在庫管理とは、在庫数が適切になるよう管理することを指します。
在庫管理は企業を支える土台のため、土台がしっかりしないと経営は上手くいきません。在庫不足による販売機会の喪失、在庫過多で黒字倒産が発生することもよく起こります。
ものを売る企業で在庫や在庫管理の意味、必要性を理解することは必要不可欠です。
ここでは、在庫管理とは一体どういうものなのか、目的、重要性、メリットからシステム活用までを詳しくご紹介します。
記事後半では、在庫管理システムの導入ポイントについてもご紹介していますので、在庫管理システムの導入を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
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まず、在庫とは販売前の製品や商品だけでなく、これから現金化される可能性があるものを指します。例えば、製造業の場合、完成品だけでなく、将来に使用する可能性のある部品なども在庫です。
在庫管理とは、商品の生産や販売などを行う際に最適な状態、量で供給できる管理をすることです。在庫管理を徹底すると、実店舗や倉庫での在庫切れが起こるリスクや、大量の不良在庫を抱え黒字倒産することも防げます。
自社に合わせた適切な管理を行うと、在庫不足による販売機会の損失や不良在庫が原因の資金ショートも防げるでしょう。
在庫管理の目的は、自社に合わせた適切な在庫を保つことです。在庫切れを防ぎ、不良在庫を減らし適正な在庫にすると、保管にかかる無駄なコストを削減できるのでキャッシュフローもよくなります。
管理する在庫が多いほど、管理するために人件費がかかり無駄なコストが発生しやすいのも特徴です。
また、商品は顧客に購入していただけないと現金にはなりません。したがって、在庫が多いほどキャッシュフローが悪くなり、企業の資金繰りに大きな影響を与えます。
商品を求めている人に、必要な量を過不足なく提供できる量を適正に保たなければいけません。
適正在庫を保つことで、最小限の在庫で利益が出せるようになるので、企業利益の最大化に繋がります。
在庫管理の目的、重要性を理解できたところで業務内容について5つ紹介したいと思います。
入庫管理とは、商品が入庫してきた際に、伝票とともに荷物を受け取り、注文した商品の内容が正しいか、数量が合っているかを確かめる作業です。バーコードの読み取りやハンディターミナルを使用し、パソコンへ入力する方法が一般的です。
取引先から入庫した商品だけでなく、自社の他拠点から運ばれてきた在庫も管理しなければいけません。
出庫管理とは、出荷する商品の検品を行い伝票を添付して発送し、出庫処理を行う一連の作業のことです。入庫管理と同様に、自社の他拠点に運ぶ際にも在庫を管理する必要があります。
また、緩衝材や包装を行う出荷作業を合わせて行うこともあります。
ロケーション管理とは、在庫を置く場所を決め管理することです。
例えば、「この商品はここに置く」と決めIDや番号で管理すれば、どこに何の商品が置いてあるかわかりやすいですよね。
ロケーション管理には2種類あり、
1つ目は固定ロケーション、
2つ目はフリーロケーションです。
固定ロケーションとは、商品と保管場所が固定されていることです。昔からある在庫管理手法ですが、効率的に管理できるので今でも使われています。商品の在庫がないときに一目でわかるというメリットがあります。また、場所によって商品が決まっているので、異なる商品を発送するミスも防ぐことが可能です。
フリーロケーションとは、商品と保管場所が固定されず、空いている場所に在庫を置き管理することです。入庫したときに商品の置き場所が決まるので、保管場所に無駄なスペースが発生しないのがメリットです。しかし、どの商品をどこに保管したか混乱を招くので、ハンディターミナルやQRコードで管理する必要があります。
在庫管理の業務では、顧客からの返品、発注した商品の返品も管理しなければいけません。
返品管理は、伝票や商品代金が関係するので、通常の在庫管理の方法とは別の管理方法で管理する必要があります。
毎日、数多くの商品が入庫・出庫している在庫管理業務では、リアルタイムの把握が必要です。棚卸しとは、ある地点での在庫数を確認し、在庫金額を確定することです。
棚卸しが正しく行われていないと、会社の利益も正しく算出できないので、定期的に棚卸しを行う必要があります。
在庫管理の業務内容が理解できたところで、次にメリットをご紹介していきます。
メリット①余剰在庫の削減
在庫を正確に管理すると余剰在庫を削減できるメリットがあります。在庫管理が雑な状況だと、在庫が十分な商品を仕入れてしまう、または品切れを起こす可能性があります。
管理を徹底すると、適正な在庫を把握でき必要最低限の在庫で利益を最大化できるでしょう。
メリット②人件費の削減
大量の在庫を人の手で管理するとなると人件費が発生しますが、システムで管理すると無駄な人件費をかける必要はありません。また、管理されていない在庫があると出荷や棚卸しのときに探す必要があります。
