インサイドセールスをどう役立てていますでしょうか?
この手法は瞬く間に注目を集めましたが、ツール効率化と組織設計のバランスに悩む声も少なくありません。オンライン中心のコミュニケーションで得られるスピード感にワクワクする一方、対面時に感じた商談のやりとりと比べて相手の反応が分かりにくいという側面もあり、上手くいっている会社とそうでない会社に分かれているのではないでしょうか?
今回、立ち上げの流れをステップごとに整理し、AI活用やKPI設計の秘訣まで実践的に紹介します。データドリブンなアプローチを支えるノウハウを手にし、迷いを払拭するヒントをお届けできればと思います。
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インサイドセールスとは、電話やメール、オンライン商談などを活用して、非対面で見込み顧客と接点を持ち、商談創出や関係構築を行う営業手法です。従来の訪問営業とは異なり、迅速な対応や効率的なリード育成が求められる点が特徴となります。
被対面の営業として、かつては主にテレマーケティングと呼ばれ、電話リストをもとに一斉架電する役割が主流でした。しかし90年代の米国SaaS黎明期から「商談を創出する専門部隊」として進化し、メール・ウェビナーなど複数チャネルを組み合わせるようになり、今では顧客と対話を重ね、購買プロセスを加速させる「ハイブリッド型ナーチャリングを担っております。
フィールドセールス/アウトサイドセールスとの違い
屋外訪問を主体とするフィールドセールスは、最終クロージングや大口案件において関係を構築して最終的に受注する役割を担っています。これに対しインサイドセールスは、短期間で多くのリードにアプローチして、予備商談を量産していきます。両者を組み合わせることで、効率と密度を両立できるようになりました。
SDR・BDR・TDRなど職種別タスクの切り分け
最近は職務細分化が進み、SDR(Sales Development Representative)は新規リードの掘り起こし、BDR(Business Development Representative)は既存顧客への深耕、TDR(Technical Development Representative)は技術的な紹介を担当する役割を分けるケースも増えています。こうした分業体制が、チーム全体の専門性を高める好循環を生んでおります。
コロナ以降の購買行動への変化とハイブリッド営業モデル
対面制限をきっかけに、オンライン商談が一気に拡大しました。ZoomやTeamsでの打ち合わせに加え、チャットボットなど非同期コミュニケーションも定着しました。結果としてインサイド/フィールド両方の手法を柔軟に組み合わせる「ハイブリッド営業モデル」が台頭し、顧客接点の多様化が一段と進んでおります。
このように電話だけに留まらない多彩なミッションを背負うのが、2025年版インサイドセールスの姿だと思います。
「なぜ今、オフィス内での営業手法にこんなに熱い視線が集まっているのでしょうか?」たとえば、効率化だけを追うとツール疲れを招き、逆に現場が息苦しくなるかもしれません。ここでは三年目リーダーにも腑に落ちるよう、押さえておきたい5つの要因を解説します。
デジタルシフトとABM(アカウントベースドマーケティング)の台頭
従来の大量リード狙いから、価値あるアカウントに絞り込むABMが主流となりました。特定企業への深掘りが功を奏す一方で、個別戦略の策定には高い調整力が求められます。ターゲット企業ごとのコミュニケーション設計に注力し、マーケと連携して「無駄撃ち」を減らすやり方が効果的になってきます。
SaaSサービスの普及による低単価に対する営業ニーズの増加
クラウドサービスの浸透で、1商談あたりの単価は抑えられがちになりました。そのぶん、商談数をどう維持するかが勝負です。ひと月に100件のデモをこなすプレッシャーにワクワクする反面、数字だけに追われて顧客フォローが手薄になる不安も生じるでしょう。だからこそ、質と量のバランスを取る運用設計が大切だと思います。
DX推進政策・市場データ
官公庁が掲げる“Society 5.0”や各省のデジタル改革支援に伴い、企業のDX投資額は年々伸びています。経済産業省の調査では、2024年度に国内企業のDX関連予算が前年対比20%増となったといわれています。こうした追い風は、インサイドセールス導入検討を後押しする一方、ツール選定やROI算出で頭を抱える事業部もあるかもしれません。
インサイドセールスをチームに根付かせるとき、最初にぶつかるのは「本当にやる価値があるのか?」という問いかもしれません。たしかにメリットは大きいです。ただ、それと引き換えに見過ごせない課題も出てきます。ここでは、3年目リーダーなら一度は直面するであろうポイントに焦点を当てて整理していきます。
