インプレッション数、マーケティングや広告に関わる人なら、一度は耳にしたことがあるでしょう。
SNS運用、広告戦略、SEO施策など、あらゆるデジタルマーケティングの場面で登場する指標のひとつです。
とはいえ、「具体的にどのような意味を持つのか?」「多ければ多いほど良いのか?」と聞かれると、即答できる人は意外と少ないかもしれません。
なぜなら、インプレッション数は単なる「表示回数」ではなく、状況や目的によって異なる価値を持つからです。たとえば、広告の効果測定においては、クリック率やコンバージョン率との兼ね合いが重要になります。一方で、SNS運用では、フォロワーとの関係性やエンゲージメントを考慮しなければなりません。
インプレッション数の意味を正しく理解し、活用できるようになれば、施策の方向性が見えてきます。
ここでは、基本的な概念だけでなく、各プラットフォームごとの特徴や、数値を伸ばすための具体的な手法についても解説させていただきます。マーケティングの現場で実際にどう役立てるのか、専門的な視点を交えながら解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
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インプレッションとは、広告や投稿がユーザーの画面に表示された回数を指します。つまり、クリックやアクションが発生しなくても、画面上に現れた時点でカウントされる指標です。ただし、この「表示された」という基準は媒体ごとに異なります。たとえば、Google 広告の場合、広告がユーザーの画面に読み込まれた時点で1回とカウントされます。一方、SNSではフィード上に表示された段階でカウントされることが一般的です。
また、インプレッション数は「ユーザーが実際に目にしたかどうか」を直接測るものではありません。広告がページの最下部にあったとしても、スクロールしない限り視界に入ることはありませんが、それでもカウントされることがあります。そのため、単にインプレッションの数が多いからといって、それがすぐに成果につながるとは限りません。
インプレッション数が重要とされる背景
デジタルマーケティングにおいて、インプレッション数は「どれだけの人にリーチできたか」を示す基本的な指標のひとつです。特に、ブランド認知の拡大を目的とする施策では、インプレッション数が多いほど、より多くの人の目に触れていると考えられます。
たとえば、新商品のプロモーションを行う際、まずはできるだけ多くのユーザーに存在を知ってもらうことが重要です。その段階では、クリック数や購買行動よりも、どれだけの人に情報が届いたかを示すインプレッション数が役立ちます。また、インプレッションが多いほど、ブランド名や広告の内容を覚えてもらう機会も増えるため、間接的にコンバージョンへとつながる可能性があります。
一方で、単にインプレッションを増やすだけでは意味がない場面もあります。たとえば、売上や問い合わせを目的とする場合、インプレッションだけでなく、クリック率やコンバージョン率もあわせて確認しなければなりません。そのため、インプレッション数はあくまでひとつの指標として捉え、目的に応じた使い分けが求められます。
インプレッション数は、デジタルマーケティングにおいて広く使われる指標のひとつです。しかし、その数値だけを追いかけるのではなく、どのようなメリットがあり、どのような点に注意すべきかを理解しておく必要があります。単なる「表示回数」として捉えるのではなく、目的に応じた活用が求められるためです。
1. 認知度の向上を測定できる
新しい商品やサービスを多くの人に知ってもらうためには、どれだけのユーザーの目に触れたかを把握することが欠かせません。その際、インプレッション数は、広告やコンテンツがどの程度の規模で露出されたのかを示す指標として役立ちます。
ブランド認知を目的とする施策では、クリック数やコンバージョン数だけでなく、インプレッション数の推移をチェックすることで、どの媒体が効果的に情報を拡散できているかを判断できます。たとえば、SNS広告とディスプレイ広告を併用している場合、それぞれのインプレッション数を比較することで、より多くのユーザーに届いているのはどちらなのかを分析する材料になります。
2. クリック数との相対比較ができる
インプレッション数は、クリック率(CTR)と組み合わせることで、広告や投稿のパフォーマンスをより詳細に分析することができます。
たとえば、同じインプレッション数でも、Aの広告はCTRが2%、Bの広告は0.5%だった場合、Aの方がユーザーの関心を引くクリエイティブやメッセージになっている可能性が高いと判断できます。このように、インプレッション数だけを見るのではなく、他の指標と掛け合わせることで、より実践的なデータ分析ができるようになります。
