SKU
SKUとは、一つひとつの商品を細かく識別するためのコードのことです。
たとえば、アパレル業界なら「Tシャツ・Mサイズ・ブラック」「Tシャツ・Lサイズ・ホワイト」といったように、色やサイズの違いごとにSKUを設定して管理するケースが一般的です。適切にSKUを運用すれば、在庫管理がスムーズになり、販売データを活用したマーケティング施策も立てやすくなります。
ただ、SKUを増やしすぎると、かえって管理が煩雑になり、運営の負担が増えてしまうこともあります。むやみにSKUを細分化してしまい、「何をどれだけ仕入れればいいのか」「どの商品が売れていて、どれが滞留しているのか」が見えにくくなった、という話もよく聞きます。SKUは便利な仕組みですが、ただ導入すればいいというものではなく、目的に合わせた設計と適切な管理が欠かせません。
ここではSKUの基本的な考え方から、実際の運用に役立つノウハウまでを解説させていただきます。
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SKU(エスケーユー)とは?
SKU(エスケーユー/Stock Keeping Unitの略)とは、直訳すると「在庫管理単位」という意味になり、商品を個別に識別し、管理しやすくするためのコード です。たとえば、同じTシャツでも、色やサイズが違えば、それぞれ別の商品として扱われます。その際、SKUを活用することで「白・MサイズのTシャツ」と「黒・LサイズのTシャツ」を正確に区別できるようになります
なぜSKUが重要かというと、それは、在庫管理や売上分析の精度を上げるため です。SKUを適切に設定しておけば、どの商品がよく売れているのか、どの在庫が滞留しているのかがすぐにわかります。また、SKUがなければ、同じ商品でも色違いやサイズ違いを一括りにしてしまい、細かい販売データを把握しにくくなります。
とはいえ、SKUを増やしすぎると管理が煩雑になるという落とし穴もあります。たとえば、アパレル業界では「カラー×サイズ×デザイン」の組み合わせだけで何十、何百というSKUが生まれることも珍しくありません。SKUの役割を理解したうえで、適切なバランスを考えることが重要になってきます。
SKUと他のコードとの違い
「SKUは商品管理に使うコード」と言われても、「それってバーコードやJANコードとは何が違うの?」と思うかもしれません。実は、それぞれの役割には明確な違いがあります。
コードの種類 | 役割 | 特徴 |
---|---|---|
SKU | 在庫管理・販売データ分析 | 自社で自由に設定できる、商品ごとに細かく管理できる |
JANコード(バーコード) | 商品の識別(流通用) | メーカーや小売業界で共通のコード、国際規格 |
型番(アイテムコード) | 商品の型式・モデル管理 | メーカーやブランドが設定、同一型番の商品はSKUが異なる場合がある |
ASIN(Amazon独自のコード) | Amazonでの商品識別 | Amazon内でのみ有効なコード |
たとえば、JANコードは国際的に統一された規格であり、同じ商品ならどの店舗でも同じコードが使われます。一方で、SKUは 企業ごとに自由に設定できるため、同じJANコードの商品であっても、SKUの付け方は会社によって異なります。
もう少し具体的に考えてみましょう。あるアパレルブランドが「白のMサイズTシャツ」を販売する場合、JANコードはメーカー共通ですが、SKUは「ABC-001-WH-M」や「TSH-WHT-M-23」など、会社のルールに応じて自由に命名できます。そのため、SKUの管理方法には工夫が必要になります。
SKUの役割を理解することで、「何をどこまで細かく管理すべきか」が明確になります。商品ごとの特性や業種に応じたSKUの設定が、スムーズな在庫管理につながるのです。
SKUのメリットとデメリット
商品管理や販売データの分析において、SKUは欠かせない仕組みです。しっかりと管理すれば、在庫の最適化や売上アップにつながります。ただ、導入にあたっては注意すべきポイントもあります。メリットとデメリットの両面を理解しながら、自社にとって最適な運用方法を考えていきましょう。
SKUで管理するメリット
SKUを適切に活用すると、在庫管理の精度が向上し、無駄なコストを削減しやすくなります。主なメリットを3つ紹介します。
在庫管理の精度向上
SKUを活用すると、倉庫内の在庫状況をより正確に把握できます。例えば、同じTシャツでも「ブラック・Mサイズ」と「ホワイト・Lサイズ」は異なるSKUとして登録されるため、それぞれの在庫数や販売状況を個別にチェックできるようになります。
