チャットボットとは、ユーザーとの対話を通じて特定のタスクを自動的に処理するコンピュータープログラムのことです。
テキストや音声を介して、自然言語でのコミュニケーションが可能であり、人間との会話を模倣することが特徴です。
AI技術や機械学習が進化することで、チャットボットはますます賢くなり、複雑な会話やお問い合わせにも対応できるようになっています。
したがって、チャットボットを中小企業が導入すれば、これまでは人間が対応するのが当然であったお客様への応答を任せることができ、カスタマーサポートを自動化・効率化できるなどのメリットがあります。
本記事では、チャットボットの概要から中小企業がチャットボットを導入するとよい理由、導入のためのステップまでわかりやすく解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
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チャットボットとは、その名の通り「チャット=会話」と、「ボット=ロボット」を組み合わせた言葉のことで、ユーザーや利用者からの質問に対して自動で返答してくれるコンピュータープログラムです。
一般的にチャットボットでは、テキストベースのやりとりを採用しており、Webサイトやメッセージングアプリ、SNSプラットフォームなどで利用されています。
なお、のちほど詳細を解説しますが、近年チャットボットにもAIが導入されており、機械学習を通じてユーザーの意図を理解し、適切な応答を生成できるタイプも増えています。
中小企業がチャットボットを導入することで、ユーザーや利用者のお問い合わせ対応を自動化できたり、ヘルプデスク業務を効率化できたり、さまざまなメリットを得られるでしょう。
ここからは、中小企業がチャットボットを導入するとよい理由をコストダウンや、売上アップの観点も踏まえてご紹介します。
中小企業のカスタマーサポートやお客様窓口では、現在深刻な人手不足に陥っており、さらにはお問い合わせ数の増加に伴って、担当者一人がお客様に費やす時間が増えています。
仮に、窓口担当者が1日3時間、電話対応に費やした場合の費用をシミュレーションしてみましょう。
営業日が1ヵ月20日×12ヵ月×1日3時間の電話対応=電話対応に費やしたのは年間720時間
社員の時給や賞与、交通費などを含めたコストを、仮に時給2,500円だとすると、年間720時間×2,500円=合計180万円ものコストを電話対応だけに支払っていることになります。
つまり、この部分をチャットボットで代用できれば、年間720時間の業務効率化と、180万円の人件費削減につながるというわけです。
あくまでも上記はシミュレーションですが、中小企業によっては、これ以上の時間とコストを費やしている可能性もあります。
そのため、それらの時間とコストを本来の事業に費やすことで、さらなる売上アップにもつながるはずです。
また、場合によってはさらなる人材確保の費用として充てることもでき、経営環境の改善も図れるでしょう。
人手不足によってカスタマーサポートの品質が低下すると、「ユーザーや利用者が電話をかけたのに、なかなかつながらない」といった事態に陥ります。
このような傾向が見られると、ユーザーや利用者の疑問・課題が解決されないままになってしまい、顧客満足度も低下します。
さらには、ブランドイメージが毀損するだけでなく、ユーザーや利用者によっては競合他社のサービスへ乗り換えてしまうかもしれません。
このように、カスタマーサポートの品質が低下することによって、売上にも直接的な影響がおよびます。
見方を変えれば、チャットボットを導入することで、これまでお客様が抱えていた「電話がつながらない、一向に返信がない」といった不満を早期に解消できるメリットがあります。
電話でお問い合わせをしなくても、チャットボットがお客様の質問内容に応じて、最適な答えを提示してくれるからです。
つまりチャットボットの導入によって、顧客満足度の向上につながるだけでなく、競合他社にお客様が流れてしまう離脱自体も防止できます。
最終的には、売上アップも期待できるでしょう。
なお、チャットボットを導入するページも重要です。具体的には、採用ページを例に見ていきましょう。
採用ページではFAQを設置していることも多く、自社の「福利厚生」や「面接で必要な書類」など、さまざまなコンテンツが充実しています。
しかし、応募者の中には採用ページのボリュームが多すぎることによって、なかなか目的の回答に辿りつけず、疑問を解消できないストレスがあるかもしれません。
