一元管理とは、企業において人材・サービス・資金などの経営資源を一元的に管理する仕組みのことです。人・モノ・金・情報が一元管理の対象となりますが、普段はバラバラに管理されているケースが多いため、一元管理をすることで、情報収集と整理の時間コストを削減するだけでなく、通常知ることができなかったスタッフが情報を見ることにより、新たなビジネスチャンスを見つけることも可能性として出てきます。
IT化が進み、さまざまなデータがデジタル情報として扱われるようになると、個別に管理するには時間も手間もかかります。そこで今注目を浴びているのが「一元管理」です。
本記事では一元管理の概要、メリット、活用の仕方を詳しくご紹介します。
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一元管理とは、バラバラに散らばっている経営資源を一ヶ所にまとめ、出し入れしやすいように管理することです。
一般的に経営資源とは、以下の4つを指します。
・人:人材や組織
・モノ:商品、サービス
・金:資金
・情報:ノウハウ
経営資源の中で一番重要なのは人です。
人はモノを作り情報を活用して事業を作り、大きくして利益を生み出します。人がいなければモノを作り出すことができず、利益を生み出すこともできないため企業は成り立ちません。つまり、人は全ての資源と深い関わりのある資源であると言えます。
経営資源を一元管理することで、それぞれの部署、担当者で管理していた情報やデータを1つに集約でき、必要になったときに、いつでも取り出すことが可能です。
つまり、一ヶ所で管理することで、情報収集の時間や意思決定にかかるコストなどを減らし生産性を上げられるため、経営者だけでなく従業員にもメリットがあるわけです。
一元管理を英語で表す単語があるわけではなく、「unified management」(ユニフィードマネジメント)や「centrally managed」(セントラリーマネジメント)という表現が当てはまります。
対象や文脈に合わせて英語表現は変わります。
一元管理の類語としては「一括集中」「集中管理」などが挙げられます。どちらも部署や担当者が個別に管理していた情報を、一ヶ所にまとめるという意味では同様です。
しかし、一元管理のようにまとめた情報をどのように取り出すか、管理方法までは統一されておらず明確な違いがあります。
一元管理は、管理する側のリソースが一ヶ所に集中しているという意味ではなく、データや情報の管理から取り出しまでが効率的であることを指しています。
なお「一元」の対義語としては「多元」が当てはまります。
「一元」は、全ての物事の根本がただ1つであるという意味に対して「多元」は、互いに独立した2つ以上の要素が存在するという意味。
つまり、部署ごとに違った管理方法を取っていることになります。
「一元管理」と「一括管理」は、非常に似ていて使い分けには注意が必要です。一括管理とは、それぞれの部署で管理していた情報を一ヶ所に集めて管理することです。
バラバラになっているものを一ヶ所に集めるという意味では、一元管理と似ています。しかし、管理方法を統一するという意味は含まれていません。
一方、一元管理は、データや情報を一ヶ所にまとめるだけでなく、管理方法を統一するという意味も含まれています。
管理方法を統一することにより、データや情報を効率的に活用できるようになります。
一元管理がどのようなものか理解できたところで、メリット・デメリットについてご紹介したいと思います。
一元管理最大のメリットは、導入することで、ムダな作業を省け、作業効率が向上する点です。
「この作業、ムダが多く改善したら効率が上がるのにな」と思うこと、多くの場面であるのではないでしょうか。
例えばホテルだと、複数のECサイトやホームページなど、さまざまなルートから予約が入ります。
通常、予約ルートごとに管理、運営していますが、手間がかかり管理に時間が取られることは少なくありません。そこで、一元管理を活用すると、複数のECサイトから予約が入っても、一つの画面にまとめて反映されるので、ムダな作業が省け作業効率が大幅に向上します。
システムがバラバラだと、それぞれの場所で運営・管理する際に電気代や人件費、運用費などがかかってきます。また、バラバラになっているデータや情報の統合にも手間がかかるでしょう。
加えて会社が大きくなるにつれ、システムや部署が多くなるので、コストと手間は増えていく一方です。
データや情報を一元化すると、それぞれの場所で発生していた電気代や人件費などのコストを削減できます。
