近年、多くの企業がマーケティング施策の一環として「ホワイトペーパー」を活用しはじめています。
なぜ多くの企業がホワイトペーパーを活用するのかというと、単に製品やサービスの魅力を詳しく紹介できるからだけではありません。
ホワイトペーパーを通じて読者が抱える課題を「どう解決できるか」を具体的に示すことで、「この製品やサービスなら自分の問題を解決してくれそうだ」と納得してもらいやすくなるのです。
こうした説得力のある情報提供は、企業と顧客との信頼関係づくりに大きく貢献します。その結果、実際の商談や導入へとスムーズにつなげられるため、ホワイトペーパーの重要性は近年ますます高まっています。
一方で、実際にホワイトペーパーを作成するとなると、「どのような種類があるのか」「読者を惹きつける構成とは?」といった疑問から、手探りで進めざるを得ないケースも少なくありません。
本記事では、ホワイトペーパーの代表的な6つのタイプを取り上げ、それぞれの特徴と目的に応じた書き方のポイントを解説します。
また、マーケティング分野で反響の出るコンテンツという文脈でしばしば用いられるPASONAの法則をどのようにホワイトペーパーに組み込むかにも着目し、実践的な構成案やテンプレートを提示していきます。
「入門ガイド型」から「課題解決型」「導入事例型」に至るまで、自社で作成すべきホワイトペーパーの方向性を見極め、より大きな成果へつなげる一助となれば幸いです。
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ホワイトペーパーとは、専門性の高い情報を体系的に整理し、読者が抱える疑問や課題に対してわかりやすく解説するための資料です。
複雑なテーマを深く掘り下げつつ、具体的な事例やデータを駆使して説得力を高めることで、企業の信頼性向上やリード獲得に大きく貢献します。
継続的に改訂を行うことで、長期にわたり価値あるコンテンツとして活用できるのも魅力です。既存顧客の満足度向上にも有効な手段といえしょう。
ブログ記事
ブログ記事は更新頻度が高く、トレンドや日常的な話題を扱うのに適しています。対して、ホワイトペーパーはより体系的で、長期的に活用できる内容をまとめる点が特徴です。
営業資料(パンフレット)
営業資料は製品やサービスの魅力を端的にアピールするツールです。一方、ホワイトペーパーは読者が抱える課題を深く掘り下げつつ、その解決方法を専門的に示すため、より説得力のある資料となります。
ホワイトペーパーについて全般について知りたい方は、この記事「ホワイトペーパーとは何か?BtoBマーケティングで活用する全知識」を読んでみてください。
ここでは、ホワイトペーパーにおいてよく活用される6つのタイプを紹介します。それぞれ「どんなシーンで使うのか」「どんな読者を想定しているのか」を知ることで、自社が発信したい情報と読者のニーズをしっかりマッチさせることができます。どのタイプも使い方次第で高い効果が得られるため、目的や想定読者に応じて選択し、実践してみてください。
初心者向けの導入ハンドブックとして、専門用語や基礎知識をわかりやすくまとめます。難しい概念をかみ砕いたり、図解を多用したりすることで、読者の「最初の一歩」をスムーズにサポートできるのが魅力です。
主な目的
専門知識のハードルを下げる
まだ業界や製品、サービスについて詳しく知らない人を対象にすることで、潜在顧客を育成しやすくなります。
ブランド認知の拡大
親しみやすいガイドを提供することで、「この企業は初心者にもやさしい」という好印象につなげられます。
おすすめの場面
・新規市場や新しい製品をローンチしたとき
・業界経験が浅い担当者向けに教育コンテンツを作りたいとき
市場動向や業界の最新情報、統計データなど、客観的な数字やエビデンスを中心にまとめます。数値やグラフを多用し、信頼性の高い情報を読みやすく整理することで、読み手の説得や検討材料の提示に効果的です。
主な目的
専門家や企業へのアピール
客観的データは意思決定に欠かせないため、信頼性を示すことで潜在顧客やパートナーに「この会社は実績・知見がある」と思ってもらえます。
業界のリーダーシップ確立
有用な調査レポートを発行し続けることで、「この分野のことならあの企業が詳しい」というブランドイメージを醸成できます。
おすすめの場面
・新規市場開拓の根拠としてデータを提示したいとき
・メディアや業界関係者に注目してもらいたいとき
読者が抱える具体的な課題を取り上げ、解決策へと誘導するストーリーを作ります。PASONA(Problem, Agitation, Solution, Offer, Narrow down, Action)の流れを組み込むことで、読者が「これは自分の問題だ」と強く共感し、スムーズにアクションに移りやすくなるのが特徴です。
主な目的
課題~解決策~行動喚起をストーリー化してリード獲得
読者が抱えるProblem(課題)を提示し、放置するリスクや損失をAgitation(危機感)として強調することで、「なぜ今解決しなければならないのか」を理解してもらいます。そこからSolution(解決策)へとつなげ、自社サービスをOffer(具体的提案)として提示しながら、ターゲットの心を動かすために対象や期間を提示して絞り込んで(Narrow Down)、Action(行動喚起)を明確に示すことで、読者を効果的にリード獲得へと導きます。