そこで、チャットボットを導入すれば、応募者が質問を投げかけるだけで、面接で必要な書類や福利厚生などをレスポンスよく、回答してくれます。
また、疑問が解決したら、即座に応募できるように応募フォームへのリンクを設置することもできるわけです。
このような対策を講じることにより、CTA(コールトゥアクション)を含めた、応募フォームへの導線も設計でき、結果的にCVR(コンバージョンレート)の向上も期待できるでしょう。
多くの場合、電話受付やお問い合わせメールでの対応は、会社の営業時間内で行われています。
そのため、時間外や休日・祝日で稼働していないケースでは、翌営業日以降の対応になるわけです。
もちろん人間の対応には限界があるため、これ自体は仕方ありませんが、ユーザーや利用者にとってはすぐに商品やサービスに関する疑問を解決できない点で、非常にもどかしい思いをするでしょう。
一方で、チャットボットを導入すれば、時間外や休日、祝日であっても、自動で稼働してくれます。
そのため、お客様にとっては社員がいなくても、すぐに疑問を解決でき、商品やサービスの購入につながる可能性もあります。
緊急時の対応が求められる病院や自治体のWebサイトなどでは、徐々にチャットボットの導入が進んでいますが、これも納得できますね。
お客様からのお電話に対して、全て人間が対応してしまうと、お客様1人に社員が必ず1人付く形になります。
当然と言えば当然ですが、この体制である以上は、お客様からのお問い合わせが増えるたび、人員を増やせなければ、カスタマーサポートの品質が低下してしまいます。
しかし、チャットボットを導入すれば24時間、365日、さまざまなお問い合わせに対して、同時に対応可能です。
つまり、お客様が同時に電話をかけて回線が混み合ってしまうというケースも防げるわけです。
チャットボットは何人から問い合わせがきても関係はなく、時間帯も問いません。
お客様にとって待ち時間が発生しないということは、ストレスの軽減だけでなく、自社商品やサービスへのスムーズな購入にもつながります。
カスタマーサポートにマニュアルを用意していたとしても、一人の人間であることには変わりないため、従業員によっては顧客対応にバラつきが生まれます。
声のトーンやコミュニケーションスキル、商品やサービスへの知見などがダイレクトに顧客へ影響するのがカスタマーサポートなのです。
また、入社したばかりの社員や研修期間中のアルバイトなどでは、満足のいくサービスを提供できないかもしれません。
一方で、チャットボットであれば人間とは違い、あらかじめ決められたシナリオや機会学習によるアウトプットをベースに対応するため、顧客対応にバラつきが生まれません。
常に安定した品質で応答できるため、想定外のクレームやブランド毀損につながりにくいメリットがあります。
商品・サービスを検討中の顧客から見ると、「商品について知りたいことがあるけれど、問い合わせをして話せる自信がない」「問い合わせをするのが億劫だ」といったような、ハードルがあるのも事実です。
あるいは、企業のお問い合わせフォームに、個人情報を入力するのが怖いといった考えを持つ方もいるかもしれません。
一方で、チャットボットであれば相手に気を遣う必要もありませんし、そもそも機械が返答するため、質問のハードルを下げられます。
顧客の質問ハードルを下げられることで、お問い合わせ数が増加したり、それによって商品やサービスに興味を持ってもらえたりと、さまざまな相乗効果が期待できます。
チャットボットを導入すると、顧客が入力した質問や疑問がデータとして蓄積します。
その結果、自社が想定していたニーズのほかに、さまざまな潜在ニーズが見えてくるかもしれません。
これらのデータをうまく活用することで、「最近、○○について質問が多く寄せられているから、この商品やサービスを企画しよう」といった具合に、次のマーケティング戦略を立案できます。
またチャットボットを提供するベンダーの中には、収集したデータを自社の戦略に活かせるようにコンサルティングサービスも同時に提供しているケースもあります。
このようなサービスを利用すれば、さらなる顧客満足度向上のための施策を迅速に展開できるでしょう。
チャットボットには大きく分けて、「シナリオ型(ルールベース型)」「AI型」「ハイブリッド型」の3種類があります。
ここでは、それぞれの特徴について詳しく解説します。