3. ブランドリフトとの関連性を考える材料になる
「ブランドリフト」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、広告やキャンペーンを行うことで、ブランド認知や好感度がどの程度向上したかを測る指標のひとつです。インプレッション数が多いほど、ブランド名やメッセージがユーザーの記憶に残る可能性があるため、ブランドリフトの向上につながることがあります。
たとえば、テレビCMやSNS広告を長期間にわたって配信すると、実際の購買行動には直結しなくても、ユーザーの記憶に残りやすくなります。その後、類似商品と比較した際に、無意識のうちに選ばれる確率が上がると考えられています。このように、インプレッション数は、長期的なブランド戦略を考えるうえでも有効な指標のひとつです。
1. 同じユーザーが何度も見ている可能性がある
インプレッション数は、あくまで「表示された回数」なので、必ずしもユニークユーザー数とは一致しません。つまり、同じ人が何度も広告や投稿を目にしている場合も、その都度カウントされるということです。
これは、リマーケティング広告やSNSのアルゴリズムによって特定のユーザーに繰り返し表示されるケースでよく見られます。そのため、単にインプレッション数の増減だけで成果を判断するのではなく、「フリークエンシー(特定のユーザーに何回表示されたか)」のデータもあわせて確認することが重要です。
2. コンバージョンに直結するとは限らない
インプレッション数が増えれば、それに比例して売上が伸びるというわけではありません。なぜなら、表示されただけでは、必ずしもユーザーの行動を促すとは限らないからです。
たとえば、ターゲットが適切でない場合や、広告のメッセージが刺さらなかった場合、いくらインプレッション数が増えても、クリックや購入にはつながりにくくなります。そのため、インプレッション数だけでなく、クリック率やコンバージョン率もあわせてチェックしながら、全体の流れを分析することが必要です。
3. 媒体によって計測方法が異なる
インプレッション数は、Google広告、SNS広告、検索エンジン、YouTubeなど、それぞれのプラットフォームによって計測基準が異なります。たとえば、Google広告では、ユーザーがスクロールして広告が画面に表示された時点でカウントされますが、SNS広告では、投稿がフィードに表示された瞬間にカウントされることが一般的です。
また、動画広告では、「サムネイルが表示された時点でインプレッションに含まれる場合」と「数秒間再生されて初めてカウントされる場合」があります。そのため、異なる媒体のインプレッション数を単純に比較するのではなく、それぞれの仕様を理解したうえで、適切な評価を行うことが求められます。
インプレッション数は、広告やコンテンツがどれだけのユーザーの目に触れたかを示す指標ですが、「どのくらいの数値が適切なのか?」という疑問を持つ人も多いでしょう。しかし、一律の基準を設けることは難しく、施策の目的や活用する媒体によって最適な水準は変わります。ここでは、媒体ごとにどのような視点でインプレッション数を評価すればよいのか、具体的に考えていきます。
媒体・目的ごとのインプレッション数の目安
インプレッション数の目標を設定する際には、まず「どのプラットフォームで、どのような目的で活用するのか」を整理することが大切です。それぞれの特徴に応じた評価方法を見ていきましょう。
SNS広告の場合:リーチ数とのバランスを考える
SNS広告では、リーチ数(ユニークユーザー数)とインプレッション数のバランスが重要になります。たとえば、リーチが1万人でインプレッション数が3万回であれば、1人あたり平均3回広告を目にしていることになります。この数値が高すぎると、同じユーザーに広告が何度も表示されている可能性があり、逆に低すぎると広告のリーチが不足している可能性が考えられます。
一般的に、認知度向上を目的とする場合は、リーチを広げることを優先し、広告が特定の層に繰り返し表示されすぎないように調整します。一方で、購買や申し込みにつなげたい場合は、同じユーザーに複数回表示することで、記憶に残りやすくする手法が有効なケースもあります。
リスティング広告の場合:インプレッションシェアをチェックする
検索連動型広告(リスティング広告)の場合、キーワードごとのインプレッションシェアを確認することが大切です。インプレッションシェアとは、「配信対象の検索結果ページにおいて、自社の広告がどの程度の割合で表示されたか」を示す指標です。