インサイドセールスのメリット
リード対応速度向上/商談創出効率が上がる
「問い合わせを受けてから数分以内に連絡できるかどうかで、商談化率が変わる」といった声は現場でよく耳にします。インサイドセールスは、時間のロスなくリードにアクセスできる体制を整えやすく、熱の冷めないうちにコミュニケーションをスタートできます。これだけでも十分価値はあると思います。
営業コストの最適化/移動が不要になる
訪問営業中心だった頃と比べて、商談数を増やしやすくなったという実感を持つ人は多いはずです。移動時間や交通費を気にせず、1日あたりの接触件数を増やせるのはやはり強みです。ただし、単に「回数を増やすこと」が目的化してしまうと、顧客満足が下がるリスクもあるので注意が必要です。
データドリブンな営業活動を組み立てやすい
架電数、通話時間、メールの開封率、リードの温度感など、活動ログを数字で追えるのはインサイドセールスならではの利点です。PDCAをまわしやすく、仮説の検証もしやすい。感覚に頼った営業から脱却したいと考える組織には、導入効果を感じやすい部分だと思います。
課題・リスク
部門間でKPIが揃わず、連携がギクシャクする
マーケティング部門が追う「MQL数(有効リード数)」と、営業部門が評価する「受注確度」というリードに対する二つの捉え方の違いが摩擦を生むことは少なくありません。「どこまでの案件を渡すべきか」「渡したあとの責任範囲は?」という曖昧さが、互いの不満やストレスにつながることもあります。ここは導入前に丁寧にすり合わせておくべきポイントです。
採用と教育に手がかかる
インサイドセールスは決して「初心者向けの軽作業」ではありません。むしろ、複雑な商材を短時間で理解し、的確なヒアリングを行うスキルが必要です。即戦力が見つからず、育成にも時間がかかる……という悩みを抱えるマネージャーも多いのではないでしょうか。
ツールが増えすぎて、逆に混乱することも
SFA、MA、CTI、チャット、レコーディングツールなど、便利な仕組みが増えるほど、画面やオペレーションが煩雑になることがあります。「なぜこんなに同じ情報を何度も入力しているんだろう」と感じたことがある方もいるかもしれません。統合・連携の設計を後回しにすると、導入効果が薄れてしまいます。
顧客との信頼関係を築く難しさ
非対面のやり取りでは、表情や空気感といった“情報量の多い要素”がどうしても減ってしまいます。対面と比べて、相手の懐に飛び込むまでに時間がかかるという感覚は否めません。そのため、丁寧な準備と継続的な接点設計が求められます。これは、数をこなすだけの体制では補えない部分です。
「楽になる」はずの仕組みが、うまく回らなければ現場の負担になってしまいます。そのリスクを前提に、どこまでを手作業にするか、どこを自動化するかを冷静に見極めることが、インサイドセールス導入の鍵だと感じています。次章では、その見極めを支える“立ち上げステップ”を具体的に整理していきます。
インサイドセールスの立ち上げにおいて、「まず何から手をつけるべきか?」という悩みは多くのリーダーにとって共通のものです。試行錯誤の末に疲弊してしまう前に、全体像をざっくりと把握しておくと、導入の成功率はぐっと上がります。ここでは“0→1”の初期構築と、“1→10”の拡大フェーズを区別し、実行順に整理してみました。
1 ゴール設定とKGI/KPI設計
最初の一歩は、「何を目指すのか」を言語化することです。たとえば「月間30件の商談化」や「MQLからSQLへの転換率20%」など、追いかける数値が曖昧なままだと、現場の動きもぼやけがちです。KGI(最終的に目指す成果)と、それを構成するKPI(行動レベルの指標)を、部門をまたいで握っておく必要があります。営業だけで完結させず、マーケやCSも巻き込むとズレが少なくなる印象です。
2 ICP(理想顧客像)・Buyer Persona作成
「どんな相手と話すべきか」を定義しないまま進めてしまうと、不要なリードに工数を奪われることになります。ここで重要なのは、年商や従業員数などの外形情報だけでなく、「どんな課題を抱えていて、どんな状態のときに動くのか」といった行動心理に踏み込むこと。営業視点だけでなく、過去の失注分析やカスタマーサクセスの声も加えると、より説得力のあるペルソナ設計につながります。
3 スクリプト/プレイブック設計