シナリオ型、またはルールベース型とは、あらかじめ設定したルールやシナリオに沿って、ユーザーの質問に返答するタイプのチャットボットのことです。
例えば、チャットボットがユーザーに選択肢を提示し、ユーザーがその選択肢から該当項目を選びます。
その上で、チャットボットが項目ごとに事前に用意された返答を提示するという仕組みです。
「商品の価格や送料」「会社の福利厚生」など、顧客やユーザー、社員からの回答が想定しうるものであればあるほど、シナリオ型が向いています。
FAQページへの導入や、特定サービスのお申し込み手順を説明するシーンなどで活躍するでしょう。
シナリオ型チャットボットの大きな利点は、開発が比較的容易であり、導入コストも抑えられるところです。
中小企業にとっても導入しやすいタイプですので、ぜひ検討してみてください。
一方で、ユーザーが予期しない質問をした場合や、シナリオ外の対応が必要なシーンでは、柔軟性に欠けてしまう点を覚えておきましょう。
AI型とは、人工知能や自然言語処理技術を用いて、ユーザーの入力に対し動的に応答するチャットボットのことです。
AIが蓄積したデータを解析して回答を用意し、自然に近い会話ができる特徴があります。
そのため、自社に寄せられる質問やお問い合わせが多岐にわたる場合や、内容が複雑な場合で活躍するでしょう。
AI型は、定型文のみならず、搭載されたAIが学習を重ねるため、質問が増えれば増えるほど、以前は回答できなかった質問にも対応し、運用歴が長くなれば回答精度も向上します。
質問への順応性が高いため、シナリオ型と比較しても、人が介在しなくても業務が成立するため、業務効率の向上や自動化を促進できます。
なお、AI型のチャットボットは面倒なシナリオやルール設定は必要ないものの、お問い合わせに対する模範となるような回答データを事前に用意しなければ、学習を積めません。
つまり、運用直後に関しては効果的な学習を積んでいないので、正確な回答ができない可能性もあります。
AI型のチャットボットを的確に運用するためには、社内体制の構築や事前のデータインプットなどを実施しなければならず、運用開始までに労力がかかる点は否めません。
ハイブリッド型のチャットボットとは、シナリオ型とAI型の双方の特徴を併せ持つタイプのことです。
定型的な質問に対して、従来通りのシナリオ型で対応し、柔軟な回答が求められるシーンではAI型を活用します。
AI型としての機能も備えているため、FAQページや採用ページ、SNSなどさまざまな場所に埋め込める点はメリットです。
またハイブリッド型チャットボットの中には、自動応答のAI型チャットボットだけでなく、有人対応に切り替えられるタイプもあります。
自動応答ではどうしても対応しきれない場合は、有人のオペレーターにつなぐことによって、さまざまなニーズに応えられる優れものです。
このように、チャットボットには大きく分けて3つの種類がありました。
どの種類を選べばよいのかは、自社が置かれている状況やチャットボットを導入する目的によって異なります。
ぜひ、まずは導入の目的を整理した上で、種類を検討してみましょう。
ここからは、チャットボットに搭載されている主な機能と用途別の活用例をご紹介します。どのような機能が搭載されているかを知り、活用シーンを思い浮かべながら参考にしてみてください。
チャットボットにおける最も基本的な機能は、自動応答です。
ユーザーが質問やリクエストを送信すると、事前に登録されたシナリオやデータベースから、的確な回答を提供してくれます。
またすでにお伝えしたように、自動応答だけでなく、24時間365日対応可能である点も見逃せません。
人が介在するカスタマーサポートだと、どうしても営業時間外や定休日などは、翌営業日以降の対応となるため、レスポンスにタイムラグが生まれてしまいます。
しかし、チャットボットであれば時間外や定休日であっても関係なく稼働するため、顧客からお問い合わせがあった時点で回答を提示できます。
そのため、レスポンスもよく顧客満足度の向上も狙えるでしょう。
顧客満足度が向上することで、最終的にはCV(コンバージョン)アップにもつながり、迅速な対応により他社に顧客が流れてしまうリスクも抑制できます。
チャットボットを活用すれば、事前に設定したルールやシナリオ、もしくはデータベースを基に柔軟にお問い合わせに対応してくれます。
しかし、複雑な質問に対して全て対応できるとは限りません。チャットボットの中には、このような状況において有人対応に切り替えられるタイプもあるのです。