在庫状況を正確に把握することで、余計な人件費や残業代を削減できるのは企業にとっても嬉しいポイントです。
メリット③管理コストの削減
在庫が少ないほど管理にかかるコストを削減できるのもメリットです。在庫は、保有しているだけで、棚卸しなどの業務が発生します。しかし、管理を徹底し適切な在庫数にすることで余計な管理費用もかかりません。
また、無駄な在庫がなくなるので保管スペースの削減にも繋がり、人件費のみならず、光熱費の節約も実現できるでしょう。
メリット④キャッシュフローの改善
在庫を自社に合わせた適切な数にすれば、現金が増加し安定した経営に繋がります。在庫は現金化されていないので、在庫過多に陥ると、手元のキャッシュが回らなくなります。
在庫管理が適正なら不要な支出を減らせるので、現金が手元に残り、キャッシュフローが安定するでしょう。
メリット⑤スペースの節約
在庫を抱えすぎると、在庫を管理するためのスペースが必要になりコストが発生します。
また、在庫がある限り、他の用途で使用できないので利益も生まれません。余剰在庫を減らし、使用していたスペースを他に利用すれば利益をもたらしてくれるでしょう。
メリット⑥生産性が上がる
在庫のスペースがなくなり、余剰在庫がなくなるので生産性の向上に繋がります。
管理を徹底することで、入庫や出庫にかかる作業時間が短くなり、人的ミスも少なくなるでしょう。
在庫管理をエクセルで行う方法もあります。中小企業など在庫管理システムを必要としない企業向けです。関数、マクロなどを組み合わせれば、在庫管理システムに負けないシステムを作れるでしょう。
エクセルで在庫管理を作成すると主に3つのメリットがあります。
簡単に始められる
Windows OSのパソコンにはエクセルが、標準でインストールされています。そのため、すぐに利用でき使い慣れている方が多いので親しみやすいです。
在庫管理がしやすい
紙で在庫を管理していると破れたり、紛失したりするリスクがあります。しかし、エクセルだと紛失・破損リスクが少なくバックアップが取れるので何かトラブルが起きても、データが破損する可能性は少ないです。
また、複数人で管理する場合は、ファイルの置き場所のルールを決めておけば管理する手間もかかりません。
コストがかからない
インストール時に費用はかかりますが、インストールすれば無制限に使用できます。システムの開発費用や月々の費用は必要ありません。
以上のようにエクセルを使った在庫管理にもメリットがあります。一方でコストが安く親しみ慣れているからこそ、課題もあります。
課題①スキルに左右される
多くの企業で問題になっているのが、在庫管理表を作成した担当者のスキルに頼ることが多いことです。
担当者のExcelを使用するスキルが高いと便利ですが、退職した際にシートに組まれた計算式や数式が一切わからなくなり対応できないケースがあります。
課題②データ共有ができない
基本的にExcelは1つの端末でしか作業できません。
そのため、誰かがファイルを開いていると、新しい情報を記入しても更新できないので、在庫状況をリアルタイムに反映できません。なんらかの対策が必要です。
課題③ヒューマンエラーが起こりやすい
Excelの機能には、ヒューマンエラーを教えてくれる機能や防止してくれる機能はありません。例えば、現場の担当者が在庫の数が入荷数と合わないときに、データを改ざんしたとしても防止することはできません。
本来あってはならないことですが、Excelでは不正を防ぐことは難しいでしょう。
在庫管理をバーコードで行う方法もあります。ものの動きに合わせて現場で入出荷数を直接入力したいときに有効なのがバーコードです。
バーコードで在庫管理するメリットは主に3つです。
メリット①ヒューマンエラーが発生しない
在庫管理でよくあるミスが人の手による入力ミスです。特に「棚札への記入」「棚札への回収」「PCの入力」作業で頻発します。バーコードを読み取るだけで、PCへ情報が移行されるので、ヒューマンエラーは発生しません。
また、バーコードを利用することで現場の動きとデータが一致し、リアルタイムで正確なデータがわかります。そのため、入出荷の判断を誰でも正確に把握できます。
メリット②入出庫作業の効率化
入出庫作業で一番時間がかかるのが、倉庫内でのもの探しです。バーコードであれば、入庫したときに、バーコードから情報を読み取ることで「場所、品名、数量」を把握できます。
Excelや紙で管理していると、「数量を記入」「PCの入力」など手間がかかりますが、バーコードを読み取るだけで完結するので、作業スピードが向上します。
メリット③誤出荷の防止
ハンディターミナルを使用することで、出荷精度を向上できます。事前に出荷指示を登録すると、画面を確認しながら作業が可能です。
また、登録した指示と異なった操作をすると、エラーが発生し誤出荷を防止できるのもメリットです。誰が作業しても変わらないので、熟練者に頼らない体制が作れます。
以上のようにバーコードを使った在庫管理にもさまざまなメリットがありますが、メリットのみならず課題もあるので、ご紹介します。
導入コストがかかる