従来のざっくりとした在庫管理では、「この商品はまだ残っている」と思っていたら、特定のサイズや色だけが売り切れていた、ということが起こりがちです。SKUを基にデータを整理すれば、そうしたミスを減らしやすくなります。
過剰在庫・欠品の防止
売れ行きの良い商品は適切に補充し、動きが鈍い商品は仕入れを抑える。この判断を素早くおこなうには、SKUを活用した細かな在庫データの分析が欠かせません。
例えば、アパレルショップで「赤のSサイズ」だけが売れ残っているとします。SKUごとの販売データを見れば、「このサイズ・カラーの需要が少ない」とわかり、次回の仕入れ調整につなげられます。一方で、「ブラック・Mサイズ」は品切れが続いているなら、次の発注ではそのSKUの在庫を多めに確保する、といった対策がとれます。
SKUの管理を徹底することで、在庫を無駄に抱え込むリスクを減らし、売れる商品を適切に補充する仕組みを作れるのです。
販売データの分析力向上
SKUを活用すると、売上データをより細かく分析できます。同じ商品でも、どの色やサイズが人気なのか、どの地域でよく売れているのかなど、詳細な傾向を把握することが可能です。
たとえば、ECサイトで「黒のスニーカー・26.5cm」だけが他のサイズよりも売れているとわかれば、その商品を広告の推し商品に設定する、といったマーケティング施策を打ちやすくなります。逆に、売れ行きの悪いSKUを把握して、割引キャンペーンを実施するのも一つの手です。
SKUデータを分析すれば、なんとなくの感覚ではなく、データに基づいた販売戦略を立てやすくなるというメリットがあります。
SKUで管理するデメリット
一方で、SKUを管理することには課題もあります。導入時には、いくつかのデメリットを理解しておく必要があります。
管理対象数が増えすぎることによる煩雑化
SKUを細かく設定しすぎると、管理が難しくなることがあります。たとえば、アパレル業界では「カラー×サイズ×デザイン」の組み合わせごとにSKUを作るため、1つの商品でも数十、数百ものSKUが発生するケースがあります。
これをすべて手作業で管理しようとすると、どのSKUがどれだけ売れているのか、どの在庫を減らすべきなのかが見えにくくなり、かえって業務が煩雑になってしまうことも。SKUの増えすぎを防ぐには、管理ルールを明確にし、不要なSKUを定期的に整理することが重要です。
人的ミスが生じやすくなる
SKUの設定や運用は、担当者のミスが発生しやすい作業の一つです。たとえば、SKUの命名ルールが統一されていないと、同じ商品なのに異なるSKUが付与されてしまい、データが正しく集計されないことがあります。
また、在庫更新のタイミングがずれると、データ上は「在庫あり」なのに、実際は「売り切れ」といった状況が発生し、顧客対応のトラブルにつながるケースもあります。SKUの管理は、ルールを徹底し、ミスが起こりにくい仕組みを整えることが大切です。
システム導入コストなど
SKUを正確に管理するには、Excelやスプレッドシートだけでは限界があるため、多くの企業では専用のシステムを導入しています。ただ、WMS(倉庫管理システム)やERPなどの管理ツールを使うには、それなりのコストがかかるため、規模が小さい事業者にとってはハードルが高いと感じることもあるかもしれません。
また、SKU管理のためにシステムを導入しても、それを正しく運用できなければ意味がありません。システムに慣れるまでの学習コストや、従業員へのトレーニングも考慮する必要があります。
SKUの作り方・命名規則
SKUはただ作ればいいわけではなく、管理しやすく、運用しやすくすることが重要です。適切なSKUの設計ができていれば、在庫管理や販売データの分析もスムーズになります。しかし、SKUの付け方に一貫性がなかったり、ルールが曖昧だったりすると、かえって混乱を招くことも。そこで、SKUを構築する際の基本的な流れと、効率的な管理のためのポイントを紹介させていただきます。
SKUの作り方・設計ステップ
SKUは、商品を識別しやすくするために設定されるものですが、適当なルールで決めてしまうと、管理が煩雑になってしまいます。SKUを設計する際は、以下のようなステップを踏むと、統一感があり、わかりやすいSKUコードになります。
1. 管理したい商品属性を決める
SKUは商品ごとの違いを明確にするためのコードなので、どの属性を識別すべきかを最初に整理します。代表的な属性の例を挙げると、以下のようになります。
・アパレル:種類(Tシャツ、パンツ)、カラー(ブラック、ホワイト)、サイズ(S、M、L)
