マーケティングファネルという言葉はよく聞くのに、
「自社ではどう設計して、どこまで追えているのか?」と問われると、
少し歯切れが悪くなるケースが多いと感じます。
図はあるものの、営業資料の1ページで止まっていたり、
ダッシュボード上で数字だけが流れていたり…。せっかくの考え方が、日々の意思決定とつながっていない状態です。
一方で、「うちは事業が複雑だから、
きれいなファネルにはならない」とあきらめている声もよく聞きます。
たしかに、チャネルもタッチポイントも増えていますし、
きれいな教科書どおりの形には収まりにくいでしょう。
ただ、だからこそ“自社なりの粗さ”で流れを整理しておくことには、まだ意味があると思います。
個人的には、マーケティングファネルは高度な分析フレームというより、
「ビジネスの流れをざっくり共有するための共通フォーマット」に近いものだと捉えています。
どこから人が入り、どこで減り、どこで売上につながるのか。
その骨組みが一枚の絵で見えるだけでも、打ち手の議論はかなりラクになります。
ここから先では、マーケティングファネルの基本的な意味や構造、
代表的なモデルに触れながら、
自社のビジネスに合わせてどう設計・分析・改善していくかを整理していきます。
読み終えたときに、「まずは自社のファネルをこう描き直してみよう」と
手を動かしたくなる状態を、ひとつのゴールにしてもらえると嬉しいです。
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ファネルは、もともと「じょうご」「ろうと」のことです。
上が大きく開いていて、下に向かって細くなっている、液体や粉をこぼさず流し込むあの道具ですね。
この形が、「多く集めて少しずつ絞り込む」イメージにぴったりだったため、マーケティングでも使われるようになりました。
最初はたくさんの人に知ってもらい、
その中の一部が興味を持ち、さらに一部が商品を検討し、
最終的にごく一部が購入する、という流れを、上から下にすぼまる図で表したのがファネルです。
マーケティングの現場では、以下のような意味合いで使われることが多いです。
・認知から購入までを俯瞰する図
・各段階で「人数」と「割合」を追いかける枠組み
個人的には、「難しい専門用語」ではなく、
チームで状況を共有するためのシンプルな図解表現に近いものだと感じています。
マーケティングファネルの基本構造(認知〜購入まで)
マーケティングファネルの基本的な流れはシンプルです。
代表的な段階をざっくり書くと、次のような階段になります。
1.認知
存在を知る段階です。広告や検索結果、SNS、展示会などで「名前を見かけた」レベルの状態です。
2.興味・関心
「どんなサービスなのか」「自分に関係ありそうか」を
知ろうとする段階です。サイト訪問や資料閲覧、動画視聴などがここに入ります。
3.比較・検討
他社と比べたり、プランを見比べたりする段階です。
料金ページや事例、FAQなどがよく読まれます。
4.行動(問い合わせ・申込)
資料請求、無料トライアル登録、カート投入、
決済など、具体的なアクションに踏み出す段階です。
5.購入・契約
実際にお金を払って利用を始める段階です。ここがファネルのいちばん下側にあたります。
この階段ごとに「どれだけの人が次の段階に進んだか」
「どこで多く離脱しているか」を見ていくことで、改善の焦点がはっきりしてきます。
きれいな理論というより、「顧客の旅路を少しラフに区切ったもの」と捉えたほうが、心理的なハードルは下がるかもしれません。
マーケティングファネルが使われ続ける理由
ここ数年、「ファネルは古い」「今の顧客行動には合わない」といった意見も増えました。
スマホやSNSによって、行動の順序は前後し、行ったり来たりも当たり前になっています。
それでも、マーケティングファネルという考え方が使われ続けているのには、いくつか理由があると思います。
1つは、全体像をざっくり把握するにはちょうどいい粗さだからです。
細かなタッチポイントをすべて追いかけると、かえって何から着手すべきか分からなくなります。
大まかな階段に分けて、「どの段で詰まっているか」を先に押さえる、
という入り口としてファネルは扱いやすいです。
もう1つは、部門をまたいだ共通言語になりやすい点です。
マーケはクリックやCV数、営業は商談数や受注率、
プロダクトはアクティブユーザー数と、それぞれ見ている数字が違います。
ファネルの形で並べると、「入口から出口までを
一本の線でつないだ状態」で会話できるので、
責任の押し付け合いではなく「どこを一緒に直すか」という話に持っていきやすくなります。
マーケティングファネルの種類
ひと口にマーケティングファネルは幾つかあり、
細かいモデル名を覚えることよりも、「どんな考え方の違いがあるか」をざっくり押さえておくことを目標にします。
① 購買ファネル(パーチェスファネル)
もっともオーソドックスな形です。
認知 ⇒ 興味 ⇒ 比較 ⇒ 購入 といった流れを、上から下にすぼまる構造で表します。
主に「新規顧客がどうやって買うところまで進むか」を見るときに使われます。
② ダブルファネル(マーケ×営業の二段構え)
BtoBでよく使われるのが、この二段構えの考え方です。