バーコードを読み取るハンディターミナルは、1台20万円前後と非常に高額です。
導入後、従業員へ使い方を教えなければいけないので、教育コストも発生します。
読み取りの手間がかかる
ハンディターミナルを使用し、1件ずつ読み取る手間がかかります。バーコードが貼られていない場合は、バーコードを作成し印刷して貼り付けなければいけません。
在庫管理システムとの連携に問題
これまでに使用していた在庫管理システムがバーコードに対応していない場合、新たな在庫管理システムの導入が必要です。
新たな在庫管理システムを使いこなすための労力やコストもかかります。
これまで在庫管理のメリットなどを説明してきました。
在庫管理システムには、以下の3種類があります。
・在庫管理ソフト
・在庫管理クラウドサービス
・在庫管理オンプレミス
それぞれどのようなときに導入すればよいのか、説明していきます。
製造、プラスチック加工業などの業種において、在庫管理ソフトを利用しています。
比較的安価で導入しやすく、ネットワーク環境が整っていなくても可能なので、幅広い業種に取り入れられています。ユーザーリピート率が高いのも特徴です。
安価に導入をして、導入後のサポートを手厚くしたい会社におすすめです。
インターネット環境が整っていて、社員数もある程度確保されている会社が在庫管理クラウドサービスを利用しています。クラウド化されているので、常時、システムが運用されているか確認できます。
無料プランもあるので、初めてクラウドを導入したい、試用期間として利用したい会社におすすめです。
業務改革などで、抜本的に既存システムを見直したい会社が在庫管理オンプレミスを導入しています。自社での運用が全て可能なので、ニーズに合わせたカスタマイズなど、独自に活用できます。
また、インターネット環境が途切れてもオフラインでの運用が可能です。初期費用が高額なので、社員数・事業数が多く、中~大企業の運用におすすめします。
在庫管理ソフトとは在庫の過不足をなくし、在庫情報を把握・管理するシステムのことです。メリットとしては、1万円前後で購入できるので、小規模ビジネス向けです。
安価に入手できるのでシンプルな機能性があり、ネットワーク環境が整っていなくても使用できます。在庫管理ソフトを導入する際は、既存システムと連携し、現場の活用方法をマニュアル化するなど
体制を整えておくことが大切です。
クラウド型在庫管理システムとは、オンライン上で提供される在庫管理システムのことで、ソフトウェアなしでも利用できるサービスです。
初期コストの削減や運用管理業務の効率化がメリットとして挙げられ、月額料金で提供されるクラウドは、初期費用が無料、購入も数千~数万円とコストを抑えられます。
また、クラウド化することでリアルタイムで在庫を確認することができるので、社内で共有しやすく、外出先でもタブレットなどで確認することが可能です。
さらにインターネット環境が整えば利用できるので、サーバーの必要がありません。
在庫管理オンプレミスとは、自社でサーバーを用意して、メーカーが開発したソフトウェアをインストールして使用することです。特徴として、カスタマイズ性が高いことが挙げられます。
自社で技術力が確保されている、または、システム開発会社へアウトソースできれば、自社に最適な在庫管理ソフトを導入できます。自社の目的に必要な機能だけを搭載することができ、運用しやすいシステムを作ることが可能です。
また、オフラインの環境でも運用できるのでネットを介して外部から侵入されるリスクを軽減できます。
在庫管理システムについて更に知りたい方は、この記事「在庫管理システム19選を徹底比較!概要・機能・料金・メリット・デメリットを解説」を読んでみてください。
在庫管理システムは、小売業・製造業などあらゆる業界において必要不可欠です。在庫管理は経営の土台のため、怠ってしまうとコストが無駄に発生する、または、機会損失に繋がる可能性があります。
商品数が多くなり企業規模が大きくなるにつれ、自社に合わせた適切な在庫管理が必要になってきます。Excelや紙での在庫管理だと限界が来てしまうので、自社に合わせた在庫管理ソフト・システムを導入することが重要です。
導入することでコスト削減や作業時間の短縮、業務効率化に繋がるなど、多くのメリットもあります。
ぜひ本記事を参考に在庫管理システムの導入を検討してみてください。なお、最近ではWMS(倉庫管理システム)を導入している中小企業も多く見かけますが、WMSと今回ご紹介した在庫管理システムには、根本的な違いがあります。
WMSは、「帳票・ラベル発行」「棚卸管理」「在庫管理」「入出荷管理」など、在庫管理システムと似た機能を持ち合わせていますが、その対応範囲は倉庫内に限られてしまいます。一方、在庫管理システムは、倉庫外の在庫情報も管理できるため、在庫の入荷だけでなく出荷されるまでの管理が可能です。
両者には対応する業務範囲に違いがあることを認識し、それぞれのシステムの導入を検討してみてください。また、WMSと在庫管理システムとの連携が可能かも視野に入れて見るとよいでしょう。