップが接客をしている店舗に今まで行けなかった方がその接客を受けることで顧客満足度を上がりファンになる可能性があります。
また、既にそのスタッフの接客を受けてファンになっている顧客に対しても接客を提供できるので顧客ロイヤリティを更に向上させることができます。
実店舗の人員を活かした収益性の向上
エリアや時期、時間帯によって繁忙期になる店舗もあれば閑散期となる店舗もございます。マンパワーに余裕のあるスタッフをオンライン接客に回せば、新たな収益源となる可能性がございます。また、マンパワーの最適化をすることができるため、効率的に接客する体制を築くことができます。
また、店舗で接客をするメンバーの在宅勤務は非常に難しいと言われていたのですが、オンライン接客によるメリットを上手く顧客に伝えることができれば、在宅勤務も可能となり、時短社員などの活用の幅も増えます。そのため、在宅勤務を希望するスタッフの要望に応えやすくなり離職率も低下する可能性があるため、優秀なスタッフが退職するのではなくオンライン接客をして頂くことで人材確保という側面からも経営を効率化することができます。
オンライン上での接客をどのように実現するか
オンライン接客といっても、企業ごとに異なります。単にビデオ通話サービスを利用すればよいという話ではございません。なぜなら同じような機能でも提供しているツールによっては微妙に違うことと、デザイン(インターフェイス)も違います。デザインが違えば、接客を受ける顧客の接客体験も当然変わってきます。
そのため、自社の接客スタイルに合ったデザインや機能を選ぶ必要があり、場合によっては1つのツールだけでなく、複数のツールを組み合わせる必要がでてきます。
自社の接客をどのように提供するのかという全体像を設計するとともに、各ツールのインターフェースが与える印象とリアルで提供しているサービスとのギャップを考慮しながら、運用を設計する必要があります。
運用設計費とランニングコストがかかる
オンライン接客を実施するには、さまざまなデジタルツールの活用が必要です。無料で提供されているツールもありますが、利用回数や1回あたりの時間などに制約があるため、最大限に活用するには有料プランの利用が必要になる場合があります。
そのため、どのような接客を実現したいのかを考慮した上で、適切なサービスを選ぶことが重要です。
また、オンライン接客を顧客に体験してもらうには、先ほど述べたように、体験の仕方を設計する必要があります。この設計を社内で完結させる場合は、社員の人件費のみで済みますが、外部のコンサルタントや協力企業を活用する場合は、その企画や設計にかかる費用も別途発生します。
スタッフ教育に対する教育時間
オンライン接客は利用するツールによってはリアルな店舗と類似する顧客体験を提供できますが、リアルとオンラインでは同じ双方向でリアルタイムなコミュニケーションでも伝わり方が違うため、オンラインに合わせたスタッフ教育も非常に重要となります。
感じ方が変わる分、その差異を理解した上で接客体験を設計するだけでなく、スタッフを教育していく必要があります。この接客スキルを向上させるための教育の費用と手間がかかります。
ビデオ通話システム/ Web会議サービス
オンライン接客の方法の中で最も対面に近い顧客体験を提供したい場合、ビデオ通話サービスやweb会議サービスをご利用することをおすすめします。Web会議サービスならzoom、Microsoft teams、whereb、livecallなどをポピュラーなサービスとなります。ビデオ通話システムの場合、bellFace、FreshVoice、V-Cubeミーティングなどがございます。
ビデオ通話システムとweb会議サービスの違いは、テレビ会議システムでは専用端末を使う必要があり、専門端末同士をツナグと通信の安定性が非常に高いです。リモコン1つで操作ができるのでパソコンが苦手な方でも利用できます。他方、web会議サービスではインターネットにつながればどこでも利用できます。
SNS
オンライン接客ではお客様にストレスを与えないようにするために顧客体験を円滑に提供することが非常に重要となります。日頃から利用されているLINE、Instagram、Twitter、Facebook等のチャット機能やライブ動画配信機能などを活用することにより、お客様に気軽に利用してもらえます。
LINEの場合、ビジネスアカウントを設定することにより個別でチャット対応をすることができます。また、SNSのライブ機能を使えば、不特定多数に対して動画による接客をすることができます。このようなメリットがあることがSNSによるオンライン接客の特徴になります。
他方、デメリットとしては、ツール事に特徴が違うため、それに合わせて使い分ける必要がございます。特徴を活かしたコンテンツを手配する手間が発生します。
メール