・食品:種類(コーヒー、紅茶)、フレーバー(バニラ、キャラメル)、容量(200g、500g)
・家電:カテゴリ(冷蔵庫、電子レンジ)、モデル名(A123、B456)、年式(2024、2025)
このように、SKUの中にどの要素を含めるかを最初に決めておくと、ルールに一貫性を持たせやすくなります。
2. SKUの命名ルールを決める
SKUの構成は、数字やアルファベットを組み合わせて設定するのが一般的です。基本的には、「商品を特定できる情報」と「運用しやすさ」のバランスを考えることが重要です。
例えば、以下のようなパターンが考えられます。
・アパレルの場合:「TSH-BLK-M」 → Tシャツ(TSH)・ブラック(BLK)・Mサイズ(M)
・食品の場合:「COF-VAN-200」 → コーヒー(COF)・バニラ(VAN)・200g(200)
・家電の場合:「FR-456-24」 → 冷蔵庫(FR)・型番456・2024年モデル(24)
SKUを決める際に、以下のようなポイントを意識すると、管理しやすくなります。
・アルファベットと数字を組み合わせて簡潔にする(長すぎるとミスの原因になる)
・一目で商品を識別できるようにする(意味のない番号の羅列は避ける)
・表記ルールを統一する(例:色は3文字の略語、サイズはそのまま表記 など)
・商品が増えたときに混乱しないよう、拡張性を考える
3. 重複を避けるためのチェックをする
SKUの命名を進めていると、似たような商品が増えたときに重複するケースが出てくることがあります。SKUが重複すると、システム上のエラーや在庫管理の混乱を引き起こす原因になります。SKUを設定した後は、既存のSKUと重複していないか、十分にチェックすることが大切です。
SKUのルールが定まったら、ExcelやスプレッドシートでSKU一覧を作成し、重複を防ぐための管理表を作っておくのも一つの方法です。
SKU設定のベストプラクティス
SKUを設定する際は、単に商品ごとにコードを振るだけでなく、運用後のことも考慮する必要があります。ここでは、SKU設定をスムーズに行うためのベストプラクティスを紹介します。
簡易的なSKU命名の例(業種別)
業種によって、SKUの作り方には特徴があります。いくつかの業界のSKU命名例を見てみましょう。
アパレル業界:「JK-BLU-M-24」
ジャケット(JK)・ブルー(BLU)・Mサイズ(M)・2024年モデル(24)
雑貨業界:「MUG-RD-350」
マグカップ(MUG)・レッド(RD)・350ml(350)
食品業界:「SNK-CHO-150」
スナック(SNK)・チョコ味(CHO)・150g(150)
SKUの長さは業界によって異なりますが、短くても情報が伝わるように作るのがポイントです。
運用後に修正しやすいフォーマットにするコツ
SKUは一度決めたら変更しにくいものですが、運用しているうちに「もう少し分かりやすいルールにすればよかった」と感じることもあります。後から修正しやすくするためには、以下のような工夫をしておくと良いでしょう。
・法則性のある並びにする(例:カテゴリ → カラー → サイズの順)
・同じカテゴリの商品は一貫したルールで命名する(例:すべて3文字の略語+数字)
・SKUの命名ルールをマニュアル化し、社内で共有する
また、新商品を追加する際にも、SKUの形式がバラバラにならないよう、事前にテンプレートを決めておくのが望ましいです。
SKUを社内で共有する際の注意点
SKUの管理は、一人でおこなうものではなく、販売チームや倉庫管理チームなど、さまざまな部署と連携しながら運用することになります。そのため、SKUのルールを社内全体で統一しておかないと、管理が混乱してしまいます。
SKUのルールを社内で共有する際には、以下の点に注意しましょう。
・SKUの付け方をまとめたドキュメントを作成する
・新しいSKUを作る際のルールを明確にし、チェック体制を整える
・システム上でもSKUの一覧を管理し、検索しやすい形にする
SKUは在庫管理や販売戦略に直結する大切な要素です。SKUのルールを一度しっかりと整えておけば、長期的に見ても業務の効率化につながります。運用を続けながら、よりよいルールを模索していくことが大切だと思います。
SKUを設定すべきケースと注意点
SKUはすべての業界で必要というわけではありません。しかし、商品ごとの違いを正確に管理する必要がある業種では、SKUの設定が欠かせません。また、SKUを導入する際には、いくつかの落とし穴もあります。SKU管理の重要性が高い業界と、運用時に気をつけたいポイントを見ていきましょう。
