「ECサイトを作りたいけど、どの構築方法がいいのか迷っている」
「オープンソースが良いと聞いたけど、デメリットもあるって本当?」
そんな疑問を持つ人は多いのではないでしょうか。
EC市場が成長を続ける中で、企業が選べる選択肢もどんどん増えています。その中でも「オープンソース」という手法は、低コストで自由度の高いECサイトを作れるという点で人気があります。しかし、一方で「専門知識が必要」「セキュリティ対策が大変」といった声も聞かれます。
オープンソースのメリット・デメリットは単純に比較できるものではなく、「どの企業にとって、どんなフェーズで最適か?」が重要となってきます。
ここでは、オープンソースのECサイトについて、単なる特徴の解説ではなく、「どんな企業に向いているのか?」 「導入する際に気をつけるべきことは?」まで踏み込んでお話ししていきます。また、実際にオープンソースでECを成功させた企業の事例も紹介しながら、具体的なイメージが湧くようにまとめました。
もし、ECサイトをオープンソースで作るかどうか悩んでいるなら、この記事が判断材料のひとつになれば嬉しいです。
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オープンソースとは、「ソースコード(プログラムの設計図)が公開され、誰でも利用・改変できるソフトウェア」のことです。ECサイト構築においても、この考え方が適用されており、無料で使えるECプラットフォームが数多く存在します。
つまり、特定の企業が提供するECサービスを利用するのではなく、公開されているソフトウェアをダウンロードして、自社のサーバーにインストールし、必要な機能を追加しながら運用していくというスタイルです。
これにより、「ゼロから開発するよりも低コストで、自社に合ったECサイトを作れる」というメリットがあります。ただし、自由度が高い分、設定や運用はすべて自社で管理しなければならず、その点は事前に理解しておく必要があります。
無料で利用できるがカスタマイズが可能な仕組み
「無料で使えるなら、コストをかけずにECサイトが作れるのでは?」と思うかもしれません。たしかに、オープンソースのECプラットフォームは基本的にライセンス費用がかかりません。しかし、運用するには「サーバー代」「カスタマイズの開発費」「セキュリティ対策」など、いくつかのコストが発生します。
ただ、一般的なECサービスと比べると、機能やデザインの制約がないという点は大きな強みです。既存のテンプレートを使うのも良いですが、必要に応じて機能を追加したり、デザインを変えたりすることで、ブランドの個性を表現しやすくなります。
また、プラグインや拡張機能が豊富に用意されているものが多く、特定の機能をすぐに追加できるのも魅力のひとつです。たとえば、決済機能を強化したり、多言語対応にしたりと、成長に合わせてECサイトを進化させていくこともできます。
ECサイトを構築する方法は、一つではありません。SaaS型、パッケージ型、フルスクラッチ、オープンソース型と、大きく分けて4つの選択肢があります。それぞれの特徴を知ることで、自社に合った方法が見えてくるはずです。
オープンソース型の強みは「自由度の高さ」ですが、それが必ずしもすべての企業にとってベストとは限りません。では、各手法の違いや、どんな企業に向いているのかを詳しく見ていきましょう。
ECサイトの構築方法を比較する際に、重要なポイントは「初期コスト」「運用負担」「カスタマイズ性」の3つです。それぞれの手法を簡単に説明した後、比較表で特徴を整理していきます。
1. SaaS型(クラウドサービスを利用する方法)
SaaS型(Software as a Service)は、「システムをレンタルして使う」というイメージに近いです。代表的なサービスには Shopify、BASE、カラーミーショップ などがあり、アカウントを作成すればすぐにECサイトを運営できます。
メリット
・初期費用がほとんどかからず、すぐに運用開始できます。
・システムのアップデートやセキュリティ対策が自動で行われます。
・技術的な知識がなくても運用しやすいです。