バラバラになっている社内情報を一ヶ所にまとめることで、社員全員に情報を共有できるようになります。共有することで経営陣と現場、事務と開発などの部署間にある壁を取り除くことができ、部署の垣根を越えてコミュニケーションが生まれるようになります。
社内全体でコミュニケーションが活発になり、意思決定のスピードが正確かつ迅速になるでしょう。
世界の変化が目まぐるしく変化する現在、会社を発展させるには、社員の得意なことを把握し能力が発揮できる場所に配置することが必要不可欠です。それには、人事担当者がどのような人材が在籍しているのかを把握する必要があります。
もちろん、人事担当者にも適切かつ正確な判断能力を求められることは言うまでもありません。
全人材の情報を一つの場所で管理することで、組織をさまざまな角度から見ることができ、適材適所の配置が可能になります。
また、社員も自分の能力が活かせる部署で働くことができ、楽しく仕事ができるようになるでしょう。
経営資源をはじめとした、さまざまな情報をまとめて管理し、管理方法も統一化できる一元管理ですが、最低限把握しておくべきデメリットも存在します。ここでは、デメリットについて整理していきます。
一元管理システムを導入するとムダが省け作業効率が向上します。
一方で、管理する対象を増やせば増やすほどシステムが複雑化してしまい労力が増加します。複雑になることで「操作がより難しくなる」「一元管理システムへのハードルが高くなる」など逆効果になる可能性もでてきます。
ITシステムに詳しくない社員でも操作しやすく、わかりやすいツールにすることが必要です。
また、全てを一元管理にすると複雑になり対応できない社員もいるため、改善が必要な業務を洗い出し、部分的に導入するといいでしょう。
新しいITシステムを導入するにあたり、これまでの業務フローを改善しなければなりません。現場で長年経験を積んできた従業員は、レガシーシステムに慣れてしまっているので、変化を拒み理解が得られないことはよくある話です。
その場合は、無理矢理押し通して導入するのではなく、現状にどのような問題があり、導入すると得られるメリットを伝えるなど、導入前のサポートも必要です。
導入後、電話対応などのサポートがついているツールを選ぶと、突然の業務フロー変更における負担を減らすことができます。
ITシステムなので、どうしてもコストが高くなります。あくまで生産性を高める手段の1つなので、できるだけコストを抑える方がいいでしょう。
コストを下げるためには、改善部分を明確にする必要があります。導入すれば生産性が上がるだろうといった甘い考えで導入すると、生産性が上がることなくムダなコストだけがかかってしまいます。
改善部分を明確にした後に、必要な機能を搭載しているツールを選ぶことで、最低限のコストで生産性も上がる効果を発揮してくれるでしょう!
最後に、業種ごとに一元管理をどのように活用しているか、ECとホテルを例に挙げて説明していきます。
EC(Electronic Commerce)とは、電子商取引と訳され、インターネット上でモノやサービスを売買することを指します。服や食べ物、日用品などを販売するAmazonなどの通販サイトになります。
例として、服を販売している販売店での一元管理の活用事例をみていきましょう。
販売店は、店頭だけでなくECサイトでも販売しているため、扱う商品によっては販路が多岐にわたります。
そのため、売り上げが伸びるにつれて、管理が複雑になっていきます。しかし、多くの販売店では、受発注業務をFAXや電話・メールといったアナログな手段を用いて管理しているのです。
ECサイトで販売を始めた当初は売り上げが低いので、人を増やして人海戦術で管理すれば、対応できるケースがほとんどです。しかし、売り上げが伸び販売数が多くなると、人海戦術だけでは対応できなくなり現場が混乱し欠品ラッシュになり、クレームの嵐になります。
このようなことを起こさないために、一元管理システムを導入することで、少人数で正確に商品を管理することが可能です。
また、人を雇用すれば教育に人手が取られる可能性もありますが、一元管理を導入することにより、仕組み化、マニュアル化が加速します。
驚くことに新しい人材を雇用して教育する時間よりも、一元管理を導入した方が効率良く運用できる場合があります。
主に管理できるデータは以下の3つ。
・注文者の一元管理
・注文商品の一元管理
・注文金額の一元管理
・売上の管理
1つずつみていきましょう。
注文者の一元管理
どのお客様にどの商品を販売したかを管理できるので受注ミスが発生しません。お客様ごとにIDを発行でき、いつ、誰が、何を発注したかを把握できます。
注文商品の一元管理