SKU管理が必要不可欠な業界・業種
例えば、同じTシャツでも以下のように色とサイズごとにSKUを設定する必要があります。
・ブラック / S
・ブラック / M
・ホワイト / S
・ホワイト / M
また、季節ごとの新作や限定カラーなども追加されるため、SKUの増加をどのように管理するかが重要な課題になります。SKUのルールを統一し、管理が複雑になりすぎないよう工夫が必要です。
食品業界:賞味期限やフレーバーの違いを管理
食品業界では、SKUによって「フレーバー」や「容量」などの違いを管理します。例えば、同じブランドのコーヒーでも、バニラ風味・キャラメル風味といったフレーバーの違いや、200gと500gといった容量の違いがあるため、それぞれ異なるSKUを設定します。
また、食品の場合は賞味期限の管理も重要です。同じ商品でも、賞味期限が異なるものを区別して管理する必要があるため、SKUと一緒にロット番号を組み合わせて管理するケースもあります。SKUを適切に設定することで、賞味期限切れによるロスを防ぎ、在庫の回転率を高めることができます。
家電業界:型番やモデルごとにSKUを管理
家電製品では、SKUは「型番」「モデル」「付属品の有無」などを管理するために使われます。同じシリーズの製品でも、以下のようにバリエーションごとにSKUを設定します。
・メモリ容量の違い(128GB / 256GB)
・付属品の違い(充電器あり / なし)
・カラーの違い(ブラック / ホワイト)
こうしたバリエーションごとにSKUを設定しないと、誤出荷や在庫不足の原因になります。家電業界では、型番とSKUの管理が特に重要になるため、SKUの命名ルールを統一し、商品情報との連携をしっかり行うことが求められます。
SKU導入時の落とし穴・注意点
SKUは正しく管理できれば便利ですが、設定方法を間違えると、かえって業務が複雑になり、ミスを引き起こす原因になります。SKUを運用する際に注意したいポイントを紹介します。
重複SKUによるトラブル
SKUを設定するときにありがちなミスのひとつが、「重複したSKUを作ってしまう」ことです。SKUが重複すると、在庫データの管理が不正確になり、どの商品がどれだけあるのかが分からなくなることがあります。
例えば、同じ型番の家電製品に対して、A担当者は「TV123-BLK」、B担当者は「TV-123B」とSKUを設定してしまうと、同じ商品なのに異なるSKUが存在することになります。このようなミスを防ぐには、SKUの命名ルールを厳格に統一し、SKUの登録時にダブルチェックを行うことが大切です。
不要なSKUを増やしてしまった場合の対処法
SKUを細かく設定しすぎると、管理の負担が増えるだけでなく、どのSKUを優先的に販売するべきかの判断も難しくなります。
例えば、アパレルショップで「Tシャツの柄違い」ごとにSKUを作成したものの、一部の柄は全く売れず、在庫が増えてしまったとします。こうしたSKUを整理しないままでいると、在庫管理が複雑になり、売れ残った商品を把握しづらくなるという問題が生じます。
SKUが増えすぎた場合は、以下のような対策が考えられます。
・販売データを分析し、売れ行きの悪いSKUは廃止する
・SKUごとの在庫回転率を定期的にチェックする
・売れ残りが多いSKUはセールやセット販売で早めに処理する
SKUの管理は、「増やしすぎないこと」と「不要なSKUを定期的に見直すこと」がポイントです。
システム連携時のデータ整合性の問題
SKUの管理は、ECサイト・倉庫管理システム(WMS)・販売管理システム(ERP)などと連携することが多いため、データの整合性を保つことが重要です。しかし、SKUの登録ミスやシステム間の設定のズレがあると、以下のような問題が発生することがあります。
・ECサイト上では「在庫あり」になっているのに、実際の倉庫には在庫がない
・倉庫システムと販売管理システムでSKUの表記が異なり、データが一致しない
・旧SKUと新SKUの切り替えがうまくいかず、注文ミスが発生する
こうしたトラブルを防ぐには、SKUの登録時にシステム間のデータの統一を徹底することが必要です。 SKUを変更する際には、関連するすべてのシステムで更新作業を行い、データのズレがないかをチェックする仕組みを作りましょう。
業種別のSKU総数の目安と事例
SKUは、ビジネスの規模や業種によって適切な数が異なります。少なすぎると在庫管理や販売データの分析が雑になり、多すぎると管理の手間が増えてしまいます。SKUの総数がどの程度が適切かを知るために、業種ごとの目安と具体的な事例を紹介します。
