「オリジナルの食品ブランドを作りたい」「既存の商品をOEMで製造したいけれど、どこから始めればいいのか…」。
そんな疑問を持つ方は少なくないはずです。
食品OEMは、自社で工場を持たずにオリジナル商品を生み出せる手法として、多くの企業や個人事業主に活用されています。手軽に見えるかもしれませんが、実は奥が深い。メーカー選びを間違えれば、コストや品質面で思わぬ苦労をすることもありますし、逆にうまく活用すれば、少ないリスクでブランドを成長させる強力な武器になるでしょう。
「OEMはただ依頼すればいいというものではなく、うまく付き合うための戦略が必要だ」ということです。適切なメーカーの選定はもちろん、コスト管理、法的な注意点、さらには市場で売れる商品づくりまで考えなければなりません。
今回、食品OEMの基本から、依頼する際に押さえておきたいポイント、トラブルを防ぐための注意点までをまとめています。特に、「初めてOEMを活用する人がつまずきやすいポイント」に焦点を当てて解説するので、これから検討している方にとって役立つはずです。
目次 [ 非表示 表示 ]
食品OEM(Original Equipment Manufacturing)は、自社ブランド製品を外部の専門メーカーに委託して製造する方式です。
これにより、発注企業は自社で設備を保有せずに商品を市場展開できます。
食品業界では、コストを抑えながらオリジナル商品を開発・販売できる手法として広く利用されています。
たとえば、レストランやカフェが自社レシピのレトルト商品を製造したり、ECサイトが自社ブランドのスイーツや健康食品を販売したりするケースが一般的です。
近年、食品OEM(Original Equipment Manufacturing)は、
以下のような理由で食品業界やEC業界、小売業において急速に注目を集めています。
消費者ニーズの多様化
食品OEMが注目される大きな要因のひとつが、消費者ニーズの細分化です。
健康志向、ヴィーガン対応、無添加、地産地消、サステナブルといった新しい価値観が急速に浸透し、従来の大量生産・大量販売型の食品ビジネスでは対応が難しくなっています。
OEMを活用すれば、小ロットから新しいコンセプトの商品を開発でき、消費者トレンドに合わせたスピーディな商品展開が可能です。
たとえば、「グルテンフリーのスイーツ」「高タンパク質のプロテイン食品」「ご当地素材を使った限定商品」など、** niche(ニッチ)需要に対応した開発**が進んでいます。
スモールスタートの増加
近年では、クラウドファンディングやECサイトの普及により、
少人数でブランドを立ち上げる事業者が増加しています。
食品OEMを利用すれば、自社で製造ラインを構築する必要がなく、
企画・販売・マーケティングに集中できるという大きな利点があります。
D2C(Direct to Consumer)モデルの拡大により、
メーカーと販売者の垣根が低くなり、OEMを活用したブランド構築が容易になっています。
こうした動きは、OEMを支援する製造メーカー側にも新たな市場機会を生んでいます。
コスト削減・スピード開発への需要
一般的に食品の自社製造には、工場設計・設備投資・人材確保など
多くのコストがかかりますが、OEMを利用すればそのほとんどを外注化できます。
また、既存の製造ラインやレシピを活用できるため、
試作品から販売までのスピードが圧倒的に早いのも大きな魅力です。
このスピード感は、トレンドが移り変わりやすい食品市場において重要な競争力となります。
中小企業・地方メーカーにとってのチャンス
地方の中小企業にとっても、食品OEMは新たな成長戦略として有効です。
地元の特産品や原材料を活用してご当地ブランド商品を
OEMで製造し、観光地販売やEC展開を行う事例が増えています。
例えば、「地元果実を使ったジャム」「地域ブランド米を使った菓子」など、
OEMを通じて地域資源の価値を高める動きが全国的に広がっています。
こうした地方発ブランドの成功事例が、食品OEMの注目度をさらに押し上げています。
OEMとPBの基本的な違い
「OEM」と「PB(プライベートブランド)」は似ているようで、
実際には立場と目的が異なる仕組みです。
どちらも“自社ブランド商品を販売する”点では共通していますが、
製造の主導権がどちらにあるかによって意味が変わります。