デメリット
・カスタマイズ性が低く、独自機能の追加が難しいです。
・利用料金が毎月発生します。
・プラットフォームのルール変更に影響を受けます。
向いている企業
・すぐにECサイトを立ち上げたいです。
・運用の手間を減らしたいです。
・小規模〜中規模のECサイトを考えています。
2. パッケージ型(買い切り型のECシステム)
パッケージ型は、「ECサイト構築用のソフトウェアを購入し、自社サーバーに導入する方式」です。有名なものに MakeShop、ecbeing、Shopify Plus などがあります。
メリット
・SaaS型よりもカスタマイズしやすいです。
・ある程度完成されたシステムを使えるため、ゼロから開発する必要がないです。
・自社サーバーで運用できるため、プラットフォーム依存のリスクが低いです。
デメリット
・初期費用が比較的高いです。(数百万円~)
・システムの保守・アップデートを自社で行う必要があります。
・SaaS型ほど手軽ではないです。
向いている企業
・中規模〜大規模のECサイトを運営したいです。
・ある程度のカスタマイズ性が必要です。
・一定の技術力を持つチームがあります。
3. フルスクラッチ(ゼロから独自開発)
フルスクラッチは、「完全にオリジナルのECサイトを一から開発する方法」です。すべてを自由に設計できる反面、開発には時間とコストがかかります。
メリット
・独自の機能やシステムを自由に組み込めます。
・デザインやUXを細かく設計できます。
・自社の運用方法に最適化しやすいです。
デメリット
・開発期間が長く、初期費用も高額です。
・メンテナンスやセキュリティ対策を自社で行う必要があります。
・エンジニアの確保が必要となります。
向いている企業
・特殊なEC機能が実装する必要がある場合(会員制EC、サブスク型ECなど)
・競争優位性を高めるために独自のシステムを開発したいです。
・大規模なECサイトを運営する予定があります。
フルスクラッチ型ECサイトについて更に知りたい方は、この記事「フルスクラッチECサイトとは?メリットとデメリット、選ぶかどうかの判断基準、よくある失敗、費用相場を紹介」を読んでみてください。
4. オープンソース型(無料で利用できるECプラットフォーム)
オープンソース型は、「公開されているECシステムをカスタマイズして利用する方法」です。EC-CUBEやMagento(Adobe Commerce)、WooCommerceなどが代表例です。
メリット
・無料で利用できるため、初期費用を抑えられます。
・機能の追加やデザイン変更が自由にできます。
・コミュニティが活発で、情報が手に入りやすいです。
デメリット
・サーバーの設定やセキュリティ対策を自社で行う必要があります。
・カスタマイズにはエンジニアのスキルが必要です。
・障害対応やトラブルシューティングは基本的に自分たちで対応できます。
向いている企業
・自由度の高いECサイトを作りたいです。
・独自の機能を追加する予定があります。
・エンジニアを確保できる、もしくは外部の開発会社と連携できます。
構築方法 | 初期コスト | カスタマイズ性 | 運用負担 | 代表的なサービス |
---|---|---|---|---|
SaaS型 | 低 | 低 | 低 | Shopify、BASE、カラーミー |
パッケージ型 | 中 | 中 | 中 | MakeShop、ecbeing |
フルスクラッチ | 高 | 高 | 高 | 自社開発 |
オープンソース型 | 低 | 高 | 高 | EC-CUBE、Magento、WooCommerce |
それぞれの手法にはメリット・デメリットがあり、「どれがベストか?」は企業ごとの状況によって異なります。
・SaaS型が向いている企業:手軽にECを始めたい、技術リソースがない、運用の手間を減らしたいです。
・パッケージ型が向いている企業:一定のカスタマイズが必要、でもゼロから開発するのは負担が大きいです。
・フルスクラッチが向いている企業:特別な機能を実装したいので独自のECシステムを作りたい。
