広告を出すなら、LPとWebサイトのどちらを受け皿にするのかを悩んだことはないでしょうか。
実際、LPを作成する場合、費用もかかるので判断に迷う事業会社が多いのではないでしょうか?
どちらを使うべきかを考えるとき、ありがちな「正解」を求めてしまいがちですが、残念ながら絶対的な正解は存在しません。
マーケティングという分野において、「唯一の正解」なんてものがあったら、むしろそちらの方が怖いですよね。
「目的」と「状況」に照らして、LPとWebサイトのどちらを活用したほうがいいのかを最適な判断を下すことになるのですが、基本的な知識があったほうがこの判断がしやすくなると思います。
だからこそ今回は、LPとWebサイトという広告運用で頻繁に比較されるふたつの道具を、明確に使い分ける判断材料を提供することにしました。細かく理論的に分類して解説することで、曖昧だった判断基準を少しでもクリアにするためです。
LPとWebサイトの違いについて、最初にそれぞれの定義について解説させて頂き、その後違いについて紹介させていただきます。
LP(ランディングページ)は、一言でいえば「広告をクリックしたユーザーを目的のアクションへと直行させる専用のページ」です。
よく見かける「縦に長い1ページ」の形式を取ることがほとんどで、他のページへのリンクは極力排除されています。これは偶然ではなく、意図的な設計です。つまりユーザーが離脱せず、一直線に商品購入やお問い合わせなどへ進むよう仕掛けてあるわけです。
LPの強みは、このシンプルな構造にあります。ユーザーの興味を引くストーリーを丁寧に描き、その流れに沿って読み進めていくだけで自然と欲しくなるというようなコンテンツ構造になっています。
逆にいえば、魅力的に見せられないと、「売り込み感が強すぎる」「無理やり買わされそう」とユーザーが離れてしまうという弱点もあります。
一方、Webサイトはもっと包括的な存在です。「会社の顔」とも言えるかもしれません。
多くの場合、製品・サービス情報はもちろん、会社概要、採用情報、CSR活動、IR情報など、さまざまなカテゴリーの情報を載せるページ構成となっており、カテゴリー別に情報を掲載しています。
Webサイトは、企業理念や活動、会社概要などの会社自体を知ってもらうことが目的だったり、商品・サービス、採用に関する情報を知ってもらうなど、問い合わせやリード獲得が目的なだけではなく企業としてのイメージを築くことも目的としているからからです。
つまり、Webサイトは「売り込む」という役割だけでなく、「伝える」「理解してもらう」役割を担っているとも言えるでしょう。
だからこそ、B to Bマーケティングのほうが多いのですが、企業の顔であるWebサイトが十分に整備されていない場合、たとえLPで魅力的に訴求しても、最終的な購買に至らないこともあるわけです。
実際、「商品には興味を持ったけど、企業が信頼できるか不安だった」という理由で購入を見送ったという話も少なくありません。
一言でいえば、LPは「特定の商品を短期的に売ること」、Webサイトは「企業の信頼感を長期的に高めること」が目的です。
LPは商品の魅力やメリットに特化したシンプルな情報だけを載せて、迷いなく購入に導く設計。一方Webサイトは企業の考え方や背景までじっくり伝えることで、ユーザーに長期的な信頼と共感を与えます。
この違いを理解して使い分けることが、マーケターの腕の見せどころだと感じますね。
商品を売り込むならLPがベストというような話を耳にしたことがある方は多いかもしれません。ただ、広告の受け皿にするならLPにすれば売れるというわけではありません。そもそも、広告のリンク先としてLPを利用したほうがいい状況って、一体どんなときなのでしょうか?