OEM
発注企業(依頼者)が自社ブランドの商品を作りたいと考え、メーカーに製造を委託する仕組み。
⇒企画・設計は依頼側、製造は委託側が担います。
PB
小売店や流通企業が自社ブランドとして商品を展開する仕組み。
⇒商品開発の主導権を小売側が握り、メーカーは“受注生産者”として動きます。
開発の主導権と目的の違い
両者の最も大きな違いは、開発の主導権と目的にあります。
| 項目 | OEM | PB |
|---|---|---|
| 主導権 | 依頼企業(発注側) | 小売・流通企業 |
| 目的 | 自社ブランドの立ち上げ・商品差別化 | 店舗ブランドの強化・価格競争力確保 |
| 製造者 | OEMメーカー(委託先) | 製造委託メーカー(同様だが立場が逆) |
| 利益構造 | 発注者がブランド利益を得る | 小売側が販売利益を最大化する |
| 例 | 飲食店が自社レトルト商品をOEM製造 | コンビニPBのパン・飲料など |
このように、OEMは「企業が自社ブランドを作るための手段」、PBは「販売店が価格競争力を高めるための戦略」という位置づけになります。
食品OEMを選ぶことで得られる柔軟性
PBに比べて、OEMの大きなメリットは自由度の高さです。
自社コンセプトやターゲット顧客に合わせて、味・原料・パッケージ・販売チャネルを自在に設定できます。
例えば、以下のような展開が可能です。
・SNSで人気の味をすぐに商品化
・自社店舗限定のオリジナル食品を開発
・季節限定商品や地域限定シリーズをOEMで製造
・OEM先の技術を活かしたコラボ商品展開
このように、OEMを活用することで自社の個性を持つ商品を短期間で市場に出すことが可能になります。
食品OEMは、便利な仕組みである一方で、デメリットも存在します。
ここでは、食品OEMを導入することで得られるメリットと、気をつけるべきポイントについて詳しく解説します。
設備投資を抑えて新商品を開発できる
食品OEMでは、メーカーが既に持っている製造設備を使用するため、工場を持たずに商品開発できます。
一般的に自社製造を行う場合、
数千万円単位の設備投資が必要ですが、OEMを活用すればその費用をゼロにできます。
特に、飲食店・小規模EC事業者・スタートアップ企業にとっては、
低コストで事業を試せる手段として注目されています。
少ロットから試作・販売ができる点も、食品OEMが選ばれる大きな理由です。
開発スピードが早く、トレンド対応力が高い
OEMメーカーは多様なレシピ・製造ラインを持っているため、
試作品から販売までのスピードが非常に速いのが特徴です。
通常であれば数か月かかる開発工程も、
OEMを活用すれば1~2か月程度で商品化できるケースもあります。
この迅速な対応力により、市場変化に即応する商品戦略が実現できます。
・季節限定商品
・SNSで話題の商品
・トレンド素材を使った新商品
品質・衛生・法令対応をメーカーに任せられる
食品OEMメーカーは、HACCPやISOなどの厳格な衛生・品質基準を満たしている場合が多く、法規制にも精通しています。
食品表示法やアレルギー表示、栄養成分表記などの専門知識を必要とする部分をメーカーがサポートしてくれるため、
初めての食品ブランド立ち上げでも安心して進められます。
自社は企画・販売・ブランディングに集中できる
製造を外部に任せることで、マーケティングやブランドづくりに注力できます。
商品のデザイン、販売戦略、プロモーションなど、付加価値を高める活動に注力できる点がOEMの大きな強みです。
また、OEMメーカーと長期的なパートナーシップを築くことで、
自社のブランド戦略 × メーカーの製造ノウハウ」というシナジーが生まれ、競合との差別化にもつながります。
小ロットからスタートできる柔軟性
小ロット生産に対応する食品OEMメーカーも多く、
初期在庫のリスクを抑えてテスト販売が行えます。
例えば、ECショップでの限定販売や、
イベント出展向けの試作商品など、段階的な事業立ち上げができます。
売れ行きや反応を見ながら徐々にロット数を増やしていけるため、在庫リスクを最小限にできるのが特徴です。
食品OEMを利用する際に起こりやすい課題と、それを回避するための具体的な対策を解説します。
品質管理面での難点
OEMでは製造を外部のメーカーに委託するため、