・上側:マーケティングファネル(流入〜リード獲得〜MQL)
・下側:営業ファネル(MQL〜商談〜受注)
上記のように、マーケ側と営業側の流れをつなげて一枚の図にしたものです。
「リード数は増えているのに受注が増えない」といった議論を整理するときに役立ちます。
③ フルファネル(認知から継続利用までを一気通貫で見る型)
近年増えているのが、「買うまで」ではなく、
次のステップである継続利用やファン化まで含めて見るタイプです。
・認知・興味
・購入
・利用・継続
・推奨・口コミ
上記の流れをひと続きで扱い、広告運用だけでなく、
カスタマーサクセスも含めて考えていく必要があります。
LTVを重視する企業やサブスク型ビジネスを展開する企業では、
この捉え方がしっくり来るケースが多いです。
このように、マーケティングファネルは
「1種類のカッチリしたモデル」ではなく、
ビジネスに合わせて形を調整していく前提の考え方だと言えます。
自社の商材や組織構造に照らし合わせながら、
「どこからどこまでをファネルとして描くか」を考えていくことが、
設計の最初の一歩だと思います。
マーケティングファネルの話をすると、ほぼセットで
「それ、もう古くない?」「今どきのビジネスには合わないのでは」
といった反応が返ってきます。
違和感を覚えつつも、まったくの的外れとも言い切れない。
その微妙な空気の正体を、一度きちんと言語化しておきたいところです。
フライホイール・LTV志向など、新しいフレームの台頭
「ファネルは古い」と言われやすくなった背景には、
ここ十数年で別の“ものさし”が増えてきたことがあります。
例えば、代表的なのが次のような考え方です。
フライホイール(Flywheel)
顧客との関係を、上から下に流すのではなく、
「回転し続ける輪」として捉える発想です。
新規獲得だけでなく、継続利用・紹介・コミュニティといった
初回購入後の顧客の動きについても設計していくというフレームワークです。
LTV(顧客生涯価値)を起点に考える視点
一回の受注や初回購入よりも、
「どれくらいの期間、どれくらいの金額で付き合いが続くか」を重視する見方です。
サブスクやSaaSが増える中で、こちらの方がしっくりくる場面も増えています。
プロダクト主導成長(PLG)の考え方
広告や営業よりも、
「プロダクトそのものの体験」が成長のドライバーになる、という前提に立つアプローチです。
無料トライアルやフリーミアムから広げていくタイプのSaaSが典型例ですね。
こうしたフレームが広がるにつれて、
「認知⇒興味⇒購入」という直線的なファネルだけでは
見落としているものがある、という感覚はたしかに強くなりました。
個人的にも、その直感はかなり妥当だと感じています。
ファネルの限界が目立ちやすくなった理由
一方で、ファネルそのものが急に劣化したわけではなく、
周りの状況が変わったことで“弱点が目立ってきたというほうが近いと感じます。
代表的なポイントを整理すると、こんなところです。
① 行動が一本の線ではなく、複数のルートになった
昔なら、「広告を見る → 店に行く → 購入」のように、
ある程度パターンが限られていました。
今では、以下のような動きが当たり前となってきています。
・SNSで存在を知る
・検索して比較サイトを見る
・口コミを探す
・公式サイトを見て、また別日に戻ってくる
上から下へ一方向に流れる図だけで表現すると、どうしても違和感が残ります。
② タッチポイントが増えすぎて、図が“詰め込み状態”になる
オンライン・オフラインを合わせると、以下のような接点を使うことができます。
・広告、検索、SNS、メルマガ
・展示会、セミナー、営業訪問
・アプリ、店舗、コールセンター
全部を一枚のファネルに載せようとすると、
以下のような状態になりがちです。
・ステップが増えすぎる
・矢印だらけで誰も見なくなる
結果として、「結局、何が言いたい図なのか分からない」という残念なアウトプットになってしまいます。
③ 「売ったら終わり」ではなくなった
サブスク、リピート通販(D2C)、SaaSなどを展開する企業は
以下のような指標が重要となります。
・継続利用
・アップグレード
・友人・同僚への紹介
ところが、従来のファネルは「購入・契約」で終点になることが多く、
その後の世界を扱いづらい構造です。
このあたりが、「今のビジネスの感覚と噛み合わない」と言われる理由だと思います。
「マーケティングファネルは死んだ」という言い方への違和感と、現実的な付き合い方
では、「マーケティングファネルはもう終わったのか?」というと、
個人的には、そこまで極端な話ではないと感じています。
たしかに、以下のような指摘はその通りです。
・顧客との関係性に対する指標が入っていない。
・契約後・継続・紹介まで含めるなら、別の視点も必要
一方で、現場で日々意思決定をしている立場から見ると、
「入口から出口まで、どこでどれだけ人が減っているか」を
シンプルに一覧できるフレームは、まだまだ重宝されているはずです。
「死んだ」とまで言われる理由の一つは、
今までの購入までのファネルだけで全部を語ろうとしたことへの反動ではないでしょうか。
・顧客の感情の揺れも
・契約後の活用も
・ブランドの関係性も