・オープンソース型が向いている企業:低コストで始めたい、カスタマイズ性を重視、エンジニアの確保ができます。
ECサイトの構築方法にはさまざまな選択肢がありますが、「低コスト」「自由度の高さ」「拡張性」を重視するなら、オープンソース型が有力な選択肢の一つになります。
ただし、メリットを理解するだけでなく、「なぜそれが強みになるのか?」まで押さえておくことが重要です。ここでは、オープンソース型を採用することで得られる具体的な利点を詳しく解説していきます。
1. 初期費用を大幅に抑えられる
ECサイトを立ち上げる際、「まず気になるのはコスト」という人も多いでしょう。SaaS型やパッケージ型のECシステムは、初期費用や月額料金がかかるのが一般的ですが、オープンソース型なら基本的にソフトウェア自体は無料で利用できるため、初期投資を抑えられます。
もちろん、 「完全にゼロ円で運用できるわけではない」 という点には注意が必要です。サーバー代やドメイン取得費用、カスタマイズをするなら開発費用などが発生します。それでも、一から開発するフルスクラッチ型に比べると圧倒的に低コストですし、SaaS型のように月額料金を支払い続ける必要もありません。
「とにかく費用を抑えたい」「まずはシンプルな形でスタートしたい」という場合、オープンソース型は大きな選択肢になります。
2. カスタマイズ性が高く、独自のECサイトが作れる
「他と同じようなデザインではなく、ブランドの個性を出したい」
「ECサイトの機能を自社のビジネスモデルに合わせて調整したい」
こうした要望がある場合、オープンソース型の自由度の高さは大きな魅力です。SaaS型はテンプレートが用意されていて手軽に始められる反面、デザインや機能のカスタマイズには限界があります。一方、オープンソース型なら、レイアウトの変更、決済手段の追加、会員機能の強化など、自社のニーズに応じた細かな調整ができます。
例えば、WooCommerce(WordPressベースのECプラットフォーム)を利用すれば、ブログとの連携を強化し、コンテンツマーケティングを重視したECサイトを作ることも可能です。また、EC-CUBEをカスタマイズすれば、国内向けに最適化されたECサイトを構築できます。
ただし、「自由度が高い=手間もかかる」という点は頭に入れておくべきです。カスタマイズには開発スキルが必要になるため、「自社でエンジニアを確保できるか?」「外部に依頼するなら予算はどれくらいか?」という点も考慮しておくとよいでしょう。
3. 拡張性があり、外部ツールとの連携が容易
ECサイトの運用を効率化するには、 決済システム、CRM(顧客管理)、マーケティングオートメーション(MA)、在庫管理システム などの外部ツールとの連携が不可欠です。
オープンソース型のECプラットフォームは、この 外部ツールとの連携がしやすい という特徴があります。
例えば、以下のような連携が考えられます。
・決済システムの導入(Stripe・PayPal・Square など)
・CRMと連携し、顧客データを活用(Salesforce・HubSpot など)
・MAツールと接続し、メールマーケティングを強化(Marketo・Pardot など)
・在庫管理システムとの同期(Amazon FBA・Zoho Inventory など)
SaaS型のECシステムでもプラグインを利用すれば一部の外部ツールと連携できますが、「特定のサービスにしか対応していない」「連携に制約がある」というケースもあります。その点、オープンソース型なら、APIを活用すれば必要なツールを自由に組み合わせられるため、運用の幅が広がります。
4. 短期間でECサイトを構築できる
「オープンソース型は開発が必要だから時間がかかるのでは?」と思うかもしれませんが、ゼロから開発するフルスクラッチ型と比べれば、圧倒的に短期間で構築できます。
例えば、SaaS型のように「アカウントを作成すればすぐにスタート」というわけにはいきませんが、既存のプラットフォームをベースに構築できるため、開発工数を大幅に削減できます。
具体的な目安としては、以下のようなイメージです。
EC構築方法 | 構築期間の目安 |
---|---|