実際の現場を見ると、以下のようなケースの場合、広告の遷移先としてLPを利用することをお奨めしています。
1つの商品・サービスをピンポイントで売りたいとき
まず最初に検討してもらいたいのは、「とにかく1つの商品やサービスに絞って集客したいのか」ということです。
LPが最も強みを発揮するのは、絞り込んだ商品を一気に購入まで誘導したい場合。ユーザーに迷う隙を与えず、商品のメリットをまっすぐ届けるためには、LPが最適でしょう。逆に、多くの商品を同時にアピールすると焦点がぼやけ、どれも魅力的に見えなくなってしまいます。意外かもしれませんが、人は選択肢が多すぎると、結局何も選ばないことが多いんですよね。
僕の周囲でも、シンプルに一点突破で売った場合のほうが、何倍もの反響があったという声は少なくありません。
広告から直接コンバージョンさせたい時
広告からLPに飛ばし、すぐに購入や問い合わせにつなげたい――こうした場面もLPの得意分野です。理由はシンプルで、広告とLPが「一本の直線」のようにつながるためです。
広告に興味を持ったユーザーを途中で迷わせることなく、そのまま購入ボタンまで導けるのがLPの強さ。反対に、Webサイトなど情報量が多いところに誘導すると、目的が曖昧になってしまうかもしれません。
ただし、あまりにも売り込み色が強すぎると、来訪者は興味がなくなりLPから離脱してしまうかも知れません。このくらいならユーザーも受け入れられるだろうという適度なバランス感覚は、マーケターとしての腕の見せどころかもしれませんね。
短期間のキャンペーンやプロモーションを行いたい時
また、短期決戦型のキャンペーンを仕掛けるときにもLPは効果的です。キャンペーンというのは「期間限定」「数量限定」といった緊急性を演出しやすいため、ユーザーの行動を促す効果が高まります。
LPなら、その緊急感をよりリアルに伝えることができます。短い期間で結果を出す必要がある場合、LPのシンプルで直線的な構造が、ユーザーの焦りを適度に刺激し、短期間で売上を伸ばしやすいでしょう。
もちろん、あまりに煽りすぎて「信頼できない」と感じさせてしまっては逆効果ですから、そこは要注意かもしれません。
ページ内でストーリーの流れやユーザーの行動をコントロールしたい時
最後に挙げたいのは、商品の魅力を「ストーリー仕立てで伝えたい」という場合です。LP内で物語を展開して、ユーザーを引き込むのに向いています。まるで映画のように、ページをスクロールするにつれ、ユーザーが商品に惹き込まれていくというような仕掛けを作りやすいわけです。
マーケティングの本質は人間の心理を理解することだと僕は考えていますが、LPのストーリー構造はその点にまさに適しています。ただし、ストーリーを強引に作り込んでしまうと、「わざとらしい」と感じさせることもあります。自然な流れを意識することがポイントかもしれません。
「何でもLPで売り込めばいい」と思い込んでいませんか?
確かにLPにはLPの良さがあります。ただ、それだけで本当に十分でしょうか。
実際のところ、LPだけで売ろうとすると、意外にも逆効果になるケースがあります。
なぜなら、企業はとかく「売ること」に集中してしまいがちですが、実はユーザーの中には「まずじっくり知りたい」「比較して検討したい」という人も相当数います。
そんなユーザーに向けてコンテンツが展開するには、Webサイトが役に立ちます。
認知や理解をじっくり深めてもらいたい時
まず、LPでは伝えきれないような商品の背景や詳しい説明を知ってほしいときには、Webサイトのほうがよいかもしれません。
LPが「勢い」で売る場所だとすれば、Webサイトは商品の価値や企業の背景をじっくり伝える場所となります。
特定の商品だけではなく、企業がなぜその商品を作ったのか、どんな理念でビジネスを行っているのかを丁寧に伝えることができます。LPだけで短期的な売上を狙うと、こうした深い理解や共感を取り逃す恐れもあります。
会社自体をブランディングしたい時
企業そのもののイメージを高めたいときも、Webサイトを活用すべきでしょう。
Webサイトは「企業の雰囲気」を伝える最も適した場所です。
商品だけではなく、企業が社会にどんな価値を提供しているか、どんな人が働いているのかをじっくり伝えられます。人は企業を信頼するとき、「商品」だけではなく、企業全体に共感するケースが多いですよね。
LPだけだと、商品の強みを訴求できても、企業そのものの魅力を伝えるには限界があります。
複数の商品・サービスを知ってもらいたい時
1つの商品を売るならLPがいい、とお話ししましたが、複数の商品・サービスを扱っている場合にはやり方を変える必要があります。
ユーザーは「自分に一番合うもの」を探したいと考えます。だからこそ、比較できる選択肢を提供することが重要なんです。
Webサイトであれば、複数の商品やサービスを並べて違いをわかりやすく伝えることができます。
ユーザーは自分に合ったものを比較しながら選べるので、納得感を持って決断しやすくなります。結果として、その場での購入には至らなくても、企業への信頼や安心感が高まり、将来的に繰り返し利用してもらえる関係につながりやすくなります。
採用、パートナー募集、投資家向け情報など、多様な発信を行いたい時
最後に、採用情報やパートナー募集、投資家向け情報を伝える場合も、Webサイトが必要になります。
企業はただ商品を売るためだけに存在しているわけではありません。投資家や採用希望者、取引先など、多くの人に「どんな会社か」を知ってもらわなくてはいけません。こうした人たちに向けてLPでアピールしても、違和感を感じさせてしまうでしょう。
その点、Webサイトでなら企業情報を十分に伝えることができるので、新規取引者数が増えたり、採用のチャンスが増えル可能性があがります。
LPとWebサイトの使い分けは、マーケターにとって成果を左右する重要な決断です。LPは、一点集中で商品の魅力を伝え、広告から即座に反応を得る短期的施策に最適です。一方、Webサイトは企業の理念や多面的な情報を伝え、ユーザーが比較検討する際に役立ちます。どちらが良いかは、目的や状況に応じて柔軟に判断する必要があります。