商品が購入されると自動で在庫が減るため、商品の在庫状況をリアルタイムで把握できます。
複数あるECサイトの1つが売り切れになりそうな際は、在庫に余裕があるサイトから分配し、販売機会を逃さないように自動で調整できます。
また、出荷状況の確認もできるので、お客様からの問い合わせがあったときの負担を削減できます。
注文金額の一元管理
販売しているECサイトで販売価格が異なる場合でも、一元管理によって簡単に処理することができます。
人の手で管理すると手間がかかりますが、一元管理なら販売価格が異なる場合でも効率的に管理できます。
売上の管理
多くの販売店では、各ECサイトでの売上は確認できますが、まとめて確認するには、改めてExcelに記入するなど手間がかかります。
しかし、一元管理を導入すると、各ECサイトのデータが自動集計され、一画面に全ECサイトのグラフが表示され、一目で売上状況を把握することが可能です。
また、各ECサイトの売れ筋商品を調べることもできます。
あるECサイトで売れているが、他のECサイトで売れていない商品を見つけることもできれば、売れていない原因を追求でき改善することで売上を伸ばすことができます。
日本では急速に高齢化が進み、宿泊業においても人手不足が深刻です。そのなかでも業務の効率化を図り生産性を上げなければいけません。この問題を解決する鍵になるのが、ホテルのIT化です。
特に、ホテル業界ではお客様の満足度を高めてリピートしてもらうことが非常に重要になってきます。しかし、予約管理や会計管理などの業務に追われてしまい、サービスの質が低下するケースは少なくありません。
一元管理を導入することによって、予約の管理、客室の管理、顧客情報の管理、データ分析などを効率的に行うことができます。
これまでアナログで管理していたデータをIT化することにより、最低限のスタッフで生産性を上げることが可能です。
主に管理できるデータは以下の3つ。
・予約データの管理
・キャンペーンの更新
・顧客データの管理
・売り上げや稼働率の分析
1つずつ見ていきましょう。
予約データの管理
ほとんどのホテルは、じゃらんや楽天トラベルなどの宿泊予約サイトを通して集客しています。宿泊予約サイト以外に、電話やホームページからの予約を受け付けている場合や旅行代理店からの予約も入ります。
ホテル側は常に全ての予約情報を把握し、空室状況を正確に把握しなければいけません。しかし、予約ルートごとに管理すると、予約状況を毎回確認しないといけないので非常に手間がかかります。
また、同じ日時に、客室に複数のお客様からの予約が入りダブルブッキングが発生するかもしれません。
一元管理システムを導入すると、正確に空室状況をリアルタイムで把握できるため、ダブルブッキングの心配はなく、予約状況を管理できます。
キャンペーンの更新
季節ごとに行われるキャンペーンや予約の早割など新たなプランを作成したいときも一括で更新でき、いつでも停止可能です。
顧客データの管理
お客様の満足度を上げるためには、顧客の利用実績の管理は欠かせません。前回どのようなお部屋に宿泊したか、過去に宿泊したことはあるかなどを把握すると満足度を高めることができます。
例えば、2回目の宿泊の際に「2度目の宿泊ありがとうございます」などの一言があれば、楽しい旅の思い出になるに違いありません。
またクレームがあった際に、細かく管理することにより、2度と同じクレームを起こさないように努めることができます。
売り上げや稼働率の分析
ホテル業なので売り上げや稼働率の分析は必要不可欠です。一元管理を導入することで、簡単に予約情報をさまざまな角度から分析した結果を簡単に表示できます。
例えば、早期割引キャンペーンを発表した後に、何日前に予約されているかを調べることにより、キャンペーンの効果を分析できます。
また、予約が何月に増加するかをグラフにして表示することができるため、販売価格の決定材料にもなるのです。
さらに過去の実績と比較し客室稼働率、平均客室単価のデータも確認することができ売上を最大化するためのツールとしても利用できます。
一元管理を利用すると作業効率の向上、コスト削減などメリットが多く、上手く活用すれば大幅な業務改善が期待できます。少子高齢化が深刻化し労働人口が少なくなっていく日本で生産性を上げるなら、ITツールをどれだけ活用できるかで決まると言っても過言ではありません。
しかし、何も考えず導入すれば、現場の混乱を招き悪化する可能性もあります。
まずは必要な箇所を洗い出し、どのような機能が必要かを考慮した上で導入しましょう。ぜひ本記事を参考に一元管理の導入を検討してみてください。