たとえば、特定のキーワードで検索された回数が1万回あり、そのうち自社の広告が5,000回表示されていた場合、インプレッションシェアは50%になります。これが低い場合は、競合の広告が優先されている可能性があり、入札価格や広告品質の改善を検討する必要があるでしょう。
また、インプレッション数が多くてもCTR(クリック率)が低い場合は、広告のタイトルや説明文を改善し、よりクリックされやすい内容にすることが求められます。
自然検索(SEO)の場合:クエリごとの表示回数を分析する
SEOにおけるインプレッション数は、Googleサーチコンソールを使って検索結果での表示回数を確認することで把握できます。特定のキーワードでどれくらい検索され、どれくらいの回数ページが表示されたのかを知ることで、SEO施策の方向性を決める材料になります。
たとえば、ある記事が「検索ボリュームが多いキーワード」でインプレッション数が伸びているのにクリック率が低い場合、タイトルやメタディスクリプションを改善することで流入増加が期待できます。逆に、インプレッション数が伸びていない場合は、検索順位が低いため、コンテンツの強化が必要かもしれません。
インプレッション数の目安を決める際の判断基準
「どのくらいのインプレッション数を目指せばよいか?」を考える際には、いくつかの要素を考慮する必要があります。
業種や競合状況によって適正値は異なる
業種やターゲット層によって、適切なインプレッション数は大きく異なります。たとえば、BtoB向けのサービスとBtoC向けの商材では、広告やコンテンツの露出回数に求められる水準が違います。
また、競合が多い業界では、同じインプレッション数を獲得するためのコストが高くなる傾向があります。そのため、単純に数値を追うのではなく、競争環境を考慮しながら最適な広告配信やSEO施策を検討することが重要です。
目標(CV or 認知度アップ)によって評価の仕方が変わる
インプレッション数をどう評価するかは、施策の目的によって変わります。
・ブランド認知を目的とする場合
より多くのユーザーに情報を届けることが重要なため、インプレッション数の増加が直接的な成果となる場合があります。ただし、ターゲット層に適切に届いているかを確認するため、リーチやエンゲージメントとあわせて分析することが望ましいです。
・コンバージョン(CV)を目指す場合
インプレッション数が多くても、クリックや購入につながっていなければ意味がありません。CTR(クリック率)やCVR(コンバージョン率)と組み合わせて分析し、広告やコンテンツの質を見直す必要があります。
KPIツリーの中での位置づけを明確にする
インプレッション数は、マーケティングの成果を測るためのひとつの指標ですが、最終的なゴールではありません。そのため、KPIツリー(目標達成のための指標の構造)を明確にし、どの段階の指標として位置づけるかを考えることが重要です。
たとえば、以下のようなKPIツリーが考えられます。
・インプレッション数(どれだけの人に広告や投稿が表示されたか)
・CTR(クリック率)(表示されたうち、どれだけの人が興味を持ったか)
・CVR(コンバージョン率)(クリックした人のうち、どれだけの人が購入・問い合わせをしたか)
このように、インプレッション数はあくまでスタート地点であり、その後の指標と組み合わせながら施策の効果を評価することが求められます。
インプレッション数は、広告の配信方法やメディアの特性によって大きく異なります。単に「表示回数」として一括りにするのではなく、各プラットフォームの特性を理解し、適切な指標と組み合わせながら分析することが重要です。簡単にまとめると以下になります。
・リスティング広告では、インプレッションシェアを意識し、入札戦略を最適化していきます。
・SNS広告では、ターゲティングの精度を高め、無駄な表示を減らします。
・オーガニックSNS投稿では、エンゲージメントを重視し、アルゴリズムの評価を高めます。
・YouTubeでは、サムネイルの表示回数とクリック率を最適化します。
・Googleビジネスプロフィールでは、ローカルSEOを意識して情報を更新します。
更に主要な広告・コンテンツ配信のプラットフォームごとに、インプレッション数の考え方や影響を与える要素について解説します。
Google・Yahoo!などのリスティング広告・ディスプレイ広告
リスティング広告(検索連動型広告)やディスプレイ広告において、インプレッション数は「検索結果や広告枠に表示された回数」を指します。この分野では、インプレッションシェアの管理が重要なポイントとなります。
インプレッションシェアとは?
