「オリジナルの商品を作りたいけれど、工場を持つのは難しい」
「ブランドとして成長したいが、ゼロから製造を始めるのはハードルが高い」
そんな悩みを抱えている人にとって、OEMは事業を展開上で大切な選択肢の一つになります。
企業が自社ブランドで販売する商品を、外部の製造業者に委託して作ってもらう仕組みは、今や多くの業界で当たり前の戦略になっています。食品、化粧品、アパレル、家電など、日常的に店舗で目にする商品にも、OEMで生産されたものが沢山あります。
しかし、OEMという言葉を聞いたことはあっても、実際にどのような仕組みなのか、どんな種類があるのか、委託する際のリスクやメリットは何なのかを深く理解している人は意外と少ないかもしれません。
また、ODMやプライベートブランド(PB)と混同されることも多く、それぞれの違いを正しく知っておかないと、自社のビジネスに適した方法を選ぶのが難しくなります。
OEMを活用すれば、少ないコストで独自ブランドの商品を展開できるが、委託先の選び方を間違えたり、品質管理を怠ったりすれば、事業そのものが失敗に終わるリスクもあります。
では、OEMを使って事業を成功させるには、どのようなポイントを押さえておけばいいのでしょうかか。
今回、OEMに関する基本的な知識から、委託する際の注意点、さらにはOEMでビジネスを成功させるために必要な事についても解説させていただきます。
目次 [ 非表示 表示 ]
OEMとは「Original Equipment Manufacturer」の略称で、直訳すると「元の設備を作るメーカー」となり、この言葉だけでは少し分かりにくいのですが、簡単に言えば「他社ブランドの商品を製造する企業」や「ブランド側からの依頼で製品を生産する仕組み」のこととなります。
例えば、大手家電メーカーが独自ブランドの冷蔵庫を販売していたとしても、実際の製造は別の企業が担当していることがございます。こうしたケースでは、ブランドを持つ企業が「発注側」、製造を請け負う企業が「OEMメーカー」となります。
この仕組みが広がった背景には、ブランド企業が製造設備を持たずに事業を拡大できるメリットがあり、OEMメーカー側にとっても、自社ブランドを持たずとも安定した生産受注を得られるという点でメリットが大きいです。
OEMがここまで一般化した理由はいくつかございますが、大きな要因として「生産コストの最適化」と「市場ニーズの多様化」がございます。
① 生産コストを抑えるための戦略
製造には、工場設備の維持費、人件費、研究開発費など、多くのコストがかかります。そのため、すべての企業が独自に生産ラインを持つことは現実的ではないです。新規ブランドが市場に参入する場合、いきなり工場を設立するのは莫大な資金が必要になり、リスクも大きいです。
このような問題を解決する手段として、OEMが活用されるようになってきました。既に生産設備を持つ企業に製造を委託することで、ブランド企業は低コストかつ短期間で市場に商品を投入することができます。逆に、OEMメーカー側も、安定的な受注を受けることで工場の稼働率を維持し、利益を確保しやすくなります。
② 市場ニーズの多様化
もう一つの大きな要因は、消費者のニーズが多様化したことです。以前は「大手ブランドの商品を買う」という流れが一般的でしたが、近年では「個性的なブランドの商品を選びたい」「オリジナル性の高いものを求めたい」という消費者が増えてきております。
この流れを受けて、D2C(Direct to Consumer)ブランドや小規模のスタートアップが急増しております。しかし、彼らが自社工場を持つのは難しいため、OEMを活用することでブランド運営に集中できる環境が整ってきております。
また、大手企業もOEMを活用し、いろいろな商品を展開することができるので、季節限定の商品やコラボ商品など、短期間で市場に投入する必要がある商品は、自社工場ではなくOEMメーカーに委託するケースが多いです。
③ グローバル化と製造業の変化
もう一つ見逃せないのが、製造業のグローバル化となります。近年、中国や東南アジアを中心に、低コストで高品質な製造を請け負う企業が増えてきました。これにより、日本国内の企業も海外OEMを活用しやすくなり、より競争力のある商品を生み出せる環境が整ってきました。