小規模EC店舗のSKU総数の目安(商品数100~500点)
小規模なECサイトの場合、SKUの数は100〜500程度が一般的といわれています。とはいえ、これはあくまで目安であり、扱う商品カテゴリーや運営スタイルによって適切なSKU数は異なります。
SKUの増え方の例
例えば、アクセサリーを販売するECショップが「ピアス」を扱っているとしましょう。
・シンプルなデザイン(10種類)
・カラー展開(各3色)
・金属アレルギー対応の有無(2タイプ)
この条件だけでも、10(デザイン)× 3(カラー)× 2(タイプ)= 60SKUになります。同じような考え方でTシャツやスニーカーなど、サイズ展開がある商品を扱う場合は、SKUの数が一気に増えていきます。
小規模ECでSKU管理を効率化するポイント
小規模な店舗では、SKUを増やしすぎると管理が煩雑になり、どの商品が売れているのかを把握しづらくなることがあります。そのため、SKUを増やす際は、以下のポイントを意識するとよいでしょう。
・売れ筋商品にSKUを集中させ、売れ行きの悪いSKUは整理する
・SKUが増えすぎないよう、カラー・サイズ展開を厳選する
・定期的にSKUごとの販売データを見直し、不要なSKUを削減する
アパレル業界のSKU総数の例(カラー・サイズ展開が多い場合)
アパレル業界では、SKUの数が特に多くなりがちです。理由は、カラーやサイズごとに異なるSKUが必要になるからです。
アパレル業界のSKUの増え方
例えば、1つのTシャツが以下のような色展開とサイズがあると5(カラー)× 4(サイズ)= 20SKUになります。
・5色展開(ブラック、ホワイト、ネイビー、グレー、レッド)
・4サイズ(S、M、L、XL)
さらに、季節ごとに新作を追加し、デザイン違いも増やしていくと、1つのブランド内で数百SKUが発生することも珍しくありません。
SKUが増えすぎることによる課題と対策
SKUが増えると、管理の負担が増すだけでなく、どのSKUをどのくらい仕入れるかの判断も難しくなります。特にアパレルの場合、サイズやカラーによって売れ行きが大きく異なるため、過剰在庫や欠品のリスクが高まります。
SKUの適正な管理のためには、次のような方法が役立ちます。
・売れ筋の色・サイズを優先的に在庫確保し、不人気なSKUは生産を抑える
・シーズンごとに販売データを分析し、翌シーズンのSKU数を最適化する
・「XXL以上のサイズは受注生産」など、SKU数を抑える工夫をする
サイズ展開の多いブランドでは、売れ残りのリスクを減らすために「定番カラーのみフルサイズ展開」「限定色はM・Lサイズのみ」といった形でSKUを絞ることが有効です。
自社EC・モール出店のハイブリッド運用事例
近年、多くのブランドが「自社ECサイト」と「モール(Amazon・楽天・Yahoo!など)」の両方を活用するハイブリッド運用を行っています。この場合、SKU管理の工夫が必要になります。
ハイブリッド運用時のSKU管理の課題
ECモールでは、各プラットフォームごとにSKUの登録ルールが異なるため、SKUを統一せずに運用すると、在庫管理が煩雑になりやすくなります。
例えば、Amazonでは「ASIN」という独自のコードを使用しますが、楽天やYahoo!ショッピングでは別の管理システムを使うことが一般的です。そのため、自社EC用のSKUとモール用のSKUがバラバラになってしまい、在庫数や販売データのズレが発生するケースがあります。
SKUを統一して管理する工夫
ハイブリッド運用をする場合、SKUを効率よく管理するためには、次のような対策が有効です。
・自社EC・モール共通のSKUルールを設定する
・在庫連携システムを導入し、複数の販売チャネルの在庫数を同期する
・売れ筋SKUは各モールに共通して展開し、不人気SKUは特定のチャネルでのみ販売する
例えば、「定番商品は自社ECとモールでSKUを統一し、限定商品は自社ECのみで販売する」といった形でSKU管理を分けることで、運用の負担を軽減できます。
ハイブリッド運用に成功した事例
あるアパレルブランドでは、自社ECではフルラインナップのSKUを展開し、Amazon・楽天では売れ筋商品のみSKUを登録する形で在庫管理の効率化を図りました。その結果、SKU管理の手間を削減しながら、各販売チャネルの売れ筋に合わせた適正な在庫運用ができるようになりました。
また、食品系のEC企業では、「楽天市場ではギフト用のセットSKU」「Amazonでは単品SKU」を販売するなど、SKUを細分化しすぎず、プラットフォームごとに適した形で最適化した例もあります。