インプレッションシェアとは、「広告が表示されるべき機会のうち、実際にどれくらい表示されたか」を示す指標です。たとえば、検索結果に100回広告が表示されるチャンスがあった場合に、50回しか表示されていなければ、インプレッションシェアは50%となります。
この割合が低い場合、以下のような要因が考えられます。
・予算不足:入札金額が低いため、広告が表示される機会を逃している
・競争の激化:競合の入札戦略が強化されているため、自社の広告が後回しにされる
・品質スコアの低下:広告のクリック率や関連性が低く、検索エンジン側で優先度を下げられている
リスティング広告では、インプレッション数だけを追いかけるのではなく、クリック率(CTR)やコンバージョン率(CVR)とのバランスを考えながら、最適な入札戦略を構築することが求められます
SNS広告(Facebook/Instagram/Xなど)
SNS広告では、インプレッション数とエンゲージメント(いいね・シェア・コメントなど)が密接に関わっています。各プラットフォームのアルゴリズムは、ユーザーの興味関心や行動履歴をもとに広告を配信するため、広告のターゲティング次第でインプレッション数の変動が大きくなります。
ターゲティングとインプレッション数の関係
SNS広告では、以下のようなターゲティング手法によって、インプレッション数が左右されます。
・デモグラフィックターゲティング(年齢・性別・地域など)
・興味・関心のターゲティング(ユーザーの過去の行動や関心分野)
・リターゲティング(過去にサイトを訪れたユーザーへの広告配信)
インプレッション数が多くても、ターゲット層とずれていれば、クリック率やエンゲージメントが伸びず、結果的に広告の効果が薄れてしまいます。したがって、広告配信後は「適切なターゲットに届いているか」を、クリック率やコンバージョン率とあわせて分析することが重要です。
SNS投稿(オーガニック)のインプレッション数
SNSのオーガニック投稿(広告を使わない通常の投稿)のインプレッション数は、各プラットフォームのアルゴリズムによって大きく左右されます。投稿のエンゲージメント率が高いほど、表示回数も増加しやすい傾向にあります。
アルゴリズムがインプレッション数に与える影響
SNSプラットフォームのアルゴリズムは、「ユーザーが興味を持ちやすい投稿を優先的に表示する」仕組みになっています。そのため、投稿のインプレッション数を増やすには、以下のポイントを意識すると良いでしょう。
・いいね・シェア・コメントが多い投稿は、優先的に表示されやすい
・画像や動画を活用すると、アルゴリズムの評価が高まりやすい
・ユーザーとの対話(コメント返信・ストーリー活用)を意識する
単に投稿回数を増やすだけでは、インプレッション数は伸びません。エンゲージメントを高める施策と組み合わせながら、投稿の質を向上させることが求められます。
YouTube動画のインプレッション数
YouTubeでは、動画そのものの再生回数だけでなく、サムネイルの表示回数(インプレッション数)も重要な指標のひとつです。
サムネイルの表示回数と再生数の関係
YouTubeのインプレッション数は、「ユーザーのホームフィードや検索結果、関連動画の欄で、サムネイルが表示された回数」を指します。つまり、動画が視聴されなくても、サムネイルが表示された時点でインプレッションとしてカウントされます。
このインプレッション数が多くても、クリック率(CTR)が低い場合は、サムネイルやタイトルの工夫が必要かもしれません。逆に、インプレッション数が少なくてもCTRが高い場合は、YouTubeのアルゴリズムが「関連性が高い動画」と判断し、徐々にインプレッション数が増加していく可能性があります。
Googleビジネスプロフィールのインプレッション数
Googleビジネスプロフィールでは、店舗や企業の情報が検索結果やGoogleマップに表示された回数を「インプレッション数」として記録します。ローカルSEOを意識する場合、この数値を定期的にチェックし、改善を図ることが求められます。
ローカル検索での表示回数を増やすポイント
Googleビジネスプロフィールのインプレッション数を増やすためには、以下の要素を最適化することが重要です。
・店舗情報の充実(営業時間・住所・写真・サービス内容など)
・口コミの積極的な獲得と返信(評価が高いほど上位表示されやすい)
・投稿機能の活用(最新情報やイベントを定期的に更新する)
ローカル検索では、検索キーワードのほかに「ユーザーの位置情報」も影響を与えます。そのため、地域に根ざした情報を提供し、ターゲット層に適したコンテンツを発信することが重要です。