チャットボットがどうしても回答を用意できない場合にのみ、オペレーターにつなぐことで、顧客満足度も向上します。
また、オペレーターは必要性の高い質問だけに集中できるので、業務負担が軽減され、本来注力すべき別の業務にも向き合えます。
このように、必要に応じて有人機能も活用することで、社内外にメリットがあるのです。
タイプによっても異なるものの、チャットボットは、ユーザーの対話を通じて得たデータを蓄積できます。
それらを分析することによって、ユーザーが求める潜在ニーズを把握でき、次のマーケティング分析や施策の投下に活かせるというわけです。
マーケティング視点でもチャットボットを活用したいという場合は、ぜひデータ収集と分析機能が付いたツールを選んでみてください。
また、繰り返しますがチャットボットによっては、得られたデータをコンサルタントが分析し、次の施策に活かすコンサルティングサービスを提供しているケースもあります。
マーケティングに力を入れたい場合は、このようなオプション付きのベンダーを選んでみるのもよいでしょう。
外部システムとのシームレスな連携をできるチャットボットも登場してきています。
具体的には、ユーザーが「予約」と入力すれば、チャットボットから直接予約システムへリンクで誘導できるという仕組みです。
外部システムへの導線がスムーズであるため、ユーザーが自社から離脱することを防ぎ、使いやすさの観点から顧客体験の向上も期待できます。
顧客のエンゲージメントが高まれば、自社商品やサービスのリピートも狙え、LTV(顧客生涯価値)の向上も確保できるでしょう。
外部システムへの誘導も視野に入れる場合は、ぜひ連携機能が充実したチャットボットを選んでみてください。
コロナ禍を経て、訪日観光客の人出復活や自社のグローバル展開など、昨今ビジネスを取り巻く事情は変化しています。
例えば、観光地には毎年多くの外国人が訪れていますが、日本語以外に対応できるスタッフが充実しているとは言えません。
さらには、英語をはじめ中国語や韓国語など、多言語に対応したスタッフを採用しようと思っても、なかなか集まらないのが現状です。
そのような状況を打開するために、各社はさまざまな対策を講じていますが、そのうちの一つがチャットボットです。
チャットボットの中には多言語対応タイプもあるため、これらを活用することで、外国人の言語におけるストレス軽減にもつながります。
また、介護や医療の現場などでは、日本人労働者の減少に伴い、外国人を採用する傾向も見られています。
しかし、採用したのはよいものの日本人と外国人との間でコミュニケーションの壁があるのも事実です。
そこで社内のコミュニケーションを円滑にするために、チャットボットを導入するのもおすすめです。
このように、チャットボットは社内外におけるコミュニケーションの溝を埋める重要な役割も果たしています。
「海外展開を検討している」「外国人との接客が不可欠」など、業界やサービスに応じて、多言語対応のチャットボットも検討してみてください。
チャットボットによっては、指定したIPアドレスに対してチャットを非表示にしたり、管理画面へのアクセスを制限したりと、セキュリティを個別に設定できる機能が付いたタイプもあります。
予期せぬアクセスを防ぎ、セキュリティ対策を強化したい場合には、おすすめの機能です。
チャットボットを提供しているベンダーによって、セキュリティ対策の内容は異なるため、しっかりと比較検討しておきたいところです。
ここからは、チャットボットを実際に導入するにあたり、押さえておきたいステップと成功のポイントを解説します。
チャットボットを導入する前に、その目的と目標を明確に設定することが重要です。
例えば、カスタマーサポートの効率化、ユーザーエクスペリエンスの向上、または売上向上のためのマーケティング支援など、具体的な目的を定めます。
なお具体的な目的は、できるだけ定量的・定性的、両方を設定するのが望ましいでしょう。
定型業務を年間720時間、180万円のコストを削減すると目標を決めておけば、削減できたコストと時間をどのように活用するかも見えてきますよね。
また従業員の業務負担が軽減されることにより、残業時間が月に2時間削減されワークライフバランスが向上するなどの目的も設定しておくとよいでしょう。
目的や目標を決めておくことで、チャットボットを導入する具体的なステップが見えてきます。
次に、チャットボットが対象とするユーザー層を特定します。
ユーザーの年齢層、興味、行動パターンなどを分析し、チャットボットの設計に反映させます。