SaaS型 | 1日〜1週間 |
オープンソース型 | 1ヶ月〜3ヶ月 |
パッケージ型 | 3ヶ月〜6ヶ月 |
フルスクラッチ | 6ヶ月以上 |
例えば、WooCommerceを使えば、基本的な機能を備えたECサイトを1ヶ月程度で構築することもできます。EC-CUBEやMagentoの場合、カスタマイズの度合いによりますが、3ヶ月程度 で完成するケースも少なくありません。
短期間で立ち上げつつ、運用しながらカスタマイズを加えていくというスタイルにも適しているため、「スピード感を持って市場に投入し、運用しながら改善したい」という企業にとっては、有力な選択肢になり得ます。
オープンソース型のECサイトは、 低コストで導入できることやカスタマイズ性の高さが魅力 です。とはいえ、すべての企業にとって最適な選択肢とは限りません。
「運用の難易度」「セキュリティ管理」「サポートの少なさ」などは、事前に把握しておくべきポイントです。ここでは、オープンソース型を導入する際に考慮すべき課題について説明させていただきます。
1. 専門的な知識が必要(開発・運用・カスタマイズ)
オープンソース型のECプラットフォームは自由度が高い反面、導入や運用には一定の技術力が求められます。
たとえば、EC-CUBEやMagentoを利用する場合、「サーバーの設定」「データベースの管理」「プラグインの導入と動作確認」などを自分たちで対応する必要があります。SaaS型のように管理画面から簡単にカスタマイズできるわけではなく、HTML・CSS・PHP・SQLなどの知識がないと難しい場面が出てきます。
また、カスタマイズの幅が広いため、「どこまで手を加えるか?」の判断も重要です。必要以上に改変を加えてしまうと、アップデート時にトラブルが発生しやすくなります。
この点が問題になりそうなケース
・社内にエンジニアがいない
・外部の開発会社に依頼する予算がない
・プラグインの導入や設定をすべて自社で対応したい
対策として考えられること
・必要最小限のカスタマイズで運用を始める。
・開発・運用を外部の専門会社に依頼する。
・学習コストをかけてでも、社内で対応できるよう準備する。
2. セキュリティリスクがある(自己管理が必要)
オープンソース型のECサイトは、 セキュリティ対策を自分たちで講じなければならない という点も注意が必要です。
SaaS型の場合、運営元が定期的にセキュリティアップデートを行ってくれるため、ユーザー側が細かく管理する必要はありません。しかし、オープンソース型では 「脆弱性への対応」「SSL設定」「不正アクセス対策」 などを自社で行う必要があります。
実際、 オープンソースのECプラットフォームがサイバー攻撃の対象になるケース も少なくありません。特に 「バージョンが古いまま放置されているサイト」「適切なアクセス制御がされていないサイト」 は狙われやすいといわれています。
具体的なリスクと対策
リスク | 対策 |
---|---|
ソフトウェアの脆弱性 | 定期的なアップデートを実施する |
不正アクセス | ファイアウォールの設定やログイン認証の強化 |
データの流出 | SSL証明書の導入、データの暗号化 |
マルウェア感染 | セキュリティソフトの導入、サーバーの監視強化 |
ECサイトは「顧客の個人情報」や「決済データ」を扱うため、セキュリティ対策は必須です。
3. トラブル時のサポートが限られる(企業の内部リソースが必要)
ECサイトを運用していると、「プラグインの不具合」「サーバーの障害」「アップデートによるバグ」など、さまざまなトラブルが発生することがあります。
SaaS型なら、 運営元のカスタマーサポートに問い合わせれば対応してもらえますが、オープンソース型にはそうしたサポートが基本的にありません。
そのため、トラブルが起きたときに自力で解決するか、開発会社に依頼する必要があります。
解決策として考えられること
・公式フォーラムやコミュニティを活用する
EC-CUBEやMagentoなどは、ユーザー同士の情報共有が活発で、解決策が見つかることも多いです。
・保守契約を結んでおく