専門家・コンサルタント的ポジションの確立
「単なる製品・サービス紹介だけでなく、課題の本質を深く分析し、読者に合った最適解を示すことで「この企業は自分たちの課題を理解してくれている」「信頼して任せられそうだ」という印象を与えられます。結果として、コンサルタントのような頼れる存在としての地位を築くことができます。
おすすめの場面
・「製品・サービスを導入すれば、こんな課題を解決できる」というシナリオを描きたいとき
・自社のソリューションを深く検討してもらいたいとき
成功事例(ケーススタディ)を紹介し、「自分も同じように成功できるかもしれない」という希望を読者に与える資料です。数字や企業名など具体的な実績を示すことで、疑いや不安を抱えている読者の信頼をぐっと引き上げる効果があります。
なお、導入事例型においてはPASONAの要素を部分的に取り入れることで、読者が「課題→危機感→解決策→行動」の流れをスムーズに追体験できるようになります。
PASONAの活用イメージ
P:Problem(問題提起)
事例企業が抱えていた課題や悩みを明確に提示します。
例:「ネットショップの問い合わせが急増し、カスタマーサポートの対応が追いつかず顧客満足度が低下していた」など。
A:Agitation(問題の深刻化・放置リスク)
その課題を放置するとどんな悪影響が出るかを伝えます。
例:「問い合わせ対応の遅れから返品率が高まり、リピーターが減少。その結果、売上にも大きな影響が出始めた」といった危機感を高めます。
S:Solution(解決策の提示)
その課題に対して、どのように解決できるのかを紹介します。
例:「B社のチャットボットソリューションを検討し、実際の顧客問い合わせパターンを分析した結果、24時間自動応対が可能な仕組みで解決できると判断した」など。
O:Offer(特典)
解決策を導入するにあたって、どんな特典やメリットが付随するのかを具体的に提示します。
例:「チャットボットの導入サポートを3か月無料で提供」「初期費用が○%オフ」「サポート用FAQデータベースの無償提供」など、導入企業が受けられる特典を打ち出します。
N:Narrow Down(適用条件)
特典や導入プランが適用される条件・期限などを具体的に示し、今すぐ導入すべき理由を伝えます。
例:「○月末までにご契約いただいた企業様には特別割引を適用」「スタッフ数が50名以下の企業を対象に、追加サポート費用を無償化」など。 条件を明確化することで「早めに導入しないと特典が受けられない」と読者に思わせる効果があります。
A:Action(成果・行動喚起)
導入後に得られた成果を数値や具体的コメントで示します。
例:「1日あたりの対応件数が以前の半分の時間で処理できるようになり、顧客満足度が20%向上。サポート部門の残業コストも月○万円削減」といった実績を提示し、読者に「自社も導入すれば同じ効果が期待できる」と感じてもらいます。
主な目的
読者の「自分事化」を促進
・似たような課題や業界の事例を提示することで、「私たちも導入したら同じように成果が出そうだ」と感じやすくなります。
・課題~解決~成果までのストーリーを具体的に示すことで、読者が自社に置き換えやすくなります。
導入ハードルの軽減
・成功事例を読んで導入後のイメージが明確になると、心理的・実務的な不安が減り、導入を決断しやすくなります。
・「実際の導入プロセス」「トラブルシューティング」「費用対効果」などを具体的に記載しておくと、安心感が高まります。
おすすめの場面
実績を強調して「他社も使っている」という安心感を訴求したいとき
成果を数字や実名企業の声で示すことで、製品・サービスの信頼性を裏付けます。
セールスにおける信頼醸成の補強ツールとして使いたいとき
セールス担当が商談時に配布するほか、営業メールの添付資料やウェブ上でのダウンロード資料として活用することで、説得力を一気に高められます。
登壇したプレゼンテーションのスライドやウェビナーの講演内容をベースに、フォローアップ用資料としてまとめたものです。セミナー終了後に「もっと詳しく知りたい」という参加者に配布することで、追加情報の取得や問い合わせにつなげやすくなります。
主な目的
イベントやセミナー後の復習ツール
当日配布したスライドだけでは思い出せない細かいポイントやQ&Aなどを盛り込み、セミナーの内容を再確認できるようにします。
追加の情報収集窓口の確保
セミナー後にも質問や問い合わせを受け付ける仕組みを整えることで、新たなリードを獲得するチャンスを広げます。
おすすめの場面
・セミナーやウェビナーを定期開催し、受講者に恒常的なサポートを提供したいとき
・イベントのフォローアップとして参加者に資料ダウンロードを促し、関係構築を継続したいとき
自社の製品・サービスを深く知ってもらうことを目的に、機能一覧や導入方法、料金プランなどをわかりやすく整理した資料です。課題解決型と同様に、PASONAの流れを取り入れると「課題提起 → 解決策 → 導入ステップ → 行動喚起」がスムーズになります。
主な目的
商品・サービスの魅力を最大限に伝えます