属人化を避けるためにも、共通の型を最初に用意しておくことはとても重要です。ただし、細かく作り込みすぎると現場で使いにくくなるため、「7割完成」くらいで一度走り出すのがおすすめです。よくある質問への返し方、断られたときの分岐対応など、ケース別テンプレートを用意しておくと、新人でもスムーズに立ち回れるようになります。
プレイブックに記載するべき要素の一例
・初回コールの流れとヒアリング項目
・ステージごとのトークフロー
・案件の温度別対応方針(HOT/WARM/COLD)
4 MA・SFA・CTI・BIツール選定フローチャート
ツール選びは、後からやり直すと負担が大きくなりがちです。そこで「今の課題は何か」「何に時間がかかっているのか」を洗い出した上で、導入優先度を整理するのが基本です。
例えば、ざっくりと以下のように課題などをまず洗い出していきます。
・リード管理が煩雑 → SFA
・メールの反応が追えない → MA
・通話ログの記録が曖昧 → CTI
・数値分析に時間がかかる → BIツール
機能重視で選ぶよりも、自社の業務プロセスとフィットするかどうかを判断軸にする方が、定着しやすい印象です。
5 運用開始90日プラン → PDCA高速化のコツ
初動の90日間でやるべきことは、「うまくいく兆し」と「詰まりやすいポイント」の見極めです。最初からすべてを正確に組み立てようとせず、「仮説で始めて実践で調整する」くらいの軽やかさが必要です。数字で見えてくる課題を、週次単位で吸い上げて改善につなげる。そのサイクルを回せる状態こそが、本当の意味でのスタートラインだと思います。
PDCAを高速でまわすコツ
・週1回の活動レビューとトーク例の共有
・KPI進捗を可視化したダッシュボードの設置
・成功パターンの横展開と、失敗の振り返り文化
導入の初期フェーズでは、「スピード感」と「習熟度」のバランスに悩むことがあるかもしれません。ただ、焦って拡大するよりも、まずは“再現性のある勝ち筋”を確立することが、のちの展開をスムーズにすると感じています。次の章では、成果につながるKPIや評価指標について詳しく掘り下げていきます。
「やるべきことはやっている。でも、なぜ成果につながらないのか?」
そう感じたことはありませんか?インサイドセールスの取り組みは、定量的に可視化して初めて改善できます。ただし、数字に追われるだけでは意味がありません。ここでは、3年目のリーダーでも現場で即活用できる指標を、目的別に分けて紹介します。
【活動レベル】初動スピードと対応量を可視化する
コール接続率
架電数のうち、相手と通話できた割合です。単純な件数ではなく、どれだけ“会話”に持ち込めたかを見極める指標として重要です。タイミングや曜日によって変動しやすいため、通話履歴をもとにパターンを分析すると改善の糸口が見えてきます。
リード応答速度(ファーストレスポンスタイム)
問い合わせや資料請求から、初回接触までにかかった時間です。数分以内の対応ができるチームと、翌日以降になるチームでは、商談化率に差が出やすい傾向があります。まさにスピードは業績アップにつながる入り口となります。
平均アプローチ件数/1日あたり対応数
現場のリソース配分を把握するのに役立ちます。全員が“動いているようで、動けていない”状態になっていないか、可視化しておくと安心です。
【質の転換】案件化に向けた“濃さ”の指標
MQL→SQL転換率
マーケティング部門から受け取った見込み顧客(MQL)のうち、営業判断で商談に進んだ割合です。受け取り側の「質」を問われるKPIであり、連携の良し悪しが露わになります。
商談化率(アプローチ→初回打ち合わせ)
架電・メール・チャットなど、一次接触の中から商談に進んだ件数の比率です。初期対応のスキルやスクリプト設計の精度が問われる部分だと思います。
失注理由別の分布と改善率
「時期が合わない」「予算が下りない」などの失注理由を記録・分類し、翌月以降の改善策にどうつなげたかを追うのも有効です。受注率だけでなく、失注率からも学べます。
【貢献度】事業インパクトを把握する
パイプライン貢献額(見込金額の合計)
チームが創出した商談が、いくらのポテンシャルを持っているかを金額ベースで把握する指標です。初期アプローチの質が数字で見えるため、メンバーごとの成果も比較しやすくなります。
受注金額あたりの活動件数
「この金額の契約を取るまでに、どれだけの接触が必要だったか?」を測定することで、商材ごとの難易度を把握できます。活動量と収益のバランスを考えるうえで、意外と見落とされがちな指標です。
ARR増分(年間経常収益の増加)
インサイドセールスが起点となった商談が、どれだけ継続収益に結びついたかを評価します。SaaSやサブスクリプションモデルでは特に重視されます。
【効率と収益性】コストとのバランスを見極める
CAC回収期間(顧客獲得コスト回収日数)