インプレッション数は、単なる「表示回数」として扱われがちですが、実際には各プラットフォームのアルゴリズムや業界標準のルールに影響を受けながらカウントされています。広告配信やSNSの投稿がどのような仕組みで表示され、その回数がどのように決定されるのかを理解することで、より効果的な運用が可能になります。
広告配信アルゴリズムの概要
リスティング広告やディスプレイ広告では、単に予算を投じればインプレッション数が増えるわけではありません。各プラットフォームが持つ広告配信のアルゴリズムによって、表示回数は大きく左右されます。
インプレッション数に影響を与える要素
競合との入札戦略
広告の表示枠は、オークション形式で決定されることが一般的です。同じターゲット層に広告を配信しようとする競合が多い場合、入札価格が上昇し、インプレッション数を獲得するのが難しくなります。
広告の品質スコア
Google広告やYahoo!広告では、「品質スコア」と呼ばれる評価基準が設けられています。広告のクリック率(CTR)、ランディングページの関連性、広告の過去のパフォーマンスなどが影響を与え、スコアが高い広告は、低い入札価格でも優先的に表示される傾向があります。
ターゲット設定
広告がどのようなユーザーに表示されるかは、ターゲティングの設定によって変わります。配信対象を広げすぎると、インプレッション数は増えてもコンバージョンにはつながりにくくなることがあります。逆に、細かくターゲットを絞ると表示回数そのものが減る可能性もあります。
広告の配信設計を最適化するためには、これらの要素をバランスよく調整しながら、インプレッション数の動向を把握することが求められます。
SNSのフィード表示ロジック
SNSでは、タイムラインやおすすめフィードに投稿や広告がどのように表示されるかを決定するアルゴリズムが存在します。この仕組みを理解しておくことで、インプレッション数を増やしやすくなります。
SNSのアルゴリズムが重視するポイント
エンゲージメント率
SNSの投稿が多くの人に表示されるかどうかは、ユーザーのリアクションによって決まります。いいね・コメント・シェアなどのエンゲージメントが高い投稿ほど、アルゴリズムによって優先的に表示される傾向があります。
投稿の鮮度
新しい投稿は、一定の時間内にどれだけの反応を得られるかが評価基準となります。投稿後すぐに反応が多ければ、より多くのユーザーのフィードに表示されやすくなります。
ユーザーの興味関心
各SNSは、過去の閲覧履歴やエンゲージメントデータをもとに、ユーザーが興味を持ちやすい投稿を選び出します。そのため、ターゲット層の興味に沿ったコンテンツを発信することが、インプレッション数を増やすうえで欠かせません。
SNSの投稿は、単に頻度を増やすだけではインプレッション数が伸びにくいものです。アルゴリズムの仕組みを意識しながら、どのような投稿が表示されやすいのかを検証し続けることが重要です。
Viewability(視認可能インプレッション)の考え方
インプレッション数は、必ずしも「ユーザーが実際に目にした回数」を示すわけではありません。そのため、広告業界では「Viewability(視認可能インプレッション)」という考え方が重要視されています。
視認可能インプレッションの業界基準(IAB規格)
IAB(Interactive Advertising Bureau)による業界標準では、以下の条件を満たした場合のみ「視認可能インプレッション」と見なされます。
・ディスプレイ広告:広告の50%以上が、1秒以上ユーザーの画面に表示された場合
・動画広告:広告の50%以上が、2秒以上再生された場合
たとえば、広告がページの最下部に配置されていて、ユーザーがスクロールせずにページを離れてしまった場合、その広告はインプレッション数にはカウントされますが、実際には誰にも見られていない可能性があります。
視認可能インプレッションを増やすための対策
・広告の配置を最適化する
記事の最上部やコンテンツの間に広告を配置することで、ユーザーの視界に入りやすくなります。
・スクロール追従型の広告を活用する
スマートフォン向けの広告では、ユーザーがスクロールしても画面内に残る「追従型広告」を利用することで、Viewabilityを向上させることができます。
・動画広告の最適化
動画広告は、冒頭数秒間で視聴者の興味を引く内容にすることが重要です。最初の2秒で離脱されてしまうと、視認可能インプレッションとしてカウントされないため、冒頭の構成を工夫することが求められます。
インプレッション数を増やすためには、単に広告や投稿の回数を増やすだけではなく、配信戦略やコンテンツの質を見直すことが重要です。ターゲットの選定、広告の最適化、配信のタイミング、クリエイティブの工夫など、さまざまな要素が影響を与えます。ここでは、それぞれのポイントについて詳しく解説していきます。