お問合せフォームを設置して、お問合せが来た方に対してメールにて顧客からの質問に応対する昔から利用されている接客方法です。メールでの接客のメリットは、気軽に利用できることです。運用者側もお問合せがきたら、応対すればよいので効率が非常によいです。
他方、デメリットとしては、メールの場合、文字や画像で接客をするため、複雑な説明が必要な商品などの場合、かなりスキルをもったスタッフでないと説明不足になる可能性がございます。来店予約や返品方法などのちょっとしたお問合せでは非常に気軽に利用できる便利な接客方法です。ただ、即時性がないため、緊急で対応して欲しい顧客にとっては不向きな接客ツールとなります。
チャット
チャットは、メールのようにお問合せに対する応対をすることができます。また、即時に対応してくれるケースが多いため、顧客にとっては緊急性が高いお問合せに対応して欲しい場合、非常に便利なツールになります。テキストと画像だけでのやりとりになりますが、短い文章でやりとりができるため、顧客と運営者にとっても使い勝手がよいです。他方、デメリットとして、チャットに対応するスタッフを常時待機させていないといけないため、人件費が多くかかってしまう可能性があることと、お客様が即対応を求めているため、直ぐに対応しないと顧客満足度が下がる可能性が出てきます。
チャットボット
ウェブサイトに訪問してき方に対して画面の下から「お困り事はございませんか」という案内が表示させて、無人でオンライン接客をするためのツールになります。お問合せに対してAIが自動的に最適な回答をしていきます。そのため、人を配置する必要がないことが特徴です。AIの回答に対して違う回答を聞きたい場合、有人のチャット・お問合せフォームから連絡することも可能です。メリットとしては、お客様からのさまざまな質問に対してAIが回答をしていきます。データをしっかり学習させておけば多人数に対して同時に応対できることです。また、人を配置するのに比べてコストが低い可能性が多いです。他方、デメリットとして学習データがそれほど内場合、もしくは特殊な応対が多い場合、AIによる接客だけでは不十分な場合がございます。この場合、有人に質問できるチャットやフォームへの誘導で対応できれば顧客満足度を下げることはございません。
ポップアップ
訪問履歴や閲覧状況などのデータをもとに、最適なタイミングでポップアップを表示します。ウェブサイトに訪問してきた際に画面の下から「お困り事はございませんか」という案内が表示されることが一般的です。そこには単一もしくは複数の質問が並んでおり、該当している質問に対して選択をしていくと回答が見つかるという方式になります。
メリットとしては安価な運用費用で運営できることです。また、頻度が高い設問を事前に設定しておけば、簡単な質問に対してその場で回答が見つかることも特徴なため、FAQページで質問一覧から顧客に探させることに比べると大幅に顧客体験を改善することができます。
ただ、デメリットとして事前に質問項目がきまっているため、回答にマッチしそうな質問がない場合、よい顧客体験が出来ないこともございます。また、単一な質問だけだと優れた顧客体験を提供することは難しいため、事前に設問の設計をどうするのかをページごと・閲覧状況ごとに設定する初期コストがかかります。
オンライン接客について導入ポイントが幾つかありますが、今回3つに絞って紹介させて頂きます。
自社に合ったオンライン接客とは何かを検討する
業界ごとに提供する商品・サービスが違うため、どのような接客をすればよいのかは変わることは当然ですが、会社ごとにも変わってきます。自社ブランドを考慮して提供する内容を決める必要がございます。
例えば、ファーストフードと高級料亭では提供できるオンライン接客が変わってきます。ファーストフードではウェブ会議サービスを活用した丁寧な接客よりもスマホを使ってスムーズに商品を注文することができることや、デリバリーをしてもらうほうが重要となります。高級料亭では予約確認や事前にアレルギーの確認、その他接待ならそれに対する特別な対応について打ち合わせをするためにWEB上で行うかも知れません。
つまり、会社ごとに提供すべきオンライン接客のやり方が変わってきます。
オンライン接客は、デジタル技術が重要で無い
オンライン接客が重要だからといって、ツールを導入すればよいという訳ではありません。最初にどのような接客を行うかを考えて、その接客を具現化するために必要なツールを選んでいく必要があります。そのため、最先端な技術が重要というわけではなく何をしたいかが需要となります。
顧客の行動に対して邪魔にならない
意外に簡単なようで難しいのがこの顧客の行動を邪魔しないということです。いきなりポップアップが表示されてスクロールがしづらくなったりしたことはないでしょうか?また、フォームに入力するスペースが狭すぎて入力がしづらいということもこの顧客体験を邪魔することに該当します。
更にはどこにあるか分からないなど様々な要因によって顧客行動を阻害するケースはないでしょうか。