一方で、海外生産には品質管理や納期の問題がつきまとっています。そのため、コスト削減を狙いながらも、どこで生産するかを慎重に選ぶ企業が増えてきております。
では、OEMにはどのような種類があるのか? 次の章では、OEMの種類について見ていきます。
OEMと一口に言っても、その形態は一つではないです。ブランド企業がどこまで製品開発に関わるのか、どの程度オリジナリティを追求するのかによって、大きく3つのタイプに分けられます。それが「純粋OEM」「部分OEM」「フルOEM」になります。
どの形態を選ぶかによって、製品の独自性やコストが変わってきます。各モデルの特徴を理解し、自社の戦略に合った選択肢を決めて下さい。
特徴
・製造はOEMメーカーが担当し、ブランド企業は製品設計に関与しません。
・OEMメーカーが持つ既存の商品を、そのままブランド名を変えて販売します
・製品の基本的な仕様は変えられないが、パッケージデザインやロゴは変更することができます。
この形態は、最もシンプルなOEMモデルとなっており、製造コストを抑えつつ、自社ブランドの商品ラインナップを拡充したい場合に向いています。
具体例
食品業界:コンビニやスーパーで売られているPB商品(コーヒー、スナック菓子、冷凍食品など)は、この形態が多いです。
家電業界:OEMメーカーが製造した白物家電(電子レンジ、炊飯器など)を、大手量販店が独自ブランドとして展開するケースもございます。
メリット
・すぐに商品を市場に投入できます。
・製造に関わる手間やコストを抑えられております。
デメリット
・商品の差別化が難しいです。
・競合他社も同じ製品を採用される可能性がございます。
特徴
OEMメーカーが既に持っている製品をベースに、ブランド企業がデザインや一部の仕様を変更することができます。
・カラーやロゴの追加、パッケージのデザイン変更、成分や素材のカスタマイズなどができます。
・製品開発のコストを抑えつつ、一定のオリジナリティを出せます。
純粋OEMよりもブランドの特徴を反映しやすく、開発コストを抑えつつ差別化を図れる点がメリットになる。特に、化粧品やアパレルなどの業界で多く採用されております。
具体例
・化粧品業界:OEMメーカーが開発したスキンケア商品に、ブランド独自の香りや成分を追加
・アパレル業界:既存のTシャツやスニーカーに、特定のブランドロゴやカラーリングを加える
メリット
・製品のオリジナリティを高められます。
・新規開発に比べてリスクが低いです。
デメリット
・設計を自由に決められる要素は少ないです。
・仕様変更の範囲が限られることが多いです。
特徴
・ブランド企業が企画・設計を主導し、OEMメーカーはその仕様に沿って製造できます。
・製品の設計・成分・デザインなど、すべてを独自に決定できます、
・競合他社と差別化しやすいが、開発コストやリードタイムは増えます。
この形態は、完全オリジナルの商品を作りたい場合に適している。ただし、開発に時間がかかるため、ブランド側には一定の資金や市場調査のノウハウが求められます。
具体例
・家電業界:独自の機能を持つスマート家電を開発し、OEMメーカーに製造を依頼することができます。
・食品業界:オリジナルのレシピを開発し、OEM工場で生産できます。
メリット
・他社との差別化がしやすいです。
・ブランドの個性を強く打ち出せます。
デメリット
・開発コストや製造リスクが高くなります。
・製品化までの期間が長くなくなります。
OEMは多くの業界で利用されているが、業界によってどのモデルが適しているかが異なる。いくつか代表的な業界の活用例を見てみよう。
業界 | 純粋OEM | 部分OEM | フルOEM |
---|---|---|---|
食品 | スーパーPB商品 | 独自レシピのアレンジ | 完全オリジナルブランドの開発 |
化粧品 | 他社ブランドの成分・パッケージ変更 | 成分・香りのカスタマイズ | 独自成分を使用した化粧品開発 |
アパレル | ロゴ入りTシャツの販売 | カラー変更・限定デザイン展開 | オリジナルの服を生産 |