品質管理のすべてを自社で把握することが難しいという側面があります。
実際、製造工程・原材料管理・衛生基準などが十分に共有されていない場合、想定外の品質トラブルに発展することもあります。
回避策
・依頼前に、製造工場の衛生管理基準(HACCP、ISO、FSSC22000など)を確認
・試作品の段階で味・品質・見た目を徹底チェック
・長期契約前に、小ロットで試作品をテストしてみて信頼性を検証
製造ノウハウが自社に蓄積されにくい
OEMでは、製造工程がメーカー側に属するため、自社にノウハウが残りにくいという課題があります。
その結果、自社で改良や再現をしたい場合に対応が遅れることもあります。
回避策
・レシピや製造条件など、製造仕様書を契約時に共有・管理しておく
・OEMメーカーと「共同開発契約」を結び、レシピ情報を共有してもらう
・長期的なパートナーシップを築き、技術移転の機会を設ける
要するに、「作ってもらう」から「一緒に作る」という共同開発の姿勢が大切です。
コスト増加の可能性
OEMは自社製造に比べて初期投資を抑制できますが、
発注ロットや原材料、パッケージ条件によっては総コストが上昇することもあります。
特に、少ロット生産では単価が上がる傾向にあるため、収益設計が崩れるリスクがあります。
回避策
・事前に複数メーカーから見積もり比較(相見積もり)を取るようにします
・包装資材やデザインを共通化し、コストを削減します
・長期発注を条件に単価を引き下げる交渉を行ないます
OEMのコストは、仕様やロット数、契約期間で大きく変わります。早い段階で正確に見積もることがポイントです。
契約・知的財産トラブルのリスク
OEM契約では、レシピ・商標・パッケージデザインの権利が
どちらに帰属するかを明確にしておかないと、トラブルになるケースがあります。
例えば、OEMメーカーが同じ製法を他社にも提供してしまうなどのリスクも考えられます。
回避策
・契約書でレシピやブランド名などの権利関係をはっきりさせます
・秘密保持契約(NDA)を交わして情報流出を防ぎます
・再委託や類似商品の販売を防ぐ条項を契約に入れておきます
契約書のひな形はそのまま使わず、専門家(弁護士など)に確認してから締結しましょう。
納期・供給トラブル
OEMは外部委託であるため、生産スケジュールや納期の遅れが発生する場合があります。
原材料の調達遅延や生産ラインの混雑など、自社ではコントロールできない要因が多いのが実情です。
回避策
・納期余裕をもったスケジュールを設計
・発注数量や納品時期を定期的に共有する体制を構築
・複数メーカーを候補に持ち、リスク分散(セカンドサプライヤー)を検討
※OEMは「依存度の高いビジネスモデル」であるため、予備ルートの確保がリスク軽減につながります。
食品OEMを活用して自社ブランド商品を作るには、明確なステップを踏んで計画的に進めることが重要です。
ここでは、OEMを初めて利用する方でも理解できるように、基本の流れを5つのステップに分けて解説します。
まず最初に行うのは、どんな商品を作りたいのかを明確にすることです。
ターゲット層、販売チャネル、ブランドイメージ、価格帯、数量などを整理しておきましょう。
・商品コンセプト(例:無添加スイーツ/高タンパク食品)
・ターゲット層(例:健康志向の30代女性)
・価格帯・販売方法(例:オンラインショップ限定)
この段階で市場調査を行い、競合分析をしておくと、OEMメーカーとの打ち合わせもスムーズに進みます。「なんとなく作りたい」ではなく、「この市場のこのニーズを狙った商品を作る」という明確な方針を持つことで、OEMメーカーからも的確な提案を受けやすくなります。
次に行うのが、自社に合ったOEMメーカーを選ぶことです。
製造実績・得意ジャンル・最小ロット数・費用感などを比較検討し、信頼できるパートナーを見つけましょう。
選定時のチェックポイント
・得意分野(スイーツ・飲料・調味料など)を確認します
・小ロット対応ができるかどうかを確認します
・品質管理体制(HACCP、ISOなど)が整っているかを確認します
・見積もりや納期が明確に提示されているかを確認します
また、試作や小ロット生産に対応しているかも重要です。
特に新規参入の場合、大量生産を前提にOEMを進めると在庫リスクが発生しやすいため、小ロット対応のメーカーを選ぶことでリスクを抑えることができます。