例えば、若年層を対象とする場合はカジュアルな言葉使いやSNS風のコミュニケーションスタイルを採用することが効果的です。
逆に、ビジネス向けであればフォーマルな対応が求められるでしょう。
次に、自社の問題解決につながる、チャットボットの具体的な機能を選定します。
自動応答・多言語対応・FAQ対応・自動予約システムとの連携・商品レコメンデーションなど、目的に応じて機能を選び、優先順位をつけて決定します。
また、自然言語処理技術や機械学習機能を搭載するかどうかも考慮しなければなりません。
シナリオ型なのか、AI型なのか、もしくはハイブリッド型なのかを含めて決定しましょう。
複雑な質問が想定される場合は、AI型やハイブリッド型がおすすめで、必要に応じて有人
対応への切り替えができるタイプを選ぶとよいかもしれません。
なお、チャットボットの機能やタイプなどによって、費用も異なります。自社の予算と合致するかどうかも含めて検討してみてください。
自社に必要なチャットボットの機能を整理できたところで、導入場所を決定します。
例えば、人材採用を強化したい場合は、当然自社のトップページに導入するのではなく、採用ページへの導入を検討しますよね。
チャットボットは、導入場所によってもユーザーや利用者の利便性が変わります。SNSプラットフォームに埋め込むのか、Webサイトなのか、詳細な導入場所を検討してみてください。
チャットボットによっては特定のプラットフォームには対応していないケースもあります。
「希望のプラットフォームに設置できなかった」ということがないように、ご注意ください。
チャットボットを導入する際は、無料トライアルを提供しているベンダーを選ぶことが重要です。
無料トライアルを通して、以下の項目を確認することで、導入後もスムーズに運用できます。
・従業員にとって管理画面がわかりやすいか
・FAQの追加や更新は手間ではないか
・AIの応答精度は問題ないか
・ベンダーのサポート体制は充実しているか
次にFAQやシナリオを作成していきます。シナリオ型のチャットボットの場合、チャットボットがユーザーや利用者からの質問に回答するためには、FAQの登録が必要です。
フローチャートのように階層を分けて、選択肢を一つずつ登録していきましょう。
なお、シナリオ型のチャットボットではなくAI型のチャットボットの場合は、AIが質問内容を分析して、適切な回答を提示するため、このフローは必要ありません。
どのチャットボットを選ぶかで、導入ステップも変わるため覚えておきましょう。
FAQや質問の登録が完了したら、期間を指定し、特定の利用者に向けてテスト運用を開始します。
テスト運用を実施する中で、「想定していた質問では補いきれなかった」「回答がわかりにくかった」など、さまざまな課題が浮かび上がってきます。
生じた課題を基に、FAQの追加や修正を行い、最適化を図りましょう。
テスト運用を実施し、運用体制が整った段階で本格運用をスタートします。
すでに自社商品やサービスを利用されている方に対しては、チャットボットサービスをローンチしたことを伝達し、多くの方から利用される体制を構築しましょう。
またチャットボットは一度ローンチしたら終わりではありません。運用する中で、適宜FAQを追加したり、データを分析したりPDCAサイクルを回すことが重要です。
ここからは、中小企業にフォーカスしチャットボットツールの選び方と評価基準について、解説します。
業界によっても異なりますが、チャットボットツールとは無縁の中小企業にとっては、ITツールの扱いが不慣れな場合も多いかもしれません。
このような状況を想定して、できるだけシナリオ作成は簡単に実施できるほうがよいでしょう。
例えば、既存のFAQデータをベースにそのまま活用したり、シナリオを簡単に変更・追加したりなどです。
また管理画面や操作画面においても、全従業員が扱いやすいUI(ユーザーインターフェース)を採用しているかどうかという視点で考える必要もあります。
全ての中小企業に該当するわけではありませんが、基本的にはシナリオ型のチャットボットを検討してみるとよいでしょう。
事前にシナリオを設定しなくても済むAI型のチャットボットは、確かに自然言語処理技術を用いて、どのような質問にも柔軟に対応できる汎用性の高さがあります。
しかし、AI型にも事前に大量のデータを用いて学習を積む必要がある、シナリオ型と比較して導入や運用コストが高いなどのデメリットもあります。