ターゲット・配信設定の最適化
デモグラフィックや興味関心の設定を見直す
広告配信の対象を最適化することで、より関心の高いユーザーにアプローチできるようになります。特に、以下の要素を細かく設定することで、無駄なインプレッションを減らし、効果的に配信することができます。
・デモグラフィック(年齢・性別・地域など)
例えば、化粧品の広告であれば、特定の年齢層や性別に限定することで、適切なユーザーに届きやすくなります。
・興味・関心のセグメント
過去の検索履歴や行動データをもとに、関連する分野に関心を持つユーザーをターゲットにすることで、インプレッション数が増加しやすくなります。
・カスタムオーディエンス
自社サイトを訪れたことがあるユーザーや、特定のコンテンツにエンゲージしたユーザーを再ターゲットすることで、広告の表示頻度を高めることができます。
キーワード選定・広告文の最適化
検索広告におけるキーワード戦略
リスティング広告では、キーワードの選定がインプレッション数に大きく影響します。
・広いマッチタイプの活用
完全一致よりもフレーズ一致や部分一致を活用すると、検索クエリの範囲が広がり、インプレッション数を増やしやすくなります。
・競争率の低いキーワードを狙う
競合が少ないニッチなキーワードを選ぶことで、比較的安価にインプレッション数を増やすことができます。
広告文の工夫
広告のタイトルや説明文も重要な要素です。ユーザーの関心を引きつけるために、具体的なメリットや差別化ポイントを盛り込みながら、クリックを誘導するような表現を工夫すると良いでしょう。
配信媒体・時間帯の最適化
ユーザーのアクティブな時間帯を狙う
広告や投稿を配信する時間帯によって、インプレッション数は大きく変わります。
・SNS広告の場合:ユーザーのログインが集中する時間帯(朝の通勤時間・昼休み・夜のゴールデンタイム)に合わせると、より多くの人に表示されやすくなります。
・検索広告の場合:業種によって検索が活発になる時間帯が異なるため、Google広告の「時間別パフォーマンス」レポートを活用し、効果の高い時間帯に配信を集中させるのが効果的です。
また、曜日によってもユーザーの行動が変わるため、週末に集中的に広告を出す、平日だけ配信するなどの調整も有効です。
入札価格・予算の調整
競合の動きを見ながら調整する
リスティング広告やSNS広告では、競合の入札額によってインプレッション数が変動します。適切な入札価格を設定することで、より多くのインプレッションを獲得しやすくなります。
オークションインサイトを活用
Google広告では「オークションインサイト」、Facebook広告では「競争状況レポート」を確認し、競合の入札状況を分析することで、適切な調整ができます。
CPC(クリック単価)とCPM(インプレッション単価)のバランスを取る
クリック単価が高すぎると、限られた予算でのインプレッション数が減ってしまうため、費用対効果を見ながら調整することが大切です。
クリエイティブの改善
広告バナーや動画テストを繰り返す
広告のデザインやメッセージが適切でなければ、インプレッション数が増えてもユーザーの関心を引くことができません。そのため、以下のようなポイントを意識しながら、A/Bテストを行うことが効果的です。
・視認性の高いカラーやフォントを使用する
SNS広告では、背景と文字のコントラストを強くすることで、スクロール中でも目を引きやすくなります。
・キャッチコピーに変化をつける
クリックを促すメッセージや、具体的なベネフィットを強調することで、より興味を引きやすくなります。
・動画広告の冒頭3秒を工夫する
YouTube広告などでは、最初の数秒でユーザーの注意を引くことが重要です。インパクトのあるビジュアルや、短いコピーを活用することで、スキップされにくくなります。
SNS投稿のエンゲージメント向上
SNSでのインプレッション数は、投稿がどれだけ多くのユーザーにリーチするかによって決まります。
ハッシュタグの活用
投稿のリーチを増やすためには、適切なハッシュタグを活用することが重要です。
・ターゲット層が検索しやすいワードを選ぶ
例えば、ファッション関連の投稿なら「#トレンドコーデ」「#おしゃれ好き」といったハッシュタグを活用すると、興味のあるユーザーに届きやすくなります。
・流行のタグを取り入れる
季節やイベントに関連したハッシュタグを使用することで、より多くのユーザーのフィードに表示される可能性が高くなります。
コメントへの迅速な対応
エンゲージメント率が高い投稿ほど、アルゴリズムによって優先的に表示される傾向があります。投稿後にコメントがついたら、できるだけ早く返信することで、インプレッション数の増加につながります。