OEMメーカーが決まったら、試作を行い、サンプルを作成してもらい、そのサンプルを評価して改善があればOEMメーカーに作って頂き、再度サンプルを作って頂きます。この工程で妥協すると、完成品のクオリティに影響が出るため、慎重にチェックすることが大切です。
試作時に確認すべきポイント
・味のバランス:ターゲット層の好みに合っているか
・食感や風味:希望する品質を満たしているか
・賞味期限:保存期間がどのくらいあるか
・パッケージ適性:流通や保管に適しているか
・アレルギー表示や成分表示:法規制に適合しているか
試作段階で納得がいくまで微調整を行い、メーカーとしっかりコミュニケーションをとることが重要です。特に、「イメージと違う」と感じた場合は、その理由を明確に伝え、修正できるかどうかを確認しましょう。
サンプルに問題がなければ、いよいよ正式な契約・発注に進みます。この段階でコスト面や製造条件をしっかり確認しておかないと、後々トラブルの原因になることもあります。
契約時に確認すべきポイント
・製造ロット数:最小発注数や追加発注の条件
・価格:原材料費・製造費・パッケージ費用などの詳細
・納期:生産スケジュールと納品スピード
・不良品対応:トラブル発生時の対応ルール
・契約の縛り:OEMメーカーとの独占契約の有無
契約は慎重に進め、必要であれば弁護士や専門家のチェックを受けるのも良いでしょう。コストを抑えたい場合は、ロット数を増やしたり、資材を見直したりといった調整ができるかOEMメーカーに相談するのも一つの手です。
契約が完了したら、いよいよ製造が開始されます。ただし、ここで安心せず、しっかり品質管理を行うことが重要です。特に、初回生産時は必ず検品を行い、不良品がないか確認するようにしましょう。
製造時のチェックポイント
・試作時の品質と差がないか(風味や食感が変わっていないか)
・パッケージの印刷ミスや破損がないか
・アレルギー表示や成分表示に誤りがないか
・納期が遅れるリスクがないか
OEMメーカーによっては、製造途中で立ち会いチェックができる場合もあります。事前に確認し、品質管理を徹底することが大切です。また、納品後の物流体制も考慮し、適切な保管方法や配送スケジュールも確認しておきましょう。
食品OEMメーカーを選ぶために押さえておきたいポイントは以下になります。
1. 得意分野・製造実績を確認する
同じOEMメーカーでも、取り扱いが得意な製品やジャンルには違いがあります。
まずは、以下のような自社が作りたい商品のカテゴリーと合致しているかを確認しましょう。
・スイーツ・焼き菓子系
・飲料・スムージー・酵素ドリンク系
・惣菜・調味料・冷凍食品系
・健康食品・サプリメント系
また、過去の製造実績や取引企業を確認することで、
そのメーカーがどれくらい信頼でき、どのような対応ができるのかを確認できます。
※
メーカーの公式サイトや展示会実績をチェックすると、得意領域がわかりやすいです。
2. 最低発注単位を確認する
初めてOEMを利用する場合、小ロット対応が可能かどうかは非常に重要です。
量産体制を取っているメーカーでは、最低ロットが高く設定されており、在庫を抱える可能性があります。
チェックポイント
・試作・小ロット製造に対応しているか
・初回発注時に、最小数量で契約できるかどうか
・発注数量によって単価が変わる場合、その理由や仕組みをきちんと説明してもらえるか
3. 品質管理体制と法令遵守
OEMを依頼する際は、製造環境と品質基準を必ず確認しましょう。
特に食品分野では、販売後のリスクを避けるためにも法令遵守や衛生管理体制が整っていないといけません。
確認すべき項目
・HACCP、ISO9001、FSSC22000などの認証に関する有無
・衛生管理・異物混入防止の体制
・アレルギー・栄養表示などの法令対応実績
・自社ブランド名での販売経験があるか
4. コスト・納期・見積もりの透明性
OEM契約では、見積もりの明確さと納期の安定性も重要な判断基準です。
「製造単価」「パッケージ費用」「試作費」「納期スケジュール」などが
明示されていない場合、後で追加費用が発生する可能性があります。
確認ポイント
・試作費・量産費の内訳が明確になっているか
・納品までのおおよその期間(リードタイム)を教えてもらえるか