SKU管理の成功事例と失敗事例
SKUの導入は、在庫管理や販売戦略において大きな効果をもたらします。ただし、運用方法を誤ると、かえって業務が混乱し、トラブルの原因になることも。ここでは、SKUをうまく活用して成功した企業の事例と、管理がうまくいかずに問題が発生したケースを紹介します。
成功事例
SKUを適切に運用することで、在庫管理の精度が向上し、売上の最適化にもつながります。ここでは、SKUを導入して業務を改善した2つの事例を紹介します。
SKUを活用し、在庫回転率を改善したアパレルECのケース
アパレルECサイトを運営するA社は、商品ごとの売れ行きが把握しにくいという課題を抱えていました。従来は、「Tシャツ(Mサイズ)」という大まかな管理しかしておらず、どのカラーが人気なのかが明確にわからない状態だったのです。
そこで、SKUを「商品カテゴリ+カラー+サイズ」の組み合わせで細分化し、個別に販売データを分析できるようにしました。 その結果、次のような改善が見られました。
・売れ筋カラーとサイズが明確になった(例:「ブラックのMサイズが圧倒的に人気」)
・売れ残りが多いSKUを特定し、在庫の仕入れを最適化
・SKUごとの回転率を比較し、在庫補充の優先順位をつけやすくなった
これにより、人気のあるSKUを優先的に補充し、不人気なSKUは割引販売で早めに処理する施策を導入。結果的に、在庫回転率が改善し、販売機会のロスを減らすことができました。
頻繁にカラー切り替えを行う雑貨店舗の改善ポイント
雑貨を扱うB社は、定期的に新しいデザインのマグカップやタンブラーを販売していましたが、「どのカラーが売れているのか」「どのタイミングで新色を追加すべきか」が分かりにくい状態でした。
そこで、カラーごとにSKUを割り当て、売上データを可視化できるようにしました。 さらに、SKUごとの売上推移を見ながら、新色の投入時期をデータベース化。結果として、以下のようなメリットが生まれました。
・売れ行きの悪いカラーを早めに割引販売し、在庫処分をスムーズに
・季節ごとに人気のカラーを予測し、効率的に仕入れを調整
・SNSでの反響とSKUごとの販売データを連携し、マーケティング戦略を強化
この取り組みにより、余剰在庫を減らしつつ、トレンドを意識した新商品の投入がしやすくなったとのことです。
失敗事例
SKU管理が適切に行われなかったために、業務が混乱した例も少なくありません。ここでは、SKUが原因で問題が発生した2つのケースを紹介します。
SKUが増えすぎてオペレーションが混乱したECサイト
C社は、オンラインショップでアパレルを販売していましたが、SKUの数が増えすぎたことで管理が破綻したという問題が発生しました。
もともと数百SKUだったものが、シーズンごとの新作追加、特注カラーの導入、コラボ商品の展開などで、1年後には数千SKUに膨れ上がっていました。これにより、次のような問題が起こりました。
・SKUごとの在庫状況が把握しづらくなり、欠品や過剰在庫が発生
・商品登録のミスが頻発し、注文データと実際の在庫が一致しないケースが増加
・カスタマーサポートへの問い合わせが増え、業務負担が増大
この状態を改善するため、C社はSKUの見直しを行い、売上の低いSKUを統合・削減することで、管理の手間を大幅に減らしました。SKUの細分化は便利な一方で、増やしすぎるとオペレーションに負担をかけてしまう、という典型的な例です。
適切な在庫管理システムを使わずに人的ミスが多発したケース
D社は、ハンドメイドアクセサリーを販売するECショップを運営していました。当初、商品数が少なかったため、ExcelでSKUを管理していましたが、取扱商品が増えるにつれて、人的ミスが頻発するようになりました。
具体的には、以下のような問題が発生します。
・SKUの入力ミスにより、販売データと実際の在庫がズレる
・注文時にSKUを手入力していたため、違う商品が発送されるケースが発生
・新商品のSKUを作る際のルールが曖昧で、同じ商品に異なるSKUが付与される
このままでは業務に支障をきたすと判断し、D社はSKU管理システムを導入することを決定。バーコードを使った在庫管理を取り入れ、SKUごとの販売データを自動で更新できるようにしたことで、人的ミスが大幅に減少しました。
SKUの管理は、ある程度の規模になった段階で手作業では限界が来るため、適切なツールを活用することも重要なポイントです。
SKU管理に必要なノウハウと社内体制
SKUを適切に管理するためには、単にルールを決めるだけではなく、社内の体制を整え、継続的な運用ができる仕組みを作ることが重要です。SKUは、マーケティング、物流、カスタマーサポートなど、複数の部署が関わるため、どこか一つでも連携が取れていないと管理がうまく機能しません。