すべてを一本の漏斗の中に押し込もうとすると、そりゃあ無理が出ます。
その結果、「やっぱりファネルは現代的じゃない」と評価されがちです。
より現実的な向き合い方としては、以下を割り切ってしまうことだと思います。
・ファネルは「数字の骨組み」をつかむ役
・他のフレームは「関係性や体験の厚み」を補う役
例えば、以下のような、どの場面でどのレンズを使うかをあらかじめ決めておくイメージです。
・新規獲得の効率を見たいときはファネル
・契約後の価値提供を議論したいときはLTVや別のモデル
マーケティングファネルは、万能な理論ではありません。
ただ、「ビジネスの流れをまずザックリ掴む」という役割に絞れば、
今でも十分に使える道具だと感じています。
大事なのは、「古いか新しいか」ではなく、
自社のどの悩みを解くために、どこまでファネルを使うのかを決めることだと思います。
ファネルと一言でいっても、中身は1パターンではありません。
「どんな前提で」「どこまでの範囲を」扱うかによって、階段の切り方も呼び方も変わってきます。
ここでは、有名なモデルをざっと整理しつつ、実務で使いやすい形に落としていきます。
AIDA・AIDMA・AISASなど認知〜購買モデルの整理
まずは、認知から購買までの気持ちの流れをシンプルに切り出したモデルからです。
細かい違いはありますが、いくつか代表的なものだけ押さえておけば十分だと思います。
AIDA:一番ベーシックな4段階
・Attention(注意)
・Interest(興味)
・Desire(欲求)
・Action(行動)
広告やコピーの世界でよく出てくる型です。
「どうやって気づいてもらい、興味を持ってもらい、欲しくなってもらい、行動してもらうか」という流れを端的に表しています。
AIDMA:マス広告時代の購買モデル
・Attention(注意)
・Interest(興味)
・Desire(欲求)
・Memory(記憶)
・Action(行動)
テレビCMや雑誌広告のように、その場ですぐ買うわけではない前提で、「記憶」のステップが入っています。
一度覚えてもらい、店頭や次の接触タイミングで思い出して行動に至るイメージです。
AISAS:ネット検索を前提にしたモデル
・Attention(注意)
・Interest(興味)
・Search(検索)
・Action(行動)
・Share(共有)
インターネット・SNS時代の行動を取り入れた型です。
気になったら検索し、買ったあとにレビューやSNSで共有する、
という行動が当たり前になったことを反映しています。
これらのモデルは、「どれが正しいか」を競わせるというより、
自社の顧客はどのあたりで悩んでいるのかを整理するための観察のレンズとして使うと扱いやすいです。
個人的には、「うちの顧客は Search が強いのか?
それとも口コミの Share の比重が高いのか?」といった議論のきっかけにするのが良いと感じています。
パーチェスファネル・インバウンドファネルなど主要モデルの違い
次は、より“マーケプラン寄り”のファネルです。
こちらは、心理だけでなく、チャネルや施策も含めた設計に使われます。
パーチェスファネル(購買ファネル)
もっともオーソドックスなマーケティングファネルです。
・認知(広告・PR・SEOなど)
・興味(サイト訪問、資料閲覧)
・比較・検討(料金・事例・レビュー閲覧)
・行動(問い合わせ、カート投入)
・購入・契約
上記の段階を、「どれだけの人が進んだか」「どこで離脱したか」で追いかけます。
広告運用やLP改善など、上から下に流していく施策の設計図としてよく使われます。
インバウンドファネル(インバウンドマーケ用のファネル)
コンテンツ・SEO・セミナーなど、「相手から来てもらう」前提のファネルです。たとえば:
・Attract(惹きつける):記事・動画・SNS投稿
・Convert(コンバート):資料DL・メルマガ登録・会員登録
・Close(クロージング):商談・契約
・Delight(満足させる):サポート・アップセル・紹介
上記のような流れで設計するケースが多いです。
単なる「新規獲得」だけでなく、その後の関係性まで視野に入っている点が、従来の購買ファネルとの違いです。
広告ファネル・SNSファネルなどの「用途別ファネル」
最近は、Google広告用、SNS用、セミナー用など、チャネルごとに簡易ファネルを作るケースも増えています。
・広告表示 ⇒ クリック ⇒ LP滞在 ⇒ CV
・SNSインプレッション ⇒ プロフィール遷移 ⇒ サイト流入 → 登録
といった具合です。
ここまで来ると、名前よりも「何のためのファネルか」のほうが重要になってきます。
個人的には、“目的別に数本持つ方が現実的”だと感じる場面が多いです。
BtoB・BtoCで異なるマーケティングファネル設計のポイント
同じマーケティングファネルでも、BtoBとBtoCでは設計のクセがかなり違います。
ここを混ぜて考えると、「何となくしっくりこないファネル」が出来上がりがちです。
BtoC:意思決定が早く、感情の影響が大きいファネル
・個人の好みや気分が大きく影響
・比較検討の時間は短め(もちろん商品にもよります)
・Web上で完結するケースが多い