外部の開発会社と契約し、定期メンテナンスを依頼することでリスクを減らせます。
・バックアップをこまめに取る
もしもの時に備え、サイトのデータを定期的に保存しておくと安心です。
社内に専門知識を持つ人がいない場合は、 「いざというときに頼れる外部パートナーを確保しておく」ことが重要になります。
4. システムのバージョンアップ対応が必要
オープンソースのECプラットフォームは、定期的にバージョンアップが行われます。 これは「機能追加」「セキュリティ強化」「不具合修正」などの目的で行われるため、できるだけ最新の状態を保つのが望ましいです。
しかし、バージョンアップの際にカスタマイズした部分が動かなくなるリスクがあるため、単純に更新すればいいというわけでもありません。
例えば、EC-CUBEで独自にカスタマイズした場合、新しいバージョンに更新したことで「特定の機能が正常に動かなくなった」「デザインが崩れた」というケースもあります。
バージョンアップの際に注意すべきポイント
・事前にテスト環境で動作確認を行う
・アップデート前にサイト全体のバックアップを取る
・プラグインや拡張機能の互換性をチェックする
定期的に機能追加や改善を続ける予定がある場合、アップデートへの対応力も考慮するべきポイントになりそうです。
オープンソースのECサイトは、 コストを抑えつつ自由にカスタマイズできるという点が大きな魅力です。しかし、「自由度が高い=運用の負担が増える」という側面もあります。
では、どのような企業にオープンソース型が適していて、どんな企業には向かないのか?その特徴を整理してみましょう。
1. 独自のEC機能を作りたい企業
「既存のECサービスでは、自社のビジネスモデルに合わない」
「販売方法や顧客管理の仕組みを、自社独自の形にしたい」
こうしたニーズがある企業には、オープンソース型の柔軟性が役立ちます。
たとえば、サブスクリプション型のECや、BtoB向けの特殊な取引形態を取り入れたい場合、SaaS型では細かいカスタマイズが難しいことが多いです。一方で、オープンソースなら、独自の機能を組み込んで最適なECサイトを構築できるという強みがあります。
具体的な例を挙げると、次のようなケースが考えられます。
・中規模以上の定期購入専用のECサイト(食品・化粧品・サプリメントなど)
・規模が大きい卸売専用のBtoB ECサイト(会員ごとに価格設定を変えるなど)
・デジタルコンテンツ販売サイト(電子書籍・オンライン講座・音楽配信など)
こうした「汎用的なECプラットフォームでは対応が難しい機能」を求める場合、オープンソースのカスタマイズ性が活かせるでしょう。
2. エンジニアリソースが確保できる企業
オープンソース型のECサイトは、導入や運用に技術的な知識が必要になります。そのため、社内にエンジニアがいる、または外部の開発会社と連携できる企業であれば、スムーズに運用しやすいです。
たとえば、以下のような環境が整っている企業には向いているでしょう。
・社内にWebエンジニアやシステム管理者がいる
・既存のITベンダーや開発パートナーと継続的に取引している
・外部の技術者を確保するための予算がある
逆に、「社内に技術担当者がいない」「開発リソースを外部に頼れない」という場合は、運用の負担が大きくなりがちです。
3. 海外展開を視野に入れている企業
グローバル市場をターゲットにするなら、オープンソース型のECサイトが有力な選択肢になります。
なぜなら、多言語対応や海外向けの決済・配送オプションを組み込みやすいからです。特に、Magento(Adobe Commerce)やPrestaShopなどの海外発のオープンソースECプラットフォームは、もともと多言語・多通貨対応が前提となっているため、カスタマイズ次第で世界各国の顧客に向けたECサイトを作ることができます。
例えば、こんな企業には適しているでしょう。
・越境ECを展開したい(欧米・アジア向けの販売)
・海外の決済手段を導入したい(PayPal・Alipay・WeChat Pay など)
・各国の税制や配送方法に対応したい
SaaS型のECプラットフォームでも一部の多言語対応機能はありますが、細かい設定やローカライズの自由度はオープンソース型のほうが高いです。