健康食品 | 他社ブランドの成分・パッケージ変更 | 成分・フレーバーの調整 | 独自原料を使用した健康食品開発 |
例えば、新しくスキンケアブランドを立ち上げる場合、最初は部分OEMで差別化を図り、事業が成長してきた段階でフルOEMに移行するという流れも考えられます。逆に、すぐに商品を展開したいなら、純粋OEMでテストマーケティングを行うのも一つの方法となります。
OEM製造メーカーについて知りたい方は、こちら(食品OEM、化粧品OEM、健康食品OEM)をご覧になってください。
次ぎに、製造方法についてさまざまな形態がございます。OEMとその他の形態の違いについて見ていきます。
OEMについて調べると、似たような概念として「ODM」や「PB(プライベートブランド)」という言葉が出てきます。どれも「製造を外部に委託する」という点では共通していますが、ビジネスモデルとしての仕組みは大きく異なります。これらの違いを理解していないと、委託先の選び方を誤ったり、思い描いていたブランド戦略が実行できなかったりすることがございます。
OEM・ODM・PBの違いを整理しながら、それぞれがどんな事業に向いているのかを紹介させていただきます。
OEM(Original Equipment Manufacturer)は「ブランド側が企画した製品を、外部の工場で製造する仕組み」です。一方、ODM(Original Design Manufacturer)は「製造だけでなく、商品の設計や開発までを委託できる」という点が特徴となります。
OEMの特徴
・ブランド企業が製品の企画を主導し、製造だけを外部企業に依頼します。
・設計や仕様の決定権はブランド側にあります。
・委託先の工場は、ブランド側の指示に従って生産します。
・独自性の高い製品を作れるが、開発コストはかかります。
例えば、有名スポーツメーカーのスニーカーがOEMで製造されていることが多いです。デザインや素材の選定はブランド企業が行い、それを実際に形にするのがOEMメーカーという関係です。
ODMの特徴
・設計・開発もメーカーが担当し、ブランド側はそれを採用する形になります。
・製品の仕様はある程度決まっているが、ロゴやカラーなどの変更できます。
・開発コストを抑えられるが、他ブランドと似た商品になりやすいです。
身近な例として、ノートパソコンやスマートフォンがあります。特に中国や台湾のODMメーカーは、高性能なモデルを開発し、それを各ブランドがカスタマイズして販売しています。例えば、A社とB社のノートPCのスペックがほぼ同じなのにブランド名が違う、というケースはODMによるものです。
OEMとODM、どちらを選ぶべきか?
・独自性のある商品を展開したいならOEMがよいです。
・開発コストを抑えつつ、スピーディに市場投入したいならODMがよいです。
ブランドの方向性によって、どちらが適しているかが変わります。
ODMについて更に知りたい方は、この記事「ODMとOEMの違いとは?その特徴やメリット・デメリット、判断ポイント、メーカーの選び方を徹底比較」を読んでみてください。
プライベートブランド(PB)もOEMと混同されやすいのですが、決定的な違いは「ブランドの所有権がどこにあるか」になります。
OEMの場合
・ブランド企業が製造を委託しますが、商品はあくまでブランド企業のものとなります。
・商品設計の自由度が高いです。
・OEMメーカーは、同じ製品を他のブランドに供給できることもあります。
たとえば、有名コーヒーチェーンのマグカップがOEMで作られているケースでは、同じOEMメーカーが他のブランド向けにも類似した製品を供給していることがあります。
PB(プライベートブランド)の場合
・小売業者が企画し、製造を委託しているが、ブランドの所有権は小売業者側にあります。
・基本的にPB商品は、特定の店舗やグループ内でのみ販売されます。
・OEMよりもコスト削減の色合いが強いです、
代表的な例が、大手スーパーやコンビニのプライベートブランドになります。例えば、コンビニのオリジナルお菓子や飲料は、実際にはOEMメーカーが製造しているものの、販売するのは特定の小売店に限定されています。
OEMとPB、どちらを選ぶべきか?