・コスト見直しや条件変更時の対応ルールが明記されているか
※OEMはコストだけで選ばず、品質は当然ですが、総合的な信頼性と柔軟性で判断することが大切です。
5. コミュニケーションと提案力
OEMは単なる外注ではなく、「共同で商品を作り上げるパートナー関係」です。
そのため、メーカーの担当者がどれだけ親身に相談に乗ってくれるか、企画段階でどんな提案をしてくれるかも大きなポイントです。
良いメーカーの特徴
・打ち合わせレスポンスが早い
・商品開発の提案をしてくれる
・初心者にも丁寧に説明してくれる
・問題発生時に迅速に対応してくれる
※「発注先」ではなく「共にブランドを作る仲間」として信頼関係を築けるメーカーを選びましょう。
6. 契約を締結する前に確認しておきたい重要書類
契約書・仕様書の内容は、後のトラブル防止に直結します。
以下のような項目を契約前に必ずチェックしておきましょう。
・製造仕様書(原材料構成、製造プロセス、包装形態等を明記した文書)
・秘密保持契約(NDA)
・権利関係(レシピ・デザイン・商標の帰属)
・納期・支払い条件・キャンセルポリシー
※契約書はメーカー側のテンプレートを鵜呑みにせず、必要に応じて専門家に確認してもらうのが安全です。
食品OEMは開発効率を高めますが、法令遵守や契約条件の確認を怠るとリスクが生じます。
ここでは、事業を進める上で押さえておくべき3つのポイントを解説します。
1. 食品の製造・販売に必要な資格・許可とは?
食品の販売は、誰でも自由にできるわけではありません。業種や商品によって、さまざまな許可や資格が必要になります。例えば、自社で製造を行う場合とOEMを利用する場合では、求められる許認可の内容が異なるため注意が必要です。
主な許可・資格の種類
① 食品衛生責任者
食品を製造・販売する事業者は、各事業所ごとに食品衛生責任者を配置しなければなりません。特別な試験を受ける必要はなく、各都道府県が実施する講習を受講すれば取得できます。
② 営業許可
販売する食品の種類によって、保健所からの営業許可が必要になります。例えば、パンや弁当、飲料などは「食品製造業許可」、レストランやカフェを運営する場合は「飲食店営業許可」が求められます。
③ 通信販売の届出
ECサイトなどで食品を販売する場合、自治体によっては「通信販売食品の届出」が必要なケースもあります。
販売地域ごとに異なるため、前もって確認しておくと安心です。
④ 特定ジャンルの追加許可
機能性食品や健康食品の販売を考えている場合、「特定保健用食品(トクホ)」や「機能性表示食品」の届出が必要になることがあります。これらは、消費者庁への申請が必要であり、審査に時間がかかるため、早めに準備を進めることが重要です。
2. 食品表示法や特定商取引法について
食品のパッケージには、法律で定められた情報を正しく記載しなければなりません。表示ミスがあると、販売停止や回収を命じられるケースもあるため、特に注意が必要です。
食品表示で必須の項目
① 名称
「クッキー」「チョコレート菓子」など、商品が何であるかを明確に記載する必要があります。
② 原材料名
使用した原材料を、重量が多い順に表示するルールがあります。
添加物も忘れずに明記することが大切です。
③ 内容量
グラム(g)やリットル(L)など、適切な単位で表示します。
④ 賞味期限または消費期限
品質保持のため、期限を明確に記載することが義務付けられています。
⑤ 保存方法
「冷蔵」「常温保存」など、適切な保存条件を示します。
⑥ 製造者・販売者情報
OEMを利用する場合、表示には「製造者」または「販売者」の名称や住所を記載しなければなりません。
また、ECサイトなどで販売する場合には「特定商取引法」の規定に基づき、事業者名、所在地、連絡先、返品ポリシーなどを明記する必要があります。これは消費者保護の観点から義務付けられているため、事前にしっかりと内容を把握しておきましょう。
3. 依頼前に必ず確認すべき契約条件
OEMメーカーと契約する際は、内容を確認しないとトラブルになるため、以下の項目をチェックしましょう。
① 最低発注単位と納期
最小ロットや追加発注をするときの条件、製造スケジュールは事前に把握しておくことが大切です。
特に、季節商品の場合は、繁忙期の製造スケジュールも考慮する必要があります。