そのため、BtoCでは以下のような画面単位・行動単位で細かく切るほうが役に立つことが多いです。
LP・ECサイトの改善やクリエイティブのABテストに直結しやすい設計です。
・認知
・訪問
・商品閲覧
・カート投入
・購入
BtoB:ステークホルダーが多く、プロセスが長いファネル
・決裁者が複数
・社内の説得プロセスが存在
・検討期間が長く、途中で温度が上下しやすい
そのため、BtoBでは以下のような品質の変化を表すステップが重要になります。
・リード獲得(資料請求・セミナー申込など)
・MQL(マーケが「追う価値あり」と判断したリード)
・SQL(営業が「提案に進めたい」と判断したリード)
・商談
・受注
単純なアクセス数やCV数だけでは測れないため、
インサイドセールスや営業が更新する情報とセットで設計するイメージです。
個人的には、「BtoCのノリでBtoBファネルを作る」と、
数字は埋まるけれど意思決定に使えない図になりやすいと感じています。
逆に、BtoBの細かい定義をそのままBtoCに持ち込むと、運用コストが合わないはずです。
自社のビジネスがどちら寄りなのか、一度あらためて確認してから設計するとブレにくくなります。
すぐ使えるマーケティングファネルのテンプレート例(図解・ひな形紹介)
ここからは、「実際にどう書き出すか」のイメージを共有します。
本格的なツールがなくても、スプレッドシートやホワイトボードで十分始められる形にしておくと、社内に広げやすいです。
テンプレート例①:シンプルBtoCファネル(Web〜購入)
横軸にステップ、縦軸に数字を並べるだけの形です。
ステップ:
・サイト訪問
・商品ページ閲覧
・カート投入
・配送情報入力
・購入完了
各ステップごとに以下を1行で並べます。
・人数(セッション数/ユーザー数)
・前のステップからの到達率
これだけでも、「カートには入るが、配送情報で大量に落ちている」といった問題が見えてきます。
テンプレート例②:BtoBダブルファネル(マーケ+営業)
上段がマーケ、下段が営業、という二段構成のシートを作るイメージです。
上段(マーケ):
・サイト訪問
・資料DL・セミナー申込
・MQL
下段(営業):
・SQL
・初回商談
・見積・提案
・受注
それぞれの段で、件数と率を出し、真ん中でMQL↔SQLの引き渡し数と転換率を入れます。
「どちらが悪いか」を責め合うのではなく、「どのステップを一緒に太らせるか」を話しやすくなる形です。
テンプレート例③:フルファネル(認知〜継続)
サブスク型のサービスであれば、以下までを考えます。
・認知・訪問
・登録・申込
・有料化
・継続利用
・アップセル・紹介
更に、以下も加えておくとLTVの議論につなげやすくなります。
・継続率
・解約率
・紹介経由の比率
個人的には、最初から完璧なテンプレを目指すより、
「A4一枚でチーム全員が状況を共有できるか」を基準にシンプルさを
優先したほうが、結果的に長続きしやすいと感じています。
最新のファネル分析・AI活用型の進化モデル(スコアリング・予測モデルなど)
最後に、やや発展形の話として、AIやスコアリングを絡めた“進化版ファネル”に触れておきます。
スコアリング付きファネル
BtoB SaaSなどで増えているのが、各リードに点数を付けるやり方です。
・属性情報(業種・規模・役職)
・行動履歴(メール開封、ページ閲覧、資料DL回数)
例えば、上記からスコアを算出し、
ファネルの各ステージについて例えば以下のように管理します。
・一定点数を超えたらMQL
・さらに条件を満たしたらSQL候補
単純な段階管理よりも、「どのステップに高スコアの人が多いか」が分かる点が強みです。
予測モデル付きファネル
機械学習を用いて、以下を予測し、
ファネルの各ステップごとに「この層は危ない」「この層は伸ばしたい」といった優先度を付けるケースも増えています。
・成約しそうな確率
・解約しそうな確率
例えば、以下のような形になります。
・商談ステップにいる案件のうち、AIが「受注確率が高い」と判断したものを重点フォロー
・トライアル中ユーザーのうち、利用状況から「課金に結びつきやすい」人をピックアップ
行動ログ×リアルタイムのミニファネル
プロダクト内の行動ログを見ながら、
例えば、以下の項目をリアルタイムで追いかけるミニファネルもよく使われています。
・初回ログイン
・コア機能の利用
・チーム招待
・定着
ここにAIが加わると、以下のような特徴を抽出し、オンボーディングやチュートリアルの設計に反映できます。
・「この操作をしたユーザーは解約しづらい」
・「この行動パターンのユーザーはアップグレードしやすい」
とはいえ、こうした高度なモデルも、土台にあるのはやはり「どの段階でどれだけ減っているか」というファネルの発想です。
個人的には、まずはシンプルなファネルで全体像を掴み、
その後にスコアリングや予測を足していく順番のほうが、組織として無理がないと感じています。
高度なツールの話に引っ張られすぎず、「自社の現状で使える範囲から段階的に広げていく」くらいのスタンスで見ると、ファネルの進化形とも上手に付き合っていけるはずです。
ここまでで「ファネルとは何か」はだいぶクリアになってきたと思います。