・ブランドを育てたいならOEMとなります。
・コストを抑えながら売上を伸ばしたいならPBのほうになります。
PBは価格重視で大量生産に向いているため、消費者にとっては「手頃な価格で買える」というメリットがあります。一方で、メーカー側としては価格競争に巻き込まれやすいデメリットもございあmす。
OEM・ODM・PB、それぞれの製造形態が向いているビジネスモデルの特徴を整理すると、以下になります。
ビジネスモデル | 向いている業界 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
OEM | アパレル、食品、化粧品、家電など | 独自ブランドとして展開できる / 品質管理がしやすい | 開発コストがかかる / 委託先との交渉が必要 |
ODM | スマホ、PC、家電、美容機器など | 開発費用を抑えられる / 短期間で商品化できる | 他ブランドと似た商品になりやすい |
PB | スーパー、コンビニ、ドラッグストア | 価格競争力が高い / 既存の流通網を活用できる | 差別化が難しい / ブランド力を持ちにくい |
例えば、オリジナルのスキンケアブランドを立ち上げるならOEMを選ぶのが一般的です。独自の配合成分やパッケージデザインを採用し、ブランドの価値を高められます。一方で、コンビニが自社ブランドのペットボトル飲料を展開する場合はPBを活用し、コストを抑えながら手頃な価格の商品を提供する戦略になります。
OEM・ODM・PBの違いを理解することで、どのモデルが自社に適しているのかが明確になります。単に「外部に製造を委託する」という考え方ではなく、ブランド戦略や市場の動向を踏まえた上で、最適な方法を選ぶことが重要です。
OEMを活用すると、スムーズに市場へ参入し、ブランドの成長を加速させることができます。しかし、一方で戦略を誤ると、ブランドの個性が失われたり、品質管理が難しくなったりするリスクもあります。
ここでは、OEMを活用した際に起こりうる「成功ケース」と「失敗ケース」を想定し、それぞれのポイントを整理しながら、OEMを活用する際に意識すべき点を考えていきます。
想定ケース
スキンケアブランドを立ち上げた事業者が、OEMを活用してオリジナルの化粧水を開発したとします。最初から大規模な製造はせず、試験的に販売しながらブランドを育てる戦略を採用したと想定します。
成功するためのポイント
1. OEMメーカーの技術を活かしつつ、独自の成分を配合
OEMメーカーの既存技術を活用しながら、ブランド独自の処方を追加していきます。例えば、競合商品にはないオーガニック成分を取り入れたり、特定の肌質に特化した特徴を持たせます。
2. 少量生産からスタートし、市場の反応を見ながら拡大
最初から大量生産せず、SNSでの反応や口コミを見ながら販売を進めていきます。初回販売では限定数を設定し、売れ行きを確認しながら追加生産を行いました。これにより、過剰在庫のリスクを避けることができます。
3. D2C(Direct to Consumer)戦略を活用
店舗販売にはこだわらず、ECサイトを中心に販売を展開します。SNS広告やインフルエンサーとのコラボを活用し、ブランドの認知度を高めながら、購買につなげる仕組みを作ったとします。
成功した場合の結果
・競争力のある独自商品として、消費者の支持を獲得できます。
・在庫リスクを最小限に抑えながら、需要に応じて生産量を調整できます
・SNSマーケティングが効果を発揮し、短期間でブランドのファンを増やすことができます。
・EC販売の拡大により、大手オンラインストアとの提携ができます。
このように、OEMメーカーの技術を活かしながら独自性を出し、市場の反応を見ながら柔軟に販売戦略を調整することで、ブランドを成長させることができます。
想定ケース
アパレルブランドを立ち上げた事業者が、OEMを利用して商品を展開したとします。しかし、OEMメーカーの提案をそのまま採用し、独自性を持たせないまま販売を開始しましたとします。その結果、競合商品との差別化ができず、消費者からの評価も伸び悩んでしまったと想定します。
失敗につながる要因
1. OEMメーカーの既存商品をそのまま販売
OEMメーカーが持つ既存のデザインや型をそのまま採用し、ブランド独自の要素を加えませんでした。そのため、同じような商品が他のブランドからも販売されており、消費者にとって「どこで買っても同じ」と認識されててしまうことです。
2. 品質管理をOEMメーカーに任せきり
生産コストを抑えるために、OEMメーカーの品質管理基準に依存してしまいました。その結果、ロットごとに生地の質感やサイズ感が異なり、消費者からのクレームが増えてしまったということです。
3. OEMメーカーの納期遅延により販売機会を逃す
繁忙期に向けて追加生産を依頼したものの、OEMメーカー側の生産キャパシティの都合で納期が遅れました。結果として、シーズン中に在庫が揃わず、販売機会を逃してしまったということです。
失敗した場合の結果
・市場に類似商品が多く、ブランドの差別化ができなかった
・品質のばらつきが原因でリピーターが定着せず、クレームが増えた
・OEMメーカーの生産調整に左右され、機会損失が発生