② 価格と支払い条件
原材料費や加工費、パッケージ費用など、どの項目がどこまで含まれているのかを明確にしておきます。また、支払いのタイミング(前払い・後払い・分割払い)も重要です。
③ 不良品の対応
製造ミスや品質不良が発生した場合、どこまでOEMメーカーが責任を負うのかを契約書に明記しておくべきです。返品・交換の条件や、製造ロットごとの検査体制についても確認すると良いでしょう。
④ 製造レシピや配合の権利
メーカーによってはレシピの権利を持つ場合があり、
他社への依頼ができなくなることもあります。
自社レシピは契約時に取り扱いを確認しておきましょう。
⑤ 契約の解除条件
OEMメーカーとの契約が長期に及ぶ場合、途中で解約する場合の条件も確認しておくべきです。例えば、「契約期間中に他メーカーに乗り換える場合、違約金が発生する」といった条項があるケースもあります。
食品OEMを検討する際、多くの人が最も気になるのが「費用とロット数(最小製造単位)」です。
ここでは、代表的な食品カテゴリー別の相場目安と、コストを抑えるポイントを整理します。
1. 食品OEMの費用構成を理解する
OEMの費用は、以下のような項目で構成されます。
初期費用(開発費・試作費)と、量産時の製造費の2段階で考えるのが基本です。
| 費用項目 | 内容 | 相場の目安 |
|---|---|---|
| 試作費 | 味・品質確認のためのサンプル製造費 | 1~5万円/回程度 |
| 開発費(レシピ・設計) | 新規レシピや配合設計など | 5~20万円程度 |
| 製造費(量産時) | 原材料+加工+包装 | 製品単価に応じて変動 |
| パッケージ費 | 容器・ラベル・印刷・デザイン | 数千円~数万円/種類 |
| 配送・検品費 | 輸送・検品・梱包などの諸経費 | 数千円単位で変動 |
※費用は「どこまでメーカーに任せるか」で変わります。
原材料の持ち込みやデザインの自社対応でコストを下げることも可能です。
2. 食品ジャンル別のOEM費用目安
食品OEMはジャンルによってコスト構造が異なります。
以下は一般的な目安です。
| 商品ジャンル | 最小ロット数 | 1ロットあたりの費用目安 |
|---|---|---|
| 焼き菓子・スイーツ類 | 300~1,000個 | 20~50万円前後 |
| レトルト・惣菜類 | 500~2,000食 | 30~80万円前後 |
| ドリンク・清涼飲料 | 500~3,000本 | 40~100万円前後 |
| 調味料・ソース類 | 200~1,000本 | 15~40万円前後 |
| サプリメント・健康食品 | 1,000~3,000袋 | 50~150万円前後 |
小ロット対応メーカーはコストは少し高くなりますが、リスクを抑えて試しやすいのが魅力です。
3. 小ロット生産でコストを抑える方法
初めてOEMを利用する際は、大量生産ではなく
小ロットでテスト販売するのがおすすめです。
以下のような工夫でコストを最小限に抑えられます。
・パッケージを汎用デザイン化(オリジナル印刷を避ける)
・資材やボトルを既製品から選ぶ
・同ライン製造可能なメーカーを選ぶ(設備共用でコスト削減)
・数社から相見積もりを取る
4. 見積もりを取る際のチェックポイント
OEM費用を見積もる際は、次の4つを明確にしておくとスムーズです。
1. 希望ロット数と販売価格
⇒想定販売単価から原価率を逆算する
2. 仕様・パッケージ条件
⇒材質・容量・印刷などを具体的に提示
3. 納期・スケジュール
⇒製造リードタイムを確認(通常2~3か月)
4. 支払い条件
⇒前金・後払い・分割など、契約条件を明確化
5. 費用を左右する要因まとめ
食品OEMの価格を以下の5つの要因で変動します。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| ロット数 | 数量が多いほど単価が下がる |
| 原材料 | 希少素材や有機原料は高コスト |
| 製造工程 | 加工・包装の手間が多いほど費用上昇 |
| パッケージ仕様 | オリジナルデザインほど単価増 |
| OEM形態 | 共同開発型・完全委託型で費用差が出る |
よくある質問(FAQ)
Q1. OEMとPB(プライベートブランド)の違いは?