次に気になるのは、「で、うちのビジネスではどう動かせばいいのか?」という話ですよね。
ファネルの活用は、大きく分けると以下の3点でだいたい集約されます。
1. どんな指標でプロセスを見える化するか
2. どこが詰まっているかをどう見つけるか
3. そのうえで、どんなツール・体制で回していくか
ここでは、現場で回しやすい順番に整理していきます。
マーケティングファネル分析とは?KPI・指標でプロセスを見える化する方法
ファネル分析というと、
難しい統計分析を連想して身構えてしまう方もいますが、出発点はもっとシンプルです。
「入口から出口までの流れを段階に分けて、量と割合で眺める」ことに尽きます。
まずやるべきは、次の3つです。
1. ゴールをひとつ決める
・売上
・受注件数
・商談数
・無料登録数
など、この記事で扱うファネルは何に向かっているのかをはっきりさせます。
2. その手前に並ぶステップを3〜7段くらいに区切る
・BtoBなら「訪問 → 資料DL → MQL → 商談 → 受注」
・ECなら「訪問 → 商品閲覧 → カート投入 → 決済入力 → 購入」
というように、途中の階段をざっくり決めます。
3. 各ステップに「件数」と「率」を設定する
・件数:そのステップに到達した人数(またはセッション数)
・率:前のステップから進んだ割合(到達率)
この「件数 × 到達率」だけでも、かなりの情報が取れます。
指標を選ぶ際のチェックポイントは、次の2つです。
・あとから同じ条件で再計測できるか
→ 手作業でしか追えない指標だと続きません。
・チーム全員が同じ意味で理解できるか
→ 「リード数」より「資料請求フォーム送信完了数」のように、具体的な定義にしておくと安心です。
個人的には、最初のファネル分析は「完璧さ」より「継続しやすさ」を重視したほうがうまくいくと感じています。
ボトルネック・離脱ポイントの発見と改善ステップ
ファネルが描けて数字が入ると、必ずどこかに細くなっている段が出てきます。
その段こそが、ボトルネック候補です。
ただ、「数字が低いから」という理由だけで焦って施策を打つと、
的外れになりがちです。おすすめは、次のようなステップです。
ステップ1:素直に「違和感ゾーン」をメモする
例えば、以下のようなことをざっと書き出します。この段階では仮説レベルで構いません。
・他の段階と比べて明らかに到達率が低い部分
・月ごとの推移で、急に落ち込んでいる部分
・チャネル別やデバイス別で差が大きい部分
ステップ2:切り口を変えて本当にボトルネックか確かめる
・期間を変えても同じ傾向が続いているか
・チャネル別に見ても同じ段が弱いか
・担当者別やキャンペーン別で見ても似たパターンか
上記のようなダブルチェックを行います。
ここで傾向がブレない段は、かなり濃いボトルネック候補だと考えて良いと思います。
ステップ3:ユーザーの行動・心理に翻訳する
数字だけ眺めていると、「ここが低い」で思考が止まりがちです。
気づきなどを、例えば以下のようなことを意識して書き出してみます。
・「この段階で、ユーザーは何を見て、何に戸惑っているのか」
・「どんな不安や面倒くささがあるのか」
例えば、以下のような内容になります。
・カート投入 ⇒ 配送情報入力の到達率が低い
⇒配送料が最後まで分からない/入力項目が多い/スマホで入力しづらい
このように解像度を上げて言語化できると、改善案も出やすくなります。
ステップ4:小さな施策からテストする
・文言変更
・入力項目の削減
・導線の位置調整
・追客のタイミング変更
上記のようなところから、1〜2週間で試せる範囲の施策から着手するのがおすすめです。
一気に変えすぎると、何が効いたか分からなくなってしまいます。
個人的には、「100点の打ち手」よりも、
「60点の打ち手を早く回す」ほうが、ファネル改善では結果につながりやすいと感じています。
ファネル活用に便利なツール(GA4・MA・CRM・SFAなど)の選び方
ファネルを運用していくと、どうしてもツールの話が出てきます。
ただ、いきなりツール選定から入ると、機能比較に疲れるだけで終わることも多いです。
まずは「何をどこまでツールに任せたいか」をざっくり決めてから選ぶと、迷いが減ります。
アクセス解析(GA4 など)
・Webサイトの訪問〜フォーム送信までの流れを追いたいときに使います。
・イベント単位で「LP閲覧 → フォーム表示 → 送信完了」のような簡易ファネルを組めます。
・チャネル別(広告/自然検索/SNSなど)、デバイス別、ランディングページ別の比較に強いです。
MAツール(マーケティングオートメーション)
・メール・フォーム・スコアリングを使いながら、「どのリードがどれだけ動いているか」を見たいときに役立ちます。
・資料DL ⇒ メルマガ開封 ⇒ セミナー参加 ⇒ 商談といった“動の積み重ねをファネル的に追うイメージです。
・BtoBや高単価BtoCで、リードタイムが長いビジネスに向いています。
CRM・SFA
・商談〜受注以降のプロセスを管理するツールです。
・案件ステージごとの件数や金額をまとめて、営業ファネルを作るのに向いています。
・「MQL→SQL→商談→受注」の後半部分をきちんと管理したいときに必須に近い存在です。