・最終的に売上が低迷し、事業の縮小を余儀なくされた
このように、OEMに頼るだけではブランドの価値を確立することは難しく、独自性や品質管理の徹底が不可欠であることが分かります。
OEMは非常に便利な手段ですが、単に商品を作るだけではなく、しっかりとした戦略を持つことが重要です。
成功につながるポイント
・OEMメーカーの製品をそのまま販売するのではなく、ブランド独自の価値を加えます。
・少量生産で市場の反応を見ながら、無駄なく拡大することができます。
・品質管理を強化し、納品時のチェックを徹底します。
・生産を1社に依存せず、複数のOEMメーカーと契約してリスクを分散していきます。
失敗を避けるためのポイント
・OEMメーカーの提案をそのまま採用せず、ブランドの個性を確立します。
・コスト削減だけを優先し、品質をおろそかにしないようにします。
・OEMメーカーの納期や供給能力を事前に確認し、計画的に発注することを心がけます。
・価格競争に巻き込まれないよう、ブランド独自の強みを明確に押し出します。
OEMは、うまく活用すればブランドの成長を加速させることができますが、依存しすぎると逆にリスクが大きくなります。事業の方向性を明確にしながら、適切な戦略を立てることが成功へのカギとなります。
OEMを活用する際に最も重要なのが「委託先選び」です。どのメーカーと組むかによって、商品の品質、納期、コスト、さらにはブランドの信頼性まで大きく変わってきます。
適切なOEM先を選ぶためには、単に「価格が安い」「知名度がある」といった理由だけで判断するのではなく、技術力や管理体制、事業の方向性との相性をしっかりと見極める必要があります。
ここでは、OEMの委託先を選ぶ際に確認すべき基準や、国内OEMと海外OEMの違い、発注時の交渉ポイント、よくあるトラブルとその回避策について解説していきます。
OEMメーカーを選ぶ際、最低限チェックすべき項目は以下の4つとなります。
① 技術力
・自社が求めるレベルの製品を作れるか?
・過去の製造実績にどんなものがあるか?
・最新の製造技術や研究開発体制は整っているか?
特に、化粧品や家電のように製品の品質や安全性が重視される業界では、技術力の有無がブランドの評価を大きく左右します。試作品のクオリティを確認し、期待通りの仕上がりになるか見極めることが大切です。
② 生産能力
・どのくらいの数量を安定的に生産できるか?
・増産が必要になった場合に対応できるか?
・反対に、小ロット生産にも対応しているか?
D2Cブランドやスタートアップの場合、いきなり大量生産するのはリスクが高いです。小ロットでの試験販売が可能かどうかも重要なチェックポイントになります。
③ 納期管理
・納期の遅延リスクはないか?
・これまでの取引先で納期遅延が発生していないか?
・繁忙期でもスケジュール通りに生産できるか?
OEM生産では、発注から納品までのリードタイムが長くなることが多いため、スケジュール管理がしっかりしているメーカーを選ばないと、販売計画が狂ってしまいます。
④ 品質管理
・品質基準はどのように設定されているか?
・製造工程で品質チェックが徹底されているか?
・過去にクレームやリコールの実績がないか?
品質管理が甘いと、商品の仕上がりにばらつきが出たり、不良品が市場に出回ったりするリスクがあります。製造工程での検査体制や、納品時の品質チェックをどのように行っているかを確認しておくことが重要です。
OEMメーカーを選ぶ際には、「国内企業に依頼するか」「海外企業に依頼するか」という選択肢もあります。それぞれに対してメリット・デメリットがございます。
項目 | 国内OEM | 海外OEM |
---|---|---|
品質管理 | 高品質で安定している | メーカーによってばらつきがある |
コスト | 一般的に高め | 低コストで大量生産がしやすい |
納期 | 短めで安定 | 物流の影響で遅れが出ることもある |
小ロット対応 | 柔軟に対応できるメーカーが多い | 大量発注が前提の企業が多い |
交渉のしやすさ | 言語の壁がなく、スムーズ | 言語や文化の違いがハードルになる |
国内OEMのメリット
・品質管理がしやすく、不良品が少ないです。
・納期の正確性が高く、柔軟な対応が期待できます。
・小ロット生産に対応している企業も多いです。
国内OEMのデメリット
・コストが比較的高いです。
・対応できる工場の数が限られます(特定のジャンルでは海外OEMのほうが選択肢が多いです)
海外OEMのメリット
・生産コストが低く、大量生産に向いています
・特定のジャンルでは選択肢が豊富(家電・アパレル・雑貨など)です。
海外OEMのデメリット
・品質管理が難しく、不良品率が高くなるケースもありえます。
・輸送コストや関税がかかります。
・文化や言語の違いによるコミュニケーションの課題があります。
大量生産を前提にする場合は海外OEMが有利だが、高品質な商品を作るなら国内OEMのほうが安定しやすいです。ブランド戦略に応じて、どちらを選ぶかを慎重に判断することが求められます。
OEMメーカーと契約を結ぶ際には、以下のポイントを事前に確認しておくとトラブルを防ぎやすいです。
交渉時のポイント
・MOQ(最低発注数量):小ロットから対応できるか?