1. 技術リソースがない・運用負担を軽くしたい企業
オープンソース型のECサイトは、サーバーの管理やセキュリティ対策を自社で行う必要があります。そのため、社内にエンジニアがいない、または外部に委託する予算がない場合は、運用が負担になる可能性があります。
例えば、次のような企業はSaaS型やパッケージ型のほうが適しているかもしれません。
・WebやITの専門知識を持つ社員がいない
・システム管理の手間を最小限にしたい
・予算を抑えたいが、開発リソースに投資できない
SaaS型であれば、システムの運用・保守はすべて提供会社が対応するため、ECの運営に集中できるというメリットがあります。
2. すぐにECサイトを立ち上げたい企業
「なるべく早くECサイトをオープンしたい」という場合、オープンソース型は向いていないかもしれません。
なぜなら、導入やカスタマイズに時間がかかるからです。たとえば、SaaS型なら数日~1週間で立ち上げられるのに対し、オープンソース型はカスタマイズの度合いによりますが、1ヶ月以上の期間が必要になるケースが多いです。
特に、以下のような企業にはSaaS型が向いているでしょう。
・限られた期間でECサイトをスタートさせたい
・スタートアップや新規事業で、素早く市場に投入したい
・最低限の機能で運営しながら、後で拡張していきたい
オープンソース型は自由度が高い反面、すぐに使える状態ではないため、「スピード感」を重視するなら、SaaS型を検討するのがよいでしょう。
企業ごとの目的やリソースに合わせて、 最適な構築方法を選ぶことが大切 です。
次の章では、 オープンソースECプラットフォームの比較 について詳しく解説していきます。
ECサイトを構築する際、オープンソース型のプラットフォームを選ぶことで、自由度の高いカスタマイズができるというメリットがあります。ただし、それぞれのツールには特徴があり、「どの企業に適しているか?」も異なります。
ここでは、主要なオープンソースECプラットフォーム5種類について、それぞれの特徴や向いている企業を詳しく解説していきます。
プラットフォーム | 特徴 | 主な利用企業 | コスト | 日本語対応 | セキュリティ対策 |
---|---|---|---|---|---|
EC-CUBE | 国内シェアNo.1、日本向け | 中小企業 | 低 | ◎ | ◎ |
Adobe Commerce(旧Magento) | 大規模ECに最適、海外向け強い | 大手企業 | 中〜高 | △ | ◎ |
WooCommerce | WordPressと連携可能 | 小規模事業者 | 低 | ◎ | △ |
OpenCart | シンプルで使いやすい | スタートアップ | 低 | △ | △ |
PrestaShop | ヨーロッパで人気 | グローバルEC | 低〜中 | △ | ◎ |
特徴
・日本市場に最適化されたECプラットフォーム
・国内の中小企業や個人事業主に人気
・豊富なプラグインとサポート体制
EC-CUBEは、日本国内向けのECサイトを作る際に最も選ばれているオープンソースのプラットフォームです。カスタマイズ性が高く、国内の決済・配送システムとの相性も良いため、日本市場をターゲットにしたECサイトにはぴったりだといえます。
また、日本語の情報が充実しているのも強みです。海外のオープンソースECシステムでは、マニュアルやフォーラムの情報が英語のみの場合が多いですが、EC-CUBEなら日本語でのサポートや事例が豊富にあるため、開発のハードルが比較的低くなります。
こんな企業に向いている
・国内市場をターゲットにしたい
・日本語でのサポートや情報が欲しい
・中小企業や個人事業主で、カスタマイズしながら運営したい
特徴
・グローバル展開に強く、多言語・多通貨対応がしやすい
・大手企業向けの高度なカスタマイズが可能
・拡張性が高く、複雑なEC機能の実装が可能
Adobe Commerce(旧Magento)は、世界中で利用されているオープンソースECプラットフォームです。 海外展開を視野に入れている企業や、大規模ECサイトを構築したい企業に適しています。