SKU管理を円滑に進めるために、どのような役割分担が必要なのか、データの整合性を保つためのチェックフロー、そしてSKUを定期的に見直すための会議の進め方について紹介します。
部門ごとの役割分担(マーケティング・物流・カスタマーサポートなど)
SKUは、商品登録から販売、出荷、カスタマー対応に至るまで、社内のさまざまな業務と密接に関わっています。そのため、各部門ごとに適切な役割を決めておくことが必要です。
マーケティング部門
・SKUごとの売上データを分析し、売れ筋商品を把握する
・販売促進のためのキャンペーンをSKU単位で企画する
・不人気なSKUを見直し、割引やセット販売の戦略を考える
マーケティング担当者は、SKUのデータを活用して、どの商品が売れているのか、どのSKUを重点的にプロモーションすべきかを判断します。データをもとにした販売戦略を立てることで、在庫の最適化にもつながります。
物流・在庫管理部門
・SKUごとの在庫数を正確に把握し、適切な補充計画を立てる
・倉庫の保管スペースを考慮し、SKUの増加による影響を管理する
・SKUをバーコードやQRコードで管理し、入出荷のミスを防ぐ
物流部門がSKU管理を徹底できていないと、「在庫があるはずなのに見つからない」「売り切れのはずの商品が販売されてしまう」といったトラブルにつながります。SKUと在庫データをリアルタイムで照合できる仕組みを作ることが大切です。
カスタマーサポート部門
・顧客からの問い合わせ対応(SKUごとの在庫状況、仕様違いの説明など)
・返品・交換時のSKUチェック(誤発送を防ぐ)
・SKUと商品説明の不一致がないかの確認
ECサイトでは、SKUが適切に管理されていないと、顧客が「注文した商品と違うものが届いた」と感じるミスが発生しやすくなります。カスタマーサポート部門では、SKUごとの詳細な仕様を把握し、正確な商品情報を伝えられるようにすることが重要です。
データ整合性を保つためのチェックフロー
SKU管理において、データの不整合が起こると、大きなトラブルにつながります。例えば、ECサイトの在庫数と倉庫の実在庫が一致しない、SKUの表記が異なり、誤出荷が発生するといったケースです。これを防ぐためには、データの整合性を保つためのチェックフローを設ける必要があります。
SKU登録時のチェック
・SKUの命名ルールが統一されているか(アルファベットと数字の組み合わせに一貫性があるか)
・すでに登録されているSKUと重複していないか
・商品情報(サイズ、カラー、仕様)とSKUが正しく紐づいているか
新しいSKUを追加する際は、必ずダブルチェックの仕組みを作り、間違いがないか確認するプロセスを組み込むことが大切です。
在庫データの照合
・倉庫の実在庫とシステム上の在庫データが一致しているかを定期的に確認する
・ピッキング・梱包時にSKUをバーコードスキャンし、誤出荷を防ぐ
・定期的に棚卸しを実施し、SKUごとの在庫数を再確認する
SKUのデータがズレる原因の一つに、手作業での入力ミスがあります。バーコードスキャンなどの仕組みを取り入れ、自動でデータを反映できるようにすると、人的ミスを減らすことができます。
販売データとの照合
・SKUごとの売上データと在庫の減少ペースが一致しているかをチェックする
・販売チャネルごと(自社EC・Amazon・楽天など)にSKUが正しく登録されているかを確認する
・価格変更やキャンペーン適用時に、SKUごとの販売履歴にズレがないかチェックする
SKUの売上データを定期的に分析し、不自然な動きがないかを確認することも、トラブルを防ぐ上で重要です。
定期的なSKUレビュー会議の実施方法
SKUは一度設定すれば終わりではなく、定期的に見直しを行うことが大切です。売れ筋のSKUを強化し、不要なSKUを削減することで、より効率的な在庫管理ができます。
SKUレビュー会議の目的
・SKUごとの売上動向を分析し、不要なSKUを特定する
・SKUが適切に管理されているかをチェックし、課題を共有する
・新商品追加時のSKUルールを確認し、管理体制を強化する
会議の進め方
最新の販売データを共有
売れ行きの良いSKUと悪いSKUを比較し、傾向を把握する
SKUの増減を検討
・売れ残りが多いSKUを統合・削減する案を話し合う
・販売機会を逃さないため、売れ筋SKUの在庫補充計画を立てる
管理上の課題を共有
・各部署からSKU管理で発生したトラブルや改善点を報告
・システム上のエラーや誤出荷などの問題が発生していないかを確認