インプレッション数は、広告や投稿がどの程度表示されたかを示す基本的な指標ですが、それだけを単独で見ても施策の成果を正しく判断するのは難しいものです。他の指標と組み合わせることで、より精度の高い分析ができるようになります。ここでは、インプレッション数と混同されやすい指標や、セットで活用することで効果的な分析が可能になる指標について解説します。
PV(ページビュー)との違い
インプレッション数とPV(ページビュー)は、どちらも「表示回数」を表す指標ですが、測定対象が異なります。
・PV(ページビュー):特定のWebページが閲覧された回数
・インプレッション数:広告や投稿が画面に表示された回数
たとえば、ブログ記事が100回閲覧された場合、その記事のPVは100となります。しかし、記事内に設置された広告が1ページあたり3回表示されていれば、広告のインプレッション数は300になるかもしれません。つまり、PVはサイトの訪問状況を示し、インプレッション数は広告や投稿の露出度を示す指標といえます。
エンゲージメントとの違い
エンゲージメントは、単なる「表示」にとどまらず、ユーザーがどれだけ積極的に関わったかを示す指標です。具体的には以下のような行動が含まれます。
・いいね(Facebook、Instagram、X など)
・コメント(SNS、YouTube、ブログ など)
・シェア・リツイート(SNS など)
・クリック(広告、リンク など)
インプレッション数が多くても、エンゲージメントが低ければ、ユーザーの関心を引けていない可能性があります。逆に、エンゲージメントが高ければ、少ないインプレッション数でも影響力のある投稿や広告と判断できるでしょう。
リーチ(ユニークユーザー数)との違い
リーチとは、広告や投稿が届いた「ユニークユーザー数」を示す指標です。同じユーザーが何度も広告や投稿を見た場合、その分インプレッション数は増えますが、リーチは1のままです。
たとえば、1,000回のインプレッション数を記録した広告があったとして、その広告を見たユニークユーザーが300人であれば、リーチは300になります。この場合、同じ人が何度も広告を目にしていることがわかるため、広告の頻度(フリークエンシー)にも注意を払う必要があります。
フリークエンシー(頻度)との関係
フリークエンシーとは、特定のユーザーに対して、広告や投稿が何回表示されたかを示す指標です。たとえば、リーチが500人でインプレッション数が2,000回だった場合、フリークエンシーは4(= 2,000 ÷ 500)になります。
この数値が高すぎると、同じ人に何度も広告が表示されていることになり、「広告疲れ」を引き起こすリスクがあります。逆に、フリークエンシーが低すぎると、十分な認知が得られず、広告の効果が薄れる可能性があります。適切なバランスを見極めることが重要です。
CTR(クリック率)・CVR(コンバージョン率)との関連
インプレッション数は、最終的な成果を判断するうえで、クリック率(CTR)やコンバージョン率(CVR)と組み合わせて分析することが重要です。
・CTR(クリック率):クリック数 ÷ インプレッション数 × 100
→ 広告や投稿が表示されたうち、どの程度の割合でクリックされたかを示す
・CVR(コンバージョン率):コンバージョン数 ÷ クリック数 × 100
→ クリックしたユーザーが、購買や問い合わせなどの最終アクションをどの程度達成したかを示す
たとえば、インプレッション数が10,000回でも、CTRが0.1%であればクリック数は10しかありません。逆に、CTRが5%であれば500人がクリックしていることになります。さらに、CVRが2%だった場合、最終的なコンバージョン数は以下のように変わります。
・CTR 0.1%(クリック数 10)× CVR 2% = コンバージョン数 0.2(1人未満)
・CTR 5%(クリック数 500)× CVR 2% = コンバージョン数 10
このように、インプレッション数が多いからといって、必ずしも成果につながるとは限りません。CTRやCVRと組み合わせることで、広告やコンテンツの効果をより正確に判断することができます。
インプレッション数は、広告や投稿がユーザーの画面に表示された回数を示す指標です。しかし、単に数を増やすだけでは効果的とはいえず、目的に応じた活用が求められます。リスティング広告ではインプレッションシェア、SNSではエンゲージメントとの関係、YouTubeではクリック率と組み合わせることが重要です。
また、ターゲット設定やクリエイティブの最適化、配信タイミングの調整などで、より効果的にインプレッション数を伸ばせます。マーケティングの目的に応じて適切な指標と組み合わせることで、認知拡大やコンバージョンの向上につなげることができます。