有効リード数
ウェビナー、ホワイトペーパーを活用して集客することによりリードを獲得することは以前ほど難しくなくなっているかもしれません。しかし「名刺は増えたのに売上が伸びない」という悩みを抱える企業は少なくありません。その根本原因は、リードの量ばかりを追い、営業が本当に追いかけるべき“質”にまで踏み込めていない点にあります。そこで脚光を浴びているのが有効リード数です。
ここでは、この指標の意味から計測方法、運用プロセス、組織で活用する際の勘所までを平易な文章で解説します。
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有効リード数とは?
有効リード数とは、単に連絡先を獲得したリードの総数ではなく、営業・マーケティング双方が「商談化の可能性が現実的にある」と合意したリードの数を指します。
判定の基準は各社で異なりますが、たとえば「BANT条件を七割以上満たす」「導入時期が六か月以内と確認できた」「決裁者あるいは準じるキーパーソンと接触済み」といった要素を組み合わせ、一定の閾値を超えたものだけをカウントするのが一般的です。
計算式はシンプルで、条件を満たすリードを一件一件足し上げた総和が有効リード数となります。言い換えると「リード_i が基準を満たしていれば 1、満たしていなければ 0」を合算するイメージです。
関連KPI(MQLとSQL)との違い
混同されやすい指標にリード数、MQL(マーケティング成熟リード)、SQL(営業が商談可能と判断したリード)があります。リード数は潜在母数の大きさを示し、MQLはスコアリングで興味・関心が高い層をあぶり出します。SQLはインサイドセールスが商談できると判断した段階ですが、有効リード数はその SQL の中でも特に質が高く、営業フェーズに進んだ際の受注確度が高いものに絞り込んだ数字です。したがって受注パイプラインを量的に保証する「最後の関所」として機能します。
DX時代に有効リード数が重要な3つの理由
第一に、デジタルチャネルの多様化によりリードは容易に増えますが、インサイドセールスが追えるリードの数には限界があります。どのリードが本命かを定義しなければ、人手と広告費が無駄に消えます。
第二に、近年は広告のクリック単価が高騰し、獲得コストの回収ラインが上昇しています。有効リード数を基準にすれば、費用対効果をリアルに把握できます。
第三に、CDPやMAツールが普及し、ファネルの各段階をデータでつなげる環境が整いました。リアルタイムで有効リード数を集計し、計業活動を行っていくことが現実的に実行できるようになってきております。
計測ステップと運用プロセス
まず行うべきは、有効リード数についての「定義」のすり合わせです。営業、マーケティング、経営の三者が同じチェックリストを共有し、有効リードについての基準を明文化します。BANT、CHAMP、MEDDICなど既存フレームを参考にすると合意形成が進みやすくなります。
次にデータ基盤を設計します。たとえば HubSpot でフォームを受け付け、Marketo でナーチャリングし、Salesforce にコールログを蓄積し、BigQuery に統合したうえで Looker Studio のダッシュボードを毎朝八時に更新するといった流れが一例です。
次に、データ基盤の設計に進みます。
例えば、HubSpotでフォームからリード情報を収集し、その後Marketoを使ってリードをナーチャリング(育成)します。ナーチャリングを経たリードの対応履歴や電話履歴をSalesforceに蓄積させて、さらにそれらのデータをBigQueryに集約・統合します。そして、統合されたデータを基に、Looker Studioで作成したダッシュボードを毎朝8時に自動更新し、最新の営業・マーケティング状況を可視化できる仕組みを構築するイメージです。
このように、ツール同士を適切に連携させ、データの流れと管理体制を整えることが、後工程の分析や施策改善において非常に重要となります。
最後に改善ループを仕組み化します。有効リード数から商談数、受注数への転換率を定点観測し、スクリプトやコンテンツ、広告ターゲティングをチューニングします。たとえば商談化率が低ければヒアリング項目を減らしてハードルを下げ、受注率が低ければフォロータイミングを二十四時間以内に前倒しするといった施策が考えられます。
組織に定着させるコツ
まずは毎朝の短いミーティングで前日との有効リード差分を共有し、数字を共通言語として活用していきます。次に チャットワークやSlack などでリアルタイム通知を流し、誰がどの有効リードを担当するか一目で分かるようにします。最後に受注後の振り返り会で「どの判定項目が鍵だったか」を分析し、四半期ごとに基準を見直すと、指標が形骸化せずアップデートされ続けます。
よくある課題と対策
有効リードが増えない場合は、閾値が高すぎるかヒアリング項目が多すぎる場合がほとんどです。足かせになっている条件を削除すると有効リード数が向上する可能性があります。逆に数は多いが受注しない場合は、判定基準が甘いか、架電タイミングが遅れて熱量が下がっている可能性があります。
ちなみに受注率が低い場合には基準を引き締めると同時に「問い合わせから10分以内にフォローすること」を徹底すると効果が出やすいでしょう。
また、集計が手作業で遅いという悩みは、ツール間でデータを共有できていないことが主な原因となります。API 連携と ETL の自動化で毎朝の集計が数分で終わる環境を整えましょう。
まとめ
有効リード数は、営業チームとマーケティングチームが “同じ地図” を持つためのコンパスのようなものです。まず「どんなリードを “有効” と呼ぶか」を社内で話し合って決め、その条件を文章にして残します。次に、その条件を満たしたリードの数をツールで自動集計し、毎日 BI ダッシュボードに表示します。 これを続けながら以下の項目をチェックし、数値が良くない部分にだけ広告費や営業の時間を重点的に投下します。
・有効リードから商談に進んだ割合
・商談から受注に至った割合
これを実行すると「ただ名刺がたくさんある状態」から、「売上につながる見込み客が何人いるかを毎日確認できる状態」に変わり、投資と人手をムダなく配分できるようになります。