1件の契約にかかったコスト(人件費・ツール費など)を、いつ回収できたかを示す指標です。成約率や単価に加え、商談までのプロセス効率が問われます。短縮できると、組織の収益性が改善します。
リード単価(1件あたり獲得コスト)
広告出稿や展示会などで獲得したリードに、どれだけコストがかかっているか。CPAのように見えるかもしれませんが、「業に渡す前の状態」としての評価軸で見ておくと、判断がブレにくくなります。
契約単価あたりの活動コスト
活動量の多さが正義とは限りません。アプローチ回数に対して、どのくらいの単価の契約に至ったかを見て、費用対効果のバランスを振り返りましょう。
【チーム力】継続成長のための内側の指標
スクリプト改善回数/テスト施策実施数
変化に強いチームほど、検証の回数が多いです。内容の良し悪しにこだわるよりも、「まず試してみたかどうか」に焦点を当ててみてください。
メンバーごとのKPI達成率/乖離分析
個人のパフォーマンスを見極めるだけでなく、無理な設計になっていないか、チーム全体のバランスを見直す材料にもなります。
情報共有の頻度(ナレッジ投稿件数など)
成果を出すチームは、情報の流れも活発です。ツールやミーティングでの共有量が停滞していないか、意識的にチェックしておくとよいでしょう。
立ち上げからしばらく経ち、仕組みも整ってきた。そんなタイミングで、ふと湧き上がるのが「これ、今のやり方でいいんだろうか?」という疑問かもしれません。ここでは、現場のリーダーたちが実際によく悩むポイントを4つ取り上げて、それぞれの視点から答えていきます。
Q1. 専任のインサイドセールスチームは、いつ作ればいい?
最初から専任体制を組む必要はありません。むしろ初期段階では、マーケティングや営業の一部メンバーが兼務しながら、小さく始める方がリスクは抑えられます。ただ、リード数が増えて「反応が追いきれない」「リードの温度が下がる前に動けない」といった声が現場から上がりはじめたら、専任配置を検討するサインです。目安としては、1ヶ月あたり50件以上のMQLが安定して流れてくる状態が一つの分岐点だと感じます。
Q2. オフショアやBPOの外注は使ったほうがいい?注意点は?
人手不足を補う手段として、外部リソースの活用は十分に選択肢に入ります。たとえば、初期接触のナーチャリングを海外拠点に任せることで、内製チームは温度の高い商談に集中できるようになります。ただし、言語の微妙なニュアンスや商材理解の深さが必要な商談では、かえって品質がばらつくリスクもあります。
特に注意したいのは、顧客体験の一貫性です。「外注しているとは思えなかった」と感じてもらえるかどうかがポイントです。プロジェクトの設計段階で、スクリプトの精度や対応フロー、CRM連携ルールまで明確にすり合わせておく必要があります。
Q3. 導入コストやROIはどうやって計算する?
コスト計算で見落としがちなのは、「人件費以外の運用負担」です。たとえば、営業支援ツールのサブスクリプション費用、研修・教育にかかる工数、マネジメント層のフォロー時間なども含めて積算するべきです。
ROIを見積もる場合、短期的な成果ではなく「商談創出から成約までの平均リードタイム」を前提に設計する方が、より実態に近づきます。導入から3〜6ヶ月は成果が見えづらいため、評価基準としては「商談件数」「リード対応率」「初回接触までのスピード」など、先行指標の変化を追うのが適しています。
Q4. 法規制への対応は何をチェックすればいい?(特定商取引法・個人情報保護法など)
電話やメールなど、非対面での営業活動にはいくつか法的なルールが存在します。たとえば、特定商取引法では「事前説明の義務」「虚偽表示の禁止」「不当な勧誘の抑制」などが明確に定められています。BtoBであっても、連絡先の入手方法や取得の同意経路は注意が必要です。
また、個人情報保護法に関しては、リード情報の保管場所やアクセス制限の管理体制もチェックポイントです。ツールを選ぶ際には「データの保存先(国内か国外か)」「アクセスログの記録機能」なども確認しておくと安心です。
インサイドセールスは単なる効率化手法ではなく、顧客接点の質を高め、営業活動を持続的に進化させるための重要な戦略です。リード対応のスピードやデータ活用の精度を高めるだけでなく、マーケティングやカスタマーサクセスとの連携を促進し、全社的な売上貢献を担う役割も果たします。
その一方で、組織体制の構築やKPI設計、人材育成、ツール選定といった設計面での課題も少なくありません。本記事では、そうしたメリットとリスクを整理した上で、初期構築から運用拡大、評価指標の設計までを解説させていただきましたので、少しでもお役に立てれば幸いです。