OEMは「依頼者が主導してメーカーに作ってもらう」仕組み、
PBは、小売店が自社ブランドとして商品を企画・販売するスタイルです。
つまり、OEMは開発主体が企業、PBは、販売を主導するのが小売側である点が異なります。
Q2. 食品OEMの費用はどれくらいかかりますか?
商品ジャンルやロット数によって異なりますが、
小ロットの試作で1~5万円程度、量産時は20~100万円前後が一般的な相場です。
※パッケージや原料の仕様によって変動します。
Q4. 最小ロット(製造単位)はどれくらいですか?
多くのOEMメーカーでは、200~1,000個前後の少ロット対応が可能です。
スイーツ・調味料・ドリンクなど商品ジャンルによっても異なります。
小ロットから試作を行い、販売データを見ながらロットを増やしていくのが理想的です。
Q5. OEMメーカーはどのように選べば良いですか?
以下のポイントを重視しましょう。
・得意ジャンル(例:飲料・菓子・惣菜など)
・小ロット対応可否
・品質管理体制(HACCP・ISOなど)
・契約条件や対応の柔軟性
・コミュニケーションの丁寧さ
信頼できるメーカー=長期的な成功パートナーです。
Q6. OEMで作ったレシピやデザインの権利は誰にありますか?
契約内容によりますが、一般的には依頼者側にレシピやブランドの権利が帰属します。
ただし、OEMメーカーの既存レシピを利用する場合は、メーカー側に権利が残るケースもあります。
必ず契約書で入れましょう。
Q7. OEM商品に自社ブランド名を使っても良いですか?
はい、問題ありません。
OEM製造された商品は、自社ブランドとして販売する形を取っています。
ただし、販売表示(製造者・販売者欄)にはOEMメーカー情報の記載が必要になる場合があります。
Q8. 試作品の製造にはどれくらいの期間がかかりますか?
試作は平均で2~4週間前後が一般的です。
味の調整やパッケージデザインの確認がある場合は、1〜2か月程度かかることもあります。
早めに試作依頼を行い、販売スケジュールに余裕を持たせましょう。
Q9. OEMで失敗しやすいポイントは何ですか?
主な失敗要因は以下の通りです。
・契約内容を十分に確認せず進めた
・品質基準・味のすり合わせが不十分だった
・ロット数やコストが想定より増加した
・OEMメーカーとのコミュニケーション不足
回避策として、試作段階で納得いくまで打ち合わせを行うことが大切です。
Q10. 個人や小規模事業でも食品OEMを利用できますか?
はい、可能です。
近年は個人事業主や小規模EC向けに少ない発注量で対応できるOEMメーカーも増えています。
カフェ・飲食店・YouTuber・インフルエンサーなど、個人ブランド展開の成功例も多く見られます。
食品OEMは、自社で製造設備を持たずにオリジナル商品を開発できるので、
やり方次第では少ないリスクで事業を拡大することができます。
メーカーを選ぶときは、安全性や経験、コスト面をバランスよく考えて発注しましょう。
また、食品表示や許認可にも注意が必要です。
近年は、オーガニック食品や機能性食品、サステナブル食品の需要が拡大しています。市場の動向を把握し、OEMを賢く活用することで、成功の可能性を高めることができます。