ツールを選ぶときに意識したいのは、以下の3点です。
・すでに持っているツールでカバーできる範囲
・どうしても埋めたい“穴”がどこか
・運用できる担当者・時間がどのくらいあるか
個人的には、「いきなり全部入りの高機能ツール」よりも、
いま一番困っている領域を埋めてくれるツールから始めるほうが、定着しやすいと感じています。
小さなチームでもできる「ライト版マーケティングファネル運用」の始め方
スタートアップや少人数チームだと、
「こんなにちゃんとやる余裕はない」と感じるかもしれません。
ただ、やり方を絞れば、ライトな形でも十分ファネルの恩恵を受けられます。
ここでは、最小構成で始めるパターンを紹介します。
① ステップを“3段”に絞る
・上:流入(サイト訪問・LP訪問など)
・中:コンバージョン(資料請求・登録・問い合わせなど)
・下:売上に近いアクション(商談数・受注数・購入数など)
まずはこの3段だけでスタートします。
複雑な定義は後回しでも構いません。
② 週1回、数字をスプレッドシートに手で入れる
・行:週ごと(または月ごと)
・列:上・中・下の3ステップの件数と、
上→中の率
中→下の率
このくらいなら、数分で更新できます。
最初はツール連携より、「書き写しながら数字に触れる」ことそのものに意味があると感じています。
③ 週次ミーティングで“どこが変わったか”だけ話す
・今週、上・中・下のどこが良かったか/悪かったか
・来週、どの段を太らせるために何をするか
これだけを短時間で共有します。
深い分析はあとでよくて、「ファネルを見ながら話す時間」を習慣にすることが大事です。
④ 慣れてきたら一段だけ増やす
軌道に乗ってきたら、BtoBなら「MQL」や「SQL」、ECなら「カート投入」など、
もう1段だけ真ん中に階段を増やします。
いきなり5段・6段にしないことが、挫折しにくいコツです。
マーケティングファネルは、立派なダッシュボードを作るための概念ではなく、
「どこがネックかをサクッと共有するための図」くらいの距離感で使うと、チームに馴染みやすくなります。
個人的には、完璧な分析よりも、「毎週少しずつ太くなっている段が見える状態」のほうが、現場にとってはうれしいはずだと感じています。
その第一歩として、自分たちが回せる範囲の“ライト版ファネル”から始めてみてください。
ここからは、少し具体的な“現場の景色”に近づけてみます。
理論として理解できても、「じゃあ、どんな打ち手とセットで使われているのか」が見えないと、
自社に持ち帰りづらいですよね。
ここでは、BtoB・EC・イベント/ウェビナーの3つに絞って、
マーケティングファネルがどう活きたかを、イメージしやすい形で整理します。
BtoBビジネス(SaaS・製造業など)でのマーケティングファネル活用事例
事例① BtoB SaaS:資料請求は多いのに、商談数が伸びない
あるSaaS企業では、SEOや広告施策が当たり、資料請求は順調に増えていました。
にもかかわらず、営業チームの口から出てくるのは
「いいリードが少ない」という不満ばかり。感情的な議論だけが積み上がっていく、よくある状況です。
そこで、次のようなマーケティングファネルを一度きちんと組み立てました。
・サイト訪問
・資料請求・ホワイトペーパーDL
・MQL(スコア○点以上+ターゲット業種)
・商談設定
・受注
各ステップの件数と到達率を並べてみると、
・訪問 → 資料請求:悪くない
・資料請求 → MQL:悪くない
・MQL → 商談:ここだけ極端に低い
という結果がはっきり出ました。
つまり「リードの質」だけが問題ではなく、
MQLから商談に進めるプロセスそのものに穴があると分かったわけです。
そこで取った打ち手はシンプルです。
・フォームに導入希望時期と社内での立場を追加し、MQLの基準を見直す
・MQLになった時点で、自動メール+インサイドセールスの架電をセットで走らせる
・商談前に送る「導入までのステップ資料」を標準化
結果として、同じ資料請求数でも商談数が増え、
営業からも「話が通じやすいリードが増えた」という声が増えていきました。
ファネルを挟んだことで、「マーケ vs 営業」の感情論から、
「どの段階を一緒に整えるか」という建設的な会話に変わったのが、いちばん大きな収穫だったと思います。
事例② 製造業:展示会中心からデジタルを絡めたファネルへ
別のケースでは、工場向け設備を扱う老舗メーカーが、展示会頼みの集客から抜け出せずにいました。
展示会で名刺は集まるものの、その後のフォローが曖昧で、営業担当ごとの感覚に委ねられている状態です。
そこで、展示会を起点にしたBtoBファネルを再構築しました。
・展示会来場・名刺獲得
・セミナー受講・デモ閲覧
・資料DL・問い合わせ
・案件化(ニーズヒアリング済み)
・提案・見積
・受注
あわせて、MAとCRMをゆるく連携させ、
・展示会後、来場者全員にフォローメール
・メールの開封/クリックがあった人を、優先フォローリストとして営業に共有
・「セミナー+資料DL+メールクリック」のように反応が重なった層を、案件化候補として扱う
…という流れをつくることができます。
一気にデジタルシフトしたわけではなく、
あくまで展示会を中心にしつつ、展示会後の動きを可視化するファネルを足したイメージです。