ただし、カスタマイズの自由度が高い反面、開発コストがかかるという点には注意が必要です。基本的なセットアップだけでも専門的な知識が求められるため、エンジニアリソースを確保できる企業向けだといえます。
こんな企業に向いている
・グローバル市場をターゲットにしたECサイトを運営したい
・大規模なECサイトを展開する予定がある
・社内に開発リソースを確保できる
特徴
・WordPressと連携してECサイトを構築できる
・ブログやメディアとECを組み合わせた運営がしやすい
・小規模事業者向けで、比較的簡単に導入できる
WooCommerceは、WordPressと連携できるECプラットフォームで、コンテンツマーケティングを活用したECサイトを運営したい企業に適しています。
例えば、ブログを活用しながらECサイトを運営する D2Cブランド や、情報発信を重視する 専門店などに向いています。導入の手軽さが魅力ですが、大規模なECサイトには向いていないため、その点は考慮が必要です。
こんな企業に向いている
・WordPressで既にサイトを運営しており、EC機能を追加したい
・コンテンツを活用したECサイトを作りたい
・小規模のEC事業をスタートしたい
特徴
・軽量で動作が軽く、管理画面がシンプル
・スタートアップ向けのECプラットフォーム
・基本的な機能が備わっており、拡張も可能
OpenCartは、「とにかくシンプルにECサイトを立ち上げたい」という企業向けのオープンソースECプラットフォームです。管理画面の操作が分かりやすく、最低限の機能が揃っているため、ECサイト初心者でも扱いやすいといえます。
一方で、日本語の情報が少なく、国内の決済システムとの連携がやや手間という点には注意が必要です。そのため、英語のマニュアルを読みながら対応できる企業向けだと考えたほうが良いでしょう。
こんな企業に向いている
・シンプルなECサイトを立ち上げたい
・海外市場向けの販売を考えている
・スタートアップや個人事業主で、手軽に始めたい
特徴
・フランスを中心に、ヨーロッパで人気の高いECプラットフォーム
・多言語・多通貨対応がしやすく、グローバル向けに強い
・デザイン性が高く、洗練されたECサイトが作れる
PrestaShopは、ヨーロッパ市場向けのECサイトを運営したい企業に適しています。多言語・多通貨対応がしやすく、デザイン性の高いECサイトを作りやすいという特徴があります。
ただし、日本国内での利用者はそれほど多くないため、日本語の情報が少なく、決済システムとの相性を事前に確認する必要があるという点には注意が必要です。
こんな企業に向いている
・ヨーロッパ市場向けのECサイトを作りたい
・洗練されたデザインのECサイトを運営したい
・海外の開発リソースを活用できる
オープンソースのECサイトを導入するには、プラットフォーム選びから運用開始までの流れをしっかりと把握しておくことが重要です。
開発環境の整備、カスタマイズ、セキュリティ対策などは、運用のしやすさを左右するポイントになります。ここでは、ECサイトをオープンするまでの具体的なステップを解説していきます。
まずは、どのオープンソースECプラットフォームを採用するか?を決めることから始まります。
プラットフォームごとに特徴が異なるため、 事業の方向性に合ったものを選ぶことが重要 です。例えば、以下のような観点で比較すると、選びやすくなります。
選定基準 | 検討ポイント |
---|---|
販売対象 | 国内向け or 海外向け |
カスタマイズ性 | どこまで独自の機能を追加したいか |
コスト | 初期費用・運用コストをどれくらいかけられるか |
運用負担 | エンジニアリソースの確保が可能か |
例えば、国内向けなら「EC-CUBE」、 海外展開を視野に入れるなら「Magento(Adobe Commerce)」というように、ターゲット市場に合わせて選ぶのがポイントです。
プラットフォームを決めたら、ECサイトを運用するための環境を整えます。
サーバー・ホスティングの選定