この顧客行動に対して邪魔をしないということは当たり前のようで非常に難しいです。
顧客にどのようなオンライン接客を提供すべきかを十分に検討してから、インターフェイスの設計、ツールの選択、ツール感の接続性なども含めて検討していく必要がございます。
オンラインを成功させるポイントについてこの記事「オンライン接客を成功させるための5つのポイントを紹介」を読んでみてください。
ここまではメリット・デメリット、オンライン接客の方法、導入ポイントについて解説させて頂きました。ここでは具体的なオンライン接客に関する事例をアパレル、不動産、求人において幾つか紹介をさせていただきます。
アパレルでのオンライン接客として、服のサイズ感や素材について知ったり、手持ちの服とのコーディネートを相談できれば購入率が格段にあがります。そのため、ファッションアドバイザーを立ててオンライン接客をするというサービスがアパレル業界にて標準化されてきております。具体的な事例を紹介させて頂きます。
ファッション オンライン接客事例:ベイクルーズ
JOURNAL STANDARD、EDIFICE、EMILY WEEK、Spick and Spanなどの多くのブランドを展開するベイクルーズでは、ZOOMアプリを活用してファッションアドバイザーによる相談ができるオンライン接客サービス「Online Styling Service」を提供しております。
日頃から活用しているZOOMを使えば誰でも受けられる接客となり、自宅からファッションについて相談ができるため、どのようなアイテムを購入するのか迷っている場合、事前にアドバイスがもらえるため、お客様にとっても今までに無いパーソナルファッションコンサルを受けることができます、完全予約制で60分間受けることができます。
ベイクルーズ「Online Styling Service」
画像引用元:ベイクルーズ公式サイト
また、ライブスタイリングにて季節毎のMUSTアイテムの紹介、新着アイテムなどをライブ配信を紹介しながら、リアルタイムで質問やコメントを受け付けております。ユーザーからするとファッションアドバイザーから着こなしのコツや分からないことをその場で聞けるため、非常によい接客体験を受けることができます。
引用元:ベイクルーズ公式サイトのニュース
アパレル業界のオンライン事例を更に知りたい方は、この記事「オンライン接客事例 アパレル業界でのメリットとデメリット、導入事例を紹介」を読んでみてください。
不動産業界では、オンラインによる物件案内や相談会という形式にてオンライン接客を提供しているケースが多いです。オンライン内見を利用すれば、物件を移動するという物理的な制約がなくなるので、今まで以上に複数の物件を内見することができます。また、重要事項説明などについてもウェブ会議サービスを活用してオンライン接客する不動産会社が増えております。いくつかの事例を紹介させて頂きます。
住友不動産のオンライン接客事例
住友不動産では、外出を控えたい方、遠方にお住いの方、時間に限りのある方など、
実際にご来店することが難しいお客様に対して、オンライン見学を提供しています。
オンライン見学会では、お部屋の紹介だけでなく、共有施設、物件までのアクセスなども知ることができます。
住友不動産のオンライン見学会
画像引用元:住友不動産 オンライン見学会
野村不動産のオンライン接客事例
画像引用元:プラウド オンラインサロン
野村不動産では、経験豊富なスタッフにお客様のお悩みやご要望をお聞きして最適なお住まい選びのお手伝いをするオンラインサロンを提供しております。首都圏全てのプラウドマンションを対象としており、物理的にいくつも回るには時間がかかるため、このオンラインサロンを活用すると自宅にいながらまとめて比較検討をすることができます。
また、住宅ローンや住宅購入に関するオンラインセミナーも定期的に開催しております。初めて住宅を購入する方向けサービスとなります。
不動産業界のオンライン事例を更に知りたい方は、この記事「オンライン接客事例 不動産業界でのメリットとデメリット、導入事例を紹介」を読んでみてください。
求人業界でも会社説明会や面談に対してリアルな場だけでなく、オンラインでも行うケースが増えております。会社説明会についても単独で開催する説明会だけでなく、転職会社が主催する合同説明会においてもオンラインで開催することが業界標準となっております。
オンライン接客について、感染症対策のためだけでなく、お客様にリアルとオンラインの接客を組み合わせて提供することが、さまざまなニーズに対応できると気がついてオンライン接客を提供するケースが増えております。
オンライン接客を提供できる方法は6つあり、如何に組み合わせて自社にあった顧客体験を提供することが重要になります。オンライン接客を構築する際にこの記事が少しでもお役に立てば幸いです。