結果として、展示会1回あたりの受注件数が増えただけでなく、
「どの展示会にどれだけ投資するか」を冷静に判断できるようになりました。
個人的には、こういった“従来の営業プロセスに、
ゆるくデジタルなファネルを重ねる”やり方は、製造業ではかなり現実的だと感じています。
事例③ コンテンツメディア+リード獲得のファネル
別のデジタルマーケティングの例では、自社メディアからのホワイトペーパーDLを起点にしたファネルです。
・記事閲覧
・関連資料DL
・メルマガ登録
・スコア一定以上でインサイドセールスに連携
・商談化
この企業では、もともと「記事のPV」だけを追っていましたが、
マーケティングファネルを組むタイミングで、
以下のようなことが分かってきました。
・リード獲得につながる記事
・PVはあるがリードにつながらない記事
そこで、
・ダウンロード率の高い記事を軸に、関連コンテンツを集中的に増やす
・リードにつながらない記事は、ブランド認知・SEO目的に位置づけ、評価指標を明確に分ける
という整理を行い、「PVさえ伸びればOK」という曖昧な状態から脱却しました。
個人的には、コンテンツマーケティングの場面で
マーケティングファネルを導入すると、「記事の役割」を決める軸ができてスッキリしやすいと感じています。
イベント・ウェビナー・営業活動と連動したファネル設計と成果の出し方
事例④ ウェビナー中心のリード獲得ファネル
最近増えているのが、ウェビナーを中核にしたBtoBのマーケティングファネルです。
以前は、毎月のようにウェビナーを開催していたものの、
以下だけを見て満足してしまい、うまくいきませんでした。
・参加者数
・アンケート回収数
・商談設定
・受注
そこで、以下のような形でファンネルを設定し、
各ステップの数字を必ず追うルールに変更しました。
・申込
・当日参加
・アンケート回答
・フォロー面談の希望
・商談設定
・受注
あわせて、
以下のようなアンケートに営業確度を見極めるような情報を加えた結果、
「とりあえず参加した人」と
「具体的な検討を進めたい人」を
見極められるようになりました。
・導入検討時期
・想定利用部署
・面談の希望有無
ウェビナー自体の内容も、ファネルを見ながらチューニングしていきます。
・上流寄りのウェビナー:課題認識と情報提供が中心
・下流寄りのウェビナー:導入事例や具体的な活用イメージが中心
上記のように位置づけを分け、
それぞれのファネル内での役割をはっきりさせることで、全体の効率も上がっていきました。
どの事例にも共通しているのは、以下のような点です。
・特別なアルゴリズムを使ったわけではない
・いきなり完璧なファネルを作ったわけでもない
ただ、「自社にとって大事な流れはどこか?」を決め、
「その流れを、段階と数字でざっくり押さえる」ところから始めることが重要と言うことでした。
個人的には、華やかな成功事例より、
こうした地味なファネルの整え方のほうが、多くの会社にとって参考になるのではないかと感じています。
自社のファネルに当てはめたとき、
「どの事例が一番近いか」を一度メモしてみると、次に打つ一手が見えやすくなるはずです。
ここまで来ると、「理屈は分かったので、あとはちゃんと回せる形にしたい」というフェーズだと思います。
正直なところ、ファネルは作るより運用し続けるほうがむずかしいです。
最後に、設計時・運用時・社内浸透、
それぞれで意識しておきたいポイントをまとめておきます。
自社ビジネスに合わせたマーケティングファネル構築・KPI設計のポイント
まず押さえたいのは、「テンプレそのまま」から入らないことです。
業界や単価、販売スタイルによって、見るべき段階やKPIはけっこう違います。
① ゴールを「ひとつの文章」で書き出す
・「○○事業の新規受注を増やすためのファネル」
・「ECサイトの新規購入を増やすためのファネル」
・「既存顧客のアップセル率を高めるためのファネル」
といった具合に、対象とゴールを一行で表現してみてください。
これを曖昧なまま進めると、途中で「結局何のファネルだったっけ?」となりがちです。
② ステップは“7段以内”に抑える
やろうと思えばいくらでも細かくできますが、最初から10段・12段にすると誰も追えなくなります。
目安としては「3〜7段」が扱いやすいラインです。
・BtoBなら:訪問 ⇒ リード ⇒ MQL ⇒ SQL ⇒ 商談 ⇒ 受注
・ECなら:訪問 ⇒ 商品閲覧 ⇒ カート ⇒ 入力 ⇒ 購入
くらいから始めて、必要になったらあとから刻むくらいがちょうどいい、と個人的には感じます。
③ KPIは“現場のシステムで取れるもの”だけにする
きれいな指標を並べたくなりますが、取得できない数字をKPIにしても誰も追えません。
チェックしたいのは、以下の2点です。
・GA4・広告管理画面・MA・CRMなどに、すでに存在する数字か
・毎月「手入力で集計する」負荷が現実的か
少し味気なく感じても、「ツールからそのまま引き出せる数字+最低限の手計算」で構成するほうが、長く続きます。
④ 「数値目標」と「許容ライン」をセットで置く
KPIには、以下の2点にすると、日々のモニタリングがしやすくなります。
・目指したい値(目標)