・価格交渉:試作品の費用や量産時のコストは適正か?
・納期の明確化:繁忙期でも対応できるか?
・独占契約の有無:他社に同じ商品を供給されるリスクはないか?
契約時の注意点
・品質基準を明確にする(サンプルチェックを徹底)
・知的財産の扱いを確認(特にデザインや配合成分など)
・納期遅延や不良品発生時の対応を契約書に明記する
OEMメーカーが同じ商品を他社にも供給するケースがあるため、独占契約が取れるかどうかは慎重に確認すべきです。
① 納期遅延
発注量の増加や材料不足によって、納期が遅れるケースは珍しくないです。
回避策として、事前に納期を厳守する契約を結び、必要に応じて複数のOEM先を確保する必要があります。
② 品質のばらつき
ロットごとに品質に差が出ることがあり、消費者の不満につながります。これを回避するには、定期的な工場視察や、納品前の品質チェックを徹底する必要があります。
③ 他社ブランドと類似した商品になる
OEMメーカーが他のブランドにも同じ商品を供給していたため、ブランドの独自性が失われる可能性がございます。これを防ぐには、独占契約を結ぶか、オリジナル要素を加えることで差別化を図る必要があります。
近年、個人や小規模な事業者が自分のブランドを立ち上げるケースが増えています。D2C(Direct to Consumer)ブランドは、ECサイトやSNSを活用することで、実店舗を持たずにダイレクトに顧客とつながることができるため、注目を集めています。
とはいえ、新たにブランドを作り、独自の商品を開発するには、それなりの資金やノウハウが必要になります。そこで活用したいのがOEMです。製造部分をOEMメーカーに委託することで、低コストかつスピーディに商品を市場に出すことができます。ここでは、スモールビジネスやD2CブランドがOEMを活用すべき理由と、その成功事例を紹介していきます。
ブランドを立ち上げる際、最大の課題のひとつが「資金」となります。自社工場を持たずにゼロから商品を作るには、設備投資や研究開発に莫大なコストがかかります。しかし、OEMを活用すれば、こうした初期投資を抑えながら自分のブランドを展開することができます。
OEMを活用するメリット
工場を持たずに製品を生産できる
製造設備を持たなくても、既存のメーカーと提携すれば商品が作れます。
研究開発の負担を減らせる
OEMメーカーが持つ既存の技術やレシピを活用できるため、一から開発する必要がないです。
少量生産が可能なメーカーもある
最近では、小ロット対応のOEMメーカーも増えているため、在庫リスクを抑えながら事業を始められます。
スモールビジネスの場合、いきなり大量生産するのはリスクが高い。まずは小規模で市場の反応を見ながら、売れ行きに応じて生産量を増やすのが賢い選択です。
OEMを使えば、「オリジナルブランド」を作ることができます。ただし、単にメーカーが提供する既存商品にロゴをつけるだけでは、市場に埋もれてしまうため、ブランド独自の付加価値を加えることが重要です。
ブランド独自の価値を生み出すポイント
成分や仕様をカスタマイズする(化粧品なら独自成分を追加、アパレルならデザインを変更)
ストーリーを作る(商品の開発背景やブランドの想いを伝える)
パッケージデザインを工夫する(ターゲット層に刺さるデザインにする)
例えば、近年人気のスキンケアブランドの多くは、OEMを活用しながらも、独自の処方やデザイン、ストーリーを打ち出すことで競争力を高めている。
OEMとは、企業が自社ブランドの商品を持ちながら、製造を外部企業に委託する仕組みです。この手法が広がった背景には、生産コストの削減や市場ニーズの多様化があります。自社工場を持たずに事業を拡大できるため、新規ブランドの参入が容易になり、特にD2Cやスモールビジネスに適しています。
OEMには「純粋OEM」「部分OEM」「フルOEM」の3つの形態があり、それぞれの特徴に応じた活用が求められます。一方で、OEMに依存しすぎるとブランドの独自性を失い、品質管理の難しさや納期遅延のリスクも伴います。
成功するためには、適切なOEMメーカーの選定、品質管理の強化、販売戦略の工夫が不可欠です。ECやSNSを活用しながら市場の反応を見極め、段階的に事業を拡大することが重要となります。OEMを上手く活用することで、低コストで高品質な商品を提供し、ブランドの成長を加速させることができます。