次回のSKU最適化のスケジュールを決定
次回の見直しタイミングを決め、具体的なアクションを決定
SKUレビューの頻度
SKUレビュー会議は、業種によって最適な頻度が異なります。
・アパレルや食品など、季節性のある商品を扱う場合 → 3カ月ごとに見直し
・定番商品の販売が中心の業種 → 半年〜1年ごとにSKUを見直す
SKU活用の最新動向
SKUは単なる在庫管理のためのコードではなく、データ分析やマーケティング、顧客体験の向上にも活用できるようになってきています。近年はAIやマーケティングオートメーションの導入が進み、SKUを使った高度な戦略が求められる時代になっています。また、リアル店舗とECの垣根をなくす「オムニチャネル戦略」でもSKUの役割が重要になってきました。
ここでは、SKUを活用した最新のトレンドについて紹介します。
AIを活用した需要予測(品切れ回避や廃棄リスク軽減)
従来の在庫管理は、過去の販売データや担当者の経験をもとに行われることが一般的でした。しかし、最近ではAIを活用した需要予測により、より正確に商品の供給量を調整できるようになっています
AIを活用した需要予測の仕組み
AIを活用すると、以下のようなデータを基に需要を予測できます。
・過去の販売実績(季節ごとの売れ行き、トレンドの変動など)
・天候やイベント情報(気温が上がると売れる商品、クリスマス前の売上増など)
・SNSや検索トレンド(SNSで話題になった商品の売れ行き予測)
・ECサイトや店舗のアクセス解析(どの商品ページがよく見られているか)
例えば、アパレル業界では、AIが「昨年の同時期のデータ」「今年のトレンド」「気温の変化」を組み合わせて分析し、特定のSKUの需要が増えるタイミングを予測することが可能です。これにより、品切れを防ぎながらも、無駄な在庫を抱えない仕組みを作ることができます。
マーケティングオートメーションとの連携事例
SKUデータをマーケティングオートメーション(MA)と組み合わせることで、より精度の高い販売促進ができるようになっています。特にECサイトでは、顧客の購買データを活用したパーソナライズドマーケティングが重要になっています。
SKUデータを活用したマーケティング施策
SKUをMAと連携させることで、次のような施策が可能になります。
リピート購入のリマインド
顧客が購入したSKUの再購入時期を予測し、リマインドメールを送る 例:「3カ月前にシャンプーを購入したお客様に、そろそろ買い替え時期の案内を送る」
顧客の関心に応じたレコメンド
過去に購入したSKUに基づき、関連する商品を提案 例:「黒のスニーカーを購入した顧客に、相性の良い靴下やシューケア用品を紹介」
価格変動を考慮したセール通知
売れ行きの悪いSKUを特定し、ターゲット層に割引クーポンを配布 例:「在庫過多のカラーやサイズを抱えている場合、そのSKUを好んで購入している顧客に特別割引を案内」
リアル店舗とECの在庫を一元管理する「オムニチャネル戦略」でのSKUの役割
リアル店舗とECサイトの在庫を統合管理する「オムニチャネル戦略」は、現在の小売業界で重要視されている施策のひとつです。この仕組みを実現するためには、SKUを一元管理することが不可欠です。
オムニチャネルにおけるSKUの役割
オムニチャネルでは、顧客がどこで商品を購入してもスムーズに受け取れるようにするため、SKUの在庫情報をリアルタイムで管理する必要があります。
ECサイトと店舗の在庫を連携し、最適な配送ルートを選択
例:「ECサイトで注文した商品を、最寄りの店舗から発送する」
店舗受け取り(BOPIS:Buy Online, Pick-up In Store)の最適化
例:「オンラインで注文し、店舗で受け取れるSKUを明確にすることで、来店促進につなげる」
リアルタイム在庫更新で、欠品リスクを軽減
例:「ECサイトで在庫ありと表示されていた商品が、実際には店舗で売り切れていた、というトラブルを防ぐ」
まとめ
SKUは単なる商品識別コードではなく、在庫管理、販売戦略、マーケティングの最適化に欠かせない要素です。適切に管理すれば、在庫の過不足を防ぎ、売上の向上につなげることができます。一方で、SKUが増えすぎると管理の手間が増え、混乱を招くこともありますので、SKUの管理が非常に重要となります。
近年では、AIを活用した需要予測やマーケティングオートメーションとの連携、オムニチャネル戦略への活用が進んでおり、SKUデータをどう活かすかが企業の競争力を左右します。SKUをただ管理するのではなく、ビジネスの成長に役立てる視点が重要です。