・これを切ったら要注意、というライン
例えば、以下のようなイメージです。
・資料請求→商談化率:目標30%/要注意20%
・カート→決済完了率:目標70%/要注意55%
この2本の線があるだけで、ダッシュボードの眺め方がかなり変わります。
成果につなげるプロセス改善と継続的な運用の進め方
ファネルは、一度作って終わりにすると、あっという間に“キレイなだけの図”になってしまいます。
数字を眺めて終わりにしないために、あらかじめ運用のリズムを決めておくのがおすすめです。
① 月次・週次でやることを決めておく
週次:
・主要3〜5指標だけをざっと確認
・「いま弱っている段階」を一言で共有
月次:
・ファネル全体を見て、改善
・テーマをひとつ決める テーマに対する打ち手と仮説をメモに残す
このように、週次は“体温計チェック”、月次は“診察と処方箋”くらいの役割分担にしておくと、会議が重くなりすぎません。
② 改善はファネル1段分に絞る
一度にあれもこれも直そうとすると、結局どれも中途半端になりがちです。
・今月は「訪問→CV」の改善に集中
・来月は「CV→商談」の改善に集中
というように、月ごとに「どの段を太らせる月か」を決めると、施策の粒度も揃えやすくなります。
③ 改善サイクルを簡単にメモしておく
いわゆるPDCAですが、きっちりしたレポートではなく、
・やったこと
・どう変わったか
・次どうするか
だけをスプレッドシートやNotionなどに残すイメージで十分です。
数ヶ月たつと、「うちはこの段は何をやっても効きづらい」「逆に、この段はいじるとすぐ数字が動く」といった“自社のクセ”が見えてきます。
④ “悪い数字の日”の扱い方を決めておく
どんなにがんばっても、月によって数字が落ち込むことは避けられません。
そのときに、ファネルの位置づけが変わります。
・誰かの責任を追及する場にするのか
・「何が起きたか」を一緒に観察する場にするのか
個人的には、「悪かった月こそ、学びのネタが多い月」として扱う文化を作れた組織は、長期的に強くなると感じています。
経営・現場・パートナーを巻き込む「ファネルの見せ方」と社内浸透のコツ
どれだけ良いファネルを設計しても、見る人によって“伝わり方”が違うのが現場あるあるです。
経営・現場・外部パートナー、それぞれに合った見せ方を少し意識しておくと、浸透しやすくなります。
① 経営層には「1枚+ひとこと」で伝える
経営側が知りたいのは、
細かな指標そのものよりも、以下のような流れを変える数値です。
・どの段階でビジネスが止まりやすいのか
・それを直すために、何に投資しているのか
そのため、以下の2つをセットにして共有すると、話が通りやすくなります。
・A4一枚くらいのファネル図
・「いま改善に集中している段階」と「理由」をひとことで説明したメモ
② 現場には「自分ごとになる指標」だけを見せる
・マーケ:流入〜CV
・インサイド:CV〜商談
・フィールド営業:商談〜受注
といった具合に、担当者ごとに“責任範囲の段”が違います。
すべての数字を見せるより、自分が動かせる指標+前後のつながりに絞ったビューを作ったほうが、モチベーションにつながりやすいと感じます。
③ 代理店・パートナーには「一段下まで見せる」
広告代理店や制作会社など、外部のパートナーには、成果地点だけ伝えることが多いですが、
・広告 → LPのCVR
・LP → サイト全体での回遊
・CV → 実際の売上への転換
といった“その先の数字”も共有すると、出てくる提案の質が変わります。
「CPAいくらで取ればいいか」ではなく、
「ビジネスとしてどの段を太らせたいか」を共有できるかどうかで、関係性の深さも変わってくるはずです。
④ “ファネルの定義書”を一枚だけ用意する
最後に地味ですが効くのが、「定義を一枚にまとめておくこと」です。
・各ステップの名前
・そのステップにカウントされる条件
・データの出どころ(どのツールのどのレポートか)
これを簡単な表にして、オンボーディング資料などに入れておくと、
新メンバーや異動者が入ってもファネルの意味がぶれにくくなります。
マーケティングファネルは、立派な図を描いた瞬間がゴールではなく、
「社内の会話の土台」としてどれだけ日常に馴染ませられるかが勝負だと感じています。
完璧さを追いすぎると息切れしやすいので、まずは以下の3つから整えてみてください。
・段数を絞る
・指標を絞る
・見せ方をシンプルにする
少しずつでもファネルを見ながら話す時間が増えていけば、
数ヶ月後には、数字の見え方と会話の質がじわっと変わっているはずです。
マーケティングファネルは、古い理論でも万能な魔法でもなく、
「ビジネスの流れを整理するための共通フォーマット」に近い考え方です。
認知から購入、さらには継続や紹介までを段階に分け、
人数と率で眺めることで、どこを優先的に改善すべきかが見えやすくなります。
大事なのは、教科書通りの形に合わせることではなく、
自社の商材・チャネル・組織に合わせて、無理のない粗さで設計することだと思います。
まずは3〜5段のシンプルなファネルから始め、数字を見ながら少しずつ階段や指標を整えていく。
その地味な更新を続けられるかどうかが、成果に近づくいちばんのカギではないでしょうか。