スペックだけでなく、なぜそれが課題解決に有効なのかを物語化することで、理解と納得を得やすくなります。
具体的なアクション(申し込み・問い合わせ)への誘導
CTA(Call To Action)を明確に設置し、「今すぐ導入したい」という気持ちを後押しします。
おすすめの場面
・新規顧客や見込み顧客への営業ツールとして、オンラインや展示会で配布したいとき
・新商品や新機能をローンチした際、その特徴と導入プロセスを体系的に紹介したいとき
ホワイトペーパーを作成するうえで、どのタイプを選んだとしても「読者に伝わりやすく、行動を起こしてもらいやすい形」にするための工夫が欠かせません。ここでは、作成時に押さえておくと役立つ4つのポイントを解説させていただきます。
ポイント
・「読者が何を知りたいか」を起点に構成や見出しを考えます
・読者の悩みや疑問をリストアップし、それらを一つひとつ解消できるように章立てを行います。
・専門用語や業界用語は、読者の知識レベルに応じて丁寧に解説します(必要に応じて用語集の設置もおすすめ)
解説
まず最初に考えるべきなのは、「このホワイトペーパーを読む人は何を期待しているか?」という点です。
例えば、入門ガイド型なら初心者が最初に抱きがちな「基本用語がわからない」「導入手順を知りたい」といった疑問に応えなければなりません。逆に調査レポート型なら「最新データを知りたい」「市場動向の裏付けが欲しい」というニーズを満たす必要があります。
自社が伝えたいことももちろん大切ですが、最終的に読者に「役に立った」「読んで良かった」と思ってもらえなければ意味がありません。読者の悩みや目的に寄り添いながら、必要な情報を体系的に提供することが、ホワイトペーパーの質を高める大前提です。
ポイント
・読者の抱える悩み(Problem)を明確にします。
・なぜ放置すると危険・損失につながるか(Agitation)を具体例やデータで示します
・どのように解決できるか(Solution)を提案し、自社の製品・サービスを利用してもらうようにオファー(Offer)を提示します。
・「今すぐ取り組むべき理由」(Narrow Down)を示し、行動(Action)を促します
解説
ホワイトペーパーは情報量が多くなりがちなため、読む人が途中で離脱してしまうことも珍しくありません。そこで、最後まで読ませる工夫としておすすめなのが、ストーリー性を持たせることです。
特に有用なのが「PASONAの法則」。読者が心の中で抱える不安や課題を先回りし、段階的に「そうそう、そうなんだよね」と共感させながら読み進めてもらうことで、自然と解決策に目を向けやすくなります。
課題解決型や商品・サービス紹介型、あるいは導入事例型でも一部の要素を取り入れるだけでも効果は高まるため、ぜひ一度フレームワークに当てはめてみると良いでしょう。
ポイント
・テキストだけに頼らず、図や表、イラストを用いて視覚的に理解しやすくします。
・重要なデータや比較結果は一目でわかるグラフやチャートを使います。
・文字数が多くなる場合は見出しや余白を十分に取り、読みやすさを確保します。
解説
ホワイトペーパーはどうしても文字情報が中心になりがちですが、読者が読み飽きないように配慮することも非常に大切です。たとえば、「わかりやすいイラストで概要を示したあとに、詳細な数値やグラフを提示する」など、段階的に情報を深めていく構成にするのも有効です。
また、見出しや本文のレイアウト、フォントサイズなど基本的なデザインを整えるだけでも、読みやすさは格段に向上します。デザイナーに依頼できない場合でも、ツールを使って図を作成したり、配色やフォントに気を配ったりするだけで「プロっぽさ」を演出できるので、ぜひ工夫してみてください。
ポイント
・読者に最終的に「何をしてほしいか」を明確に伝えます。
・「お問い合わせフォーム」「無料トライアル」「見積もり依頼」など、行動ボタンやリンクをわかりやすく配置します。
・必要に応じて複数の選択肢を用意しながらも、最優先でおすすめしたい行動をはっきり提示します。
解説
ホワイトペーパーはあくまで「情報提供と問題解決の手助け」を目的とする資料ですが、ビジネス上の目的を達成するためには、読者が具体的なアクションを起こしてくれる必要があります。
たとえば、最後のページや節目のページなどに**「ここをクリックして詳細を確認する」「いますぐ無料相談を申し込む」**といったCTAを明示しておけば、読者が興味を持ったタイミングで行動に移りやすくなります。特に商品・サービス紹介型の場合、CTAの配置やメッセージがリード獲得に直接影響することが多いため、非常に重要なポイントです。
ホワイトペーパーには6つのタイプがあり、それぞれが「誰に何を伝え、どんな行動を促したいか」によって構成や見せ方が変わります。
入門ガイド型や調査レポート型では情報提供に重点を置き、課題解決型や導入事例型では具体的な行動喚起を目指すことが効果的です。
課題解決型や商品・サービス紹介型でPASONAの法則を取り入れると、読者の課題認識から解決策、そして行動へと自然に誘導でき、リード獲得が大きく加速します。
最適なタイプを見極めつつ、読者の視点を徹底したコンテンツ作りを意識すれば、ホワイトペーパーは企業の強力なマーケティングツールとして活用できるでしょう。