オープンソース型のECサイトは、自社でサーバーを用意する必要があるため、 「どのホスティングサービスを利用するか?」も重要な選択肢になります。
・クラウド型(AWS・GCP・さくらクラウドなど) → 柔軟性が高く、負荷に応じた拡張がしやすい
・専用サーバー(エックスサーバー・ConoHaなど) → 初期コストを抑えつつ、手軽に運用できる
ECサイトの規模やトラフィックを考慮しながら、適切なサーバーを選びましょう。
ドメイン取得とSSL設定
ドメインは、ECサイトのブランドイメージに連想させることができるするため、分かりやすく覚えやすいものを選ぶことが大切です。また、SSL証明書の導入も必須となります。GoogleはSSL対応していないサイトを安全でないと判断するため、サイトの信頼性を高めるためにも最初の段階で設定しておくべきです。
ECサイトを構築する際、「どんな商品を、どのように販売するのか?」に合わせて基本機能を設定します。
商品管理
・カテゴリーの設定(商品ごとの分類を明確に)
・在庫管理システムの連携(自動で在庫を調整できるように)
決済手段の設定
・クレジットカード(Stripe / PayPal / Square など)
・銀行振込、コンビニ決済、代引きなど
※決済の選択肢は、ターゲットとする顧客層のニーズに合わせることが重要です。
配送オプション
・配送業者との連携(ヤマト運輸・佐川急便・DHL など)
・送料の設定(地域別・重さ別 など)
見た目のデザインは、ECサイトの印象を左右する重要な要素です。オープンソース型のECプラットフォームには、無料・有料のテーマが用意されていることが多いですが、自社ブランドに合わせてカスタマイズするのが理想的です。
・ユーザーが直感的に操作できるデザイン
・スマートフォン対応(モバイルファースト)
・ブランドの世界観を表現する配色やフォント
また、UI/UXの設計では、購入までの導線をシンプルにすることが重要です。「カートに追加」や「購入ボタン」の配置が分かりにくいと、離脱率が高くなってしまうため、テストをしながら調整するとよいでしょう。
ECサイトは、個人情報や決済情報を扱うため、セキュリティ対策が必須です。
セキュリティ対策のチェックリスト
☑ SSL証明書を導入し、通信を暗号化する
☑ 定期的に脆弱性チェックを行う(WordPressやEC-CUBEならアップデートを忘れずに)
☑ 不正アクセス対策(管理画面の二段階認証やアクセス制限)
オープンソース型のECサイトは攻撃の対象になりやすいため、運用開始前にしっかりと対策を講じておくことが大切です。
運用開始前に、本番環境で問題が起きないかをテストする必要があります。
テストするポイント
・商品の購入フローに不具合がないか
・決済が正常に処理されるか
・スマートフォンでの表示崩れがないか
・負荷テスト(アクセスが増えてもサーバーが耐えられるか)
テスト段階で細かなバグを潰しておくと、公開後のトラブルを減らせます。
ECサイトは、オープンした後も継続的な運用とメンテナンスが必要です。
運用時のポイント
・定期的なシステムアップデート(脆弱性対策としても重要)
・データのバックアップを自動化(トラブル発生時にすぐ復旧できるように)
・サイト速度の最適化(ページの表示速度が遅いと、ユーザーが離脱しやすくなる)
また、ECサイトは売上データや顧客データを管理するシステムでもあるため、定期的な見直しと改善が必要となります。
オープンソースのECサイトは、 コストを抑えつつカスタマイズ性の高いECサイトを構築できる という点が魅力です。一方で、 技術的な知識や運用の負担が増える ため、すべての企業に適しているわけではありません。
独自のEC機能を求める企業や海外展開を考える企業には向いている ものの、 スピード重視や技術リソースが不足している場合はSaaS型のほうが適している こともあります。
導入には プラットフォーム選定・環境構築・セキュリティ対策 など慎重な準備が必要です。事前に 運用計画を明確にし、適切なリソースを確保すること が成功の鍵となるでしょう。 自社の目的に合った最適な方法を選ぶことが重要です。