上記を踏まえて、そこまで質問内容が多岐にわたらない、もしくはAIに学習させるためのデータに触れられる人材がいない場合は、シナリオ型で問題はないでしょう。
ツールの扱い方に不安がある、もしくはITツールに知見がない企業の場合におすすめなのが、ベンダーから提供されるサポートです。
例えば、導入段階においてもどの業務に自社が課題を抱えているのかヒアリングから対応してくれたり、導入後も定例会議を開き、運用のアドバイスをしてくれたりなど、手厚いサポートが魅力のベンダーもあります。
またサポート方法についても、電話やメールだけでなく、手軽に相談できるチャットを導入しているベンダーもあります。
さらには、導入後の効果測定や次なるマーケティング施策の立案などにも対応するコンサルティングサービスを提供するベンダーも。
このように中小企業がチャットボットを選ぶ際は、万が一に備えたベンダーのサポート体制も比較してみるとよいでしょう。
一口にチャットボットと言っても、導入されている機能はさまざまです。
例えば、インバウンド向けに多言語対応も可能なツールもあれば、チャットボットでは対応できない場合に有人対応に切り替えられるツールもあります。
このように、搭載されている機能が増えれば増えるほど、導入コストが高くなるのも事実です。
そのため、導入前には自社に必要な機能はどれなのかをしっかり吟味して、検討する必要があります。
また、できる限り無料トライアルを活用して、実際の使い心地を確かめるのもよいでしょう。
アルミニウムの総合メーカーとして、高品質な板材や押出品、鋳造品などを供給している株式会社UACJ。
チャットボット導入のきっかけは、新型コロナウイルス感染症の蔓延によって、従業員の在宅ワークも増加し、社内に気軽に問い合わせができなくなるのではないか?という懸念からだったそうです。
問い合わせを最適化するチャットボット「HiTTO」を導入した決め手は、質問の回答やテンプレートがすでに作られていて、イチから作成する手間が少ない点を挙げられています。
いざチャットボットをリリースしてみると、従業員から多くの質問が寄せられて、回答率は98%を実現しているそうです。
参考:"AIチャットボット"が伝統的な組織にもたらした大きな変化。DX推進の文化が醸成され、他ITツールの導入も活性化
熊本県では、LINEの友だちに登録するだけで、就学未満の子育てをしている方に向けて、24時間365日AIが回答する「聞きなっせAI くまもと」を導入しています。
利用者の位置情報から、近隣にある子育て応援店舗を簡単に検索できる機能が追加されたほか、県内にある全ての市町村の情報を取得できます。
また質問をした個人は特定されませんが、質問内容のデータが蓄積されることで、利用者の声をダイレクトに反映できるメリットもあるそうです。
本記事では、栃木県宇都宮市のチャットボット導入事例もご紹介しましたが、人材不足が懸念される地方からチャットボットを積極的に導入していることが伺えます。
参考:「聞きなっせAIくまもと」について|熊本県
日本航空株式会社(JAL)では、チャット自動応答サービスを導入しています。
具体的には、お客様からの質問に対して24時間365日いつでも自動で回答するサービスとなっており、パソコンやスマートフォンなど端末問わず利用できるのが特徴です。
使い方も至ってシンプルで、まず利用者がご質問の対象カテゴリを選択し、質問文を入力します。
すると、チャット自動応答サービスが、質問に即して該当ページやよくあるご質問ページへ誘導するというものです。
チャット自動応答サービスを導入することにより、スタッフによる業務負担も軽減され、利用者はスムーズに疑問やお悩みを解消できるという利点があります。
参考:チャット自動応答サービス|JAL公式サイト
チャットボットツールのおすすめや、そのほかの成功事例について知りたい方は、この記事「チャットボット比較31選、機能や費用、選び方、無料プランの有無などで見比べられます」を読んでみてください。
本記事では、中小企業においてなぜチャットボットを導入するのかその理由と、具体的な導入ステップなどを詳しくお伝えしました。
シナリオ型やAI型などの種類をはじめ、搭載されている機能も豊富にあるチャットボットですが、最も意識しなければいけないのは、自社が導入する目的です。
従業員のお問い合わせへのレスポンスを高めたいのか、もしくはカスタマーサポートとしての業務を自動化したいのか、何を目的とするかで搭載する機能も変わります。
ぜひ、導入にあたっては自社が必要とする課題は何かを今一度見直してみてください。